00/~11072・レディオノイズ~
その時何があったのかは分からない。
ただ、とても寂しくなった。いつもみんなでおしゃべりをしていた。
『感情』の発達を見せた一部の固体が、『上条当麻』にどうやら恋をしたらしく、いつもいつもその話題で持ちきりだった。
れでぃおのいずちゃんねる
新・ミサカは上条当麻をどう思うのか
1 :ナナーシ10032号さん:20**/8/21(*)
あの人はどう考えても馬鹿としか思えません
とミサカ10032号は思うのです。
2 :ナナーシ10048号さん:20**/8/21(*)
>>1乙。そんな>>1には上条さんくんかくんかする権利を与える
とミサカ10048号は軽い嫉妬を覚えながら呟きます。
3 :ナナーシ10112号さん:20**/8/21(*)
みんなミサカなのにキャラ付けのためにミサカミサカと安易に発言するのはどうだろうか
とミサカは苦言を呈します。
4 :ナナーシ11072号さん:20**/8/21(*)
>>3はスルー推奨。下手にかまうと前スレの二の舞
とミサカは以前あった災厄に震えながらスルーを推奨します。
5 :ナナーシ12476号さん:20**/8/21(*)
ちょww >>4ww いいオナニーwwwwww
6 :ナナーシ14998号さん:20**/8/21(*)
なんと言う個性ww
7 :ナナーシ10061号さん:20**/8/21(*)
ナンバリングで馬鹿にされている>>4はあの上条当麻並みの不幸をしょっていると思うのだが、どうか?
とミサカ10061号は哀れみをこめて書き込みます。
8 :ナナーシ18503号さん:20**/8/21(*)
まぁ、正直なところ上条当麻のことは語りつくした感がある。たしかに>>1乙だが、これいじょう彼の何を語ると言うのか
とミサカはミサカはミサカはミサミサミサ
9 :ナナーシ10132号さん:20**/8/21(*)
どうしたw
10 :ラストオーダー:20**/8/21(*)
やほやほー! なに語ってるわけー、ってミサカはミサカはー?
11 :ナナーシ10032号さん:20**/8/21(*)
でたぁぁああああああああああ!!
12 :ナナーシ11112号さん:20**/8/21(*)
おいおいおいおい
13 :ナナーシ17302号さん:20**/8/21(*)
いいのこれ? これいいの?
14 :ラストオーダー:20**/8/21(*)
上条当麻はもういいからさ、一方通行について語ろうぜ。
15 :ナナーシ15849号さん:20**/8/21(*)
なん……だと……?
16 :ナナーシ19923号さん:20**/8/21(*)
>>14の空気の読めなさに絶望した
スレ違いも甚だしい
17 :ナナーシ11072号さん:20**/8/21(*)
……正直語りたいと思った私は異端だろうか?
18 :ナナーシ10057号さん:20**/8/21(*)
これだから個性持ちはッ! 戦争はいつもインテリが始めry
19 :ナナーシ10032号さん:20**/8/21(*)
いいと思う。スレ立てといて何だが、上条当麻については>>8が言ったように語りつくされてる感が強い。
20 :ナナーシ11072号さん:20**/8/21(*)
一方通行の事、気になっていました
と、ミサカは恥ずかしげもなく語ります。
21 :ナナーシ10111号さん:20**/8/21(*)
わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
…。
…。
…。
992 :ナナーシ11072号さん:20**/8/21(*)
ですから私は一方通行に濃いなど!
993 :ナナーシ11111号さん:20**/8/21(*)
そんなに照れるな。その誤変換が全てを物語っている。いや、その個性は正直羨ましいぜ
とミサカは自分のナンバリングがぞろ目である事を密かにさらします。
994 :ナナーシ10112号さん:20**/8/21(*)
いまさらミサカミサカいってるミサカが居る事にワロた
995 :ナナーシ15422号さん:20**/8/21(*)
>>994粘着消えろ
996 :ナナーシ11072号さん:20**/8/21(*)
ちょ、変な鏡が目の前にあるんだがなにこれwww
くるくる、こっちきてr
997 :ナナーシ11399号さん:20**/8/21(*)
妙な事言って逃げるきかwww
998 :ナナーシ10995号さん:20**/8/21(*)
1000なら11072が一方通行でいいオナニー
999 :ナナーシ14778号さん:20**/8/21(*)
1000なら一方通行が11072でいいオナニー
1000 :ラストオーダー:20**/8/21(*)
1000なら一方通行と11072がらっぶらぶ!
そして目を開けると、目の前には金髪の女が立っていた。
さすがにミサカ一一〇七二号は混乱した。今の今まで他のミサカと会話をしていたのに、妙な鏡に食われて、目の前には金髪の女が居るのだ。
目を見開いて、自分が全裸であることを確認、女の耳が妙に長いことも確認、その隣に目つきの鋭い女性が居ることも確認、確認、確認。
洗脳装置(テスタメント)を用いて、言語・運動・倫理の強制入力をされたミサカの脳は、この現状をどう捉えるか。
状況把握。
結論。
戦闘開始/コンバット・オープン。
あまりに簡単な答えだった。
わけの分からない状況で、目の前には人間だか何だか分からない耳長族。そして自分は全裸。全裸。全裸である。
バヂッ!
ミサカの額から威嚇するように電撃が奔った。
それは自分に手を伸ばしてきた耳長に走り、
「きゃ!」
その程度で終わった。いくらミサカが欠陥電気でも、人一人を昏倒させる程度の力はある。
ただ、それが出来なかったのはミサカの能力に問題があるわけではなく、体調である。
ぐらり、と視界が揺れるように傾いた。
全裸なのだ、ミサカは。今の今まで、生体的な不足を補う治療を施されていたのだ。培養液につかり、その中で夢見心地でネットワーク通信していて、突然それは強制終了。体がびっくりしてしまうのは当たり前である。治療も完全には終わっていない。手術中にいきなり外に放りだされれば、誰だって死んでしまう。
ぐらぐらと揺れて、相変わらず無表情で、ミサカは意識を失った。
◇◆◇
次に目を覚ましたとき、またもや目の前に居る長耳。
「……あ、あの、おはよう」
寝ているあいだに何かされたのだろうかと身体をチェック。
「……?」
妙なことに、体調は悪くない。いや、悪くないどころか、良い。かなり良い。
おかしい。ミサカは強制的に、たったの十四日間で十四歳まで成長する。その不備がどこにも出ないわけがない。なんと言ってもミサカには一四四時間弱の稼働時間しか与えられていないのだ。
それを治すための治療で、それはいきなり終わりを告げている。体調がいい事が、おかしいのだ。
「ミサカの身体に何かしましたか?」
「あの、きゅ、急に倒れて、凄い熱が出て、死んじゃうかと思って……」
「身体に、何かしましたか?」
「あ、はい。あの、治療を……」
しかし、どこにも治療痕などは無い。見渡してもミサカの不調を治すような機材も無い。
今更死ぬことを恐れるような事はないが……、いや、今だからこそ死ぬのをおそれるようなことはない。死はミサカにとって当たり前のことなので、それは何も恐れるような事ではない。ミサカにとって、死とは今から怖くなるものなのだ。
死ぬのは怖くない。だが、おいそれと受け入れられるようなもので無いことも事実。
ミサカはらしくもなく、少しだけ焦ったような意思を見せた。
布団をぎゅっと握り、
「どういった治療を?」
「指輪を……その……」
「聞こえません。はっきりと言って下さい、とミサカは再度治療内容の説明を要求します」
「は、はい! その、指輪で、お母様からもらった指輪で治しました!」
「意味が分かりません」
「あう……」
がっくりと肩を落す長耳を見て、本当に大丈夫なのだろうかと不安が広がった。
不安?
そう、ミサカは、不安を感じたのだ。
これは非常によいことである。ミサカはまだ〇歳で、感情の発露をあまり覚えていない。これからそういったことを学習していくのである。これはぜひともネットワーク上に広めてやる必要がある。またしても新しい個性を手に入れたぞ、と。
「……?」
再度、ネットワークを───、
「───!」
繋がらない。ありえない。
地球上に居るなら、そこが完全に電波を通さない場所で無いなら、どうやってもミサカネットワークをさえぎるような事は出来ない。
ミサカはがばりと身体を起こし、窓から身を乗り出し、そして目を疑った。
森が広がっている。見渡す限りに、森が広がっているのだ。
今更ながらに混乱が押し寄せてきて、ミサカの不安は大きくなった。顔は変わらず無表情だが、額に一筋汗が流れた。
「どういうことでしょうか、とミサカは説明を要求します」
「あ、あのね、そのね……」
「どういうことかと聞いています」
ミサカはベッドから降りて、額にバチバチと紫電を奔らせながら長耳に近づき、
「ほら、そんなにいきり立つんじゃないよ。きちんと説明してやるからさ」
部屋の入り口に、目つきの鋭い女性が立っていた。
笑ってしまいそう。異世界? いやいや、……いやいやいやいや。
ミサカは呆然とした面持ちで、ベッドに浅く腰掛けた。
今の話が本当だとするならば当然、ネットワークは繋がらない。
ミサカは現実主義者である。超がつくほどの、現実主義者なのだ。上条当麻が何とかしてくれるまで、希望なんか見たことすらなかった。そもそも希望という単語に意味があるのかどうかすら疑問だった。
ただ現実を見て、それを受け入れて、そして死にに行く。
ミサカはそれだけの存在だったし、だから、だからこそいま目の前にあるミラクル・ファンタジーを現実として受け入れてしまう事に、抵抗を感じるのだ。
「……ハルケギニア、ですか」
「う、うん。それでここはね、アルビオンっていう所なの。私も外の世界の事はあまり知らないんだけど……」
「なんだアンタ、ホントに異世界から来たって言うのかい?」
「はい。私が以前居たところは日本、学園都市。これを聞いて分からないのなら、ここが言葉に出来ないほどのド田舎か、あなた方の頭がおかしいかしかありません、とミサカはサラリと侮蔑の言葉を並べます」
「残念。私はニッポン? もガクエントシ? も両方とも知らないね。そんでもって、頭もおかしくないときた。こうなっちゃ、アンタが嘘ついてるか、本当に異世界から来たか、そう思ってるんだがねぇ」
「……異世界……」
ミサカはぽつりと呟き、
「ご、ごめんね。ちゃんと帰る方法、さがすから」
「……」
「本当に、ごめんなさい……」
「耳……長い」
「あう……」
ミサカはようやくになって現実を受け入れる準備をして、目に付いた耳に手を伸ばした。
うにうにと引っ張ったり、撫でたり、揉んでみたり。あうあう、あうあう、と耳長がいちいち反応するものだから、それが何となくおかしくって、十分はそうして遊んでいた。
そしてミサカは耳から手を離し、立ち上がり、そして一礼。
ありがとうございます、とミサカは慇懃無礼に御礼をしました。
「ミサカの身体は、恐らく死に掛けていたはずです。助けてもらったことに、御礼をします。ありがとうございました」
「いいの、私が勝手に呼んじゃって……。あなたを家族と離れ離れにしちゃったわ」
「いいえ、ミサカに家族はありません」
「……え?」
「ミサカは固体番号一一〇七二の、ミサカ一一〇七二号です。ミサカには家族は居ません。ただ、同一人物と呼べる存在が九九六八人居ます」
「えと、えと……?」
「クローンという言葉をご存知ですか、とミサカは文化レベルの違いに若干困惑しながら問いかけます」
「……ごめんなさい」
「では簡単に。ミサカが居た世界には、ミサカがあと一万人ほど居る。それだけの話です」
ひう。
長耳は引きつったような声を上げて気絶した。
◇◆◇
この世界に召喚されて、早くも一ヶ月が過ぎた。
使い魔のルーンとやらは刻まれる事はなく、月が二つあることにもなれてきて、自分が住んでいるこの国が空に浮いている事にも疑問を感じることはなくなった。
生活は質素で不便が多いが、それすらもミサカにとっては輝かしいもの。いろんな経験値を取得するチャンス。
ミサカは働いた。薪を暖炉にくべるのも面白いし、森に山菜を取りに行くのもわくわくしている。
召喚主のティファニアは優しいし、ここでの生活は、悪くない。全然悪くない。
これは、ミサカの『感情』が発達していなかったからこそ受け入れられた現実かもしれない。
単純に、帰れないならばここで生活するしかないと答えを出せたことが幸いした。
ミサカはティファニアに頼まれ、森の中に木の実をとりにいくところであった。
そして、
「お? こんなところに女が居るぜ」
「ほぉ、変わった顔立ちしてるが……上玉だ」
いやらしい笑みを零しながら、
「それ以上近づくと攻撃します」
ミサカは抑揚のない声で言った。
「はは、聞いたかよ、攻撃だと」
けたけたと笑う男達を無視し、もう一度。
「それ以上近づくと攻撃します」
男達は笑うのをやめなかった。
男達の狙いは分からない。ただ、単純にナンパでもしようと思っている、はずはなかった。それぞれに武装をしているのだ。
何か噂でも聞きつけてここに来たか。単純に女を見つけて近づいてくるのか。
ミサカは、超電磁砲量産計画『妹達』は、軍事利用のための兵器である。
ハードは確かに女子中学生のそれだが、ソフトは、思考はそうではない。なにせ一方通行との戦闘を前提に生産されたのだ。
その頭の中は戦闘用の事柄でいっぱい。兵隊さん学ぶべきマニュアルが、完全に強制入力されているのだ。
男が一歩、足を踏み出してきた。
ミサカは何の容赦もせず電撃を放った。雷の槍は男の心臓を通り過ぎて、背後まで伸び、近くの木に突き刺さるようにしてその姿を消す。
男は死んだ。
二人めも同様に。
そして三人目、助けてくれと懇願する男を、ミサカは何の躊躇もなく殺した。
心が痛んだ。
これは成長の証だ。喜ばしい事である。
例えクローンでも、命がある。
上条当麻が言った事であった。それを簡単に殺してしまうとは何事だと、あの最強である一方通行に挑んだのだ。
きっと彼に見られたら、ミサカは目いっぱい殴られてしまうのだろうと思った。思ったけれど、この世界に彼は居ない。会いたい、ともあまり思わない。ミサカ一〇〇三二号だったらそう思うのだろうけど、ミサカ一一〇七二号は上条当麻に会いたいとは思わなかった。
だってこの行動は、どちらかといえば彼だ。あの人だ。
なんだか最近は、あの人のことを考えてばかり。あの人なら、一方通行ならどうしただろうと思うことばかり。
文化レベルの低いここでの生活。上条当麻の真似をして、一度はこういう賊を助けた。二度とこのような行いはしてはいけませんよと、と聖母のように微笑んで(無表情)帰したのだ。
次の日、前日の意趣返しのつもりか、仲間を連れてやってきた。
ティファニアの魔法も大人数には分が悪い。
ミサカは学習した。理想だけでは、希望だけでは、誰も救えないようである。
その日初めてミサカは人の命を奪うことが出来た。相手は一方通行ではなく、普通の人間だが、ようやく強制入力された知識を生かすことが出来た。
それ以来ミサカは、この森に害意を持って入った人間を帰していない。
「ミサカ」
考え込むように俯けていた顔を上げて、声が聞こえたほうを振り向くと、そこにマチルダが居た。
どうにも困ったような、そんな表情。
「あんたがやったのかい?」
「はい、とミサカは可愛らしく頷きます」
「……たいしたもんだ」
「……」
マチルダは杖をふり、男達を埋葬していく。
「逃がしてないだろうね?」
「ええ」
「上出来だよ、ったく。あ~あ、こりゃまぁ、なんて言えばいいのかね……」
「いつ帰ってきたのですか、とミサカは疑問を投げかけます」
「今だよ。すぐに出るけどね」
「そうですか、とミサカは少しだけ落胆します……」
「ん、可愛い奴だよ」
わっしゃわっしゃと頭を撫でつけられて、そして───、
「あんたのご友人がトリステインに召喚されたみたいだよ」
衝撃である。
◇◆◇
遠目で見た一方通行。相変わらず不遜な態度をとっていた。
目が、合った。
ドキリと心臓が跳ねた。
「え、あ、うそっ」
この世界に、ミサカを知っている人間が居るという安心感。
ミサカに関わりが深い人物、一方通行。
おい! と背中にかけられる声。
その全てがミサカを震わせた。
殺されたのに。確かにミサカ達は、一方通行に殺されたのに。
なんだか分からないけれど、この世界に来るまでみんなで話していた事が頭に浮かんだのだ。
一方通行ってさ、止めたかったのかな、この実験。
いやぁ、思えばペラペラペラペラよく喋ってたね。
わざわざ逃げないのか? なんて聞いてきたときもあったし。
あったあったw
ミサカの指、美味しかったかな?
豚肉には勝つ自信があります。
それないわwww
背中にかけられる声。必死に、必死に呼び止める声。
(うわぁ、うわぁ、とミサカはなんだか混乱しているようでミサミサミサ!)
会ってはいけない、とマチルダに言われていたからではなく、ミサカはなんだか恥ずかしくなってその場から逃げ出したのだ。
◇◆◇
そしてアルビオンでの政権戦争が終わった。
村に、久しぶりにマチルダが帰ってきたのだ。金銀財宝を山のように持って帰ってきた彼女は、これをカネにするのが面倒だと呟いた。
三人は久しぶりの再会を静かに祝い、ティファニアが眠って、そしてミサカにこの話を持ってきたのだ。
「ま、あんたじゃなくってもいいんだ、これは」
「はい」
抑揚のない声でミサカは言った。
一緒に来るか、とのことであった。
アルビオンでの戦争がおわった今、以前のようにごろつきが出ることも少なくなるだろうし、何よりここにはティファニアの『忘却』がある。
召喚主のことは、あまり心配が無さそう。
「そこそこに腕は立つし、平民に見えるし、何より杖を使わないあの攻撃、メイジにとっちゃ脅威だよ」
「ですがミサカは空も飛べませんし、電気を操る以外の事となるとお姉様にも遠く及びません、とミサカは冷静に自己分析をします」
「お姉様ってのがどれほどの奴かは知らないが、あんただって十分使えるさ」
「……マチルダ姉さんは、ミサカに来て欲しいですか?」
マチルダはゆっくりと首を振った。
そして、違うよ、と微笑みながら言う。
「いいかい、ミサカ。誰に何を言われたって、自分の事は自分で決めるんだ。私はあんたがアクセラレータに会いに行きたいって言ったときだって」
「一方通行です」
「……そう、その一方通行に会いに行きたいって言ったときだって、止めはしたけどさ、会いにいったって、怒らなかったよ」
「……」
ミサカは『自分で決める』という事になれていない。
実際に戦ったわけではないが、一方通行との戦闘ではもちろん命令の通りだったし、ここに召喚されて、ティファニアが一緒に住もうといったからここに居て。
自分の意見を通したのは、一方通行を一目みたいと言ったときだけ。
まだ生まれて間もない身体。意思。幼い心。なにか先を示す『親』の存在を望むのは当たり前だった。
「ミサカ、あんたはどうしたい? 一緒に来る? それともここに残る? 旅に出たっていいよ。一方通行に会いにいってもいい。私は反対するけどね」
「ミサカは……」
「自分で決めるんだ。私ばっかりを悪役にすんじゃないよ」
一度だけ俯いて、『自分の考え』をまとめて。
ここにはミサカネットワークはない。完全孤立のミサカ一一〇七二号しか居ないのだ。
けれど、それこそが個性を得る最大のチャンス。ネットワークに依存するミサカではなく、ただのミサカとして。
「ミサカは、マチルダ姉さんについていきます。ティファニアには一緒に怒られましょう、とミサカはこっそり道連れを希望します」
「はは、いいよ。こき使うからね、覚悟おし」
「イエス・マム、とミサカは───」
「はいはい。ほら、寝るよ」