第十六話 波の国の戦い 其の二
「クク・・・えらい鼻息だが、勝算はあるのか?」
再不斬は不敵な笑みを浮かべる。
どうあがこうが下忍であるナルトたちに勝ち目はないを端から思っているのだ。
(マ・・・・マズイぞ)
カカシもその様子に焦る。再不斬と正面からやりあえば確実に殺されると思ったからだ。
「お前ら何やってる!逃げろって言ったろ!俺が捕まった時点でもう白黒ついてる!オレ達の任務はタズナさんを守る事だ!!それを忘れたのか!?」
その通りだ。今このまま戦い負ければタズナは殺される。
そしていかなる時も忍は任務を優先させなければならない。
「・・・・・・・タズナのオッサン」
ナルトはタズナの顔を見る。
確かに自分たちのわがままでタズナを危険にさらすわけには行かないが・・・・・・・・・・
「なぁに・・・・・・元はといえばワシがまいた種。・・・・・この期に及んで、超命が惜しいなどとは言わんぞ。すまなかったなお前ら・・・・・・・思う存分闘ってくれ」
こうなったのも自分のせい。だからこそナルト達の思うようにさせたかった。
「フン・・・・・・・という訳だ」
「覚悟はいいな」
ナルト達は再不斬に視線を向ける。
だがその様子を見て再不斬は・・・・・・・・
「クッ・・・・クックックックッ・・・・・ほんっとに成長しねェな!・・・・・いつまでも忍者ゴッコかよ?」
「なにっ!?」
「お前らの歳の頃にゃ…もうこの手を血で紅く染めてんだよ・・・・・・・」
自分の左手を持ち上げながら再不斬はナルト達に向けてさっきを放つ
その殺気にナルト以外は戦慄する。
(これぐらいの殺気・・・・・・・・・どうってことない!)
今まで幾多の死線を潜り抜けてきたナルトだ。
いかに再不斬の殺気と言えこの程度で怖気づいたりはしない。
「鬼人・・・・・・再不斬!」
カカシは再不斬に目を向ける。
「ほう・・・・・少しは聞いた事があるようだな」
「その昔・・・『血霧の里』と呼ばれた霧隠れの里には・・・・・忍者になる為の最大の難関があった・・・」
「フン・・・・・・あの卒業試験まで知ってるのか・・・・・」
再不斬は少し意外そうな顔をしてカカシを見る。
「・・・・・・・あの卒業試験?」
二人の話にまったく付いていけないナルト達。
ナルトでもほかに国の卒業試験を知っているほど物知りでなかった。
「・・・・・・・クククッ」
本体の再不斬は不気味に笑う。
「なんだってばよ、あの卒業試験って?」
「クックックッ・・・・・・・・生徒同士の『殺し合い』だ」
「なっ!?」
さすがのナルトもその言葉には驚いた。
今までナルトも少なからず他人を殺めてきた。
だがそれは任務のため、そして自分のみを守るため。
だから今まで無関係の人や無用な殺しはしたことがない。
しかし再不斬のその言葉はナルトを驚かせるのには十分だった。
「同じ釜の飯を食った仲間同士が、2人1組になり殺り合う・・・・・どちらかの生命尽きるまで・・・・・・・それまで助け合い、夢を語り合い、競い合った仲間達だ・・・・・・・」
「・・・・・・・ひどい・・・・」
サクラも思わずそう言ってしまう。
まだ幼い子供達が今までの仲間を殺す。考えるだけでも恐ろしい。
「10年前・・・・霧隠れの卒業試験が大変革を遂げざるをえなくなる・・・・・・その前年、その変革のきっかけとなる悪鬼が現れたからだ・・・・・」
「変革・・・・・・?」
「・・・・・・・」
「変革って・・・・?その悪鬼が何したって言うの?」
サクラは聞き返した。何が起こったのかを・・・・・・・・
「何の躊躇もなく・・・・・・何のためらいもなく・・・・・・・・まだ忍者の資格も得ていない幼い少年が・・・・・100人を越えるその年の受験者を喰らい尽くしたんだ・・・・・・・・」
「楽しかったなぁ・・・・・・アレは・・・・・・・」
かつてのその光景を思い出した再不斬は今まで以上の恐ろしい笑みを浮かべた。
そしてその視線をナルトとサスケに向ける。
「「!!」」
凄まじい殺気が二人を襲う。
サスケはその殺気に震えた。だがナルトは何とかそれに耐える。
次の瞬間、再不斬は一気に動いた。
凄まじい肘うちがサスケの腹部を直撃する。
サスケは防御も回避もできずにそのまま吹き飛ばされてしまう。
しかし再不斬の攻撃はそれだけでは終わらない。
再び腹部に裏拳を決めた。
そしてサスケは地面へと思いっきり打ち付けられる。
「ガハッ!!」
サスケの口から血が吹き出る。今の攻撃で少し内蔵をやられたようだ。
「サスケ君っ!!」
「・・・・・・!!」
サクラは叫び、カカシは怒りと自分に対する不甲斐なさの余り身を震わせる。
「死ね・・・・・」
再不斬は背中の首切り包丁の柄を握った。
「影分身の術!!」
ナルトが印を結ぶと数十人のナルトが再不斬を囲むように姿を現す。
五行封印があってもこれぐらいのことはやってのける。
だが問題はそのチャクラの使用量。
今はうまくチャクラが練れないため必要以上のチャクラを練りその大半を無駄に使ってしまう。そのため必要以上に体力を使ってしまう。
短時間ならいいが長時間となるとかなり体に負担がかかる。
だがそれでも作戦には必要なこと・・・・・・・・・・
これは再不斬を倒すための布石なのだ。
「ほー・・・・影分身か、それもかなりの数だな・・・・・・」
横目でその分身達を見る。だがまったく余裕といった感じだ。
「・・・・・・行くぜ!!」
クナイを握り、一斉に飛び掛るナルト。
そしてそれらすべてが再不斬を襲う。
「ウラァッ!!」
だが敵もさることながら首切り包丁を振り回し、すべての影分身を弾き飛ばす。
(やっぱり超無理じゃ・・・・・・・あんなのに勝てるわけがない!!)
はじかれるナルトを見てタズナはそう思った。
だがナルトもそんなことは百も承知だ。
吹き飛ばされたナルトの一体はリュックに手を入れ、何かを取り出した。
「サスケェ!!」
そしてそれをサスケに向かって投げた。
「!!」
サスケが受け取ったもの。それは四枚の刃が付いた物。
(成る程、そういう事かよ・・・・・ナルト、お前にしては上出来だ)
ナルトの作戦がどういうものなのか、サスケにはすぐに見当が付いた。
そして態勢を立て直すとその巨大な刃を十字型に広げた。
それは巨大な手裏剣だった。
「風魔手裏剣、影風車!!!」
サスケは勢いよく地面を蹴り空高く跳躍する。
「手裏剣なぞ、オレには通用せんぞ!」
上空のサスケを見ながら言う再不斬。
しかしサスケはそのまま手裏剣を全力で投げつけた。
「!!!」
その手裏剣は水分身の再不斬野分をすり抜けた。
そしてそれは湖の上に立つ本体に向けて飛んでいく。
「なるほど・・・・今度は本体を狙って来たって訳か・・・・・・だが・・・・・・」
サスケの渾身の力を込めた手裏剣はあっさり受け止められる。
「甘いっ!!」
しかしその手裏剣の影からもう一つ風魔手裏剣が姿を現す。
「!!!手裏剣の影に手裏剣が・・・・・・・!」
(これは影手裏剣の術!!)
再不斬に目掛けて迫るもう一つの手裏剣。
(死角に2枚目の手裏剣が・・・・・・!?)
サクラもそれには驚いたようだ。
「・・・・・・・が・・・・・・・やっぱり甘い!」
水面を蹴り飛び上がり手裏剣の攻撃をやり過ごす。
(!!・・・・・・よけられたァ!!)
手裏剣が回避されたことでサクラの顔には大粒の汗が流れる。
だがサスケはその口元をニヤリと歪めていた。
ボン!
その音と共に手裏剣が煙に包まれた。
「これでも喰らえ!!」
避けられた手裏剣がナルトへと姿を変える。
そして手に持っていたクナイを再不斬へ目掛けて“本気”で投げつけた。
早さ、正確性そのどちらも問題なかった。
クナイは再不斬の頭部目掛け迫る。
「くっ!(間に合うか!?)」
再不斬は顔をひねりクナイを回避する。だがそれでも顔に少し傷が付いた。
しかしそれはかすり傷。そこまでのダメージを与えられていない。
また水牢を形成させる右腕を水牢から放してさえいなかった。
「甘いな・・・・・・・・」
ボン!
「!?」
再不斬は再び音のしたほうを見る。
それは彼の目の前・・・・・・・・・先ほどナルトが投げたクナイだった。
「甘いのは、そっちだってばよ!!」
煙と共に再び現れるナルト。
それも再不斬の正面に・・・・・・・・
「二段階の変化の術だと!?」
「うらぁぁぁぁ!!!」
空中であったがナルトはチャクラをうまく利用しまるでそこが地面であるかのように動いた。
そして思いっきり再不斬の顔目掛けて拳を打ち込む。
「があっ!」
ナルトは再不斬の顔面に強烈な一撃を喰らわせた。
空中だったこともあり再不斬は仰け反り後ろに吹き飛ばされる。
だが何とか水の上に着地し、姿勢を保つ。
「このクソガキィ!!」
まさか自分の顔面に傷を、さらにはただの下忍から一撃をもらうと思ってはいなかった。
怒りで完全に頭に血が上り額に青筋をうかべ風魔手裏剣を、力任せにナルトに投げようとした。
だが・・・・・・・・
「!!!」
一瞬で再不斬の正面に現れるカカシ。
そして右手の手甲で手裏剣の刃を止める。
また水にぬれた前髪の間から覗くその眼光はとてつもなく鋭く再不斬でさえ恐怖するほどだった。
「か・・・・・カカシ先生!!」
「フン・・・・・・・」
サクラはカカシを見て安堵の表情を浮かべる。
またサスケも同じだ。
「ぷっはあっ!」
湖の中から顔を出すナルト。
ナルトは再不斬を殴った直後湖に転落。
湖の上に留まることもできたのだが、今この時点で水面歩行をできるのはおかしいだろうと言うことであえて落ちたのだ。
「・・・・・・ナルト・・・・・・『作戦』見事だったぞ・・・・・・成長したなお前等」
カカシはナルト達を褒めた。再不斬に傷を負わせさらに水牢の術まで解かせたのだから。
「くっ・・・・『水牢の術』を解いちまうとはな」
「違うな!・・・・・・術は解いたんじゃなく・・・・・・・解かされたんだろ」
再不斬もそのことは分かっていた。
クナイだけならまだ水牢の術を解くことはなかった。
だが顔面にあそこまで強烈な一撃をもらってはどうしようもない。
それに先ほどの一撃はとてつもなく重かった。
一介の下忍の強さではない。もしナルトのパンチがそこまでの重さがなかったら再不斬は決して吹き飛びはしなかっただろう。
(あのガキ何者だ?ただの下忍とは・・・・・・・・・)
「言っておくがオレに、2度同じ術は通用しない・・・・・さてどうする?」
再不斬はナルトのことを疑問に思いその答えを考えようとしたが、思考の途中でカカシの言葉が聞こえ考えるのを中断した。
「フン!(考えるのは後回しだ。まずはカカシを潰す!)」
二人は飛び退き一定の距離をとった。
そしてお互いに高速で印を結ぶ。それもとてつもなく量が多い。
だが二人の印は、そしてその印を結ぶ速度はまったく同じだった。
「酉!!」
最後の印が結び終わると二人の周りの水が盛り上がる。
「「水遁 水龍弾の術!!」」
そしてその大量の水が巨大な龍を形になり襲い掛かる。
二匹の巨大な龍はともにぶつかり合い消滅した。
それのより発生する巨大な水柱。かなりでかい。
「うおお!!」
「キャ――ッ!!」
「ぐっ!」
だがその余波はものすごく離れた場所にいたサスケ達をも水が襲う。
(あの量の印を数秒で・・・・・・しかも全て完璧に真似てやがる)
(な・・・・・・何なの?これって忍術なの!?)
サスケとサクラは無言でその様子を眺める。
またナルトも湖の中で二人の術を見ていた。
(兄ちゃんの術と同じ位の威力だ・・・・・・・・・)
ナルトは確かに驚いたがサスケ達ほど驚きはしなかった。
今まで散々兄の術を見てきた。その術の中には今回の水遁を超える術が数多く存在したからだ。
ナルトは押し寄せる水の中で二人の攻防をじっと見ていた。
だが再び気配がした。どこかで誰かが見ている。
自分達をじっと・・・・・・・
さっきは気がつかなかったが今は分かる。
(誰だ?マユ無しの仲間か?)
ナルトが辺りを警戒する間もカカシと再不斬の攻防は続く。
クナイと首切り包丁が交差する。
共に一歩もひかない。
(おかしい・・・・・・・どういう事だ・・・・・・・)
疑問を感じつつも再不斬はカカシから距離をとる。
(こいつ・・・・・・・)
手に持っていた首切り包丁を背負うとカカシと一定の距離を取りつつ移動する。
またカカシも再不斬と同じように移動する。
そしてお互いが同時に止まり術を発動させる構えを取る。
だが・・・・・・・・・
「!!」
その構えはまったく同じだった。
(こいつ・・・・・・・オレの動きを・・・・・・・完全に・・・・・・・)
再不斬が手を動かすとまったく同じようにカカシも動かす。
「読み取ってやがる」
「!!!」
カカシがそう言い放つと再不斬は激しく動揺した。
(?・・・・・・・なに!?オレの心を先読みしやがったのか?)
カカシの写輪眼が再不斬の目に入る。
その瞳は再不斬にとっては余りにも不気味だった
(くそ!こいつ・・・・・・・)
「むなくそ悪い目つきしやがって・・・・か?」
再び心の中を読まれたように再不斬の言葉をカカシが言う。
「フッ・・・・・所詮は二番せんじ・・・・・「お前は、オレには勝てねェーよ・・・・サルやろー!!」」
カカシの言葉に完全に頭に血が上る。もはやカカシを殺すことしか考えていない。
「てめーのサルマネ口・・・・二度と開かねェようにしてやる!」
再不斬は再度、高速で印を結ぶ。先ほどよりもさらに強力な術を発動させるために。
「!!!」
しかしカカシの姿を見た途端にその動きを止める。
(あ・・・あれは!オレ?)
カカシの背後に見えるのは印を結ぶ自分の姿。
それが再不斬を驚愕させる。
(そ・・・・・そんなバカな!!奴の『幻術』か?)
だがそんな数瞬の隙が再不斬にとっては命取りだった。
「水遁 大瀑布の術!!」
カカシが印を結び終わり術を発動させる。
そしてその発動の一瞬前に再不斬が見たものは、カカシの写輪眼の三つの巴がものすごい速さで回転をしているところだった。
「な・・・・なにィ!(バカな!!術を掛けようとしたオレの方が・・・・・・・追いつけない!)
巨大な水のうねり。それはまるで巨大な滝のごとく再不斬を襲う。
「ぐあぁ・・・・・・・」
巨大な高波のような攻撃が再不斬を飲み込み吹き飛ばす。
「ぐっ!」
「うわあぁぁぁ!!」
先ほどの水龍弾以上の余波がサスケ達を襲う。
また湖にいたナルトもかなり巻き込まれる。
(なんて威力だってばよ!)
何とか流されないように水の中を器用に移動する。
その頃再不斬は・・・・・・・
「ぐっ!」
一本の木に激しく打ち付けられた。
「!!!」
次の瞬間再不斬の両手両足にクナイが打ち込まれる。
これで完全に動きが封じられた。
「ぐっ・・・・・・」
「終わりだ・・・・・」
再不斬が叩きつけられた木の上にはカカシの姿がある。
クナイを構えいつでも再不斬をしとめる準備をしている。
「何故だ・・・・・お前には未来が見えるのか・・・・・・・!!?」
「ああ・・・・・お前は死ぬ」
カカシはクナイを再不斬に投げようとした。
その直後
ザク!!
再不斬の首に何かが突き刺さった。
「「「「!!」」」」
一瞬何が起こったのか誰にも分からなかった。
再不斬に突き刺さる2本の大きな針『千本』
その音の正体は『千本』。
医療などを主目的として使われる忍具である。
再不斬は千本で貫かれたところから血を流しそのまま地面に倒れ落ちた。
「フフ・・・・・本当だ・・・・・・死んじゃった♡」
再不斬から少し離れた木の上にその声の主はいた。
髪を頭上に結って白いお面を着けた人間。
湖から上がったナルトはそのお面の忍のほうを見る。
(あいつがさっきから見てたのか?)
先ほどから感じた視線。それがこいつである事は間違いない。
だがその目的が分からない。
再不斬を殺したところを見ると仲間ではないようだが・・・・・・・・
カカシは先ほどまでいた木から降りると再不斬のすぐ脇まで行き首に手をあて脈があるかどうかを確認する。
「・・・・・・・・・(確かに・・・・死んでいるな)」
脈がないことを確認するとカカシはお面の方を見る。
「ありがとうございました。ボクはずっと・・・・・・確実に再不斬を殺す機会をうかがっていた者です」
軽くお辞儀をしながらそう言う。
「確か・・・・・そのお面・・・・・・お前は霧隠れの追い忍だな・・・・・・」
「・・・・・・・・・さすが、よく知っていらっしゃる」
「追い忍?」
その聞きなれない言葉にサクラはお面に聞き返す。
「そうボクは『抜け忍狩り』を任務とする・・・・・・霧隠れの追い忍部隊の者です」
丁寧な口調でお面は忍は答える。だがその声はまだ幼い。
(背丈や声からして・・・・・まだナルト達と大して変わらないってのに・・・・・追い忍か・・・・ただのガキじゃないね。どーも・・・・・・)
追い忍は暗部と同じく実力者が抜擢される。そのため実力がない者はどんなに努力してもこの部隊に入ることはできない。
カカシはそのお面の忍を警戒するように見る。
またそれはナルトも同じだ。
殺気はないが安心はできない。
それにいくら再不斬が油断し満身創痍だったいたといっても一撃で仕留めたこのお面の実力は少なくても自分と同じ位だろう。
それに自分とそう変わらない年でここまで切迫した実力者とは今まで会った事はなかった。
そのためナルトは内心で興奮していた。
このお面と戦いたいと・・・・・・・・・
自分の力がどれ程のものか確かめたかったからだ。
無意識のうちにナルトの体は震えていた。
「どうした、ナルト?」
震えているナルトを見てカカシが声をかける。
「な、何でもないってばよ・・・・・・・・」
「安心しろ。あいつは敵じゃない・・・・・・・・・」
カカシは再不斬をあっさりと殺したお面の忍に震えているのだと思いそう言った。
「ち、違うってばよ!あの再不斬が・・・・・・・・・・」
まさかあのお面と戦いたいとはさすがに言えず、適当な言い訳を考える。
「ま!確かにな。だがこの世界にゃお前より年下で、オレより強いガキもいる」
ポンとナルトの頭に手を置きカカシは言う。またその言葉に反応するナルトとサスケ。
共に強くなりたい、そして強い奴と戦いたいという向上心があるためその言葉に以上に反応したのだ。
だが実際ナルトの実力はカカシに迫るほどだ。
しかしこの世界にカカシ以上の実力者などそういない。
と、お面の忍が再不斬のすぐ横に移動した。
「・・・・・あなた方の闘いもひとまずここで終わりでしょう。ボクはこの死体を処理しなければなりません。何かと秘密の多い死体なので・・・・・」
そう言うとお面の忍は再不斬の巨体を背負う。
「・・・・・・・それじゃ失礼します」
その言葉と共に瞬身の術を発動させ姿を消した。
「フ―――」
カカシは戦闘が終わったことを確認し額あてを元通り左目を覆いかぶすように付け一息ついた。
「さ!オレたちもタズナさんを家まで連れていかなきゃならない。よし!・・・・・元気よく行くぞ!」
「ハハハッ!!みんな、超すまんかったのォ!…ま!ワシの家でゆっくりしていけ!」
タズナは大声で笑いながら言う。
どうやら危機を免れ緊張が解けたのだろう。
しかしその直後カカシが前かがみに倒れた。
「なに!?え・・・・・!?どうしたの!!?」
「カカシ先生!!」
いきなり倒れたカカシを心配する一同。
まあ急にだから驚きもするか。
(か・・・・・身体が動か・・・・・・ない・・・・・・写輪眼を使いすぎたな)
その後・・・・・・・・・
カカシを担ぎ一行はタズナの家までたどり着いた。
そこにつくまでかなりの苦労だったが・・・・・・・・・・
「大丈夫かい?先生!」
そう声をかけるのはタズナの娘ツナミ(29歳)である。
「いや・・・!1週間ほど動けないんです・・・・・・」
カカシは布団に寝かされている。
やはり回復させるには体を休めるのが一番なのである。
「なぁーによ!写輪眼ってスゴイけど、身体にそんなに負担がかかるなんて考えものよね!!」
確かにその通りだが、それはカカシが写輪眼にあう血族の体ではないから。
イタチのように正当な写輪眼の継承者は常に写輪眼を使い続けることができる。
「でも、ま!今回あんな強い忍者を倒したんじゃ。おかげでもうしばらくは安心じゃろう」
汗を拭きながらタズナは安心したように言う。まあ確かに再不斬ほどの忍はそうはいない。
そのため敵もうかつに行動にはでれないだろう。
「それにしてもさっきのお面の子って何者なのかしら?」
サクラの疑問も当然だ。本来暗部もそのなかの追い忍部隊もその存在は非公式。
そのためまだ下忍になりたてのサクラ達が知っているはずもない。
「アレは霧隠れの暗部・・・・・・・・・追い忍の特殊部隊がつける面だ。彼等は通称死体処理班とも呼ばれ死体をまるで消すかのごとく処理することで、その忍者が生きた痕跡を一切消すことを任務としている」
解剖しそれをカラス等の動物に食べさせたりしてその死体を消したりもする。
かなり人体のことを詳しく知っていなければこの部隊ではやっていけない。
「忍者の体はその里で染みついた忍術の秘密やチャクラの性質・・・・・・その体に用いた秘薬の成分など様々なものを語ってしまう・・・・・・・・・例えば俺が死んだ場合写輪眼のような特異体質はすべて調べ上げられてしまい・・・・・・・下手をすれば敵に術ごと奪い取られてしまう危険性だってあるわけだ・・・・・・・」
そうなれば今まで味方だった者の術が敵として襲ってくる。
また写輪眼のような血継限界は恐ろしいまでの力を秘めている。
それが敵に奪われるのは笑い事ではすまない。
「忍者の死体は余りにも多くの情報を語ってしまう。つまり“追い忍”とは・・・・・里を捨て逃げた“抜け忍”を抹殺しその死体を完全に消し去ることで・・・・・・里の秘密が外部に漏れだしてしまうことを完全にガードするスペシャリストなんだ」
そうしなければほかの里との軍事バランスが狂ってしまい大きな戦争になることだって考えられる。それを防ぐために追い忍がいるのだ。
「音もなく、臭いもなく・・・・・・・それが忍者の最後だ」
「・・・・・じゃあ再不斬もバラバラにされて消されちゃうのォ・・・・・こわぁ~~~~!!」
再不斬がバラバラにされているところを想像するサクラ。確かに怖い・・・・・・・・
その話を聞きながらナルトは自分の胸に手を置く。
先ほどあった鼓動・・・・・・・・・・
それが何なのか分からない。まったく見当さえつかない。
(九尾・・・・・・・・・なのかな?兄ちゃんがいれば聞けるのに!)
リュウは今まで何度もナルトの怪我や病気の治療をしてきたし、九尾の封印のことについても多く調べていた。
そのためこういうことを聞くなら兄が一番いいのだが、あいにく自分は今波の国で兄は木ノ葉の里。とても相談できる状況ではない。
(それにあの声・・・・・・・・・)
頭に響いた声。
『お前次第・・・・・・・・・うずまきナルト』
その言葉しか聞き取れなかったが、一体何のことか・・・・・・・・・・
(帰ったら兄ちゃんに相談しよ・・・・・・・・・・)
「ナルト・・・・・・・・・」
「ん?」
ナルトに小声で話しかけるのはサクラ。
「何、サクラちゃん?」
その頃・・・・・・・・・・・・
森の中で先ほどのお面の忍が再不斬の横に座り、いろいろな道具を広げている。
「まずは布を切って・・・・・・・血を吐かせてから・・・・・・・・・」
そういって口の布を切ろうとする。
「!」
「・・・・・いい・・・・・自分で・・・・・・やる゛・・・・・・・」
死んだはずの再不斬がお面の忍の手を掴み、逆の手で布を取り言う。
「なんだぁ・・・・・もう生きかえっちゃったんですか・・・・・・・」
お面の忍は大して驚きもしない。なぜなら彼はこうなることを知っていたから。
彼は再不斬を初めから殺してなどいなかったのだ。
「ったく、手荒いな・・・・・・お前は・・・・・・・・」
そういいながら首筋に刺さった千本を引き抜く。そこからは少量の血が出ている。
「あ!再不斬さんこそあんまり手荒に抜かないでください。本当に死にますよ」
かなり心配そうに言う。よほど再不斬が心配なのだろう。
「何時までそのうさんくせー面をつけてるんだ!はずせ!」
「かつての名残でつい・・・・・・それにサル芝居にも使えたので・・・・・・」
そう言いながら面をはずす。その下から彼の素顔が現れる。
それは女性と見間違うほどの顔。そしてまだ幼さの残る少年の顔だった。
「ボクが助けなかったらアナタは確実に殺されていましたね」
「仮死状態にするならわざわざ首の秘孔を狙わなくても・・・・・・・もっと安全な体の秘孔でもよかっただろうが・・・・・・・・・相変わらずいやなヤローだな・・・・・お前・・・・・」
「そうですね!」
顔の布をかえてもらいながら再不斬はそういうがその言葉を聞き逆に少年はうれしそうな顔をする。
そして再不斬は逆に毒気を抜かれ少年を見る。
「再不斬さんのキレーな体には傷を付けたくなかったから・・・・・・それに筋肉の余りついていない首の方が確実にツボを狙えるんです・・・・・・・・1週間程度はしびれて動けませんよ。でも・・・・・再不斬さんならすぐに動けるようになりますかね」
再不斬は横目で少年を見る。
「・・・・・・まったくお前は純粋で賢く汚れがない・・・・・・・そういうところが気に入っている」
「フフ・・・・・・僕はまだ子供ですから」
笑顔で答えるとスッと立ち上がる。
「いつの間にか・・・・・・・・・・・霧も晴れましたね・・・・・・・・・・」
彼等の周りはすっきりと晴れている。
また海も見える。
「・・・・・・・・次、大丈夫ですか?」
「次なら・・・・・・写輪眼を見切れる。あと、あの金髪のガキに注意しろ」
「?」
「あいつは只者じゃない。奴の一撃、ただの下忍とは思えない・・・・・」
再不斬は自分の頬をさする。まだ少しジンジンする。
「もしかするとお前と同じ位の実力があるかもしれない・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・そうですか。じゃあ次はボクがその子の相手をします」
「・・・・・・・・・・・ああ」
「!」
目を閉じて寝ていたカカシはいきなり眼を見開いた。
「!!」
「ギャーーー!!」
それに驚いたのはナルトとサクラ。
なぜなら寝ている間にカカシのマスクを取りその素顔を見ようとしていたからだ。
「バカ!もっとうまくやりなさいよ!!もう少しでマスクの下見えたのに」
「そ、そんな・・・・・・・・」
小声で話す二人。先ほどサクラはナルトを誘いカカシのマスクを取るように言ったのだ。
ナルトは半分しぶしぶだったのだが・・・・・・・・・・
だがカカシはそんな二人のことを気にしていない。
顔に手を当て何かを考えている。
(何だ?・・・・・・・再不斬は死んだというのに・・・・・・この言い知れぬ不安・・・・・重大な何かを・・・・・何かを見落としてる気がする・・・・・・・)
カカシはさらに自分の脳をフル回転させる。
なぜか言い表せない不安が湧き上がってくる。
(違う・・・・・・・・何かが変だ・・・・・・・まさかオレとしたことが見落としていた!?)
「どうしたんだってばよ!先生?」
ナルトはそんなカカシの姿を不審に思い聞き返す。
「ん?ああ・・・・・・・・・死体処理班手ってのは殺した者の死体はすぐその場で処理するものなんだ・・・・・・・・・」
「それがなんなの?」
サクラもカカシの言葉の意味が分からず聞き返す。
「分からないか?あの仮面の少年は再不斬の死体をどう処理した?」
「は?知るわけないじゃない!だって死体はあのお面が持って帰ったのに」
サクラが言う。
「そうだ・・・・・・殺した証拠なら首だけ持ち帰れば事足りるのにだ・・・・・・・・それと問題は追い忍の少年が再不斬を殺した武器だ」
「(・・・・・ただの千本・・・・・・・・!!)・・・・・・・・まさか」
サスケの頭にある結論が浮かぶ。それはできるだけ考えたくはないのだが・・・・・・・
(あいつはマユ無しの仲間!?と言うことは・・・・・・・・・・)
ナルトの頭にもサスケと同じ結論が浮かぶ。それは・・・・・・・・・・
「あーあ、そのまさかだ・・・・・・・・おそらく再不斬は生きている!!」
カカシは真剣な表情で言う。そしてそれは最悪の事態。
その言葉にサクラもタズナも驚きの表情だ。
「ど、どういうこと!?カカシ先生あいつが死んだのちゃんと確認したじゃない!!」
サクラは大声で言う。再不斬が生きているとなると大変なことになる。
カカシ並みの敵が再び襲ってくる。考えるだけでも恐ろしいことだ。
「確かに確認した・・・・・・・・が、おそらくあれは・・・・・・・・仮死状態にしただけだろう・・・・・あの追い忍が使った千本と言う武器は急所にでも当たらない限り殺傷能力のかなり低い武器で・・・・・・・・そもそもツボ治療などの医療に用いられる代物だ」
他人を暗殺する場合千本よりもクナイなどのほうが殺傷能力が高く、また多少急所を外れても相手の力をそぐには有効な武器で、抜け忍など逃がすわけには行かない相手などには断然こちらのほうが有効なのだ。
だからカカシは少年が千本を使ったことに疑問を覚えたのだ。
「別名、死体処理班と呼ばれる追い忍は人体の構造を知り尽くしている・・・・・おそらく人を仮死に至らしめることも容易のはず。1、自分よりかなり重いはずである再不斬の死体をわざわざ持って帰った・・・・・・・・2、殺傷能力のかなり低い千本と言う武器の使用した。この2点から導き出せるあの少年の目的は・・・・・・・」
「目的は?」
「再不斬を“殺しに来たのではなく助けに来た”そう取れないこともない」
「・・・・・・超考えすぎじゃないのか?追い忍は抜け忍を狩るもんじゃろ!」
確かにタズナのいうことも一理ある。
あの少年が千本を使うことに手慣れていたとも考えられるし、死体を持っていったのもカカシ達に見られたくなかったとも考えられる。
まあカカシの考えもこの考えも推測の域を出ないのだが・・・・・・・・・
「いや・・・・・クサイとあたりをつけたのなら・・・・・・出遅れる前に準備しておく。・・・・・それも忍の鉄則!ま!再不斬が死んでるにせよ、生きてるにせよ。ガトーの手下に更に強力な忍がいないとも限らん・・・・・・・・!」
カカシはふとナルトの方を見る。ナルトは震えていた。
だがそれは恐怖からではない。あのお面の少年と戦えるかもしれないから。
今のナルトはどこまでも貪欲に力を身につけたかった。
だがそれは自分の努力だけで。悪魔に魂を売ってもと言う考えはまったくない。
「・・・・・・・・・・・」
(フッ・・・・・・・あの再不斬が生きているかも知れないと聞いて喜ぶとは・・・・・・)
カカシはそんなナルトの姿を感心しながら見ていた。
「先生!出遅れる前の準備って何しておくの?先生とーぶん動けないのに・・・・・・・・」
サクラが何気ない疑問を言う。
「クク・・・・・お前達に修行を課す!!」
「えっ!・・・・・・修行って・・・・・!!先生!!・・・・・・私達が今ちょっと修行した所でたかが知れてるわよ!!相手は写輪眼のカカシ先生が苦戦する程の忍者よ!!」
(私達を殺す気か―――――――っ!!)
本音と建前の両方で文句を言う。
確かにちょっと修行したところで強くなるのなら誰も苦労しない。
それが分かっているからサクラは文句を言うのだ。
「サクラ・・・・・・・その苦戦しているオレを救ったのは誰だった?・・・・・・・お前達は急激に成長している。特にナルト・・・・・お前が一番伸びてるよ!」
ニッコリとしながら言うカカシ。だがナルトの胸中は少し複雑。
(もともと実力があったんだけどな・・・・・・・・・・・)
認めてくれたのはうれしいがもともとカカシ並みに力のあるナルト。
今も成長しているが先ほどの戦闘ではまったく本気ではなかった。
だから少し複雑なのだ。
(・・・・・・・・確かに前よりは何かたくましくなった気はするけどさ・・・・・・)
ナルトの横顔に視線を向けるサクラ。先ほどのナルトの姿はサクラの頭にくっきり浮かびあがる。
頼もしい姿。そしてサスケにない何かをナルトは持っている。
(それに頼もしかったけど・・・・・・・・・・)
微妙にサクラの頬が赤くなる。
(って!違う、違う!私が好きなのサスケ君でナルトなんかまだまだ・・・・・・・・)
と心の中でなにやら呟いている。
「・・・・・・・とは言ってもだ。オレが回復するまでの間の修行だ・・・・・・まあ、お前らだけじゃ勝てない相手に違いはないからな・・・・・・」
「でも先生!!再不斬が生きてるとして、いつまた襲ってくるかも知れないのに修行なんて・・・・・・」
「その点についてだが、いったん仮死状態になった人間が・・・・・・・元通りの身体になるまでかなりの時間が掛かる」
「その間に修行って理由だな!・・・・・・面白くなってきたってばよ!!」
修行と聞き喜ぶナルト。ナルトは強くなるためだったらどんな修行でも耐える。
それが今まで兄と共にした修行以上に苦しいものでも・・・・・・・・・
「面白くなんかないよ・・・・・・・」
ふと声がした。そして声がしたところには大きい帽子を被った小さな子供がいた。
「!!」
「!?」
「誰だ?」
サスケ、サクラ、ナルトはそれぞれその子供を見る。
先ほどまでいなかったその子供。一体何時の間に入ってきたのか・・・・・・・・
「おおイナリ!!何処へ行ってたんじゃ!!」
その子供を見てタズナは大喜び。両手を広げかなりうれしそうだ。
「お帰り・・・・・・じいちゃん・・・・・・」
じいちゃん。と言うことはこの子はタズナの孫のようだ。
「イナリ・・・・・・ちゃんと挨拶しなさい!おじいちゃんを護衛してくれた忍者さん達だよ!」
その間もかわいい孫の頭をなでるタズナ。なぜか『いいんじゃ、いいんじゃ。なあ、イナリ』とか言っている。
またそんなイナリはタズナに抱きつきながらじっとナルト達を見る。
「母ちゃん・・・・・・こいつら死ぬよ・・・・・・・」
「なんだとォ――!」
いきなりきついことを言い出すイナリ。
それに食って掛かったのはナルト。年上の人にバカにされても余り何も言わないが、年下に言われるとかなり腹が立つ。
つまりあれだ。生意気なガキに文句を言われて怒る大人と同じなのだ。
「ガトー達に刃向かって勝てる理由ないんだよ」
無言でタズナとカカシはイナリを見る。
「この!!」
「なに子供相手にムキになってんのよ、バカ!!」
今にも暴れだしそうなナルトを何とか押さえるサクラ。
「いいか!イナリ!よく聞け!!俺は将来、火影というスゴイ忍者を超すスーパーヒーローだ!!ガトーだかショコラだか知らねーが!そんなの全然目じゃないっつーの!!」
「フン・・・・・・ヒーローなんてバッカみたい!!そんなのいるわけないじゃん!!」
「!!」
その言葉を言ったイナリの目はとても寂しげだった。
悲しい思いを見てきた目。何かを失ってしまった目。
ナルトはそんなイナリの顔を見て先ほどまでの怒りがどこかへ消えた。
「死にたくなかったら早く帰ったほうがいいよ・・・・・・・・・・」
そう言うとイナリはさっさとどこかへ行こうとした。
「どこ行くんじゃ、イナリ?」
「部屋で海を眺めるよ・・・・・・・・・・」
戸を閉めさっさと自分の部屋へ行く。
(あいつ・・・・・・・・・・・・)
そんな姿をナルトはどこか悲しげな目で眺めていた。
それはまるでかつての自分を見ているかのような。
そんな感じだった・・・・・・・・