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No.6434の一覧
[0] とある竜のお話 改正版 FEオリ主転生 独自解釈 独自設定あり [マスク](2017/08/15 11:51)
[1] とある竜のお話 第一章 前編[マスク](2009/07/29 01:06)
[2] とある竜のお話 第一章 中篇[マスク](2009/03/12 23:30)
[3] とある竜のお話 第一章 後編[マスク](2009/03/12 23:36)
[4] とある竜のお話 第二章 前編[マスク](2009/03/27 07:51)
[5] とある竜のお話 第二章 中篇[マスク](2009/03/12 23:42)
[6] とある竜のお話 第二章 後編[マスク](2009/03/27 07:50)
[7] とある竜のお話 第三章 前編[マスク](2009/03/27 07:50)
[8] とある竜のお話 第三章 中編[マスク](2009/04/14 21:37)
[9] とある竜のお話 第三章 後編[マスク](2009/04/26 22:59)
[10] とある竜のお話 第四章 前編[マスク](2009/05/06 14:49)
[11] とある竜のお話 第四章 中篇[マスク](2009/05/16 23:15)
[12] とある竜のお話 第四章 後編[マスク](2009/05/26 23:39)
[13] とある竜のお話 第五章 前編[マスク](2009/07/05 01:37)
[14] とある竜のお話 第五章 中篇[マスク](2009/07/20 01:34)
[15] とある竜のお話 第五章 後編[マスク](2009/07/29 05:10)
[16] とある竜のお話 幕間 【門にて】[マスク](2009/09/09 19:01)
[17] とある竜のお話 幕間 【湖にて】[マスク](2009/10/13 23:02)
[18] とある竜のお話 第六章 1[マスク](2009/11/11 23:15)
[19] とある竜のお話 第六章 2[マスク](2009/12/30 20:57)
[20] とある竜のお話 第六章 3[マスク](2010/01/09 12:27)
[21] とある竜のお話 第七章 1[マスク](2010/03/18 18:34)
[22] とある竜のお話 第七章 2[マスク](2010/03/18 18:33)
[23] とある竜のお話 第七章 3[マスク](2010/03/27 10:40)
[24] とある竜のお話 第七章 4[マスク](2010/03/27 10:41)
[25] とある竜のお話 第八章 1[マスク](2010/05/05 00:13)
[26] とある竜のお話 第八章 2[マスク](2010/05/05 00:13)
[27] とある竜のお話 第八章 3 (第一部 完)[マスク](2010/05/21 00:29)
[28] とある竜のお話 第二部 一章 1 (実質9章)[マスク](2010/08/18 21:57)
[29] とある竜のお話 第二部 一章 2 (実質9章)[マスク](2010/08/21 19:09)
[30] とある竜のお話 第二部 一章 3 (実質9章)[マスク](2010/09/06 20:07)
[31] とある竜のお話 第二部 二章 1 (実質10章)[マスク](2010/10/04 21:11)
[32] とある竜のお話 第二部 二章 2 (実質10章)[マスク](2010/10/14 23:58)
[33] とある竜のお話 第二部 二章 3 (実質10章)[マスク](2010/11/06 23:30)
[34] とある竜のお話 第二部 三章 1 (実質11章)[マスク](2010/12/09 23:20)
[35] とある竜のお話 第二部 三章 2 (実質11章)[マスク](2010/12/18 21:12)
[36] とある竜のお話 第二部 三章 3 (実質11章)[マスク](2011/01/07 00:05)
[37] とある竜のお話 第二部 四章 1 (実質12章)[マスク](2011/02/13 23:09)
[38] とある竜のお話 第二部 四章 2 (実質12章)[マスク](2011/04/24 00:06)
[39] とある竜のお話 第二部 四章 3 (実質12章)[マスク](2011/06/21 22:51)
[40] とある竜のお話 第二部 五章 1 (実質13章)[マスク](2011/10/30 23:42)
[41] とある竜のお話 第二部 五章 2 (実質13章)[マスク](2011/12/12 21:53)
[42] とある竜のお話 第二部 五章 3 (実質13章)[マスク](2012/03/08 23:08)
[43] とある竜のお話 第二部 五章 4 (実質13章)[マスク](2012/09/03 23:54)
[44] とある竜のお話 第二部 五章 5 (実質13章)[マスク](2012/04/05 23:55)
[45] とある竜のお話 第二部 六章 1(実質14章)[マスク](2012/07/07 19:27)
[46] とある竜のお話 第二部 六章 2(実質14章)[マスク](2012/09/03 23:53)
[47] とある竜のお話 第二部 六章 3 (実質14章)[マスク](2012/11/02 23:23)
[48] とある竜のお話 第二部 六章 4 (実質14章)[マスク](2013/03/02 00:49)
[49] とある竜のお話 第二部 幕間 【草原の少女】[マスク](2013/05/27 01:06)
[50] とある竜のお話 第二部 幕 【とある少年のお話】[マスク](2013/05/27 01:51)
[51] とある竜のお話 異界 【IF 異伝その1】[マスク](2013/08/11 23:12)
[55] とある竜のお話 異界【IF 異伝その2】[マスク](2013/08/13 03:58)
[56] とある竜のお話 前日譚 一章 1 (実質15章)[マスク](2013/11/02 23:24)
[57] とある竜のお話 前日譚 一章 2 (実質15章)[マスク](2013/11/02 23:23)
[58] とある竜のお話 前日譚 一章 3 (実質15章)[マスク](2013/12/23 20:38)
[59] とある竜のお話 前日譚 二章 1 (実質16章)[マスク](2014/02/05 22:16)
[60] とある竜のお話 前日譚 二章 2 (実質16章)[マスク](2014/05/14 00:56)
[61] とある竜のお話 前日譚 二章 3 (実質16章)[マスク](2014/05/14 00:59)
[62] とある竜のお話 前日譚 三章 1 (実質17章)[マスク](2014/08/29 00:24)
[63] とある竜のお話 前日譚 三章 2 (実質17章)[マスク](2014/08/29 00:23)
[64] とある竜のお話 前日譚 三章 3 (実質17章)[マスク](2015/01/06 21:41)
[65] とある竜のお話 前日譚 三章 4 (実質17章)[マスク](2015/01/06 21:40)
[66] とある竜のお話 前日譚 三章 5 (実質17章)[マスク](2015/08/19 19:33)
[67] とある竜のお話 前日譚 三章 6 (実質17章)[マスク](2015/08/21 01:16)
[68] とある竜のお話 前日譚 三章 7 (実質17章)[マスク](2015/12/10 00:58)
[69] とある竜のお話 【幕間】 悠久の黄砂[マスク](2017/02/02 00:24)
[70] エレブ963[マスク](2017/02/11 22:07)
[71] エレブ963 その2[マスク](2017/03/10 21:08)
[72] エレブ963 その3[マスク](2017/08/15 11:50)
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[6434] とある竜のお話 第七章 4
Name: マスク◆e89a293b ID:6de79945 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/27 10:41
彼らは目指していた。もっと大量の餌が取れる場所を。
北だ。もっと北に行けば、暖かい大地に、多くの『餌』が生息している。

彼らは知っていた。最も美味しく、取れやすく、弱い餌を。


一体一体で掛かれば負けてしまうかも知れないが、
多数の群れで挑めば抵抗らしい抵抗も出来ずに喰われてしまう弱い弱い存在を知っていた。


今までその群れるという事そのものを飛竜たちはあまり得意ではなかったのだ。


餌やメスの取り合い。冬を越すための巣の確保などなど協調性がお世辞にも高いとは言えない飛竜達はある程度の大きさの群れを作ってしまうと
そこから群れを大きくすることは無くなってしまうのである。何故ならそれは競争相手を増やすのと同義であるから。


しかし、彼の群れは違った。彼という絶対の支配者の下で一つになった群れだ。
群れの飛竜は彼には逆らわない。本能で勝てない事を理解しているから。


彼に従えば外敵を恐れる心配もなく、尚且つ餌を取るのにも不自由はしない。
少なくとも足りない頭でも飛竜達はソレだけを知っていた。


そして彼は群れの飛竜達の期待通り、理想的な餌の存在を教えてくれた。
千頭近くまで膨れ上がったこの巨大な群れの飛竜達の腹を満たせる数がおり、味もよく、力も弱い餌の存在を。




――その理想的な餌の名前は『人間』という。



















遠くから聞こえる飛竜達の咆哮が音の衝撃となって伝わり、大地を揺るがす。
置いてあった皿などはガタガタと震え、二本の倭刀も揺れる。
普段の双子ならばその揺れる刀や皿を見て、楽しむ余裕があるだろう。

しかし今の双子にはそんな余裕は欠片もなかった。


顔は青を超えて真っ白になってしまい、歯は噛み合わずガチガチと不快な音を鳴らし、
身を寄せ合い身体を小さく震わせている。


竜族の鋭敏な感覚をもって感じ取ってしまったのだ。
今、ここに向かってくる自分達に害を成す『敵』の存在を。
敵意でもなく悪意でもない。純粋すぎる獣の欲望が手に取るように分かってしまい怯えている。



「少し待っていろ。直ぐに戻るさ」


使い慣れた短弓を持ち矢を弦に番え、ハノンが足早にゲルの中から出て行く。
その様子をイドゥンとイデアはただ震えながら見ていることしか出来なかった。










ゲルの入り口を潜り、おぞましい咆哮が伝わってくる方向を見る。
眼を凝らす必要は無かった。直ぐにこの嫌な予感の原因が判明した。


ハノンの遊牧民として優れた視力は遠く離れた『敵』を認識する。


雲、茶色の雲が遥か遠くにあった。そこから狂音は聞こえてくる。
ただし風ではなく翼で宙を飛び、大量の肉を貪る凶暴な意思をもった雲だ。





「……」



ハノンが雲――数え切れない程の数を成した飛竜の群れを睨みつける。


ふつふつと自分の身体の奥底から嫌悪感と敵意が湧き上がって来るのが彼女には分かった。



どうやってこの状況を切り抜けるかに対しての答えを出すべく思考を巡らす。




逃げるか? 


無理だ。相手は翼を持ち、空を飛ぶ。馬で逃げても追いつかれるだろうし、そもそも荷物を纏めるための時間も無い。
それに一番近くの人が住んでいる箇所であるブルガル地方まで、馬を全力で走らせても数時間は掛かる。


隠れる? 何処に? 


このサカの大草原は隠れるための障害物などほとんど無い。
あの双子が隠れていた小さな林や、少し離れたところに川があるが望みは薄いだろう。


見逃してくれるのを期待する。 論外だ。


ハノンの直感は明らかにあの飛竜の群れがこちらを害そうとしていると言っていた。
彼女の狩人としての直感。今度は自分が狩られる側になるとは……。




戦う。 勝てる望みは薄い。いや、絶望的と言ってもいいだろう。


数が多すぎる。2~3頭程度ならば何とかなったかも知れないが、ぱっと見であの群れの数は
数百、下手をすれば千は居るだろう。正に数の暴力というやつだ。



状況は絶望的という言葉さえ生ぬるい程にまずい。遊戯版で言うところのチェック・メイト。
どうあっても生存は不可能だと万人は言うだろう。


「……父なる天と母なる大地よ、今この時ばかりは偉大なる貴方達に御恨み申しあげます……」



肩を落とし、もう一度雲を見る。そして彼女が信仰する天と大地に恨み言を言う。
死ぬのは嫌だが、この状況はどうあっても切り抜けるのは無理だ。


一旦眼を瞑り、心の中で精霊達に祈りを捧げる。
死を覚悟こそしないが、腹を据える。



時間にして数秒の祈りを終えて、瞳を開いたハノンの眼には少量の諦めの色と、決意があった。



彼女がやるべきだと心に誓ったこと。それはあの姉弟を逃がす事。
竜族とはいえ、まだまだ子供だ。


あんなに小さいのに命を散らせることなどない。



あの姉弟も空を飛ぶことが出来るだろう、それで逃げれば逃げ切れるかもしれない。
……否「しれない」ではなく確実に逃がすのだ。


その為に戦えるならば意味がある。
少なくとも草原の端で何も答えを見つけられないまま飛竜達に食われるよりはマシだ。


あの姉弟が自分を覚えていてくれれば、それでいい。
遠い未来にほんの僅かでもハノンという人物が居たことを思い出してくれる事を祈ろう。


サカの民は何よりも誇りを重んじるのだ。
誇りある死と、無意味な死のどちらかを選べといわれたら、迷わずに前者を選ぶ。



「同じ竜でも、こうも違うとはな……いや、それは真の竜族に失礼か」



改めてあの特徴的な眼をした姉弟を思う。
竜と名乗ってこそいたがその実、人と全く変わらない双子を。
矢を向けられ涙ぐみ、そしてまだゲルの中で怯えているのだろう。


そんな二人に指示を出すべく、彼女は急いでゲルの中に戻った。
















「飛竜の大群がこっちに向かってきている。お前達は急いで逃げろ」



飛び込むようにゲルの中に戻ってきたハノンの言葉にイデアはやっぱりなと思った。
あのけたたましい鳴き声は、かつてナーガと竜の姿になる練習の際に聞いた事があるからだ。


同時にあの時生で見た飛竜の姿を思い出す。


神竜などの真の竜族の姿に感じられる一種の完成された芸術性は一切無く、ただひたすら野生で生きることのみを追い詰めたような野蛮な姿。
聞いただけで寒気のする鳴き声。群れの仲間同士であろうと容赦なく食い合う凶暴性。


全てが自分達は違う生き物なのだと一目で理解できる。



そんなものの大群がこちらに向かっているとハノンは言ったのだ。



「ハノンさんは、どうする、の……?」


イデアの服の裾を掴みながらイドゥンが言う。彼女の震えは大分納まってきている。
今、この場で弟が頼れるのは自分、自分がしっかりしなければ、そんな強い考えが彼女の心を平常に保っていた。


「馬でかく乱してくる。少しは時間が稼げるだろうから、その間に飛んで逃げろ。飛ぶときは出来るだけ低空で飛ぶんだ」



「それって……」



「危なくなったらすぐに逃げるさ」



ごそごそとゲルの奥から皮の鎧を取り出してソレを着込み、恐らくはこのゲルの中で最も大きな矢筒にありったけの矢を詰め込むこみ
幾つかの傷薬を懐にしまうと、まるで散歩にでも行くような足取りでゲルから出て行く。


そんなハノンをイデアは何も言えずに見送った。
本当に何も、言葉を掛けられなかったのだ。


そも。あって少ししか経ってない自分が何を言えるというのか。彼女の事を何も知らないというのに。



「イデア」


姉の声が隣から聞こえ、イデアが顔だけをそちらに向ける。
イドゥンが言いずらそうな顔で真実を告げた。



「…精霊が教えてくれたんだけど……飛竜の数、凄いんだって……」


その言葉をイデアはどこか遠くで聞いているような感覚を覚えた。


……。


飛竜の群れ……想像もできない。
ただ、凄く恐ろしいものだという事だけは分かる。



「……どうしよ」


「イ、イデア?」


呆然と、感情の篭もらない声でそれだけを言うと立ち上がり、ゲルから出る。
姉がそれに続く。


南の方角を見た。
雲、全ての生き物を食いつぶす雲があった。何百の飛竜で構築された雲だ。



ここまであの耳障りな叫びは聞こえてくる。しかも複数の声がだ、


そんな悪夢そのものと言える光景を見て、イデアが踵を返そうとする。
そして見てしまった。そんな雲に馬一頭で向かっていく人物を。


雲が、飛竜の群れが、まるで一つの生き物の様に一斉に馬へ降下を始める。


「あっ!」



イデアが思わず声を上げてしまうが、馬の乗り手は予想していたのかソレを馬を操って草原を縦横無尽に駆け回りながら回避する。
そして馬から何度も小さな物体が飛んでいくと、ソレに当たった飛竜はもがきながら落ちていく。


落下する飛竜の怒りの声が聞こえてきた。イデアの心を掻き毟る声だ。
懐に手を突っ込み、そこにある竜石を意味もなく弄びながらイデアが考える。



あって一日も経たない。名前だってさっき知ったばかり。
何でそこまでしなきゃならないんだ、命が危ない。
逃げろって言ったんだ。見捨てたことにはならない。
逃げよう。

きっと姉さんだって賛成するさ。
逃げれるさ。竜化して飛べば飛竜ぐらいじゃ追いつけない。
ナーガはどうしたんだ。助けてよ。
怖い。怖い。怖い。あんなのと戦いたくない。



荒い息を吐きながらイデアが必死に考える。



「痛っ!」


が、その思考は突如竜石を弄くっていた手からの鋭い痛みによって切り刻まれる。
懐から抜き出した手にパックリと切り傷が出来ていた。まるで鋭利なもので切り裂かれたかの様な傷だ。



血がポタポタ滴るそれを見て、イデアが恐る恐る懐にもう一度手を差し入れ、恐らくはこの傷を作ったであろう物を探す。

すぐにそれは見つかった。竜石ではないソレを取り出し、見てみる。


「これって……私の鱗かな?」


イドゥンが取り出された物体をみて言う。


血が付着しながらも金色に眩しく輝くそれは鱗であった。
サカにくる途中、誤って剥ぎ取ってしまったイドゥンの鱗。


二人のこの人の姿が仮のものであり、本来は神竜であることを示す証拠。



鱗を黙って見ていたイデアが突如大きく溜め息を吐いて、そのまま何回か深呼吸をする。
身体をほぐす様に何度か背伸びをして、最後に自分の頬を思いっきり力任せにひっぱたく。


そして赤く腫らした頬のまま、どこか決まらない顔で。


「姉さん。俺はハノンさんを助けたいけど、姉さんはどうする?」


未だ震えの取れない身体でイデアは全く震えていない姉に言った。



















マズイ。
ハノンは矢を弓に番えつつも馬を操るという人馬一体の技術で軽やかに飛竜の攻撃をかわしながら思った。



矢の本数は大体残り半分、矢を撃つ手の指の皮は赤くなり、切れて血が出てきている。
傷薬の残りは後3つといったところ。しかし塗る暇が無い。


馬も疲れてきており、相手もソレをわかっているのかどうかは知らないが距離を取り
最初の様に襲ってこようとはしない。まるで疲れさせようとしているかのようだ。


矢を放っても撃ち落せるのは一頭のみ、しかし相手の群れの数は減っているどころか、さっきよりも増えている気さえした。
それに何よりも気になるのはあの全身に青い刺青を施された様な異常な大きさを持つ飛竜。



巨大な漆黒の体表に青く発光する刺青、赤い翼幕といいまるでサカの童話に出てくる魔物のような飛竜だ。
血のような眼球がこちらを高みから見下ろしている様は見ていていい気がしない。


恐らくはあれがこの群れの長なのだろうとハノンは見当をつけていた。
一定の距離から絶対に近寄ってこないし、こちらを襲うでもなくただただ状況を静観し続けている。


矢で何度も射ったが、不思議な事に全ての矢は見えない力で逸らされているかの様に、狙いとは全く違う見当はずれの方向に
飛んで行ってしまい、当てることが出来ない。


しかもあの刺青の飛竜が一声あげるたびに、飛竜達が動きを揃えて攻撃をしたり、間のとり方を変えたりしている。
まるでハノンの弱点や死角を探しているかのように動く様は不気味さを感じ取れる。



――ギギギキ、゙ギギ、ギギギ!



刺青の巨大な飛竜がまた声をあげた。喉を潰された鳥のような掠れた声であった。
距離を取り、全方位を囲むように飛んでいた飛竜達が一斉に間合いを縮め、その強靭な足、そして足に生えた爪で引き裂こうと襲い掛かる。



「!」


手綱を握らずとも馬が乗り手の意思を感じ取り、右に左にギャロップを繰り返し巧みに降下攻撃を避け、馬の上に半立ちになった
ハノンが連続で矢を数発射り、数頭の飛竜を撃ち落す。残りは後――数百。





飛竜達の波状攻撃をかわし、矢を弦に番えようとした瞬間、指の傷が広がった。
皮が裂け、血があふれ出す。


「つぅ!」


思わず痛みでハノンが眼を瞑ってしまった。



その光景を他の飛竜よりも遥かに優れた視力で見て
それの意味を理解した飛竜が、黒い魔物がうごいた。



天空の黒い飛竜の眼が細められ、人で言うところの笑みを湛えた。
人のそれとは構造からして違う口を大きく開き、赤い舌をチロチロさせる。


そのままハノンに向け凄まじい速度で降下を開始。


そして喉の奥から湧き上がってくる『力』を形にして射出。
吐き出されたのは巨大な炎の塊。規模こそ小さいが、竜族の吐き出すソレと同じもの。
普通の飛竜では出来ない攻撃方法。


中級魔術の【エルファイアー】に匹敵、もしくは上回る威力の業火が立て続けに3発、撃ち出された。


恐ろしい速度で撃ち出されたソレは馬の前方に命中、草原の大地を抉り、炎と衝撃を撒き散らす。


ハノンと馬がその衝撃で空を飛んだ。
馬から弾き飛ばされ何回か草原を転がり、そのまま動かない。


勝利に酔いしれ、自らの力を誇る戦士のごとく刺青の飛竜が天高く咆哮する。
そしてゆっくりと馬とハノンに向けて降りていく。この獲物は自分の物だといわんばかりに。


他の飛竜は撃ち落された、息のあるなしに関わらずに群れの仲間だった飛竜達に喰らいつき、その肉を味わう。



ゾクリ。



何かとてつもなく嫌なものを感じとった刺青の飛竜がハノンと馬を一飲みにしようとしていた口を閉め
牙のスキマから唸り声を漏らす。


『グゥゥゥウゥゥゥ』


赤黒い翼幕を広げて羽ばたき、高度を上昇させる。


――ギイィイイィイイイイィイィイィ!!!



飛竜達が耳障りな声をあげ、それに続く。
彼らも本能で何かを感じとったのだろう。





瞬間、光が爆発した。



爆風も衝撃も伴わない、純粋な光の放射。地上に直接太陽を置いたがごとき光。





これによってほぼ全ての飛竜は視力を一時的に奪われ、無茶苦茶に飛び回り、
仲間同士で衝突などを繰り返し同士討ちを引き起こした。





















「で、出来た、出来たよ! イデア!!」


ゲルの近くにある林、飛竜の雲がよく見え、尚且つ自分達の姿も隠せる場所に双子はいた。
そして光の爆発で混乱している群れを見ながらイドゥンが歓喜の声をあげる。



双子の傍には群れの只中に突っ込み、刺青の飛竜のブレスで吹き飛ばされた筈のハノンとその愛馬が横たわっている。


ハノンは全身が傷だらけで、逆に傷がない場所を探すほうが難しい状態であり
身につけていた皮の鎧は黒く焦げ、今も煙をあげていた。


意識はないようだが、弱弱しくエーギルを感じる事が出来るため、まだ生きている。
馬も足をやられたようだが意識はあるようで全身を震わせ荒い息を吐いていた。



「…………はぁ、良かったぁ……」


一人と一頭の生存を確認したイデアが溜め息を吐いた。

成功するかどうかは微妙だったけど、成功してよかった。



そう。あの光の爆発はイドゥンが起こしたのだ。
とある術を再現しようとしたら発生した計算外の出来事であったが、あの群れの混乱ぶりを見ると
嬉しい誤算といえよう。



イドゥンが使用した術は転移の術の真似ごと。サカの精霊のアドバイスの元実行された。
自分を遠く離れた場所に転移させる転移の術に近い術で、逆に遠く離れた場所にあるものを自分の近くに
転移させる術を『真似』たのだ。




絶大なエーギルを使った力技で“場”を捻じ曲げ、空間を超越させ、ハノンと馬が倒れていた
“場”と今自分達がいる“場”を無理やりつなげて、彼女達を引き寄せたのである。
あの光は“場”を無理やり捻じ曲げた力の一部が引き起こしたものだ。



本来の手順ではない強引極まりない力技であるため、エーギルの消費もとてつもない事になるのだが
純粋、純血の神竜であるイドゥンは全くといっていいほど疲れた様子を見せてはいなかった。


まだまだ成体には程遠いとはいえ、神竜であるイドゥンの力がたかだか“場”を捻じ曲げた程度で尽きるはずがない。



イドゥンが手に持っていた【ライヴ】の杖にありったけの魔力を注ぎ込んで回復の術を発動させる。
全身につけられていた傷が見る見る塞がっていく。


同じように馬にも術を掛けてやると折れていたらしい足も元通りになり、馬は静かな呼吸で眠りについた。



「さて……」



二人の無事を見届けたイデアが覚悟を決めた顔で竜石を取り出す。


彼の胸中にあるのは覚悟と自分の不幸に対する嘆き。


まさか始めての遠出でこんな眼に会うとは思わなかった。
普通に遊んで、普通に帰ることを想像していたのに、この仕打ちは酷い。


自分に幸運値というものがあるとしたら、確実に一桁台であろう。


正直な話、まだやりたくないと思っている。
しかし、やるしかない。


やらないで、後悔するよりは少なくとも何倍もマシだ。




「ハノンさん達のこと、頼むね」



今のところ回復の術を使えるのは彼女だけなので、ここを離れる訳にはいかない。



「うん、気をつけてね。危なくなったら直ぐに逃げてよね? 絶対だよ? 約束だよ?」


「分かってるって」



それだけを言うとイデアが背に四枚の翼を出現させ、群れともゲルとも違う方向に向けて飛び立つ。
見送ると同時にイドゥンがありったけのエーギルで繭を作り、その中に閉じこもった。








しばらく行った所でイデアが竜石の力を完全に解放。
姉であるイドゥンと全く同じ大きさ、同じ姿、同じ力、同じオーラを持った竜に戻る。



蒼と紅の瞳に確かな理性と知性、そして覚悟を浮かばせて大きくそのアギトを開く。
四本の足で地に身体をしっかりと狙いを外さない様に固定する。


標的は、飛竜の群れだ。今からそれに全力でブレスを叩き込む。
あの中に飛び込んで暴れる勇気はイデアにはない。



背の四つの翼が名だたる名剣の様に鋭く変形し、ジジジと雷を帯びて周囲の空気を激しく震わせ、震撼させる。
同時に喉の奥底から湧き上がってきた莫大な力を口内に収束、爆縮し破壊の力へと変換。




視力を何とか回復させた飛竜の群れが散開しつつも黄金の竜――イデアに向けて敵意を剥き出しに襲い掛かる。
精神を直接擦られる不愉快な声をあげ、突っ込んでくる無数の飛竜の群れをイデアは静かに見つめ、そして瞳を閉じた。












刹那。サカを黄金の光が満たした。













音も無く放たれた神竜の吐息は回避しきれなかった飛竜達を黄金の濁流に飲み込み
群れの半数を完全に蒸発させ、エレブから完全に消し去った。



巻き込まれた飛竜達は痛みを感じる瞬間もなかっただろう。一瞬で消し飛んだのだ。



イデアの口から放射状に広がり、範囲内の物体全てを消し去り飛んでいったブレスは最後に
天空の雲々を吹き飛ばすとそのまま彼方に飛んでいってしまった。後に残るのは雲ひとつ無い快晴な空。





イデアが、瞳を開けて成果を見る。



天を埋めるほど居た飛竜の群れがその数を大きく削られていた。
千に迫るほど居た群れが、今や半分ほどにまで減っている。



他の飛竜は死体も残ってはいない。




(これで逃げてくれればいいんだけど……)



かつてナーガが威嚇として【ライトニング】を撃って追い払った事を思い出す。
あの時のように逃げてくれればいいのだが……。




全力でブレスを吐いた事の弊害で喉に焼け付くような痛みを感じながらイデアが考える。




ふと、少しだけ、さっきよりも視界が暗くなった様な気がした。


(!?)


直感的に視線を真上に向ける。



火球。
イデアが認識できたのはそれだけだった。


神竜のエーギルが、【力】そのものがイデアの意識とは関係なく金色の結界を展開し火球を防ぐ壁を創造。




直後、火球が砕け、轟音と共に爆風を轟かせた。




――オオオオォオオオオオオ!!!!




突如の爆発と眩い光によって今度は自分が視力を一時的に失い、混乱に陥ったイデアが巨体を無茶苦茶に振り回す。

そんな暴風に向け、一つの大質量の影が直上から猛烈な速度で迫っていた。



全身に刺青を入れた巨大な飛竜――飛竜の枠組みからも外れた飛竜達の王だ。



赤黒い翼幕は破れ、頭部の角は数本が折れ、全身の鱗に皹を入れて至る所から血を流している彼であったが
その眼に浮かぶ生命力は欠片も薄れてはいなかった。



いや、むしろ先ほどよりもその禍々しさは増大している。
喉が破れ、そこから炎が吹き出ているにも関わらず平然と何度もブレスをイデアに向け乱射。


一回ごとに喉が裂け、血と炎が彼の身体から飛び散るが全く気にも留めない。



全身に刻まれた【デルフィの紋章】がさきほどよりも不気味に強く輝き、彼の全身を治癒する。
イデアのブレスに耐え切った彼は次は自分の番だと言わんばかりに何度も何度もブレスを金色の壁に撃ち込む。



既に高位魔術と同レベルと言える威力の火球を口から吐き出し続け、少しづつだが、確実にイデアの前の壁を削っていく。


二十発程度を撃ち込んだ辺りで金色の壁がガラス細工が砕けた音と共に砕け、イデアを守る物が無くなった。



全身の体重を掛けて、自分よりも巨大な体躯を持つイデアの“頭”に体当たり。
ズズン、と、重い音と共に混乱していたイデアが気を失い、その場に倒れ伏す。



彼の口が不気味に歪んだ。人が浮かべる笑みのごとく。




自らよりも巨大な『獲物』を喰おうと口を開いた瞬間。



彼の本能が、理性が、直感が、全てが濃厚な、どこまでも純粋な『死』を感じた。



『!!??』


いつの間にか、彼の眼の前に一人の男が立っていた。
白いローブにマント。白い長髪に紅と蒼の眼をした男だ。


それが無表情に彼を見ている。



否。



顔こそ人形のごとく何も表情を浮かべてはいないが、その色違いの眼には隠し切れない純粋な……。



彼は見た。錯覚や幻覚の類でもなく、確かに『見た』のだ。



男の後ろに、世界を背負うほどの巨大な金色の竜が座し、その力で自分を飲み込もうとしているのを。



『― ⊥ Б Ξ Χ Ψ Й ∽ П £ ―』



男が口を開き、人には意味を知ることはおろか、聞き取ることさえも不可能に近い言語で何かを唱える。
彼の巨体が軽々と不可視の力によって持ち上がり、上空で待機していた群れの中に放り込まれた。


『力』から抜け出そうともがくが、翼を動かすことさえ不可能。


同時に、世界がズレた。


飛竜達をすっぽりと覆うように、サカの一部が切り取られ、エレブから独立する。
世界を切り取り、新たに小さな閉鎖世界を創造した力の色は『金』



群れの全てがもう仲間意識など関係なく少しでも早く、遠く、男から逃げようと飛び散るが直ぐに元の場所に戻ってしまう。
まるで円の上を走り回っているように、閉ざされた空間を飛び交い、群れの飛竜同士で衝突し、自滅を繰り返す。



『― £ Й Ψ П ξ Χ σ £ ―』



謳うように、流れる様に男が古い竜族の言語で詠唱を続けそして――。



『― Ω Ψ Й ―』




極大魔術を発動させた。



彼の金色のエーギルが翡翠色に変わり、男に最上級の『風』の加護を与える。
今の彼は全ての『風』を支配できるだろう。



だが、これはこの術を使う事による副産物でしかない。









                              



                                   【フォルセティ】








発動されるは竜族の魔法。その中でも最も凶悪で強大な力を持った物の一つ。
竜族が編み出し、かつての始祖竜と神竜の戦争で行使された極大魔術。


山々を切り刻み、海を断ち切り、島を消し去った術の一つだ。
世界の根源たる『秩序』を破壊した戦争の際に使用された術が今、発動する。


男が飛竜達を閉じ込めたのは、この術でサカの大地を抉りたくなかったからだろう。
故に檻に飛竜を封じ込め、その中に放つ。





全ては一瞬で完全に終わっていた。




飛竜達が痛みを感じる事はなかった。
何故なら発動された術は隔離された世界ごと、その魔風によって全てを消し去ったからだ。




後には塵一つ残さず、ただ、平和な青空が広がるだけ。
ついさっき、この空を飛竜が埋め尽くしていたなんて嘘の様な爽やかな空。




そんな空を、鳥が一匹、自由に飛んでいた。





























イデアが眼を開け、一番最初に見たのは真っ赤な顔をした姉の顔であった。
泣いていたのだろうか、目元は真っ赤で鼻水も少しだけ出ている。



「姉さん?」


どうしたの? と続けて起き上がる。
痛みこそ感じないが、頭が少しだけぼぉっとした。



「イ、イ、イ、……イデアぁあ!! やっぱり私が行くべきだったよぉ!! ごめんなさい!!」


わーわーと人目も気にせずに大声で泣き出す。何度も何度も謝罪の言葉を述べる。
顔がぐしゃぐしゃになり、折角の美人が台無しだとイデアは思った。



辺りを見渡す。


見覚えのある調度品に布に骨組みを入れた天井。

壁に掛かった二本の倭刀……。



恐らくはここはゲルの中だろう。



「あぁ……生きてたんだ」



頷きながら何処か他人事の様にイデアがそう呟いた。あれだけ怖がっていたのに。
そんな彼に姉が全力で抱きつき、もう一度イデアの意識を一時的に闇に叩き落した。











「本当に世話になった この恩は感謝してもしきれない」



ゲルの前で傷が一つもなくなったハノンが頭を深々と下げて
眼の前のイドゥンとイデア、そして男―― ナーガに言った。



日はもう沈み掛かっており、太陽が地平線の彼方より半身だけを出して辺りを照らしている。



ナーガが双子より一歩さがる。



「……」


「……」



イドゥンとイデアがバツの悪そうな顔で視線をあちらこちらに飛ばす。


結果的に全員助かったにせよ、自分達はハノンの言葉を破ったのだ。
それは彼女の心遣いを踏みにじった事になるのではないか?


そんな考えが双子の中で暗い尾を引いていた。

しかし、そんな悩みはあっという間に息を潜めてしまう。



「ありがとう。父なる天と母なる大地に誓って、この恩は必ず返す。絶対にだ」


確かに彼女は死を半ば覚悟していたが、助かることを決して完全に諦めていた訳ではなかったのだ。


それに、もしも双子が今日ここに来て、
自分と出会わなければ自分は生きてはなくただの無駄死にで人生を終わらせていただろうと
ハノンは思っていた。



要は、終わりよければ全て良しの精神だ。



そうしてハノンは本当に綺麗な顔で笑った。そして最後にもう一度。




「ありがとう。イドゥン、イデア」



その顔を、イデアは忘れられないだろう。



























殿の自室に転移の術で戻って来た神竜の双子であったが
イドゥンは疲れていたのか早々とベッドに潜り込んで眠ってしまった。


無理もない。精神的にも肉体的にも、疲れて当然だ。


結局、ナーガは何も言わずに二人を寝室に置いていくと同時に何処かへ行ってしまった。
それが逆に怖い。怒られる事も覚悟していたイデアにとってはナーガの沈黙は何よりの恐怖であった。


一人残されたイデアが椅子に座って今日の出来事を振り返る。既に陽は完全に沈み、殿の外は暗闇だ。
眼の前で暖炉の火がパチパチと燃えているのを眺めながら今日の出来事を整理する。




サカ草原にハノンさんにあの飛竜の群れ……。


一つ一つを鮮明に思い出す。
ぶるっと身震いをした。かなり危険な状況だった事を思い出し、今更ながらに恐怖を感じる。




「はぁ……」



溜め息を吐き、立ち上がって自分もベッドに潜り込もうとした時、ドアがノックされた。



「あぁ……そういえば」


今夜の夕飯はまだだったと思い出す。同時に腹が空いている事も。


「どうぞ」


手短にそれだけを告げると、扉が開いて思った通りナーガが入ってくる。
彼の傍には皿やバスケットが浮いており、いい匂いが漂ってくる。



「食事だ。取るか?」


ナーガの言葉にイデアは首を縦に振った。


イドゥンは起こしても起きなかったため、イデア一人で食事を取ることになった。












「ねえ、ナーガ・・・・・・」


食事を食べ終わり、ナーガが皿や盆を持っていこうとする際にイデアが彼に話しかける。
ナーガが動きを止め、イデアをその眼で見やる。



「何だ?」


いつも通りの声が今はイデアを何故か安心させると同時に恐怖させる。



「俺、逃げようとしたした……」


「……」


ポツリポツリと降出した雨のごとくイデアが語る。
その声は今にも消えてしまいそうな程に弱い。



「怖くて、逃げようとしたんだよ……ナーガは、怒らない?」


イデアの父が手を伸ばす。
一瞬だけイデアが眼を瞑り、固まるが――。



「……?」


叩かれることもなく、その手がイデアの頭の上に乗り、優しく撫でる。
サラサラと髪の毛を摩り、とても気持ちいい。



――大きい手だ……。



そんな事を考えてしまう程に心地よい時間。



「遅れてすまない。本来ならば直ぐにでも駆けつけるべきだった」



ナーガが遅れた理由にヴァロールの【門】から以前葬った者よりも強力な魔物が現れ、それに対処するために遅れたというものがあるが
双子はそれを知る由もないし、ナーガもそれを言い訳にするつもりはなかった。



ただ、自分の子供の危機に遅れた事を謝罪する。それだけだ。



恐怖を思い出したイデアが堪えきれずに怖かったとナーガに泣きながら抱きついても彼はイデアを撫で続けていた。
そのまま息子が眠るまでナーガはイデアを撫でていた。














あとがき


随分と長くなってしまいましたが、これで7章は終わりです。


しかし勢いがないと自分でも思う今日この頃。
どうやれば勢いのある文を書けるのだろうか……。


しかもハノンとの絡みもかなり強引だと反省しています。




後はおまけとしてフォルセティの解説を。



フォルセティはFE聖戦の系譜 及び トラキア776にて登場した超魔法です。


威力30と言う狂った数値に


技+10

速さ+20


トラキア776では威力が20に下がってこそいますが、
代わりに技+20 速さ+20と、補正数値が上がっています。

しかもこれに必殺値が30も加算されます。


ちなみにトラキアだとキャラの能力値は20までしか上がりません。


……今のFEシリーズから見ても化け物性能ですね。
これ以上にとんでもない魔法もあるのですが、十分にバランスブレイカーです。



長々と1年以上も続いた第一部もそろそろお終いですが、これからも長く付き合ってくださると嬉しいです。


では、次の更新にてお会いしましょう。


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