――――――――――『この小説を読む上での注意書き』。
まずは、最初に、この小説は、ここのオリジナル板にも投稿している『三人の魔女“夢の射影”編』や『シークレットセブン黙示録』と、同じ世界観を有しております。
それを読まないと解らないような表現も含みますので、ご了承ください。
しかし、それらを読んだ上ならば、より楽しく読める事はこの私が保障いたします。
それ故に、この小説には、多数・・・・・と言うか、半端じゃなく多くのオリキャラが出現します。
気に入らない方は、残念ですがお帰りください。
飽くまで、私の妄想の産物なので、かなり戦力が片寄っております。
何とかする積りですが、それが許容できない方は読まない方がよろしいと思います。
原作を批判するような事を言うかもしれませんが、それは決してアンチと言う訳では有りませんので、悪しからず。
私は、原作を愛しております。(おい
所謂、最強モノとか呼ばれる類ではありますが、厨房だ、と思う方は見ないほうが宜しいです。
僭越ながら、私はその上で皆様を楽しませようと思っております。
それが許容できる方のみ、これを読んで下さい。
厳しい注意なら確りと受付けたいと思いますので、どんどんと感想を下さい。
確りと胸に刻み、今後と糧として行きたいと思っております。
長くなりましたが、皆様が楽しめる事を願って、この小説を投稿致します。
それでは、始まります、どうぞ。
「―――――――――さよなら、兄さん。」
それが、彼女の生涯で一番最後の言葉となるはずだった。
なぜなら、彼女の胸には真紅の槍が刺し貫いているのだから。
それも、彼女が最も敬愛していた兄の手によって、今、この世界で悪行し尽した“悪人”は葬られようとしていた。
彼女自身、いつかはこうなるだろうと思っていた。
悪が栄えたためしは無い。社会的な生物である人間が、社会を乱す人間を排斥するのは当たり前なのだ。
だが、これは彼女が求めた終わり方では断じてなかった。
彼女は、“悪”だった。
どうしようもなく、外道だった。
それでも、人並みに願いを持って、この世界を良くしようとしていた。
殺戮と狂気で自身を染めた革命者だったのだ。
神話では、槍は主神クラスの最上級の神がよく武器として使用している。
オーディーン然り、ゼウス然り。
そして、そこから派生した幾多の神話には、それに良く似た槍を振るう英雄が幾つも存在する。
大抵は非業の死を遂げた者ばかりだ。
差し詰め、彼の兄は悲劇の英雄で、今の彼女はその英雄の伝説に添えられる悲劇の一つでしかなかった。
事実、寡黙な兄は英雄と呼ばれ得るだけの実力も、名声も有った。
それを、それを―――――――あの、忌々しい『悪魔』が全て台無しにした。
名前を奪い、屈服させ服従し、数々の悪行に手を染めさせ、挙句の果てにはこうやって彼女に手を掛けさせている。
全ては十年前の大火が発端だった。
――――いや、今、この事について論ずることは意味が無いのでやめよう。
どうせ、彼女はこの場で息絶える。死ぬのだ。
胸の、心臓を貫かれた感触が熱く、初めて恋焦がれた時のような熱があった。・・・・初恋など、した事など無かったが。
それに対して、体中の血が抜けて体が冷えていくのが分かった。
いくら往生際の悪い彼女と言えども、ここから逆転の一手を導き出す事は不可能だった。
もはや敗北は必至。失意と諦念で、彼女は己の全てを棚に挙げて第三者のような気分で居た。
そこで、初めて気付いたように己の血を見る。
赤かった。
彼女の使役する者たちのように、青とも緑とも言えない色の血とは違う。人間の血だった。
それが、なんとも滑稽に見えた。
人間はこれだけの悪行を行なったとしても、悪魔には成れないのだ、と。
では、真実『悪魔』と成ったあの少年は、一体どれだけ途方も無い悪を積んだのか・・・・。
二十二歳程度しか生きなかった彼女には想像もつかない話であった。
まあ、それも今となっては如何でも良い話だが・・・。
そう言えば、と彼女は己の原風景を幻視した。
最愛の彼を呼び出したのも、両親の体を切り刻んで血を一滴残らず絞り出した時だった。
もう、今この時彼女に残っていたのは、わずかな自尊心だけだった。
魔術師は己の死体を誰かに晒してはいけない。
そう、尊敬する父親に教わった。
その理由は己の知識を脳髄から引き出されないように、と言った生々しい理由が背景に有るが、そんな事を言い訳にする積りは無かった。敗北は、敗北なのだ。
万全を期して、負けた。
結果だけが、虚しく残っている。
トドメと言わんばかりに、血のように赤い槍が引き抜かれた。
最後の力を振り絞り、人差し指で黒魔術の象徴たる魔方陣を描く。
どこでも良いので、彼女は座標を指定せずに転移術式を編んだ。
兄がそれに気付いて止めようとした時には遅かった。
既に魔術は完成し、彼女は地面に、地獄へ堕ちるかのように沈み込む。
即座に彼女の喉笛に向けて槍を突き刺そうとした兄を、あの『悪魔』が遮ったのが見えた。
――――――その口元には、彼女が生涯忘れぬ微笑が刻まれていた。
穴が空いた心臓が、凍り付くかと思った。
――――この『悪魔』は、何かを期待しているのだ!!!
何か、得体の知れない恐怖が支配し、彼女の意識は途切れた。
そうして、世界最高にして最悪と謳われた召喚師、リネン・サンセットは死んだのだ。
“異界の風” プロローグ
「――――――ハッ」
気付いたら、彼女は見知らぬ森に居た。
本当にどことも知らぬ場所であった。
植物の種類とか、そう言うレベルの話ではないのだ。
所謂、質とも言うべき物が、特に跳び抜けて掛け離れていた。
まず、空気が内包している“魔力”の量も質も歴然としていた。
まるで、太古の昔に終わった神代の時代のような、魔術師たちが溢れていた時代のような豊穣の地だったのだ。
それは、一言で言えば―――――――異世界。
そう表現する他無いほど、彼女のように魔術を知るものから見れば、それほどに異質なものだったのだ。
彼女の親友(利害一致の表面上の関係だと、互いに暗黙に承知していたが)なら、恐らく詳しく分かるのだろうが・・・・。
生憎と、彼女はそこまで魔術に詳しい訳ではない。
魔術師を気取るだけの馬鹿には負ける気はないが、流石にこれは彼女の理解の範疇から逸脱していた。
己の魔力は、殺されたと言うのに万全だった。
まるで、本当に第三者に何か手を入れられたかのような違和感があったが、それは恐らく、彼女の知る者達が関係しているのだろう。
どうせ、彼らに問い質そうとしても無駄だ。
やろうと思えば可能だが、そこまでして問い質す意味が無いのだ。
ただでさえ、何を考えているのか解らない連中だ。
今更、干渉してきた事に対して文句を言う義理も無いし、感謝する積りも無い。
立て続けに起こった不幸が、先の決戦で彼女の敗因だ。
これくらい、自分の悪運が強かったと思い込まないとやっていられないと言うもの事実だ。
さて、ここまで負け続けて来て、今更自分の運を試そうとするのは嫌になる。
彼女は、今ひとつの儀式を執り行おうとしていた。
彼女は、“蘇生召喚”と呼んでいる。
その名の通り、死者蘇生という、魔術が目指す一つの究極を体現する絶技である。
ただ、これは一つの賭けでもある。
経験則だが、これで呼び出されるのは―――――――例外無くどうしようもないほどの、外道だけなのだ。
彼女の親友に言わせれば、
「この世には輪廻転生ってシステムがあるでしょう?
魂は一つしかないんだから、生まれ変わった人間を召喚してもそれは別人、まったく意味が無いわ。
つまり、その魔術で呼び出せるのは、輪廻転生から外されるほど『世界』から嫌われた人間だけってことよ。
きっと私や貴女のよう救いようの無い人間が逝くとされる、“虚無の闇”にアクセスするのでしょうね。」
との事だった。
なるほど、これでは確かに実用性が無い。
呼び出されるのが高確率で、最悪レベルの外道だと言うのだ。
まあ、そのお陰で彼女は最愛の化け物とめぐり合えた訳なのだが・・・・。
と言うか、彼女の魔術師としての意識が薄い所為か、そんな召喚術の秘奥を彼女に喋ってしまう事自体が大いに問題でも有ったのだが、彼女も手の内の殆どを晒していたので躊躇いは無かった。
どの道、彼女が魔術を極める理由など、復讐以外ありえなかったのだから。
今回は、そう言うのを出来るだけは避けるようにしつつ、―――――やっぱり強力な戦力が今は欲しかった。
己の今の魔力では、限界は6人。
彼女の受け継ぐ破格の量の魔力をふんだんに使っても、これだけしか呼べないのだ。
その魔術がどれだけ繊細かつ、途方も無いものか理解できるだろう。
なので、彼女は出来るだけ、己に近しい者、という条件を付加した。
条件を増やすのは、なにもマイナスではない。手にも負えない狂人を呼び出す積りは無いのだ。
今日ばかりは、彼女の手足とも言える悪魔を召喚する気には成れなかった。
実に腹立たしいことだが、連中は土壇場で彼女を裏切ったのだ。その引き際はまさに悪魔的だった。
服従契約をしていなかったとは言え、当分は召喚する気になれないだろう。
その間は、これから呼び出す“協力者”に守ってもらう事にする。
取らぬ狸の皮算用だが、彼女は意外なほど楽観的にことを成した方が成功する場合が多い。まったく忌々しい限りだが。
彼女は瞑想し、己を極限まで研ぎ澄ませて集中させる。
触媒の血は、その辺に居た小動物の物を適当に拝借した。
ここに存在する動植物は、彼女の目煮から見て魔力を異常に蓄えている。
彼女の産まれた場所がそれほどまでに廃れていた証拠でも有るが、そんなことは今如何でもいい。
使えるモノは使っておくのが、彼女の主義だ。
そして、詠唱を開始する。
「《我は条理を捻じ曲げる者なり。生命の営みを逆行させる者。絶対なる死を覆し足る者である。》」
魔力が踊る。
魔方陣が展開され、そこから闇と言うのもおぞましい暗い孔が出現した。
彼女の意に従い、この世の摂理に反して、死者を冥府すら越えて引きずり出そうとしているのだ。
ジャリ、ジャリ、と彼女のイメージ通り、生命を捕らえる鎖が地獄と言うのも生易しい虚無の世界から、最悪の外道たちをこの世に再び、生命の息吹を与えて連れ出しているのだ。
「《この世の果てより、我が声に応えよ。さすれば再びこの世の生を謳歌する権限を与える。
非業にして、この世から排斥されし、嫌われ者よ。この世に唾を掛け、足蹴にして戻ってくるが良い。》」
ジャリジャリジャリ。
耳障りなほど響き渡るその音も、集中した彼女からすれば雑音にも入らない。
己の精神世界に埋没し、この世の全てを拒絶し、同時に抱擁しているのだ。――――――感覚で言えば、そんな感じだ。
そうして、彼女の望む存在が五名、声を返した。
永遠とも言える絶対的な虚無の世界から、脱したいと望み、蜘蛛の糸だと言わんばかりに手を伸ばす者たちが居た。
この時点で、利害は一致した。
顔も知らぬ彼らは、永遠で絶対的な完全の退屈に放り込まれた者達だ。
人間ならば、そこから抜け出したいと思うのは当然だ。
どの道、この時点で如何なる存在を呼び出したとしても、彼女に逆らう事は出来ない。
その中でも一人使い物になるなら儲け物だと、リネンは魔術を完成させた。
「《我が声に応える者よ。契約は成立した。
我らは運命の縁に結ばれた友であり、主従である。我が意が法則にして、絶対たる。》」
だが、その積りは無い、と彼女は声に応えた彼らに意思で伝えた。
飽くまで協力関係。
生きるも死ぬも共有したと言う意味での主従である、と言う事だけを理解してもらえば、それだけで良いのだ。
ただ、明らかにこちらの意思に反するなら再び虚無に還すと言う事を、言外に滲ませて。
そうして、最悪の五人が黄泉の国から呼び出された。
一人目は、血だらけの女だった。
全身には返り血を浴び、それが衣服全域に及び、時間が経過しているのか赤黒く変色している、異相の女だった。
まだ若いと言うのに、その眼は獰猛な猛獣以外の何ものでもなかった。
一応、口元には友好的な笑みは浮べてはいるが、これは挑戦的とも取れる。
二人目は、その中では一番若いと思われる少年だった。
育ちが良いのか、顔立ちも肌も綺麗で、魔剣を持っているから見た目からして剣士のようだった。
なぜ“虚無の闇”に放り込まれたのか理解できないほど、その少年は“普通”であった。
だが、リネンはそう言う風に見える人物こそが、どうしようもなく狂っている人間である事があるのを知っている。
三人目は、リネンも知っている女だった。
先走って彼女を置いて先に死んでしまった同志である。
リネンも認める稀代の錬金術師で、貴族生まれだと言うのにまったく貴族らしくない人物だ。
彼女を呼び出せたのは、かなりの幸運であり、大成功だった。
四人目は、一言で言えば冴えない神父だった。
だが、それは見た目だけで、その瞳の奥には想像を絶するほどの悪意と欺瞞に満ちていた。
本能的に、その“神父”と言う姿は擬態だとリネンは見破った。
彼は、この中でもダントツの外道であると言う事も。少しでも気を許せば、後ろから刺すだろうと言う事も。
五人目は、かなりの美丈夫だった。
理知的な雰囲気だが、一人目の女にも負けないほど血の匂いが染み付いている。
その身に悪魔を同化させた事があるリネンだから分かるが、この男は人間じゃない。怪物だ。
微笑を浮かべて楽しそうにリネンを観察している事から、とりあえず召喚に応えた動機はあるらしい。
「始めまして皆さん、リネン・サンセットです。私の声に応えてくださり、有難う御座います。」
と、リネンは優雅に一礼する。
すると、一人目の女が鼻を鳴らして言った。
「そんなタマじゃねえだろ、お前。白々しいから止めろ。
俺はアルシェだ。聞いた事はあるだろう? 『シークレットセブン』の№2“キラーブレイド”とは俺の事だ。」
聞いた事がある、初っ端から災厄レベルの外道が出てきたものだ。
「なんだと? 貴様があの殺人剣だと言うのか!!」
「いかにも。」
突如激昂する少年に、アルシェと言う女はニタリ、と粘着質の笑みを浮かべた。
「この外道が!!」
「まあまあ、抑えて抑えて・・」
お前が言うのか、“虚無の闇”に放り込まれたお前が、とか思いながら、リネンは彼を押し留めた。
「我が名はセルク・リーエン。世では“黒き流星”と呼ばれた事もある。
今すぐこの手で叩き切ってやる、“キラーブレイド”!!!」
「俺を斬る前に、お前があの闇の中に帰るのが早そうだぞ、流星のガキ。」
アルシェがリネンに目配りすると、彼はその意味を悟って渋々剣の柄に掛けた手を退けた。
しかし、彼も『シークレットセブン』に列せられる剣士・・・しかも、同期だとは思わなかった。
それも№3“黒き流星”はかなり彼女の敵対していた教会の顔に泥を塗った猛者だ、ここで手放すのは惜しい。
「まさか、貴女に呼び出される羽目になるとは思わなかったわよ。リネン。」
と、そう言ったのは三番目に呼び出された女だ。
彼女はメリスと言う。一時期リネンと共に時を過ごした同志である。
「貴女とも有ろう人が、しくじりましたね。」
「耳に痛い事だわ。師匠が予想外に強かったのよ、あれで『黒の君』に引けを取る方がおかしいわ。」
「言い訳とは、見苦しいですよ?」
「だって、大師匠まで絡んで来たのよ? 勝てるわけないじゃない。」
と、彼女はどこか拗ねたように言った。
あー、とリネンも掛ける言葉を失ってしまった。
確かに、彼女の言う大師匠が絡んできたのなら、それはその時点で諦めるしかない。
リネンの場合、それでも撤退せずに突き進んで失敗したのだ。それが最大の敗因かもしれない。
「この出会いに感謝を。きっと神の思し召しでしょう。」
「本気でそう思っているなら、“虚無の闇”に叩き返しますよ?」
四人目に召喚された男は、まさか、と人当たりが良い“だけ”の微笑を浮かべたまま肩を竦めて言った
まるで、信用されることを期待してないとでも言うような感じであった。
「これを聞いて叩き返さないのならば、貴女の精神を疑いますが・・・良いですか?
私は、恐らく『シークレットセブン』が一人、“裏切りのユダ”または“死の宣告”と呼ばれた男です。」
それを聞いた瞬間、ザッ、とリネンは身を引いた。
なるほど、最悪も最悪。まったく持って信用も信頼も出来ない人物を呼んでしまった。
数多くの教会関係者を惨殺し、教会を大混乱に陥らせた張本人。
その素性は不明のまま、文字通り闇の中に放り込まれたらしいが、この男がそうとは・・・・。
「本名は、オーネ・ブルセック。本名ですよ?
魔術師である貴女なら命を差し出したにも等しい。何なら血判を書いても良い。
まったく、酷い話だと思いませんか? 私は自己防衛しただけなのに、それを裏切りだなんて・・・ねえ?」
彼の言う事は分からなくはない。
教会は本当に腐った輩で溢れていた。それは、リネンの偏見ではないと自覚している。
だが、本能が彼を信頼する事を拒んでいる。
「貴方との関係は、一先ず保留にしておきましょう。」
一応契約を結んだとは言え、周囲はまだ仲間とは言えない連中なのだ。
ここで彼を敵に回すのは得策ではない、今のリネンは本当にその身一つなのだ。
「興味深いな、女・・・いや、リネンと言ったか?」
くくく、と楽しそうに美丈夫は口元に笑みを浮かべる。
見た目に反してかなり老練な声色だった。
「我の事は恐らく知っているだろう、『シークレットセブン』にも列せられた事がある。
我が名は、デュベイン・ド・アスタック・フェルウェス、と言えば分かるだろう?」
嘘・・、とメリスが唖然とする声が聞えた。
他の面々も、驚愕に表情が染まる。
リネンも驚いた。だって彼は、かの世界では知らないモノは居ないと言われるほど凶悪で、最悪の吸血鬼なのだから。
「1500年もの殺戮と隠遁の歴史を持つ、最悪の吸血鬼・・・・。
ついた二つ名は“流血公”。その伝説は、私も数多く聞き及んでいます。」
「個人的には、“ブラッディカルテット”の方が気に入っているのだがな。
貴様が、退屈からこの我を連れ出してくれたのだろう? その報酬は貴族として、また魔術師として対価を支払おう。
とりあえず、貴様の寿命分は働いてやる。光栄に思うが良いぞ、召喚師リネン。この身を飽きさせるな。」
随分な物言いだが、彼はそれだけの存在なのだ。
「ありがたき幸せですよ、ディベイン卿。」
リネンは彼に対して深々ともう一度一礼した。
「うはッ! なにここ、面白そうな所ね。どうなっているのかしら!!」
早速、メリスの探求心に火が付いた。
周囲を見る眼が、一気に魔術師と錬金術師の目になったのだ。
「まるで異世界だな。
別次元にでも飛ばされたか・・・・それ事態に驚くべきか、それを越えて我々を召喚した貴様の才能に驚嘆すべきか・・・。」
と、ディベインはいつの間にか、どこからか高級な椅子を取り出し腰掛けていた。
「俺は好きに出来りゃア、良いさ。
人生の大半を魔剣に狂わされて生きてたんだ、今生を楽しむのも悪くは無い。この世界の剣士にも興味があるしな・・・」
アルシェの方は、既に殺る気だった。
これはある意味、手綱を握りやすいのかもしれない。
「・・・・・・・私は、私の理想の為に己の成す事をする。暫らくは貴殿に付いて行くが・・・・・」
セルクは、感謝すれば良いのか、アルシェ達を斬る事を止められた事を激怒することか、悩んでいるようであった。
それでもリネンに付いて行く事を選んだと言う事は、恐らく妙な騎士道精神に感化されているのだろう。
リネンの、嫌いな人種だ。
彼を潰すかどうかは、当面は後回しになるだろう。
「貴方はどうしますか? “死の宣告”?」
リネンは暫し傍観していた神父に問う。
彼は、再び肩を竦め、
「いやいや、騒然たるメンバーですね。
私は、常に強い者の味方ですよ? 誤解の無いように言っておきますが、私が裏切る理由はただ一つ。
――――――相手が私を殺そうとした時だけです。一度足りとも、自ら裏切った事はありません。」
と、堂々とはっきりそんな事を述べるオーネ。
その表情は、リネンの知る物であった。
なにせ、いつも彼女自身が浮かべているのだから。
まあ、あの教会に所属していたようなので、その手の事は一通り経験しているのだろう。
とりあえず、全員から一応の了解は得られた。
「では、とりあえず、現状を確認しに町に繰り出しましょう。」
「場所は分かるの?」
「今から探しに行くのです。」
パチン、と先ほど閉じた召喚魔方陣を開く。
「―――――起きなさい、ファニー。三度、この世に誕生しなさい。」
その直後、魔方陣が膨れ上がるように巨大化した。
「「「「「―――――ッ!!!!」」」」」
そこから出現するのは、まず巨大な漆黒の足場であった。
それを背中だと知るまで、あと数秒必要とする。
ぐわん、と孔から這い出るように細くも強靭な腕が出てくる。
次に出現したのは、巨大な二本の角がある長めの首を持つ獣の頭だ。
そして、閉じられていた全長にも匹敵する巨大な翼が開く。
生物学や物理学を無視した巨体は、なんとその禍々しくも刺々しい翼で、飛び上がったのだ。
瞬時に、大規模な認識阻害と防音の結界が構築される。
ぐおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!
巨大な龍が、誕生の産声を挙げたのだ。
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皆さんがもうやらないのですか、と仰るので、復活しました“異界の風”。
本当は自サイトを作ろうと考えていたのですけど、ふと、創作意欲が沸いて来たので、投稿してみました。
まあ、色々とリアルの事情もあるのですが・・・。
現在、オリジナル板に投稿している“三人の魔女”の二章を作製しているのですが、まだ最初の部分のしか組みあがっておらず、大筋がまだ決まっておりませんので、そちらが決まるまでこっちを書いてみようかな、と思っています。
すみません、節操無いですよね。
でも書ける時に書いておく主義なのです、私は。
そして、やっぱり書いたからには誰かに見せたいと思うのは、作者の性でしょうか・・・・
風牙亭に投稿していた時より、大幅に改正、改訂しました。
当時より私の実力も上がっていると自負していますので、格段に面白くなっていることでしょう。
今思えば、――――――嗚呼、あの時は若かった。(いや、一年前だけど
スランプに陥っていたので、本当に一年ぶりの投稿となりますね。
いや、去年の自分を振り返って、本当に未熟だと思いました。
戦争と同じですね。
終わらせ方を決めなければ、泥沼に入るしかなくなるという・・・。
風牙亭時代の私の文章を保存している方が見れば一目瞭然でしょう。
大分私も成長しました、これも皆さんのお陰です。
おっと、長々とお話してしまいました、あとがきはもっと簡潔に纏めたいですね。
自サイトが完成したら、そちらに移そうと思っています。
一時的なものですが、皆さんの感想を原動力に待っています。それでは――――――