初出2009/02/19 以後修正
─第2話─
せっかくだから勘違い属性もつけてみようと思う。
──────
とりあえずわかったことがある。
まず、『石ころ帽子』のように、未来道具の形が本来と違うものがあるという事。未来道具のデザインが、『ネギま』の雰囲気にあうよう今風にリアレンジされているのだ。
効果は一緒だが、出してもこの世界の雰囲気を壊さないようになっている。
そして、四次元ポケットは、服を変えても俺が手をポケットにつっこめばそこにあるという事だ。
これは便利。なぜこうなっているのかはわからないが、これは便利。
不便なのは他人のポケットに手をつっこんでも四次元ポケットにつながるという事。
まあ。人のポケットに手をつっこむなんて事自体滅多にないから問題ないけど。
これでポケットが奪われる心配とかがなくなったので一安心。
これさえあれば未来は約束されたようなものだからな。
あとは、安全に卒業さえ出来れば!
出来れば……ね。
ちなみに転校とかも考えたけど、両親が説得出来そうになかったので諦めた。
転校する理由が幼女怖いじゃそりゃ無理だろうけどさ。
い、いや、正直にそんな事言ってないよ。全然言ってないよ。
ちゃんと他にも理由あるよ!
理由の一つに、今この時期が問題だ。
一つ前に、中2中2で中2の体と言ったが、すまない。ありゃあ嘘だ。
今の俺はすでに中3だ。いや、あの時はまだ中2だったのかもしれないが、今はもう中3なのだ。
どういう事かと言うと、記憶喪失の検査入院から退院したら、春休みが終わり新学期になっていたという事だ。
つまり、転校しようと手続きをしようとしても、早くても夏休みが終わってからね。とかばっさり叩ききられるのだ。
時期的にこの時期が一番危険なんだよ!
ちくしょう。
これもポケットの中に『もしもボックス』がなかったのが原因だ。
このポケット、取り出したいものを考えながら取り出す形なのだけど、出てこなかった。つまり、ポケットの中に入っていないという事。
これさえあればこんな毎日を恐怖におびえて過ごす事もなかったのに。
ついでに『ソノウソホント』もなかった。
ちくしょう。
でも『地球破壊爆弾』はあった。これはマジぱねぇ。なぜか未来道具取り出すと使い方もわかるんだけど、これ説明がすごい。
『地球を破壊します。粉みじんDEATH!!☆』
22世紀おそろしす。最後の星が逆にイラっとくるくらい恐ろしい。
あと、俺がなんでここにいるのかは知らん。
ただ、『○×占い』でこの体の元の持ち主の事を聞いたら、『死んでいる』が『○』だった。
俺がこっちに来る前になにがあったのやら。春休みに制服着て森の中とか……
ま、そのあたりの細かい事は気にしない。むしろ今『俺』が四次元ポケットと未来道具を持って若い体でやり直せる。という事だ。
すばらしい未来が俺を待っているという事だ!
これで、俺が、平穏に暮らせれば、文句はないのだが……
「あなたは何者なんですか?」
いきなり、あの半デコに見つかりました。
顔隠してた意味なかったとです。
まだ、金髪幼女じゃなかったのが幸いとです……
ちなみに彼は気づいていないが、桜舞い散るこの頃、彼が恐怖する幼女は風邪と花粉症で寝こんでいたりするのでおびえ損だったりする。
しかしおかしい。
俺は今、体に貼っておけばあらゆる災難から逃れられる『厄除けシール』を貼っている。
なのになぜだ!? これは厄じゃないのか未来道具! まさか原作キャラと絡むってのは業界的に言えばご褒美とか言うんじゃないだろうな。違うからな! 絶対違うからな!!
だから少女、コッチを見るなぁぁぁぁぁ!!
───桜咲刹那───
あの日、あの時私の戦った召喚獣は、予測を大きく裏切り、強かった。
結界に力を奪われていても、あの巨大さ。あの力と速さ。すべてが、私一人を上回っていた。
召喚主も巧妙で、私は龍宮とは分断され、援軍すらも期待できない状況まで追いこまれる事態にもなった。
もう駄目か。と思ったところで、突如現れた『彼』。
私を助けた後、はっとなにかに気づき、手に持っていたマントらしきもので顔を隠した行動が、逆に印象的だった。
それゆえ彼は、なんらかの理由で、その正体は隠しておきたいのだとわかった。
大きい布で隠そうとしているが、着ているものが麻帆良の制服である事もわかる。
私と同じくらいの年齢。そして、あれほどの力を反射できる者。少なくとも、私の知る学園関係者の中にはいない。
こうして隠す理由は二つ。
外から学園に潜入するため。か、学園にいながら、力を隠したい者。
このどちらかだろう。
学園に潜入するためならば、こうなった時点でそれは失敗。これならばいい。
しかし、力を隠し、学園に在籍しているとなると見逃せない。例え私を助けてくれた者だとしても。こちらの可能性が限りなく低いとしても。
少なくとも、この学園。いや、お嬢様に危険となる存在かは、確認しなくてはならない。
私は正面にまわり、彼を問い詰めた。
正面にまわってみて気づいたのは、その独特の気配。
このような場にいるというのに、彼は一般人にしか見えないのだ。
あの召喚獣を一撃で撃退出来る者の纏う気配ではない。
それはつまり、それほどに擬態に優れているという事なのだろう。
この場ではそれが逆に不自然となっているが。
だが、その違和感ゆえか、思わず、刀を構えてしまった。
この違和感が、それの出来る彼が、とてつもなく恐ろしく感じたから。
もしこのまま、人里に入られれば、誰も彼があれほどの事が出来るなど、想像もしないだろうから。
そのせいなのだろう。私は、彼から答えを得る事は出来なかった。
彼は一言「名乗るほどの者じゃない」と言い、共に取り出した帽子をかぶるのと同時に、私の目の前から消えたのだ。
まるで、最初からその場にいなかったかのように。
呪文の詠唱も、気の使用での瞬動術なども、なにも使わずに。
取り出した帽子も、なんの力も感じられないただの帽子にしか見えなかった。
それゆえ逆に、私はそれを阻止する事も出来なかった。
あまりにも自然体の動き。
油断をししていたわけではない。
警戒していなかったわけでもない。
相手が、こちらの想像をはるかに上回っていただけだ。
彼がいた事に、あの戦いの中現れるまで気づかなかったのも納得がいった。
私とは、レベルが、違いすぎる。
報告の後、その日他にはなにも起きていないと聞いた(ちなみにエヴァは彼の事は報告していない)
結界の方も撃退され、逃げ出した者以外は感知していないと聞く。
それゆえ、ほとんどの人は、侵入しようとして失敗し、すでに逃げたと考えている。
なにより、学園にいて、そのような実力を隠したままでいられるとは誰も思わなかったからだ。
私は、そうは思えなかった。
直接見たからこそわかる恐ろしさ。
私にだけはわかる事。
他の人は信じていないが、彼ならば、私に会い、警戒された後でも目的は遂行できたであろう。
だが、その被害は今だ出ていない。
それゆえ、彼は、この学園にいる。
学園に害をなそうとしているのか、そうでないのかはわからない。
だが、見つかるリスクをもってしても、彼は学園にいる。
私は理由もないが、確信していた。
そして、それを確信できるのも私しかいないと思った。
もし、あれほどの力を持った彼がこの学園にいるのならば。
そして、もし害意を持って潜んでいるのならば、どれほどの事を成そうというのだ。どれほど恐ろしい事が出来るのだ。
だが、その事実には、誰も気づいていない。
これは、私にしか出来ない事だ。
考えすぎかもしれない。ただの杞憂かもしれない。
私を助けてくれた彼は、ただ静かにすごしたいのかもしれない。
杞憂であればいい。
そう思っていた。
その日、私が彼を見つけるまでは……
それは、まったくの偶然だったのだろう。
その背中を見て、すぐにわかった。
あの日、あの時見た背中そのままだったのだから。
──────
くそっ、記憶喪失として登校して数日。
クラスのみんなは親身になってくれるが、すごくよそよそしい。
なんというか、みんな罪悪感を感じているというか。償いをしようとしているというか。
春休みに制服着て森の中にいたとか。その前日から行方不明とか。『こいつ』はすでに死んでいるとか。両親は「生きていればそれでいい」とか。
そこから導き出されうる答えが、あまりにもへヴィなんですけど。
そのおかげで『こっち』の両親に心配かけたくない。なんて俺が思っても不思議じゃないよね。
これも転校とか、未来へ時間跳躍とか、姿をくらますとか。部屋に引きこもるとか。そういう決断を妨げてる原因なんだ。
『こっち』の両親の記憶はないが、それでも普通に学校に行っている。と、安心はさせてやりたい。
知らなくても。異世界の俺でもある『こいつ』の親だから。
ただ、それゆえクラスのやつらは気にしているようなんだよね。基本はいい奴等なんだよ。でも、どこかで少しエスカレートして、歯車が狂っただけなんだろ。
俺は知らないから全然気にしていないんだけど、それでも彼等は気にしてる。俺がなじむには、まだ時間が必要なんだろうね。
だから、帰りは一人で帰っているのが現状だったんだ。
しかもなぜか寮も二人部屋なのに俺一人。これも色々想像できて嫌だ。
というかこれ、俺の部屋にネギが来るフラグとかじゃないだろうなぁぁ!!
厳しい現実が多すぎて鬱になる……
「聞いているんですか?」
……うん。いきなりあんな事考えてたのは、ぶっちゃけかっこつけて現実逃避してただけなんだっ☆!
なんと悲劇的(笑)な心の心を背負った影のある少年。俺の左手がうずきやがるぜ。的に。
ちょっと鬱になってるのはむしろ半デコちゃんに睨まれているこの現状からなんだ。
ガキ(クラスメイト)の悩みなんて正直興味ないんだ。
むしろこのまま原作に巻きこまれるかもしれないって心配だからなんだ。
だから、聞いていなかったからってそんなににらまないでください。
お願いします。でも俺ちょっとMっ気あるかもなのでぞくぞくします。
嘘ですしません。
やっと現状を報告するが、今オープンテラスの喫茶店のところで対面で問い詰められています。
ものすごい勢いでにらまれています。
なにか品定めするようにも見られてます。
周囲に人がいるので下手な事はされなさそうなのが救いです。
さて、どうしよう。
正直、あの時とは違ってすでに逃げ場はない。
学園の生徒とバレているわけだから。
とりあえず、身の安全を図ろう。
全部正直に話して、未来の情報と引き換えに安全を買おう。
おお、案外これいけるんじゃないか! もっと早く気づけよ俺。この駄目っ子めっ☆
というわけで、正直に話す事にした。
俺は異世界から来てなんかスーパーな道具を持っていて少し先の未来を知っている記憶喪失だがただの一般人だからバトルはカンベンな!
……ねーよ。
自分で言おうとしてまとめたが、正直、これは、ない。
未来を知ってるのに記憶喪失でスーパーな道具持ってるけど一般人て、つっこみどころ満載じゃねーか。矛盾だらけじゃねーか。
しかも俺『ネギま』原作の記憶はかなりあいまいだ。雑誌立ち読みでコミックスも集めてなかったしな。
こんな事言ったら確実に。
「ふざけないでください!」
とか怒られるの間違いないね。
……ちょっと言われてみたいとか思った。
断じて俺Mじゃないよ。どっちかと言うとSだよ。こういう真面目な子をおちょくって怒らせるの、けっこう好きなのは、俺の悪いクセなんだと思う。
でもやめられないんだ。
人の目もあるから1回くらいは大丈夫とか、俺ってホント危機管理がなってないよね。
「……実は、俺は宇宙から来た刑事で、とある宇宙悪党を追ってここにやってきたのだが、この体の主が運悪く着任した時亡くなりかけていたため、彼を救うため半分同化しているんだ」
仕方がない。本当の事を話そうと前置きして、俺はどこかで聞いた事もあるインスタント(3分間)ヒーロー&宇宙刑事の話をまぜこぜして話してみた。
「それに、本来ならば、関係ない事に介入してはならないのだが、君のピンチに思わず助けてしまった。どうか、黙って見逃してはもらえないだろうか?」
言っておいてなんだが。これもねーな。
だが、荒唐無稽な話から、ちょっと嘘を混ぜた話にシフトすれば、タダの嘘も信じやすいという心理的ななんたらとかを利用するためなのだ!
この次はもっとマシな事を言うための準備なのだ!
決して怒っている顔が見てみたいとかそういう動機ではない!
これは相手の冷静さを失わせる一手。
そういう駆け引きなのだ!
そういう事なのだ!
俺ってすごーい。さらまんだーよりはやーい。
さあ。おじさんの手で踊ってみてくれ!
「そ、そうだったんですか……」
……
…………へ?
な、なんか、すっげー純真な目が、俺を見てるよ。
「そのような理由があったのに、私を助けてくれたなんて、なんとお礼を言えばよいのか……」
しっ……
しんじたぁぁぁぁぁぁ!?
なんかすげー目がきらきらしてるぅぅぅぅ。
ヒーローをはじめてみたって純粋な子供の目をしてるぅぅぅう!(巻き舌若本風で)
そういう意味で踊って欲しくはなかったよぉぉぉ!!?
「い、いや、困っている人がいたら助けるのは当たり前だ。ただ、なにも言わずに消えたのはすまない」
「いえ、いいんです。そのような理由があったのでしたら。もしその事実が明るみに出ると、フェレットにされるなどの罰があると想像出来ますし」
フェレット? ああ、そういえば魔法使いとバレるとオコジョにされたりするんだっけ。それを知ってるからか。
それで、こんな荒唐無稽な話にも理解を示してくれるわけか。
魔法使いがいるんだから、宇宙人がいても不思議はないって事?
だとすれば、むしろラッキーか!!
ナイスだ俺。ナイス話題チョイス!
なんか知らんが、ラッキー。
「しかし、その宇宙悪党を一人で探すのは大変でしょう! 私にも手伝わせてもらえませんか!?」
……アンラッキぃ。
や、やばい。ものすごくヤヴァイ。
宇宙から来た悪党なんていやしませんよ! つーか君お嬢様の護衛があったはずでしょ! 他にも仕事があるでしょ!
一瞬そうして俺を監視するのかとか思ったけど、全然そうじゃなく俺を純真きらきらした目で見てる。
これが演技ならこの子すごいね。土下座するね。
いや、むしろ土下座させてください。
やばい。これは確実に嘘を嘘で塗り固めていくフラグだ。
一つの嘘のために新しい嘘をつかねばならないフラグだ。
でもここで『うっそー』なんて言ったら確実にたたききられる。確信できる。彼女のそれを裏切ったら俺の命はない。絶対。
なんで、なんで君は、そんな憧れを見つけたような目でおじさん見てるの?
なんでこんなあからさまな嘘を信じてしまうほど純粋なの?
せっちゃんはなんで信じるんー?
人を信じられる心を持ってるからですよー。
心が、痛い。
……おじさん今、罪悪感に抱かれて溺死しそう。
あと、君の将来が、ちょっと心配だよ。
記憶喪失なのは、記憶の方は『彼』がまだ眠っており、人の記憶を勝手に見るのは犯罪だから記憶喪失としてあると告げた。
この記憶見るの犯罪ってのはこっそり相手にプレッシャーをかけてるつもり。
記憶なんて見られたら……見られたら、……逆に、信用してもらえないかなー。かなー。
あと、あの時何者かに助けられた事はすでに報告してあるが、俺の事は秘密にしてくれるそうだ。
それは、ホントに、助かる。
原作にかかわる気は、ホント、ないから。
でも、俺、君の前では、宇宙刑事やらなきゃならないと思うと、逆に、死にたい……
超死にたい。
まさか三十路直前でこんな宇宙刑事ごっこをもう一度味わうとは思わなかったぜ。
黒歴史ノートを他人に見られたくらいの比じゃないぜこれは。
大人になって黒歴史ノートを人の前で朗読させられるくらいのレベルだぜ。
致死レベルだよこれ。
この後半デコちゃんに宇宙刑事のパトロールくらいは手伝いたいので。と電話番号とか宇宙悪党の事をなかば強引に聞かれた。
ちなみに暗号として宇宙悪党を見つけた時は『子供』とか『迷子』とか、そういう感じで話そうとも決められた。
君ってそんなに強引だったっけ?
「では、宇宙パトロールがんばってください」
と応援され、その場は別れた。
だが、俺の精神的苦痛以外は、おおむね安全領域に達して彼女から俺は解放された。
下手に学園長に引き合わされたりとか、警備員にスカウトされたりとか、未来道具の事を根掘り葉掘り聞かれたりとかしなかったのだから。
特に俺魔法使いと関係ないから、京都とかの旅行でこき使われるの目に見えてるし。
だから、うん。良かったと思うんだ。
うん。
そうだよ。俺の精神的苦痛なんて、命の危険にくらべれば、100万倍マシだよ……
ちょっと邪気眼的に宇宙刑事ごっこをやっていると思えばいいのさ。
毎回罪悪感とか恥ずかしさに耐えればいいのさ。
ひゃはー。
……あれ? 目から変な汁が出てきた。
おかしいな。
でも、これからが、本当の地獄のはじまりだったんだぜ。
───桜咲刹那───
思い出す。
幼少の頃少しだけ見たことのあるテレビで活躍するヒーロー。
あれはフィクションであったが、己の使命や、ヒーローの立ち居地は自分に共感できるところが多くあった。
それゆえ、それでも負けない彼等の姿に、少女は憧れを抱いた。
その姿は、お嬢様をお守りする私の理想。
あの強力な召喚獣の一撃を事も無げに跳ね返し、私の前から一瞬にして消えた、あれほどの者。
どれだけの使い手で、どのような人なのかと思えば、まさか宇宙刑事だったなんて!
魔法使いが存在しているのですから、宇宙人がいても不思議はありません。
あの強さも、宇宙的なものなら納得できます!
宇宙人も、魔法使いと同じように、地球の人間にはその存在を教えてはならないとの事。
それなのに、私を助けてくれた事は、本当に感謝しなくてはなりません。
私など、彼がなにか悪い事を考えているかもしれないと、疑っていたのに。
私に正体を明かした時、彼は、ひどく疲れて見えました。
そうだ。ここで彼は孤独なのだ。
地球にたった一人で、その正体は誰にも明かせない。
私にも、その気持ちは良くわかります。
少しでも、彼の力になりたい。
私がそう思うのも当然でした。
それゆえ、少し強引にですが、彼への連絡先や、探している宇宙悪党の事を聞ききだしました。
これで少しくらいは、力になれるかもしれません。
そして、上手くすれば、姿を隠す方法。例えば『変身』を教えてもらえ、その姿で堂々とお嬢様を守りにいけるかもしれない。
──ガッチャマン的な姿に変身した刹那を想像ください。
……少し、下心が出ました。
反省しなくては。
そう思った時、私の視界に、あるものが入って来た。
「こ、これは……!!」
──────
半デコちゃんと別れてすぐ。携帯電話が鳴った。
ちなみに俺の登録数は両親と学校を除けば彼女が実質初めて。
涙がなくては見れないね。
オチは森の中でなくしたから新しく契約しなおした。なんだけど。
んで、俺は、彼女からの電話を聞いて、真っ青になった。
だって……
だって。見つけたって言うんだもん。
俺の探しているだろう宇宙悪党の手がかりを……
いるはずないのに、見つけたって、彼女が嬉々として、言うんだもん……
……ボスケテ。
──────
仕方なく待ち合わせの場所へ行ってみると、なんか人だかりが出来てた。
何事かとかきわけて行ってみると、その中心には半デコちゃんがいた。
俺に背を向けているので、彼女は気づいていない。
むしろ、彼女もこの人ごみに戸惑っているようにも見える。
……まさかほんとに宇宙人見つけたとかないよな。
そのせいでこうなってるとかないよな。
一応これ『ネギま』なんだから。
彼女が振り向くと、なぜこんなに注目されているのか理解が出来た。
半デコちゃんのお腹がぽっこり膨らんでいる。
麻帆良の制服の上着を押し上げるようにして。
お腹の中に、もう一つ新しい生命がいるレベルの膨らみようで!
「まあ。あれが、かしら?」
「あんなに若いのに……」
「サイテー」
「嫉妬の心は父心……」
「怨怨怨怨」
……俺の時が止まった。
「な、なぜに?」
いくらなんでも、さっきの今でお腹が膨れるはずもない。
「あ、よかった。見つけました。今、あなたの子(宇宙悪党)がここにいますよ!」
うん。いい笑顔だね。
すごくうれしそうな笑顔だね。
そうだよね。宇宙人なら周囲の人の視線にさらすのまずいよね。
だから、服の下に隠したんですね。
ナイスな判断だね。
ただ、そうやってお腹を持ち上げて、嬉しそうに言うのは、やめて、欲しいな。
「マジなのか……」
「最近の若い子は……」
「サイテー」
「なんとうらやま……いやけしからん!」
「怨怨怨怨怨」
視線が、視線がいたいぃぃぃぃ!!!
「な、なぜこんなに注目されているのでしょう?」
視線には気づいているようだが、なぜこうなっているのかわからないように、少女は首をかしげる。
「きみなぁぁぁぁぁぁ!!」
思わず叫んだ。この子すごい天然だ!
天然すぐる。
天然通り越して純粋すぎる。
「うわ、怒った」
「これだから最近の若いのは……」
「サイテー」
「なんだ、この、マスク……」
「怨怨怨怨怨怨」
俺まで変な目で見られてるじゃないか! というかなんだこれ!? なんてプレイ!?
宇宙刑事かと思ったら、別の精神攻撃!?
魔法使い目前だった俺への新手のいがやらせ!!?
もうやめて! 俺のMPはもうゼロどころかマイナスよ!
とりあえずこの場から逃げ出す。
そろそろ石を投げられかねない。
「ねー、彼ってさ~」
「あいつって……」
……俺さ、記憶喪失って触れこみだから、今結構話題なんだよね。
それがさ、こんな状況で逃げるのってさ……
「あ、今動きました!」
うれしそうに報告しないでください!!
「ひそひそサイテー」
「ひそひそひそクズ」
「ひそひそ死ねばいいのに」
人ごみを抜ける間にどんどん尾ひれがついている気がするぅ!
……あれ? また目から変な汁が。
これが、これが、嘘をつく事への罰ですか? 神様。
──────
でも、服の下にあったものの方が最悪だった。
彼女が取り出したのは、ボーリング球のようなものだった。
たまにちかちか目(?)が光ってる。
おい。
おいおい。
おいおいおい。おいおいおいおいおいおいおいおい!!
これクロスものだったのか? おかしいだろ。おかしいだろこれ。
なんでここにザンダクロス脳があるんだよ。劇場版かよ。鉄人兵団かよ!
よりにもよって人類総奴隷化をたくらむ一番最悪の敵である鉄人兵団かよ!!!
この作品は『オレえもん ネギまと鉄人兵団』とかいうタイトルだったのかよ!?
語呂がぴったりなのが余計に腹立つ。
い、いや、おちつけ。落ち着いて元素を数えるんだ。
すいへーりーべ……
「やはりこれは……」
ああ、いきなり俺が固まったから半デコ少女が不安そうにしている。
「ああ。よくわかったね」
「いえ、いかにも怪しかったので!」
いい笑顔だ。
うん。だから、服の下に隠してたんだね。
わかるよ。この理解も2回目だしね。よーくわかったよ。
目からまた汁が出そうになるくらい。
人の優しさが刃になるって俺この時初めて知ったよ。
こっちの方が、心には、効くね。
「ありがとう。君のおかげで世界は救われる。あとは俺に任せてくれ」
「あの、なにか私にもなにか手伝う事は出来ませんか?」
「これだけしてもらえればもう十分だ。あとは俺の仕事。君は、君の仕事に戻るんだ。それが俺の一番の助けとなるから」
「はい!」
彼女ははじけるように笑顔になり、走っていった。
俺は人気のない場所に取り残される。
彼女の背を見送りながら、その時俺は、優しく微笑んでいたと思う。
人間こういう時は、もう笑うしか出来ないものだと知ったよ。
神様は俺の事嫌いなんだ。絶対。
自業自得とは言わないで。
──────
はー。一難去って、また一難。
一人になって、未来道具を取り出す。
『○×占い~』
てけてってて~。
最初にも使った占い道具を出す。これは質問に○か×かで答えてくれる道具だ。的中率は100パーセント。聞き方さえ間違えなければ、確実な情報ソースとなる。
少なくともこれで、本当に鉄人兵団が来るかわかる。
「まずは、鉄人兵団は地球征服をたくらんでいる?」
○ピンポーン。
「それは人類総奴隷化?」
○ピンポーン。
「すでに尖兵は送られている?」
○ピンポーン。
「それは俺の手の中にある?」
○ピンポーン。
「……」
ぐったりするしかない。
ど、どうすりゃいいんだこれ……
原作ラストは確か、タイムマシンで歴史改ざんしてたけど、あれ認めると俺この世界の未来人認めないとならないって事かなぁ。
俺に被害がなきゃ認めるのは全然かまわないんだけど。
そもそも関わるつもりないし。
ただ、俺はドラゴンボール的な未来支持派だから、改ざんしても改ざんしてない未来は残ると思ってしまう。
未来の可能性は無限にあるに一票。
だから、俺は、あえて、あいつ等を倒す!
ここで過去を変えても、変えていない過去が残る。だから、ここが変えない過去であり、ここ以外が変えた過去だ。
と、結論。
問題は、どうやって鉄人兵団を倒すかだな……
──────
メカトピア本星。メカトピア帝国。
ここは。3万年前、遠い惑星の人間に嫌気が射した科学者が、知性を持つロボットを作って建国したのがはじまりである。
しかし地球の人間社会と同じような競争社会の歴史を辿り、現在に至った。彼等はすでに生命として完成していると考えており、『生き物』達はロボット以下としか考えていない。
すべての『生き物』の進化の頂点として自らを認識し、他の『生き物』を支配、管理、使用して当然と考えている。
その一環が、他の星への侵略であり、管理、労働力化するための奴隷の確保なのである。
「シカシ、人間ハ脆クテイカンナ。マタ全滅シテシマッタ」
「これからマタ、増ヤセば良イダケではアリマセンカ将軍。人間ハ我々ト違イ勝手ニ増エルノデスカラ」
「其ノ通リダナ! ゲハハハハハ」
醜い電子音の笑い声が鳴り響く。
帝国における本隊は、地球侵略が始まっているというのに今だ本星にいた。
今だ宇宙にすら出ていない文明レベルの低い地球など、難易度としては昆虫収集をするようなレベルと彼等は考えている。
はっきり言って楽勝。
ゆえに本隊出発も、前線基地が出来るまでするつもりも無く、ノンビリもノンビリとしていた。
ごとん。ごと。
「?」
だが、そこに転送されてくるボーリング球のようなものがあった。
「……『ジュド』カ、ナゼ、ココニ?」
「ガガ、危険……危険……アノ星ハ……」
ボーリングの球が、チカチカ光る。
カッ!!
一瞬の光。
それにより、メカトピアそのものがのみこまれ、崩壊してゆく。
「バッ!? バカナァァァァァ!!?」
その時、宇宙に、綺麗な花火が生まれた。
──────
「メカトピア帝国本星に生き物はいるか?」
×ブブー。
俺はすぐに行動へ移した。
やった事はシンプル。このザンダクロスの頭脳に『片付けラッカーデラックス』を吹きかけ、それを持ち主(鉄人兵団)に返すだけ。
ただ、返す際、『地球破壊爆弾』をお土産として一緒に。だ。
ちなみに『片付けラッカーデラックス』は吹きかけると持ち主の元へ自動で戻るという物で、しかも一定距離以上進むと瞬間移動に切り替わるというまさにデラックスなやつ。劇場版緑の巨人伝で出てきた。旧版アニメしか知らない人にはわからない道具だな。
お、そうしている間に爆弾が爆発した。
『惑星ノ消滅ヲ確認シマシタ。粉ミジンDEATH!!☆』
イラッ☆!
うん。わかった。これ、2度と、とりださねー。
『○×占い』で確認。うん。地球の危険は去った○、か。よし。地球は救われた。よかったよかった。
これで魔法使いVSロボット兵団とか完全に別の作品になる危険は去り、俺の平穏も守られたわけだ。
ほんとーによかった!
俺がそうやって安堵していたころ。
「……帰るところ、なくなっちゃった」
空を見上げ、一人の地球偵察用地球人型ロボット少女は、そうつぶやいた。
地球は救われた。
でもそのうち、星ごと再生にいく事になるとは、思ってもいなかったんだ。
少女ロボ+彼のコピーロボ=新しいメカトピアでファイナルアンサー。
──────
「ひそひそ」
「ひそひそひそひそひそ」
「こそこそこそ」
翌日学校。
「……」
うん。噂がさ、すごいね。
ひどい事になってるね。
主に俺が悪役で。
ひどすぎて報告する気も出ないヨ。
触るだけで妊娠とか、ありえないヨ。
昨日とは違う意味で、俺クラスからよそよそしくされるようになたよ……
みんなー。それ誤解だからー。
そんな理由で記憶飛ばしてないからー。
……でもまあ。俺としてはこの前よりこっちの方がマシかな。
これで彼等のよそよそしさはなくなったし。
話しかけられる事も少なくなったけどさ。
「ちょっと職員室まで来ようか」
先生。『頭冷やそうか』的な目で指差し指定呼び出しかけないでください。
誤解ですから。
……そーいやザンダクロスの体はどれくらい降ってきてたんだろ。まいっか。魔法使いの人達がどうにかすんべ。
脳みそなけりゃただのガラクタだしな。
現実逃避乙!
地球を救ったのに報われない彼だった。
ちなみに、3-Aでも某パパラッチの存在で大騒ぎとなったが、当人はスタイル昨日見たままだし、いきなり膨れるはずもないわけなので、一瞬にして鎮火したそうな。
めでたしめでたし。
─あとがき─
うん。見事な勘違い。
ぶっちゃけ刹那を孕ませたくてやった。
後悔はしていないが反省もしていない。
鉄人兵団とか単にその状況にマッチしたためのガジェットなんだ。
深い意味はあるかもしれないけど今はないんだ。
ちなみにフラグは立ってねーですからー。むしろバキバキですからー。