「皆の衆~。 無限再生する奴には『切り札』を使わざるお(を)えない。 俺がいっちょ『切り札』使うから時間稼ぎよろしく。 ちょっと使うのに7,8分かかるから、派手に動いて注意をひきつけつつ、女王に攻撃していてくれ」「できますか、貴方に?」「それはそのまま返すぜ、ノエル君」 ま……仲間には悪いが、我慢してもらおう。 ぶっちゃけて言うと、皆が散開しだい発動できるんだけどね、オーヴァードライブ。 でもね、ノエルには隙だらけの欠陥術法と思わせておく。 だから皆、理解したようだ……ま、わかりきったことか。 だが……何を使うべきか…… 吹雪……風の術具、良いものなかったからなあ……だから却下。 火の鳥……炎のロッドはある……でも水蒸気でも吸った場合のことを考えると危険だから却下。 ……どうしようかな~。「皆、いくよ」「陛下、貴方は私が守ります!」「ハン、気張らない気張らない」 ハンニバルをクールダウンさせるコウメイ。 ま、いっちょやりますか!! 巨大な女王アリの身体が湖につかり、常に湖の水を吸収している。 空に、水中に、地にアリ達が満ちている。 ノエルは、あふれんばかり殺気を放ち、クイーンに呼びかける。「久しぶりだな、ターム!!」「ノエル……忌々しき七英雄……それに!? 貴様は……黄金騎士!!」「私を知っているのか!?」 ジェラールに視線を向けたクイーンが怨念じみた殺気を噴出す。 ……そういえば、大昔に初代ジェラールが13番アイアンでかっ飛ばしたんだっけ? 似ているからな……。「貴様も……生き延びていたとは……七英雄の手先か!!?」「あいにく、七英雄ノエルは敵です。 今は帝国にも、七英雄にも強敵である貴方を倒すまでは休戦・同盟していますが」「……皇帝……忌々しい!! もう一人のクイーンを守るか!!?」 あージェラール、俺が撃退したけど、お前がやった事にしてくれ。 今マークされるのは面白くないからな。 俺の願いを読んだジェラールは言い返す。「ジャンヌを無理やり改造して何を言う!! 私は帝国を害したお前を許しはしない!!」「ならば……七英雄すら恐れる私の力に恐怖して、死ね!!」 クイーンは、地面にたたきつけて、地割れを起した。 地裂撃か……ノエルとジェラールは跳躍して回避した。 テレーズがムーンライトの力を解放する!! 同時にハンニバルが黒曜石の魔槍(2代目)を旋回させ始める……「月影!!」「大・車・輪!!! ドオオオオオリャアアアアアア!!!!」 女王・雑魚諸共に攻撃が吹き荒れる。 蟻人はなんとかしのぎ、女王は再生するため、回避しない(デカイ体では避けられんが)。 だが、雑魚の群れをある程度粉砕するには十分だった。 その直後に三日月の軌跡が走る。「ふん……雑魚が」 メタルアルカイザーの得意技で追い討ちが掛かった。 軽い蟻人は宙を舞う……痛いんだけどね、実際喰らった事がある身からいうと。 恐ろしいのはまだまだ進化を続けるコイツだが。 おっと……集中している振りを続けなければ。 コウメイも術を飛ばす。「ストーンシャワー!!」 術式は比較的簡単だけど威力は高い。 ま、打撃属性だからヌルヌルなスライムには効かない。 スライム娘というエロエロなモンスターはいないのが残念だ。 妖怪ならぬ溶解人間という気持ち悪いのはいるんだが……。 おっと、いかんいかん。 ノエルは剣を持ったままカポエラキックをかまし、着地した瞬間になぎ払いを放つ。 体勢が大きく崩れる……ノエルの脚力の恐ろしさも然る事ながら流れるような連続攻撃に恐るべきものを感じるな。 ジェラールが流し切りで追撃をかけるが、再生するクイーンは怯まない。 ノエルの脳天を割らんと必殺の打撃がくるが、カウンターのパンチを叩き込む。 だが、ダメージを覚悟しているためか、勢いは止まらずにノエルの肩を打つ。 同時に超音波で敵を一掃しようとする!! だが、コウメイは袖口から小型の銃……デリンジャーが飛び出し、発砲する。 器官に銃弾がめり込み、音を出す事を防ぐ事に成功した。「……頼みますよ、ハオさん」 コウメイはダルそうな声を出す。 その後もしばらく雑魚を巻き込む広範囲攻撃を繰り返す皆。 ……もうそろそろだな。 皆……というよりノエルがクイーンと接近戦していて俺からの注意を外れている「シャドーサーバント」 一見なにも変化していないように見えるだろう。 本番はここから。「オーヴァードライヴ!」 世界は静寂に包まれる。 ……クイーンが放った地裂撃の跡……使えるな。「クラック」 地面が裂ける。 そして俺の影が俺の術をトレースしてまたクラックが発動して更に大地に傷を生む。 シャドーサーバントは俺の行ったことをそのまま繰り返す分身を生み出す術。 そして湖まで走る亀裂を更に広げるために……「超重力! 超重力! 超重力! 超重力!」 特大の重力弾が八発。 湖に底の見えない大きな亀裂を生み出す。 皆が巻き込まれないのか心配だが。「そして時は動き出す……ってね」「な!?」「これは!?」 クイーンとノエルは驚いた。 一瞬にして大地が裂けて湖の水が引いていく。 ジェラールとノエルが同時に動く クイーンは無念そうに呟く。「おのれ……皇帝! おのれ……ノエル!!」「お命、頂戴します」 「神速三段突き!!」 ノエルの剣が稲光に包まれ、神速の一撃が入る。 その後にジェラールの三段突きが入り、クイーンの頭部に突き刺さった。 長年生き続けた脅威の存在の生命はここで幕を閉じることになった。 野生のモンスターは、クイーンのコントロールから離れ、野生に帰った。 蟻人は湖の水が尽きれば死ぬ運命だ。 クイーンの遺体・卵は完全に処理した(モールに魔女、そしてオウルを呼び、対処したから恐らく間違いないだろう). 野生のタームも他の昆虫モンスターと同じく野生に帰った。 クイーンがいなくなり、急激に増えることはまずないだろう……もっとも、突然変異でクイーンが生まれ出れば話は違うだろうが……。 おそらく、自然競争に負けていき、緩慢に滅んでいくだろう。 移動湖は俺の術法……なにより、クイーンのお陰で湖の水源に異常が発生し、湖水が湧かなくなった。 後に解った事だが、移動湖が生命力を奪い続けたお陰でメルー地方は砂漠化したと推定され、緑化活動の進み方次第ではメルー地方は緑につつまれるかもしれないそうだ。 サグザーは、住まいが壊され、考えた末にアバロンのモンスター街に住むことにしたようだ。 他の古代人とも気が合わない為に移動湖に隠者のように暮らした彼らしい。 ノエルとは……ここでやる気は失せたからまたいずれ決着をつけることになった。 ノエルから最初のような殺気は消えていた。「皇帝陛下、それにハオラーン。 決着はいずれまた……」「ああ……やりあいたくはないが……」「同感だね」「ですが……対決は避けられない。 仲間との誓いもありますので」「……そうだな」「今度は倒させていただきます。 それまではお元気で」 そういってノエルは去っていった。 殺気は消えたが、それ以上に澄み切った闘志に満ちている。 ……ますます手ごわくなったかも。 しかし、残る七英雄はノエルとダンターグどちらも強敵だ。 そしてブラッククロス……アシュラと『奴』か。 あのゴブリンがああなるとは……執念は恐ろしいものだ。 同時期、ナゼール地方にて。「きゅー」「ふえ……怖いよ~」 サイゴ族の少年は群れから離れたムー(サイゴ族が飼っている家畜)の子供を保護した。 だが、雨が降ったので近くの洞窟に雨宿りをした……最近地震で空いたようだが、モンスターがいなかった。 その場所の周りは昔から不思議をモンスターが寄り付かなかった場所だった。 だから安全であった。「……ふええ!!?」 少年は焚き火をした時に洞窟の奥から大きな声が聞こえた。 恐る恐る奥にいくと……「きょ、巨人!?」 半透明の繭の中に巨大な魔物がいた。 10の宝石が埋め込まれた山のように巨大なカエルのような魔物が。 そして頭部には様々な魔獣のパーツが混ざった獣人らしき巨人の半身が付いていた。 いつ還るか解らないが一つだけ少年に理解したことがあった。 あれは誰にも勝てない……ドラゴンとか悪魔とかそういう範疇を超えた存在だと。「ノエルさま」「お前達か」 ノエルの周りに複数の陰が現れた。 そのうちの一人が言う。「皇帝はいかかでした?」「侮っていないつもりが大いに侮っていました。 恐ろしく強い存在でした。 そして皇帝以外にも恐ろしい存在が……私でも危ういかもしれません」「やはり、我々が……」「ええ、次回の決戦では貴方達の力を借ります。 そして、貴方達に頼んでいた『例の物』の力が必要になるでしょう」 簡単な解説黄金騎士……GAROの称号を持つものではありません。初代ジェラールが13番アイアンでかっ飛ばしたんだっけ……いや、事実だけどさ。 ちょっと違うんじゃない?神速三段突き……サガフロの必殺技。 終盤まで使える優れものである。残る七英雄はノエルとダンターグ……クジンシー(泣)。巨大な魔物……そうです、ジェラール一世に煮え湯を飲まされた彼です。