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[6296] クソゲーオンライン24
Name: あ◆2cc3b8c7 ID:80292f2b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/08/16 18:43
混沌の世界、『レンネンカンプ』を生み出せし者
大魔王レンネンカンプの居城レンネンカンプ城の前に集った帝国の勇者達

終わりの戦いがいま始まろうとしていた




■神々の黄昏■


サビーネから簡単な方針を聞いた後
それぞれの部隊は装備の確認や消耗品の最終確認を手際よく終えていく

ダンジョン突入後、準備不足のせいで窮地に至るようなマヌケは
当然、この中には居ない。レベル1000超えは伊達ではない


もっとも、遂に訪れた魔王城攻略というシチュエーションに
少々、妙なハイテンションで訳の分からない事を口走る者も極一部存在したが



■■



『遂にここまで来ましたね、ジーク』
『はい、アンネローゼ様!』


「そうだ。これから終わりの為の戦いが始まる。この混沌の世界を生み出し
 邪神を打ち倒す戦いが!作戦名をつけるならば、神々の黄昏が相応しかろう」
『はい、ラインハルト様!』



どうみても末期患者にしか見えない部隊長に、のほほんとした女性と
先程から『はい、○○様!』以外の言葉を発しない赤毛の男を見ながら


キスリング准将はこの攻略戦に参加したことを本気で後悔し始めていた
せめて、ミュラーが入っているパーティーに入れたらと



一方、そんな悲惨な部隊などお構い無しに今回の攻略作戦の発起人であるサビーネは
準備を手早く済ませると、第一部隊の責務としてダンジョンへの最初の一歩を踏み出す
レンネンカンプ城を攻略し、狂った大魔王レンネンカンプを倒す為に



「それじゃ、みんな張り切って行こうー!」

『はい、お嬢様』『うん、サーちゃん頑張ろうね♪』
『先ずはやってみなくちゃ☆』



元気一杯の掛け声と共に、幾多の困難をヘイン達とは別の場所で乗越えてきた四姉妹は
眼前の奥深い迷宮に恐れる事も無く、ほどよい緊張感を持ちながら
目的地を目指して足を踏み入れていく



■■



『さて、他の三部隊は全て突入しましたわね。私達もそろそろ参りましょうか』

『そうですね。先ずはクナップシュタインにグリルパルツァーを捜索
発見後可能であれば撃破、無理なら後退という形でどうでしょうか?』

「まぁ、それで良いんじゃないか?なにも一回の探索でどうこうしなきゃ
 いけない訳じゃ無さそうだからな。最低限、情報収集ができれば良しにしよう」


『私もそれで異論はない。では、大魔王の居城とやらは拝見しようか』



食詰めの言葉を最後に、ヘイン達は他の三部隊に続いて
大魔王レンネンカンプの住まう城へと足を踏み入れることになるのだが
その直後に、彼等は予想外の事態に見舞われることになる


そう、この世界の王であり、神として君臨する大魔王レンネンカンプが
彼等に有難くない最悪のプレンゼントを強制的に贈りつけたのだ



 
~ 帝国に属する勇敢な英雄諸君!君達の来訪、この大魔王レンネンカンプ     ~
 心より歓迎するとしよう!!無論、この想いは言葉では無く行動で示そうと思う 
 先ずは、お互いのどちらかが終わりを迎えるまで盛大に楽しむ為、城門を閉鎖
 させて貰う。なに左程心配する必要は無い。君達が私を倒すか全滅すれば
 閉ざされた門は開け放たれる事になる。私を倒せばゲームクリア、君達が死ねば
 再び、新たな勇者達がこの私に挑戦する事も可能だ。大体ご理解いただけたかな?
 

   それでは、勇者諸君!!せいぜいこの大魔王を楽しませてくれたまえ!!



立体フォログラムとして勇者達の前に現われた髭面の大魔王は
彼等は自分の巣穴に閉じ込め、後戻りできない更に厳しいデスゲームを強いる

もっとも、この事態も最悪予想していた先行部隊の動揺は
極一部の人間を除けばそれほど大きくはなかったが

非常にマズイ事態になったことには変わりなく、先行突入組みはこの先生き残る為に
早急に新たな攻略プランを作成する必要に迫られていた




『これは・・・、余りよろしくない事態になったようですね』

『致しかたなかろう。お構い無しにルールを後付で変える恥知らずだ
 自分に不利と見れば、恥も外聞も無く好き放題な振る舞い平気でするさ』

『ほんと、人として最低ですわ!!あんな男を前に退く必要なんかありません!
 このまま最後まで前進して生まれてきた事を後悔させて差し上げるべきです!』

「まぁ、ここでブー垂れてても仕方ないし、一先ずは他の部隊と合流しようぜ
 帰還不可ダンジョンだった場合は、突入部隊は一旦集結して攻略するって
 たしか、サビーネが最初に言ってたよな。とりあえず、その指示通り動こう」




支援部隊との連絡が大魔王の理不尽な宣言後に途絶えた事を確認してヘイン一行は
今後の懸念や、文句を一通り言い終えて多少の落ち着きを取り戻すと
他の部隊と合流するため長く薄暗い石畳の廊下をゆっくりと進んでいく


既にこの時点で何体かのモンスターと遭遇した彼等だったが
ほとんど無傷で撃破しており、総悲観に陥るほど悪い状況とは考えていなかった
レンネンカンプによる先程の宣言もRPGではありがちで
ある意味常識的なものだったため、多くは逆にほっとしたぐらいである

この彼等の反応が、これまでのレンネンカンプのクソ振りが
如何に酷かったかを如実に現していると言えよう

クソゲーの中のクソゲーである『レンネンカンプ』では
少しばかり、プレイヤーに不利なRPGのお約束など些少な事に過ぎないのだから


もっとも、何事にも例外はあるもので、ステータスに『小心者』と記されたある人物は
この『ありがちな制約』に平静を装いつつ、内心は盛大に動揺することになったていたが



■■



まぁ、リーダーは狼狽しない!って感じで一時凌ぎの指示を出したもの
正直、やばいんだよな。中のモンスターが高レベルだけど狩れないほどじゃなかったし
順調に全員のレベルが2000超えたってのも非常に喜ばしいことなんだけど
レンネンのクソ野郎とは50万以上の差があるってのは変わってないし

このまま、大魔王や二人の中ボスにアタックをかける事も出来ずに
ずっと湿気たっぷりでかび臭い城をグルグル彷徨うなんてことになったら正直堪らんぞ?

やっぱ、もう少し外でレベル上げてから攻略するべきだったか・・・
いや、いつまでも時間掛けれるとは限らないから
この時点での攻略決断も止むなしとも言えるし、間違いとも言えない




『先程からずっと、うんうんと唸っていますけど大丈夫でしょうか?』

『仕方あるまい。リーダーとは常に一人孤独で不安と戦う者だからな
 なに、心配する必要は無いさ。ああやって考えている内は余裕がある証拠だ』
 
『青年よ大いに迷い、そして前に進めという訳ですか?それも良いと思いますが
 私はそれを座して見過ごせる程、老成しているとはお世辞にも言えませんから
 老婆心を働かせてお節介を焼かせて貰いますよ。御二方はどうなさいますか?』


『勿論、可能な限りへインさんのお手伝いをさせて頂きますわ!!
 私達は志を同じにする仲間です!お互いが助け合うのは当然です』

『無論、私も助力を惜しむ気はない。心配はしないが手はしっかり出させて貰うさ
 ヘインのパートナーとして横に立つと決めたからには、それ位はして当然だからな』




なんか、後ろでヒソヒソと三人が話し合ってるみたいだけど
やっぱり、俺の判断が拙かったのか?いや、俺が一人で考え込んでたせいで
『大丈夫か、コイツ?』って状態になっているのかもしれん

ここは、ちょっと場を盛り上げる為に、ちょっと陽気な感じを出して
リーダーとしての貫禄を見せておいたほうが良いか?
いや、だめだ!貫禄なんてものは俺と対極の位置に存在するもんじゃないか



というか、後ろの三人はなんであんなに余裕そうな顔してるんだよ!
あれか、もしかして突入組みで帰還不可になって動揺してるのってもしかして俺だけ?

いや、あいつ等も人間だきっと内心は不安に思ってるんだけど
きっと、俺に変な負目を持たせたくないと気を使って平気な風を装ってるのかもしれん
なんだかんだ一癖ある奴等だけど、三人とも良い奴だからな


って、あれか?俺はそんな良い奴等をとんでもない事に巻き込んで
尚且つ、文句を言われるどころか?生暖かい目で逆に気を使われちゃってるのか?
畜生!なんだか本当に畜生!ホント申し訳ない!生まれてきたらこんなだったんです!!





『ヘイン、盛大に混乱しているところに申し訳ないが、考える時間は終わりのようだ』

『はっきりとは見えませんが、前方に閉鎖フィールドが展開していますね
 多分、我々より先行している部隊が、中ボスクラスと接敵したのでしょう』

『ヘインさんどうします?合流を目的として動いている訳ですから
 至急、援護に向かって彼等と共闘するべきだと私は思いますけど?』


「そ、そだな!とりあえず、後方からチクチクでもいいから援護するぞ!!」









ちょっぴり頼りないリーダーと頼もし過ぎる三人は
前に向かって走り出す、諦めずに行動し続けていた彼等には
立ち止まる姿より、前に向かって進む姿の方がしっくり来るし、似合っている


例え、その先にどんな絶望的な結果が待っていようとも
どんなに報われぬ結果が待っていたとしても

彼等はそれでも答えを求めて進み続ける『求道者』なのだから・・・





■熱き血潮に焼かれ■


閉鎖フィールド前に辿り着いたヘイン一行は
そこで、ただ指を咥えてそこで繰り広げられる
凄惨な戦いの一部始終の目撃者となることしかできなかった

フロアに張られた結界はローゼンリッター式攻略法を許すほど甘くはなく
片方の死によってしか、解除されないことを言葉ではなく
二つ分のパティーの人数と等しい数の木偶人形の存在で彼等に示していた



■■




『アースクラウド!!』




カーセの何度目か分らない魔法攻撃が直撃し、その衝撃の余波で粉塵が舞い上がり
一時的に正面の敵を彼女たちの視界から消すことには成功したが・・・



『やった?』 「エリ姉!!終わってない、避けてぇええ!!」



逆に敵の攻撃を隠す煙幕となってしまい。ほんの一瞬だけ油断した少女の命を
容赦なく刈り取り、彼女を他の8人、いや9人と変わらぬ木偶人形へと変える
同時に放たれた魔弾は眉毛の太いナイフ使いの少女の心臓も容易く射抜いていたのだ
サビーネ達のパーティーは一瞬にして、その半数を失ってしまう



『どうしたぁああ!?ぜんぜんお前等の攻撃が伝わらないよ!!もっと本気出せよ
 もっと熱くなれよぉお!そんなことじゃ全然だめっ!もう、死んだ!いま死んだよ!!』



砂塵の霧が晴れ、狂ったような奇声で意味不明な言葉を叫び続ける男が姿を現す
『レンネンカンプ』一の知性の持主、中ボスグリルヴァルツァーであった



「エリ姉、エル・・・、痛い思いさせてごめんね。でも、大丈夫だよ
 すぐに、あそこの馬鹿と大魔王殺して現実世界に返してあげるから」


『いい!!凄くいいよ!!いまの気持ち忘れんなぁあっ!!
 気持ちだよ!気持ちで負けんなっ!!負けちゃダメなんだよ!!』




サビーネの発言に更に興奮した道化はかかって来いとばかりに
ノーガードで魔獣と化した少女に無防備な姿を晒す
その腕に装備された『ケモノの爪』とそれを操る者の本当の恐ろしさも知らずに

愚かな男が自分の無知と愚かさに気付いたのは、その右目を永遠に失った後だった
もっとも、それに続いて右耳、鼻を削ぎ落とされ胸を深く抉られては
最初にどこを失ったかなど、どうでもいいことだったかもしれないが




『お嬢様、一旦、退いて下さい!!止めをさします!!』




絶叫をあげながら、痛みにのた打ち回る馬鹿に止めをささんと
野獣の攻撃の間に溜めに溜めた圧縮された魔力の塊がカーセの手の平に浮かぶ

サビーネは声が聞こえたと同時に獣の様な驚異的な敏捷性を発揮し
地を蹴り、壁を蹴って馬鹿から距離を一瞬で取る


その瞬間、美しい侍女の手の先から禍々しい業火が放たれた!!




         「『 侍女フェニックス!! 』」




リヒテンラーデと遜色ない灼熱の不死鳥がグリルヴァルツァーを焼く!!
傷口を狙って執拗にその炎の嘴で何度も抉り続けながら

そのえげつない凶悪な攻撃振りと、断末魔の絶叫をあげながら
その仮初の命を燃やし続ける哀れな中ボスの凄惨な光景と
肉と地が焼かれる吐き気を催すような醜悪な臭いに

見学者となって戦いの趨勢を見詰めていたヘイン達は顔を背けずにいられなかった



また、地獄の業火に照らされる侍女の冷たい表情と
憎き敵を殲滅した喜びにあどけない笑みを見せる野獣の姿は
歴戦の勇者と言えるヘイン達の心胆を寒からしめるのに
十分すぎるインパクトを持っていた



「みんなお待たせ♪時間もったいないから、さっさと次の奴殺しにいこっか?」










返り血塗れの少女が振り返って見せるとびっきりの笑顔は
ヘインに食詰めと初めて行った狩で受けたのと似た衝撃を与えるだけでなく

『このゲームってまともな女の子ほとんど見たこと無いんですけど』と
場違いな諦めに近いような感想を彼に思い浮かべさせる


こうして、2部隊の壊滅の事実に、半壊した部隊での衝撃的な中ボス撃破を目の当たりに
しばらく、言葉を失っていたヘイン一行であったが、最初に再起動を果たした
フェルナーがどうしこうなったか状況説明を求めると


次の標的を少しでも早く狩ろうと前進を主張する復讐心に猛り血に飢えた野獣に代わって
凍れる微笑を浮かべた侍女が丁寧な説明を簡潔に、淡々と行った



最初に中ボスと交戦状態になったラインハルトの部隊の援護に
ニ部隊が駆けつけるも、ヘイン達と同じように閉鎖フィールドの影響で
戦闘に参加することができず、ただ、彼等が全滅するのを見守る事しか出来なかった


また、途中で後退してヘイン達と合流しようとしたが
自分達のすぐ後ろにも進行不可のフィールドが張られた為
順番に中ボスと強制戦闘を始めることになり、全滅した2部隊につづいて
自分達の部隊が戦闘に入ってしばらくしてからヘイン達が着いたと

もし、自分達の部隊が全滅していたら、強制的に中ボスとの戦闘を
ヘイン達は強いられる事になっただろうと



この急速に厳しくなったレギュレーションに、こんどは無理ゲーにでもする気か?と
吐き捨てたヘインに答えを返すものは誰もいなかった


城からの脱出は不可能、ボスとは1パーティー単位強制の離脱不可戦闘
過去の穴だらけだったシステムを既に大魔王レネンカンプは完璧に修復していた
もほや、ボスの戦闘範囲もダメージ蓄積時間はアテに出来ない
頼れるのは自分と仲間達のこれまで培ってきた力だけであった


ちなみに、残り2人となったサビーネ達と合流を行おうとしたが
ダンジョン内での合流は認められないとエラーメッセが出て
部隊を再編成することは残念ながらできなかった
これも、現実では欠けたピースがいつでも補充できる訳でないという教えなのだろうか?


困難な魔王城の探索はまだ始まったばかりというのに
攻略部隊は既に半数以下の人員まで、その数を減らしていた


それでも、少女は歩みを止めず先頭を歩き続ける、誰にも涙を見せまいと


侍女とヘイン達も黙ってその後に続く、今は進むしかないのだから




■作戦会議■



グリヴァルツァーと戦った大広間から暫くは沈黙を保ったまま進んでいた6人であったが
その重苦しい空気に絶えられなくなったヘインは
前を歩く少女の肩の震えが収まったのを確認すると
取り留めの無い下らない話をサビーネやカーセに振り
沈みかけた空気を見かけ上だけでも再浮上させるのに成功する


もっとも、他の2部隊の友人や知人を失ってパウラの時ほど出ないにせよ
ショックを受けているヘインが、それでも無理してみんなを元気付けようとしているのに
気付かないほど、サビーネ達は他人の痛みに鈍感ではなかったため
その心意気に応えようと無理して併せている面も多分に有ったが・・・



■■



「そんじゃ、多少は持ち直した所で、これからどんな感じで探索する?
 脱出不可、単体の部隊で離脱不可のボス戦となると正直シンドイけど
諦めてデスペナ喰らうのも御免だし。何か足掻けることがあるなら・・」

『精一杯足掻かないとね♪』

『まぁ、悪足掻きになるのか、勝利を引き込む一因になるのか・・』

『やってみなくては分かりませんわ!!』




ヘインの今後どうするかという大雑把過ぎる問い掛けに
野獣と食詰めアルフィーナが順番に食いつく、何だかんだ言っても
この世界でもトップクラスのタフさを持つ彼女達である

なにか切っ掛けを少しでも与えてやれば、自分達の力で前を向き進む力を持っているのだ



「やらなくて後悔するよりもって、あの子も言ってたしな。精々、やってやろう
 まぁ、肝心な具体策については亀の甲より、年の功ってのを期待したいんですが?」



『閣下、相変わらずの無茶振りですね。こういう事態に多少の年齢差は
あまり関係ないと私は思うんですけどね。まぁ、少し考えさせて下さい』

『多分思い過ごしでしょうが、先程の発言には私は含まれていませんよね?
 そもそも、ヘインさんより若輩の私が年の功を求められるなど有りえないことですから』




具体策を立てるように丸投げされて、あまり困ってない顔で困ったと言うフェルナーに
先刻の死闘で見せた以上に冷たい視線と笑顔をヘインに投げ掛けるカーセであったが

それぞれの部隊の中で一番しっかりしているのは自分だという事も良く分かっていたので
ニ、三点の項目について話し合って確認すると、簡単な行動方針案を即席で作りあげ
完全に任せきりモードに入って寛いでいた四人に披露する



「つまり、基本は人数の多い俺等の部隊が先行する形をとるけど
 ボス戦が発生しそうな場所になったら、サビーネとカーセさんが先行すると?」

『はい、そういう形になります。何か腑に落ちない点でも?』



「いや、最初の部分は人数の多い方が、先に雑魚敵と戦って勝率上げようってことで
 良く分かるんだけど、何で苦戦する率が高いボス戦にわざわざ逆の形にするんだ?」

『閣下のご指摘は尤もですが、私達の考えは違った・・・ということです
 端的に言えばボス戦の勝率をより上げるために、残酷かもしれませんが
お二人にはボスの戦力を見極める為の、捨石になって貰うということです』
 


『そんな・・、いくら勝利の為とは言え、仲間を捨石にするなんて間違っていますわ!』



ヘインの疑問に対するフェルナーの答えが余りにも合理的で残酷な物であった為
六人の中でも、もっとも正義感の強い少女は思わず激発する

いくら、ほんの僅かな付合いであっても同じ目的で共に剣を取った仲間を
ただ、勝率を高めるという理由だけで捨石にするなどという方針は
かつて、奴隷制度にも極度の嫌悪感を持った少女らしい潔癖性を持つ彼女にとって
容認できるような物ではなかったのだが



『うん。それでいいよ。カーセが一番良いと思ったなら、それがきっと一番だよ』




そんな怒り心頭のアルフィーナとは対照的に当事者のサビーネが
あっさり過ぎるほど簡単にその方針を受け容れてしまったため
彼女の正義感に基く怒りの矛先の持って行き先を失ってしまう



『ごめんねアルフィーナ。でも、勝つためなの』


『アルフィーナさん、そんなにご心配なさらないで下さい
 お嬢様も私も、そう簡単に敵に遅れを取る気はありません』



そんな、彼女の姿を見かねたサビーネは
彼女を気遣うと共に、勝利への断固たる決意を彼女に示し
カーセは必ず負ける訳じゃないから、それほど心配しなくて良いと
彼女を安心させるような優しい微笑みを向け
渋々といった形であったが、アルフィーナを納得させる




「そいじゃ、方針も纏まった事だし、前進しますかね?」





■地味な強敵■


決意を新たにして、再び暗く長い廊下を歩き始めた六人の『求道者』達は
襲いかかる雑魚モンスターを斬っては捨て、千切っては投げという形で
危なげなく順調に倒し続け、レベルを上昇させながら魔王上攻略を着々と進めていた


だが、この仮想世界は現実世界を模した物である
現実が困難に満ちているのと同じで、この『レンネンカンプ』の世界も困難が満ちている
大魔王の前に立ちはだかる壁となるクナップシュタインが待つ戦いの舞台は
もう、彼等のすぐ目の前にあった


■■



『・・准将、ちょっと、いいですか?』「なんでしょうか、ランズベルク伯?」

『ヘインさんとサビーネさんの相性って良いと思いません?
 進めば進むほど二人の会話が増えているような気がします』


『確かに、後ろから見ていても会話の息もピッタリで
 微笑ましい若夫婦を見ているような気になりますね』

『ですよね~』




そんな前方でイチャついているようにしか見えない二人に対する
率直な感想を小声でヒソヒソと言い合いながら
アルフィーナとフェルナーは嫌な汗が流れ落ちるのを止める事が出来なかった

最後尾でゆっくりと全体を見渡しながら歩く食詰めから発せられる
大気すら震わせるような負のオーラを背中で痛いほど感じていたのだ


ただ、幸か不幸か中ボスが待ち受けているであろう広間の門に
6人は程なくして到着した為、少々嫉妬深い少女が激発する最悪の事態は避けられた



■■



『それでは、お嬢さま参りましょうか』

「うん、分かった。じゃ、ヘイン達はちょっとだけ待ってて
 パパッと中ボスなんかやっつけちゃうから、心配しないで!」


『おう!油断せずにいけよ』『御武運を』『頑張ってくださいね』
『ふんっ、せいぜい気をつけるんだな』


若干一名の複雑な気持ちの篭った声援に笑みを深めながら
サビーネとカーセはクナップシュタインが待つ広間の門を開け放つと

そこには予想通り、閉鎖フィールドが広がっており
1部隊単位で接敵せざるを得ないことが判明する


もっとも、予想通りの事態に二の足を踏むような彼女たちではなく
堂々たる足取りで、死闘の舞台に二人は足を踏み入れる



その光景を、広間の中心で一人立つ男は見つめながら
自分の役目を果たすため、腰に差した剣を静かに抜き構えを取る



「そうそう、ヘイン、優しいのもいいけど、あんまり本命の子泣かせちゃだめだよ
 女の子って直ぐに不安になっちゃうものなんだから。それじゃ、またあとでね♪」



振り返りながら最後にヘインを絶句させる事に成功して満足顔の少女は
向き直った時には獲物を狙う獰猛な野獣の顔へと表情を変える


元気な主従コンビと珍しく常識人な中ボスクナップシュタインとの死闘が遂に始まる!!



■■




『実にしぶとい。その上、容赦のない攻撃を躊躇なく効率的にされている
 かわいいお嬢さん方と侮っていたら、あっという間に持っていかれそうですね』


「う~ん、こっちとしては侮ってあっさりと逝って貰いたいんだけど?」

『私もお嬢さまの意見に全面的に同意致しますわ。はぁっ!!』



野獣の獰猛な爪の攻撃を、体を捻ってギリギリ避けたクナップシュタインは
一瞬で魔法攻撃から打撃攻撃に切り替えて距離を詰めたカーセの振るう
デッキブラシの攻撃を剣で逸らして凌ぐも、地に叩きつけられた攻撃の衝撃波で
5メートル近く後ろに吹き飛ばされる



『床に小規模なクレータを作るとは・・・、まともに受けたらと思うとぞっとしますね』

「感心してる暇はないよっ!!」『チィッ!!ほんとに容赦なさ過ぎですよ!!』

『ヘルウインド!!』『アクザード!!』




カーセの打撃の威力に感心してその動きを止めた男は
一瞬であったにも拘らず、非常に高い見物料を二人から徴収され
野獣の爪と間髪入れずに放たれた二発の呪文の直撃を受け、吹き飛ばされ壁に激突し
その衝撃で崩れた瓦礫の山にその体をすっぽりと埋める


だが、それを見ても二人は警戒を解かず、追撃をいつでも行えるよう構えを崩さない




『やれやれ、本当に素晴らしい。ここまで圧倒的な攻撃を決めても
 全く警戒をゆるめることなく、逆に私の姿が見えなくなったことで
 その警戒心を高めるとは、まったく、我が主も罪作りな人ですね
 美しい女性二人を、恐ろしい本物の戦士に変えてしまうのですから』





その期待に応えたのかどうか定かでは無いが、戦闘が始まって以後
お喋りになりつつある標的は額や手に少しばかり血を垂らしながら、その姿を再び現す

その様子を見ながら二人と観客として死闘の行く末を見守る四人は
この男に対してもった常識人という認識を改める。こいつは戦闘狂のサイコ野郎だと



『それでは、すばらしくも残酷な攻撃を散々堪能させて頂いたお礼に
 この私の剣技を披露致しましょう。もっとも、見えないかもしれませんがっ!』


『あっぁあ!!』「カーセ!!!」




クナップシュタインの言葉が終わったと思ったら
カーセの右腕の肘から先が切り離され、広間に彼女の絶叫と
彼女の身を案じる主の叫びが木霊する





『うふふふ、中々、いい声で鳴いちゃってくれるじゃないですか
 素晴らしいですね。その美しい腕から飛び散る大量の赤、赤い鮮血
 ゾクゾクしてきますよ。戦いに溺れる人の気持ちが分かる気がしますねぇ』

「このサイコ野郎っ!!!」




返り血を舐めながら、しみじみと感想を漏らすクナップシュタインのふざけた態度に
ぶち切れた野獣は一瞬で間合いをつめ、最速の一撃をその男に繰り出した!!!




「うぁっあああああ、いぃっぁあがっはっぁあぁああ!!!」

『まったく、貴女は脳味噌が間抜けなのですかぁ~?
 さっき言いませんでしたか?私は貴女達の攻撃を散々堪能したと
 そんな、既に見切った攻撃を怒りに任せて雑に繰り出されては
 私も対処が楽すぎて、どう痛めつければいいのか、困ってしまいます』

「おがっあぁぁあ、ぐがぁあぎゃぁあああ!!!」




野獣の攻撃を難なく避け、逆に手に持った剣で彼女の腹を突き破った男は
足を払って、そのまま地面に串刺しにして貼り付けると、その剣を二度捻り
サビーネに獣のような鳴き声を執拗にあげさせ続けながら、恍惚とした表情を見せる

強者が望むままに弱者を嬲る、『レンネンカンプ』の真髄ともいえる要素を
忠実に実行するクナップシュタインの醜悪な笑みは見る者を容易く凍らせる凄みがあった
だが、彼の手に入れたその醜い人間らしさは、彼に慢心という弱点も生んでしまう




『・・・呪われろ、下衆』   『なっ!?・・・、ごっぐぁっ・・』




腕の痛みに耐え、死角からカーセは慢心する男の胸を
魔力で硬化させた腕で躊躇することなく突き破った



『クソアマァッア!!!離せっ!!離せえぁっ!!離れろぉぉお!!』







完璧に虚を疲れた攻撃で予想外の大ダメージを負った
サイコ野郎は激し、手を抜かれまいと必死に突き刺すカーセに
既に動かなくなったサビーネから、抜いた剣で何度も切りつける

何度も何度も・・・、苦悶の表情浮かべながら切りつけ突き刺そうとするのだが
斜め後方から自分の胸を抉り、更に密着状態にあるカーセに
中々致命傷を与える事は叶わず、その体に浅からぬ傷を何十も刻むことしか出来なかった



暫くすると閉鎖フィールドは解除される。その時に広間で動くものは誰もいなかった







凄惨な光景を見届けた四人の観衆は、全てが終わった舞台に足を踏み入れる


そこには胸を抉られ、その機能を停止した広間の主と
断末魔の叫びをあげながらデスペナを受け、恐ろしい表情をした少女に
何十もの刺し傷と切り傷を負って血塗れのままデスペナを受けた片腕の少女がいた


ヘインとフェルナーの二人は、残りの二人に少し待つようにいうと
不幸な少女達の汚れを布で拭い、苦悶の表情をなんとか解して生前の顔に戻した


その間、四人は一言も言葉を発する事はなかった
ただ、静かにこの理不尽な仕打ちに対して、胸の内から湧き上がる怒りを高めていた



  ・・・ヘイン・フォン・ブジン公爵・・・電子の小物はレベル2473・・・・・


                ~END~



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