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No.5352の一覧
[0] きら☆すた~柊かがみさん男性化ネタのSSです~[黒茶色](2008/12/27 16:21)
[1] きら☆すた 第1話~こんなん書きましたが、原作のキャラで柊かがみさんが一番お気に入りです~[黒茶色](2009/02/06 00:34)
[2] きら☆すた 第2話~調子に乗って続編おk?~[黒茶色](2009/05/26 09:15)
[3] きら☆すた 第3話~静かなる宣戦布告?~[黒茶色](2008/12/27 16:19)
[4] きら☆すた 第4話~もっと笑いが取れますように?~[黒茶色](2009/05/26 09:15)
[5] きら☆すた 第5話~よくある、回想的なお話?~[黒茶色](2009/05/26 09:15)
[6] きら☆すた 第6話~お帰りなさいませ、ご主人様?~[黒茶色](2009/02/06 00:36)
[7] きら☆すた 第7話~夏の暑さと兄妹の絆?~[黒茶色](2009/01/12 00:01)
[8] きら☆すた 第8話~祭りの出店といえば、やっぱりドネルケバブですよね?~[黒茶色](2009/02/06 00:35)
[9] きら☆すた 第9話~夏の定番?~[黒茶色](2009/05/26 09:16)
[10] きら☆すた 第10話~どっかで見たことのある展開。それは王道というのですよ?~[黒茶色](2009/05/26 09:15)
[11] きら☆すた 第11話~いや別に、たった一人でアニソン歌う35歳の独身女性が居たって全然怖くないっスよッ! …多分?~[黒茶色](2009/05/26 09:27)
[12] きら☆すた 第12話~本作は健康的なラブコメディですが、何か?~[黒茶色](2009/09/27 21:22)
[13] きら☆すた 第13話~華麗に恋焦がれて?~[黒茶色](2009/09/27 21:22)
[14] きら☆すた 第14話~そうじろうには知らされていなかったようです~[黒茶色](2010/07/22 00:09)
[15] きら☆すた 第15話~私じゃなくても旺盛、そんな感覚?~[黒茶色](2010/11/02 02:04)
[16] きら☆すた 第16話~前回の続き?~[黒茶色](2011/07/06 19:22)
[17] きら☆すた 第17話~「けいおん!」と微クロスです。注意してご覧下さいね?【1/2】~[黒茶色](2011/07/10 23:04)
[18] きら☆すた 第18話~「けいおん!」と微クロスです。注意してご覧下さいね?【2/2】~[黒茶色](2011/07/12 22:23)
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[5352] きら☆すた 第15話~私じゃなくても旺盛、そんな感覚?~
Name: 黒茶色◆974bfc26 ID:03da8864 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/11/02 02:04
 体育祭も終了してから数日が経過した、秋も深まるとある日の昼休み。
 基本的にお弁当持参であるいつもの四人は珍しく学生食堂へと足を運び、午前の授業を乗り切り飢えた亡者達(?)が成す行列に並んでいた。
 
「たまには学食でって思ったんだけど、結構込むんだなぁ」
「気が遠くなるね~。行列ってメンドくさいし疲れるし、嫌だよねぇ~」

 そんな四人組の一人、唯一の男子であるキョウは周囲を見渡しながら独り言のように感想を述べると、傍にいた友人の一人も思ったことを言葉にする。
 尤も彼らが通っている陵桜学園は一学年に13クラスという、少子化時代に真っ向から勝負を挑まんとするくらいの生徒数を誇るマンモス校なのである。
 当然そこに通う全ての生徒が皆一様に食堂で食事をする訳ではないのだが、それでも相当数の人間が集結することは確かだ。
 そしてそれだけの生徒数が通うことを前提として作られそれなりの広さがある場所とはいえ、やはり昼時はかなりの混雑模様を形成するのであった。

「お前、こういうのイベントとかで慣れてるんじゃないのか?」
「その先にワクワクドキドキがない行列はイヤ」

 キョウは自身の呟きに相槌を打った一見小学生と見紛うほど小柄な同学年の少女こなたの言葉に、以前騙し討ちのように連れて行かれた有明でのイベントを思い出しつつ確認するように聞いてみる。
 すると返ってきた返事はキョウをして、なるほどコイツらしいなと思わせるものであったことから彼は「己の欲望に忠実なヤツ」と少し苦笑しながら返した。
 そこに二人の会話を聞いていた、先程のこなたとは反対に比較的背が高く、身体を構成するパーツ自体も大学生或いは社会人と見紛うほど成熟したおしとやかな風体の少女みゆきが話し掛けてくる。

「そういえば、以前テーマパークの行列に並んでいたらトイレだったことがありまして」
「なんの行列か真っ先に確認するのが基本だよ?」

 その時のことを思い出したのか、こなたとの会話をしながらみゆきは「2時間も待ちましたのに……」と少し落ち込んだように軽く目を閉じて俯いていた。
 そうして落ち込んだ様子を見せた彼女を励まそうとしたのか、その場にいたもう一人、こなたとみゆきの中間くらいの背丈で頭にちょこんと結んだ黄色いリボンが可愛らしい少女つかさが会話に加わる。

「あ、私もね? 列に並んでてやっと自分の番だっていう時に、前の人で売り切れってことが何回もあったよ」
「うわ悲惨、想像するのもイヤ」
「つかさは運がないだけだって」
 
 自身の苦い体験談に苦い顔で拒絶反応を示すこなたと、苦笑いで慰めようとする兄になんだかちょっぴり悲しい気持ちになったつかさは「うぅ~……」と軽く呻きながらみゆき同様落ち込んだ様子を見せた。
 そのことにみゆきは友人のフォローが嬉しかったのか、自分より落ち込んだ様子が気になったのか。
 場の空気を変えるように、三人の意識を現在自分達が食堂にいる最大の理由である食事に持っていこうと努めて明るく促す。

「あ、ほら皆さん。今日は何にしますか?」
「まぁカレーでいいかな? ハズレがないし」
「俺はラーメンにしよう」
「私も~。今日はミソラーメンにしようって思ってたんだぁ。コーンをいっぱいのっけて、ワカメも欲しいなぁ」

 みゆきにいつもの優しい口調で促された三人はその意に沿う形で話題を切り替えると、食堂カウンターに掲げられているメニューを見つめながら各々が望む品目を挙げていく。
 中でもつかさは大好きな兄と似たメニューだったことが嬉しかったのか、先程の落ち込んだ様子とは打って変わって楽しそうにオリジナルトッピングについて想像を膨らませていた。
 すると四人の中でも一番食いしん坊なキョウをからかうべく、こなたは少し意地悪そうな顔で「キョウはラーメンとプリンとエクレアでしょ?」と一食にしては少々多めな追加デザートを提案しつつ彼に話し掛けるのだが。

「アホ言え、ラーメンにそんな甘いモン合わねぇよ。ラーメンっつったらライスと餃子だろうが」
「おお、こりゃ失敬」

 からかおうと思った彼の反応は、彼女の予想外のものであったことからつい素直に謝罪をしてしまった。
 しかしながらからかおうと思った対象に肩透かしを食らった形になったことに、ボケとして(?)少々納得出来なかった彼女は別方向から攻め込もうと画策する。

 「成る程、王道ですな。ですがかがみ閣下、残念ながらここに餃子はございませんぞ?」
 「え、マジ? しょうがないな。じゃあライスやめてチャーハンにする……つーか、いい加減かがみ呼ばわり止めないと貴様を泉もなかと呼ぶぞ」

 今度は予想通り食いついてきた彼の様子に満足しつつ、こなたは更に彼を煽るべく続ける。
 何故なら彼女にとって、彼とのこういった遣り取りは非常に楽しく、快楽中枢を大いに刺激してくれるので既に至福の時となっているのだ。
 まして「キョウだって本気で嫌がっている訳じゃないし?」と本人を無視した自分勝手な解釈をしているが故の行動のため、そこに遠慮という概念は微塵もない。
 彼の方も一日一回はこのネタで彼女にからかわれているので、もう半分諦めた状態だ。
 無論、それで彼が納得している訳ではないので毎回諌めようとしてはいるのだが。

「お待ち下され、まずは話し合おうではありませんかッ!」
「お前が改めない限り譲歩はねぇよ」

 まぁそんな事情もあり、今回はいつもやられている名前ネタで反撃に出たキョウ。
 そのことに狼狽した態度を示したこなたが縋るようにキョウの夏制服の裾を掴んでくる様子から、彼の目論見に一見効果はありそうだが油断は出来ない。
 何故なら彼女の取っている態度は、お察しの通りワザとらしいくらい芝居掛かっているのだから。
 彼としてもその経験上、彼女が何かを企んでいることは明白だった。
 そしてその懸念は彼の予想通りであり、しかしその内容は予想を超えていた。

「いやなに、私としては中身の設定をつぶあんにして欲しいだけなのですがのぅ?」
「そっちかよッ! つーか改める気ゼロかお前ッ!? あとさっきからなんだ、その人を小馬鹿にしたような口調はッ!!」
「ところでゆきちゃんは?」
「私はサンドイッチ、とりあえず苺ので」

 ってな感じでいつもの如く騒いでいる二人を余所に、つかさとみゆきは朗らかな雰囲気を醸し出しながら二人だけで会話をしていく。
 友人となってお互いの気心もそこそこ理解してからの付き合いはそれなりに長い四人なので、ある程度のことはスルー出来る能力が自然と身についていた結果だ。
 そしてつかさからの問い掛けに対しゆみきはその大人びた外見に似合わず、内面が子供っぽい彼女は歳相応に可愛らしい選択をする。
 当然の如く(?)それを聞いたこなたは萌え心を擽られ、キョウとのじゃれ合いを一旦中止して思わず朗らかな表情を見せるのだった。

「あ~、みゆきさんらしいねぇ」
「ねぇ~?」
「えへへ……」

 自身の意見に賛同するつかさと共にみゆきの可愛らしさについて讃えてみると、当の本人は口元を手で押さえるようにはにかむ。
 その様子にこなたは内心で更に萌えていたが、ふと思いついた「ところで苺のサンドイッチってデザートじゃないの? お昼御飯に入るかなぁ?」という疑問を提示してみることにした。
 すると。

「そ、そうですね」
「妙なところで拘るな?」
「あ。“もな”ちゃんがいつも食べてるチョココロネは? 菓子パンはおやつじゃないのかな?」
「ぬなッ!?」

 ――つ、つかさのクセに高等なボケと人並みのツッコミを……ッ!?

 自らの疑問に対するみゆきとキョウの反応を余所に、思わぬ場面で思わぬ相手からの不意打ちにこなたは何故か劇画調の表情で驚愕する。
 その胸中では「……しかし、フフフ。知らぬ間に成長を見せる、これぞ人間よ」と、どこから目線なのか良く分からないことを考えており、そしてそれは彼女の小さな胸の中には納まる筈もなかった。
 
「おのれ、なかなかやるようになったなつかさめ。……だが、それがいい」
「えへへ、ごめんね?」
「なんなんだよ、その遣り取りは……」

 前田慶次○利益、さもありなん。
 という訳で(?)、キョウのツッコミを軽く受け流しつつ唐突に仕切り直したこなたはみゆきを促す。

「まぁそれはさておき。残念なことだがみゆきさん、サンドイッチの列あっちだよ~」
「!? ぁぅぅ……」
「らしいなぁ」
「歩く萌え要素だからネ」

 恥ずかしそうにパン類を取り扱うカウンターへと向かうみゆきの様子に、その背を見送りつつ苦笑したキョウからの呟きに相槌を打ちながら、やたらと優しい表情でいる彼女はどこか満足気だったという。
 それはともかく。

「あ、こなちゃんの番だよ?」
「カレー下さい、ルゥ大目で」
「はいはい」
 
 なんだかんだといつものじゃれ合いをしている内に注文の順番が回ってきたらしく、それに気づいたつかさはカウンターを見つめてこなたに伝える。
 そう言われて自分の前が空いているのを見たこなたは、早速カウンターの内側にいる食堂のおばさんに注文した。
 ところでそんな彼女の割と抜け目のない部分は、母親がいないため自宅で主婦役をこなしているという境遇からも来ているのだろうか。
 だがそれは、同年代の女子らしからぬ比較的特殊な趣味嗜好を持つ彼女の学校での立ち振る舞いしか知らない者からしても、それほど意外でもないことかもしれない。
 こなたと食堂のおばさんとの遣り取りにそんなことを考えつつも、キョウが持つツッコミという本能は自然と言葉が出てしまうらしく。

「ちゃっかりしるなぁ」
「貰えるモンは貰っておくよ」

 自身の言葉にのほほんとした様子で答えるこなたに苦笑しながらも、注文したカレーを受け取れる位置へと彼女が移動したことで彼も一歩前に出た。
 それに合わせ、先程こなたと応対をしたおばさんも注文を聞きだすべく「はい次の人」と声を掛けてくる。
 
「醤油ラーメン下さい、麺硬めで大盛り。あとチャーハンも」
「はい、ちょっと待っててねぇ」

 育ち盛り食べ盛りである男子高校生からのボリュームのある注文に、長年この食堂に勤め大勢の学生を見守ってきたおばさんは然したる驚きも見せず淡々と調理に取り掛かる。
 尤もここは生徒数が多いマンモス校の食堂なのだから、いちいち構っていては次々やってくる客を捌くことが出来ない事情もあるのだが。

「はい、カレーお待たせ」
「ども。んじゃ私、先に行って席取ってるから」
「おう、宜しく~」
「ありがと~」

 ともかくも。
 先に注文を完了していたカレーが出来上がったことで、こなたはキョウ達に座る席を確保する旨を伝えるとカレーの載ったトレイを持ってその場を離れる。
 残されたキョウとつかさの兄妹はそんなこなたに礼を言い、テクテクと歩を進める彼女の後ろ姿を見送った。
 そんな二人の仕草は二卵性とはいえ、流石に双子の兄妹と言える程にそっくりだったことはさておき。
 今度はキョウの後ろに並んでいたつかさに、注文の番が回ってくる。

「え~っと次の人?」
「あ、はい。ミソラーメンお願いします」

 こなた達との会話でもすぐに出てきたように、おばさんからの声掛けに対しつかさは即答した。
 比較的押しの弱い性格上、豊富なメニューなどがある場合は迷い易く決定するまで時間の掛かる彼女。
 だが今日学食で昼食を摂ることは昨日の内に決定していたことだった為、食べたいものを選ぶには充分過ぎる時間があった。
 その上、偶然にもそれは大好きな兄と似たチョイスだったこともあり、結構テンションの上がっていた彼女は先程自分で言っていた追加トッピングも頼もうとしたのだが。

「ごめんねぇ、さっきので麺がなくなっちゃって。ラーメン売り切れになっちゃったの」
「ええッ!? ……はぅぅ」

 構えている時ほど肩透かしを喰らい易いのはお約束と言うべきなのか、申し訳なさそうに残酷な事実を突きつけるおばさんの言葉に深い悲しみを抱くつかさ。
 傍にいたキョウも当然その様子を見ているのだが、先程つかさ本人が現在の状況と似たような経験談を語っていたこともあって非常に不憫に感じるのは、基本的に妹に甘い彼でなくても致し方ないことだろう。

「……あのさ、醤油で良かったらコレ食べるか? 俺はきつねうどんでいいし」
「ぅぅ、ありがとうお兄ちゃん……」

 兄の優しさが身に沁みつつも、彼女の感情は遣る瀬無さの方が大半を占めている。
 故に涙の流るるを堪えることあたわず、兄の言葉に頷く女子は暫し立ち尽くしていたと云う……。

 それはさておき。

「よ、お待たせ。席取りありがとな」
「どーいたしまして、っていうかきつねうどんにチャーハン? なにその組み合わせ」
「はぅぅ、それについては涙なくしては語れぬ事情がござるのでござる……」
「あらつかささん、どうしたんですか?」
 
 それぞれの昼食を入手した柊家の兄妹は、予めこなたが確保してくれていたテーブル席に到着する。
 すると既にそこには一時的に別行動を取っていたみゆきも席に着いていたが、こなたも含め自分の食事にはまだ手をつけておらず自分達を待っていてくれたらしい。
 とすれば、普通なら早速楽しいお食事会となる筈なのだが。
 キョウの持つトレイに載った和と中の微妙な組み合わせにこなたが疑問を呈すると、それに反応したつかさが妙な口調で落ち込んだ様子見せたことに今度はみゆきが首を傾げるという割とカオスな状況が出来上がってしまっていたため、すぐに食べ始めることは叶わなかった。

「ってことで、口は災いの元といいますか……」
「あ~なるほど、漫画とかで強敵に攻撃したとき「やったか……?」とか言っちゃった人みたいだねぇ~。なんというお約束。でもその諺の使い方はおかしいと思う今日この頃」
「……なんか言い得て妙だな。けどあんま茶化してやらんでくれ、寧ろその状況を目の当たりにした俺が切ない。でも確かにその諺の使い方は俺もおかしいと思う」
「あ、あのお二人共? そ、それくらいでどうか。つかささんの背中に暗い影が……」

 つかさからの事情説明に妙な納得をしたこなたに、なんとも言えない気まずそうな表情で合いの手を入れるキョウ。
 せっかく目の前には出来立てほやほやの美味しそうな食事が並んでいるというのに、なんだか素直に喜んではいけない気がしてくるのは人情だろうか。
 そんなことを考え、目を細めていた彼の心情を察したように。
 テーブルの向かい側に座るみゆきが、いつもの華麗なフォローを入れてくれるのだった。

「と、とにかく残念でしたねつかささん。では、また今度ここで昼食を摂ることにしましょう、ね? ね?」
「うむ、ドンマイドンマイ」
「つー訳だから、冷める前に食っちまおうぜつかさ」
「うぅ、ありがと……」

 何はともあれ、みゆきよる必死な取り成しのお蔭でつかさが立ち直ったことから漸く四人の昼食タイムが始まる。
 そして各々が自分の食事に舌鼓を打つ中、誰からともなく世間話に花が咲く。
 
「読書の秋ってことで、色んな本に手を出してるんだけど」
「へぇ、珍しい」

 出来立て故にまだ熱いカレーをはふはふと口に運びながら話すこなたに、関東仕立ての濃い目な出汁から箸で引き出した白いうどんをつるつると啜り上げるキョウは、活字嫌いな少女の意外な言動へ感心したように目線を向けた。
 彼がそんな態度を見せたことにも、当然ながら理由はある。
 少し話は脱線するが、キョウも一般的な高校生程度には漫画やアニメ、ゲーム等の二次元媒体を嗜むのだが、そのジャンルは当然男性好みのラインナップである。
 そしてこういった趣味的なものは、それについて誰かと語り合ったり共感したりすることを楽しむのが醍醐味の一つだろう。
 無論それは彼も例外ではないし、こなたやみゆき等の他に同性の友人もいるので同じ趣味を語り合って盛り上がることも出来ることは出来る。
 とはいえ彼の境遇上、校内校外問わずつるむことが多いのは妹を除いても先に述べた女子が二人。
 尤も、その内の一人であるこなたという同年代の女子としては……というか一般的に見ても規格外な存在がいるので、そういった意味ではそれほど困ってはいない筈。
 ……なのだが。
 彼は漫画・アニメ・ゲームを問わず、気に入った作品で活字中心の媒体である所謂ライトノベルや文庫本が出た場合、好んでそれらを購読する嗜好を持っていたりする。
 それはそこでしか読むことの出来ないオリジナルエピソードや、他の媒体の性質上表現されない登場人物の心理描写などの部分も詳細に描かれていることが多いため、彼の知識欲や好奇心を大いに刺激し満たしてくれるのが堪らないらしい。
 そんな事情もあり、三人の少女の中で比較的自分の趣味を理解し共有しやすいこなたにも自分的グッドチョイスのライトノベルを勧めたことがある。
 しかしそこは基本的に面倒くさがりなこなた。

『活字だらけのは読む気がしないんだ♣』
『……お前がやってるネトゲとやらの方が活字多いじゃねーか。つか、なんでヒ○カ?』

 と謹んで(?)遠慮されてしまいガッカリした過去を経験していたので、今回その彼女が『読書』を始めたという言葉につい驚きをもって反応した次第であった。
 それはともかく。
 
「もぐもぐ……んぐ。いくら教養を得るためとは言え、出費が嵩むんだよね~」
「買わなくても図書館とかで借りればいいんじゃないか? 割と読みたいのあるぞ?」
 
 咀嚼していたカレーを嚥下したこなたは、左手にスプーンを持ったまま腕を組みつつ身体を左右に揺らして話を続ける。
 対するキョウはこの機会にラノベ同志を醸成(?)するため、少々遠回りながらもこなたを少しずつ活字本慣れさせるべく促したのだが。

「いや~、図書館だと流石に漫画は置いてないでしょ~」
「……読書ねぇ。読書、ねぇ……ツルツル~、もぐもぐ……」

 結果は御覧の通り芳しくなく、こなたの返答に溜息を吐きつつ再びガッカリすることと相成った。
 下手に希望を与えられた分、突き落とされた感も大きかったことから若干しかめっ面になるキョウだったが、目の前には暖かい食事があったので直ぐに機嫌を取り戻す。
 そして彼がうどんを半分ほど腹に収め漸く上に乗った油揚げに手をつけ始めた頃、その右隣に座っていたみゆきがふと思いついたように話を振ってきた。

「そういえばこの間、母の出した懸賞が当選したんですが」
「へぇ~、良かったね。何が当たったの?」

 みゆきの話にいち早く興味を惹かれたつかさは一旦箸を休めると、他の二人に先んじて彼女に顔を向ける。
 するとつかさに頷きながら、みゆきは続きを語っていった。

「ええ、それがゴルフバッグでして」
「ふ~ん、ゆきちゃんのお母さんってゴルフが趣味なんだね~」
「いやはや、流石だねセレブだね」

 みゆきから聞いた品名が、嗜むには高いお金が掛かると一般的な認識であるゴルフ用品であることと、高良家が比較的裕福な家庭であると知っていたことからつかさとこなた二人はなるほどと納得するような内容の発言をした。
 何故なら、人間が行動を起こす際には何らかの理由が必要であり、今回の場合はゆかりがゴルフを嗜むからゴルフバッグを欲したのだろうという推測が立ったからである。
 しかし、そんな二人の言葉にみゆきは何故か困ったような表情になる。

「いえ、それが全くしないんです。というか運動は苦手な人なので……」
「おいおい、じゃあなんでそんな懸賞にハガキ出したんだよ?」

 少し遠くを見るように苦笑いを見せるみゆきの言葉に、生来のツッコミ属性であるキョウは思わず箸を止めて聞き返した。
 そのツッコミを受けたみゆきも自分が話した内容が内容だけにそれを予想していたのか、先程の苦笑いのままキョウに向き直る。

「それが母に聞いたところ、たまたまリビングのテーブルに父が片付け忘れたゴルフ雑誌があって、たまたま懸賞ハガキのついたページが開いていたので興味本位で一枚出してみたらたまたま当たった、ということでして。当たったこと自体は喜んでいましたが、結局本人には使い道がないので父に押し付けるハメになった次第です」
「アハハ、運の無駄遣いだな~」
「フフ、でも凄いね~」

 豪快なのか適当なのか。
 判断に困るところではあるが、このように時々突拍子もないことをすることがあってもいつも優しい母親がみゆきは大好きだった。
 そんな彼女は、その母親の行動を話題にすることで友人に笑顔を齎せたことについて当人に感謝すらしながら愛情を深めていく。
 そして目の前で笑う合う柊兄妹に「困ったものです」と言いながらも、一緒になって笑い合える現状に無上の喜びを感じていた。
 だがそんな三人を余所にこなたは一人、眉間に皺を寄せつつ腕を組んで一言。

「ぬぅぅ、高良家には各業界に対して一体どれほどの影響力があるのだろうか……?」
「いや、そんなもんある訳ないだろ」

 いつになく真剣な表情、そして懐疑的な言葉。
 ピョコピョコとくせっ毛を揺らすこなたにキョウはしかし、何言ってんだこいつと呆れた様な口調でツッコんだのだが。

「何を言うかッ! 私なんて懸賞に物凄い愛情と努力を捧げてるんだよッ!? そんな私だからこそ、ゴルフバックなんていうそこそこ根の張りそうな懸賞が偶然だけで当選なんてあり得るだろうか? いや無い、と主張するのだッ!!」
「はぁ?」

 しかし返ってきた言葉は、キョウにとって訳が分からないものであった。
 まぁ訳が分からないこと自体はこなたの代名詞とも言えるので気にしなかった彼だが、彼女の普段の振る舞いを顧みた彼は脳裏に浮かんだ疑問をそのまま問い掛ける。

「お前が愛情? どーゆー事だよ?」
「お前が愛情? ってのはどーゆー意味だい?」

 彼にとっては至極自然な発想ではあるが。
 胡散臭そうな様子がありありと分かる声音で言われたそれを聞いたこなたは、引き攣つった微笑みと共に額へ青筋をも浮かべて聞き返す。
 その胸中は本人には隠しているが、恋心を抱いている本人にそんな暴言を突きつけられかなり傷ついていた。
 それ故に、しかし怒りの方が先に立っていた彼女は寧ろ今にも掴みかからんといった雰囲気を纏っていく。
 だが、朴念仁が代名詞のキョウをしてそんなことに気づく訳もなく。

「そんなもん自分の胸に手を当てて考えれば…………すまん」
「何故謝るッ!? でも謝れッ! だが謝るなぁッ!! くそう、くそう、うわぁぁぁぁん……」

 更に暴言を重ねるが、言いながら自然と視線を向けたこなたの胸を見て何故か(?)申し訳なくなり顔を背けながら謝罪してしまう。
 対するこなたはあまりにあんまりなキョウの態度に泣きながら訳が分からない、しかし的確だろう慟哭の声を上げテーブルに突っ伏した。

「この場合、どっちが正解なんだろうね……?」
「え、え~と……」
 
 そんな遣り取りから取り残されたのは。
 透明な表情で自分の胸を見ながら呟き、明日キョウに食べさせる昼食について思いを巡らすつかさと。
 その彼女に問い掛けられ、難しい難題に頭痛が痛んだ(?)みゆきだった。

 ……親しき仲にも礼儀と気遣いは必要です。
 ……良い子は相手の気持ちになって発言するように心掛けましょう。

「じゃあこなちゃん。懸賞ってどうやったら当たるのかな?」
「ひとえに~、愛だよッ!」

 食堂という衆人環視下で騒いでしまったことから、当然の如く注目を集めてしまった四人。
 その中で一際大声を上げていたこなたも流石に居た堪れなくなり大人しく席に着くと、同じく羞恥に苛まれていた四人は忙しない様子で食事を片付けてそそくさと二年B組の教室へと退散していた。
 そしていつもの窓際席に到着し、先程の話題を基に談笑を再開するのだが。

「……なんだその蔑むような目は。俺に愛がないって言いたいのk「まぁ普通に書いてちゃ、当たるモンも当たらないけどね~」悪かったよ、頼むから機嫌直してくれ……」

 食堂での遣り取りからこなたはキョウに対し若干険悪な態度を示し、それに対し彼も一旦は対抗してみせるものの敏感で繊細な乙女心を大いに傷つけられた彼女は容赦がない。
 一見すればいつもどおりの様子を貫こうとするだけに余計性質が悪く、流石のキョウも一方的に譲歩せざるを得なかった。
 まぁ譲歩もなにも、一方的に彼が悪いので謝罪するのは当然といえば当然である。
 故に、普段から何かと調子に乗りがちな彼女は虫を見下すような微笑で「フン?」と一言。

「ならこの場で私の目を見つめながら抱き締めつつ、一回一回心を込めて『可愛いよ、愛してるよ』と100回言ったら許そうじゃないか」
「あ、いいな~それ。一生に一度くらいは言われてみたい台詞だよね~。ねぇゆきちゃん?」
「え、あ、そ、その……わ、悪くないんじゃないかな、と。……あ、いえッ! 私がキョウさんに言って欲しいという訳ではなくて、で、でも決して言われたくないという事ではないのですがッ!? ……あ、あぅぅ」
「つかさもみゆきも乗るんじゃない。そんな公開処刑にも等しい条件飲めるか」

 先ほどの食堂と違っていつもの教室だけに見知った生徒達しかいないとはいえ、やはり衆人環視下であることに変わりはない。
 巷では人目を気にすることもなくこなたの言葉と同様かそれ以上のことを平気で敢行するバカップルもいるにはいるが、生憎とキョウには気軽にそんなことをしようとする気概などなかった。
 たとえ目の前にいる女子連中が全員賛同していたとしても、こなたの言葉に悪乗りしているようにしか見えないのだ。
 まして当のこなたと愛し合っている訳でもない上、まともな恋愛経験もない彼にとってこの要請は屈辱的ですらある。

「だいたい普段から宿題見せてやったり運動会のときは保健室に運んだりもしてやったんだ、さっきの借りをチャラにするどころの話じゃないっつーの。寧ろいつになったら預けっぱなしの借りを返してくれるんだ?」
「チッ……」
「よし。チャラ云々の前に、とりあえずお前の人間性へ一言物申すから耳かっぽじれ」

 ジト目で行われる彼の返答は彼にとって当然の帰結であり、寧ろ良心的とすら言えた。
 しかしそんな理屈が、可憐な少女を自称しながらも舌打ちすらしてみせる彼女に通用する筈もなく。
 
「まったく、誠意もない上つまらない男でありんすぇ……」
「……お前はそれで可愛いつもりか」

 盛大な溜息と共に、大仰に首を横へと振り呆れ果てたという態度を見せるこなた。
 そんな彼女の態度に、これ以上ないほど遣る瀬無い様子で力無い皮肉を呟くキョウだったが。
 
「それで、こなちゃんはどう書いてるの?」
「つかさ、空気読m「そりゃあ当たるように書くよ~」……ねぇパト○ッシュ? 僕はもう疲れたよ……」
「あ、あのキョウさん。それ私のことですか……?」

 高まったスルー力の弊害で(?)なけなしの憤りも意見も通らず、救いを求めて縋った先のみゆきには困惑される始末。

「すまん、つい……」

 そんな境遇に何故か(?)涙を流す彼がふと窓の外を見れば、短い命を謳歌せんと赤とんぼが空を舞っていた……。






 ところでその頃の保健室。

「ふゆき~、結婚してくれ~」
「遠慮します。育児休暇取ったらそのまま永久に休暇しそうなので」
「おいおい~? 女の私から男のお前にプロポーズしたんだぞ~? もっと別の言葉を所望するぞ~?」
「まず私の言葉を否定するところから始めましょうか?」
「……なぁふゆき。私じゃ、嫌か……?」
「そうですねぇ、とりあえず今までに貸したお金を返してくれたら考えますよ? というか、自分の生徒をバイキングに連れて行くお金がないだけですよね」
「うぅ~んいけずぅ、愛しいけれど憎いお方ぁん~♡」
「……ネタが古い上にピンポイント過ぎますね。まぁそれはそれとしてお金は返して貰いますから財布出しなさ…「あばよ、とっつぁ~ん♪」…あ、逃げたッ! こら待ちなさいッ!」

 ……どうすんの、このカオス。

 続く?


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