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No.5057の一覧
[0] ひとがた。[はいはいテストテスト](2016/08/11 23:25)
[1] 1.はじまり[high2test2](2011/12/18 21:42)
[2] 2.目覚め[high2test2](2011/12/18 21:42)
[3] 2a.[high2test2](2011/12/18 21:42)
[4] 3.蝕むもの[high2test2](2011/12/18 21:43)
[5] 4.その視線の先には[high2test2](2011/12/18 21:49)
[6] 4a.代替物[high2test2](2011/12/18 21:49)
[7] 5.魔法[high2test2](2011/12/18 21:49)
[8] 6.予備素体[high2test2](2011/12/18 21:49)
[24] 6a.意地[墨心](2011/11/20 14:45)
[25] 7.始まりの少し前[墨心](2011/11/27 02:23)
[26] 7a.プロローグの終わり[墨心](2011/11/27 02:26)
[27] 第1回「来訪者」[墨心](2011/12/31 20:33)
[28] 第2回[墨心](2011/12/17 14:16)
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[5057] 第2回
Name: 墨心◆d8e2e823 ID:ff49da9c 前を表示する
Date: 2011/12/17 14:16

「墜とされたんだって?」

ベッドで横になり新聞を読む私。
突如現れた姉さん。
目が怖い。

「ん?」

………………

「見て姉さんここの記事。鳴海じゃ少女に襲われる被害者続出だって! 怖いね」

「うん。怖いね」

話題を無様に逸らす。
姉さんはニコニコと笑っているだけだった。
その笑みが怖い。吐息を挟む。
やれやれと頭を掻いた。

「不意打ちだったの」

「奇襲はオルタナの十八番でしょ?」

得意とはいっても所詮は模擬戦での話。先に補足され、凌げなければこうなる。
とはいえ、これで口論するつもりもない。
新聞を折り畳みながら言葉を飲み込む。

「私の負けでいいよ」

「そっか」

ていうか、腑に落ちない。

「……どうして姉さんがこっちに?」

ここは海鳴。

「それは私の台詞だよオルタナ」

またにっこりと笑う姉さんだった。
敵わない。
本当に。

先日、私はジュエルシードを追い第97管理外世界、海鳴へとやってきた。
そして何者かの迎撃を受けこの様だ。バリアジャケットを纏っていたけど、頭から落ちて打ちどころが悪かったせいか、少し首が痛い。

「学校は?」

私は尋ねた。

「自主休校。こんなに騒がしかったら、ね」

「ふーん」

私と同じだった。
痛む首を摩ると、部屋の扉が開かれる。
リニス現る。

「フェイト。オルタナ。食事にしましょう」

「うん」

「はーい」

首を摩りながら立ち上がる。3人で寝室を後にするとリビングへ。
まだ新鮮な感覚が残るリビングに赴くと母さんがいた。既にテーブルの上には食事がある。
良い匂い。

「二人とも座りなさい」

少し厳しめに言われた。座ってる母さんは少し怖い。
私達は大人しく腰掛けた。傍から見ればこれから怒られる姉妹という言葉が似合うかもしれない。

「貴女達、食事が終ったら直ぐにミッドに戻りなさい」

「え?」

「いただきます」

姉さんの呟きと母さんの言葉を他所に私はパンに手を伸ばす。

「オルタナ」

厳しめの声に手が止まる。
大人しく皿の上にパンを置いて手は膝の上へ。

「貴女達は学校に行ってるんでしょう?
なら学生としての本分を真っ当しなさい」

「正直、あそこはどうかな。私も姉さんも持てあましてるし。ちょっと退屈かも」

「オルタナ……」

いけない。調子に乗ったら母さんの眉間に皺が寄ってしまった。
血圧が高くなってしまう。そこに、姉さんの手が私の手の上に乗せられる。

「私は家族といたいよ」

呟き一つ。

「私は学園に居るよりも母さんやリニスと一緒にいたい。
勿論オルタナもアルフも」

姉さんにしては珍しいどうしようもない我が儘。でも、母さんは切り返さなかった。
強気の言葉で押し切る事も無い。

少し俯いてから目を閉じる。
コーヒーカップから湯気が揺れている。
少しの間、母さんは考えていた。そして吐息が落とされる。

「解ったわ。
貴女達の好きになさい」

意外な事に簡単に折れた。想定外。もっと帰れ帰れと言われると思ったのに。
それに、諦めて折れたというよりも私達を尊重して自分から折れたという風に見えた。

「さあ、食事にしましょう」

まあいいや。

「いただきまーす」

私は改めてパンに手を伸ばす。食事が始まる。
でも、母さんに不意打ちを貰う。

「貴女達はこっちの学校に通いなさい」

「ぐぷっ」

むせた。
思いっきりむせた。

「平気?」

姉さんが背中をさすってくれる。

「ありがと……何、こっちの学校?」

「この世界でも義務教育というものがあるのよオルタナ。
当然でしょう?」

「むー」

それは否定できない。今いる世界は第97管理外世界地球。
魔法が一般的じゃない世界でもあり、私の人格にまざる人物の故郷に酷似してる。
それも日本なら平日からふらふらしているのはかなりおかしい。ていうか補導されちゃう。

母さんの言ってる事はまともだ。
でもなんか悔しい。
パンを貪る。
リスのように。

「オルタナ、ちゃんとおかずも食べなさい」

そして怒られた。
バツが悪い……

紅茶に手を伸ばしながら、私は姉さんをちらりと見る。

「姉さんはいいの?」

「なにが?」

「こっちの学校。向こうもだけどさ」

「どうかな。でも母さんのこと心配だし」

紅茶の湯気を飛ばしながら口づける。
あんなことがあれば、それもそうか。

「学校ってここから近いの?」

「歩いて大凡30分といったところね。
聖祥学園ってパンフに書いてあったわ」

「そっか」

なんだか聞き覚えがあるような、ないような。
もう、覚えてないや。

「楽しみだなぁ」

萎えてる私を他所に姉さんは凄く前向き。
逞しくなりすぎだってば。

「オルタナは楽しみじゃない?」

そう振られても、戸惑うしかない。

「……うーん……行ってみないとね」

といって逃げておいた。
正直学校自体はどうでもいい。

食事が終ると自室に戻る。
ベッドに腰かけ横になる。
まだ少し、首が痛かった。

顔を顰めてしまう。

「―――」

少し思い出す。

私を迎撃してくれた桃色の砲撃。
時系列のおかしさに少し首を捻る。

できれば、もう接触したくない。
首も大人しくしていれば平気だし。

何気なく首元に手を伸ばそうとした時。
コインが枕元に落ちていた。
姉さんのだろうか。
ミッドのものだ。
それを手にすると指先で弾く。硬質な音と共に天井に衝突し
戻ってくる。

そうだ。

私はなんとなく思った。
落ちてきたコインをキャッチして裏か表か見てみると
裏だった。即断即決ということで起き上がる。
首に痛みが走った。涙目。

「あいたたた……」

と言いながらも経ちあがって部屋を出る。
リビングに赴くと、まだ三人は食後の会話を楽しんでいた。

「リニス」

「なんですかオルタナ?」

「お願いがあるんだ」

姉さんも母さんも、頭上に?マークを浮かべている。
とりあえず地球での生活。楽しめればいいんだけど。






第2回






揺れるバスに乗る。エンジンの駆動が座席越しに伝わる。
後、他の生徒達の会話がたえまなく聞こえてくる。窓越しに流れる景色を見つめながら、隣に座る姉さんの姿が
窓の反射に映っている。回りは盗み見るように私達を時折見ている。

金髪の姉妹。

確かに外人は珍しいかもしれない。
それも、唐突に日常に現れたら。
やっぱり珍しい。

「…………」

私は伊達眼鏡越しの風景を見つめ続けた。
かつての記憶、故郷を思い起こす。
でもここには、「俺」が知っていた母さんはいない。
「俺」の存在も無い。在るのはアリシアと混ざった私だ。

「俺」はただの情報に過ぎないんだ。
すごく、他人事だった。

でも同時に、どうしようもなく懐かしかった。
私になったつもりでも、まだ、割り切れない。

割り切れる日なんてこないのかもしれない。

疼く胸を押さえて目を閉じる。


学校に到着すると職員室、とやらに向かう。
そこで担当の教師に話を聞く。どうやら私達姉妹は同じクラスらしい。

「良かったね、オルタナ」

笑顔の姉さん。

「そうだね」

とりあえず同意しておく。
気軽に話せる相手が傍にいるというのは楽でいい。
助かるよね。

簡単な話も終ると教室へと移動する。
廊下で待機を指示され、元からいる子にとってはイベントのような気分かもしれない。

「楽しいクラスだといいね」

「そうだねー」

本当に他人事に話す。
もうなんでもこい。教師からの合図をもらうと、中へ。
大多数の目線を浴びるというのは非常にむず痒い。

「それでは紹介を」

まず姉さん。

「フェイト・テスタロッサです。
よろしくお願いします」

ぺこりと愛想ある笑顔で一礼する。
続いて私。

「オルタナ・テスタロッサです」

ぺこりと一礼する。でも、私はもう長い髪はない。
リニスに切ってもらったお陰で酷くこざっぱりしている。
眼鏡もおまけだって私視力弱くないし――と。

驚きの眼差しを向けてくるある人物を見つけた。
とても解りやすい態度で助かる。でも私は表情を変えない。
姉さんのように笑顔は作らない。疲れるし。

「それじゃあフェイトさんはここの机で。
オルタナさんは奥の空いている席でお願いします」

「はい」

姉さんは軽快。私も教師の指示に従う。
でも、私の隣の席がなのはちゃんだったのは少し驚きだったけど。

「宜しく」

「よ、よろしく――」

挨拶だけするとなのはちゃんも返してくれた。
なのはちゃんはずっと私を見ている。
とりあえず無視しておいた。

「き、教科書まだ無いよね?」

「持ってるよ」

そこで会話を終える。
私少しドライかな?
転校生の珍しさはどこの世界でも似たりよったりかも知れない。
ミッドでもそうだった。異物の混入は誰でも気になるのが筋。

でも私の席に来る子は皆、対応が悪い事を知ると離れて姉さんの方へ行く。
面倒臭くなくて助かる。あっちは笑顔。こっちは適当。当然かもしれない。
授業もそつなくこなし、昼休みになるとリニスが作ってくれた弁当を手に屋上へと赴く。

煩わしさからの離脱。
それでも、そこらかしこから子供達の楽しそうな声が聞こえた。
眩しい太陽の日差しを浴びながら適当なベンチに腰を下ろす。
食事を始める。

リニスの手作り弁当に舌鼓を打っていると、姉さんも姿を現す。
当然、私に寄ってくる。

「誘ってくれたらいいのに」

なんて事を。

「クラスの人達と食べるんじゃなかったの?」

「断ったよ」

と言いながら弁当箱を開けて一言添えると食べ始める。
何をしても様になる姉さんだった。

「(外見は私も同じか)」

そういえばそうだった。甘くておいしい卵焼きを口にしながら気付く。
家族に知れたら呆れられる事間違いなし。空腹から満腹になると満足して眠くなってくる。
早めに教室に戻って寝ようかと思っていると屋上に新たな来訪者が顔を見せた。

姉さんも気づいた。
なのはちゃんだった。私の隣の席の人。
彼女は一直線に私達のもとにやってきた。

「隣座ってもいいかな」

「どうぞ」

拒む理由がない。私と姉さんの言葉は重なった。
弁当箱は小さな巾着袋に入れて片付ける。

「高町さんはどうしたの?」

流石。
もう名前を覚えている姉さんが尋ねた。

「うん。あのね」

なのはちゃんは改まった。

「ジュエルシードから手を引いてくれないかな、フェイトちゃん」

「――――」

「…………」

ダイレクトな物言いに姉さんは目を丸くした。
私も無言だったけどある事を悟る。

姉さんは私を垣間見てから再び、なのはちゃんを見る。

「条件付きならいいよ」

「え?」

今度はなのはちゃんが目を丸くした。
断られる前提だったのかもしれない。

「私の質問に何回か答えてくれたらね」

「う、うん」

姉さんの雰囲気に押されたのか。言葉が少し弱い。
いつも通りの笑いがこぼれる。

「それじゃあ、高町さんは誰にジュエルシードのことを聞いたの?」

いきなりダイレクトすぎな姉さんだった。
心臓が締め付けられるよ……

「えっと、魔法を教えてもらってる人に――」

「管理局の人?」

「え、うん」

「なのはさんも管理局所属なの?」

「うん」

「そっか。ありがとう」

「それじゃあ」

「私、昨日この世界に来たばっかりでジュエルシード探した事無いよ
探す気もね」

「え゛」

なのはちゃんが固まった。

「なのはさんが撃墜したのは私じゃなくて、オルタナだよ」

私は目線も合わさず無言を貫く。

「え……」

なのはちゃんから驚きの眼差しが向けられる。
でも私は変化しない。静かな吐息を挟み立ち上がる。
見上げる眼差しと見下ろす眼差しは交差する。

「話はそれで終り?」

なのはちゃんは無言だった。私は踵を返すけど姉さんに手首を掴まれる。

「まあまあ、オルタナ。待ってよ。
それじゃなのはさん最後の質問ね」

「う、うん」

「私達と友達になってくれるかな」

「え?」

「友達。勿論答えがノ―でも構わないよ。
答えてくれればそれで大丈夫」

姉さんは優しい。でもなんだか癪なので付け加えておく。

「私達はただの一般市民。
この世界に来たのも正式な手続きを踏んでる。
ロストロギアにも手は出さない」

「じゃあどうしてあの時……!」

なのはちゃんは少し声を大きくした。最後の一瞥を送る。

「私はジュエルシードの輸送船に乗っていただけだし。
ロストロギアの拡散を防ぐごうとしたらああなっただけ」

「え゛」

それだけ言い残すと姉さんの手を擦りぬけて後にする。
その後、なのはちゃんと姉さんは友人になったと念話で聞いた。
オルタナもなればいいのにというのはスル―した。

残りの授業も適当に受けて初日を終える。
バスには乗らず徒歩で帰る途中――念話を受ける。姉さんだ。

”――はい。”

"あ、オルタナ?"

”うん”

”先帰っちゃうんだもん、少しは待っててよ”

”ごめんね、姉さんは友人が多そうだったから”

”オルタナも作ればいいのに”

”ありがとう。でも気持ちだけで”

”もうっ。 あ、帰りになのはちゃんの家よってくから少し遅くなる。
ケーキ屋さんやってるんだって”

”良かったね”

”うん”

”楽しんで”

”あ、オルタナもなのはちゃんと友達に――”

そこで念話を切断する。
自分の足音だけがいやに大きく聞こえる。

私は家族だけが大切というわけじゃない。
でも、大多数の友人は煩わしかった。
今はいらない。海とすれ違う自動車を眺めながら歩く。
涼しい風と排気ガスと潮の匂いが特徴的だった。

管理内世界では嗅いだ事の無い匂い。
とても、懐かしくもある。目を閉じる。
―――子供のはしゃぎ声が耳の奥で聞こえていた。
車は過ぎ去る。







「オルタナ」

夕食を食べ終えベッドで横になっていると、姉さんが姿を見せた。
眼だけ動かす。

「何?」

「なのはちゃんとジュエルシード探し、行ってくるね」

「うんうん」

「味気ないなぁ」

首の痛みはなくなってきたけど、手をひらひら振って見送る。

「そんなことないよ。
必要なら呼んで。私も出るから」

「うん。
あ、そうそう」

「ん?」

姉さんは何か言い残したのか踏み止まる。

「今日ね、なのはちゃんのおうちでやってるお店に行った時。
友達を一人紹介してもらったんだけどさ」

「うん」

「その子も魔力持ちだったよ」

「ふーん」

あまり興味がない。
八神はやてかな。

「興味無い?」

ダイレクト!
なんてお姉さま。

「んーっていうか、コメントし辛い感じ」

「そっか」

そう言いながら姉さんは笑うんだけど。

「何かあるよ」

「何かって?」

意味深な言葉だった。

「私も何なのかは解らない。
でも、何かだね」

「何なの?」

「裏があると思うんだ。またなのはちゃんから話を聞きだしたんだけど
なのはちゃんに魔法を教えてくれた人も魔法使い。管理局所属。それでね。その魔法使いさんは
お友達ちゃんの保護者役もやってるらしいんだけど――その子、魔法は知らないんだって。リンカ―コア持ってるのに」

いいことを聞いた。
私は少し話に乗る。

「考えすぎじゃない?」

「やっぱり?」

そういって姉さんは笑う。

「行ってくるね」

「うん。行ってらっしゃい」

姉さんは家を出ていった。
私は天井を見る。姉さんは鋭いんだかあてずっぽうなんだか解らない。
でも、なのはちゃんに魔法を教えた人がユーノ・スクライアじゃないことがこれで確定した。
不思議な話。

それともう一つ。多分、姉さんは私にも何か隠している。
と思う。
今私に言ったのは冗談半分。でも、確信すればもっとハッキリ言ってくるかもしれない。
事実、一応の流れを知る私からしたら怖くてなんとも言えない。まっくろくろもいい所。
ため息を落とす。

「しーらない」

目を瞑る。
意識は遠のいた。

「あ! 寝るならお風呂入って歯磨いて着替えてからですよオルタナ」

ひと息に言われて目覚める。
リニスが部屋の前を通りかかったのが運の尽き。
別にやましいこともないので、部屋の扉はいつもあけっぱなし。
時計を見ると、数時間が経過していた。頭を掻く。

「あい」

リニスとなんとかには勝てない、と。時計を見るといつの間にかもう深夜に近かった。
寝てもいいけど、姉さんとなのはちゃんの魔力がまだ動いているのを関知すると
風呂に入る気にはならない。衣服の上からバリアジャケットを纏うと窓枠に足を引っ掛けて、外へ飛び出る。

「行くよレーベン」

景気づけに名前を呼ぶ。ちなみに、私の部屋は二階。
飛行魔法で大空へと上がっていく。もっと、もっと、もっと―――。
どこまでも高く。街の景色があっという間に豆粒になるのも一瞬だった。

「はは」

夜景は綺麗だった。
この世界の空も悪くない。
満更でもない。
月も綺麗だし、空気も割と澄んでるし。

「地球もいいね」

レーベンのコアが点滅する。
勿論返事をしているわけじゃない。
機能が正常作動している証拠なだけ。
でも、それが私には生きている証拠に見えて仕方ない。
機械への愛着かもしれない。

姉さんとなのはちゃんは結界を張ってジュエルシードと頑張ってるみたい。
いい傾向。是非ともその調子で頑張って欲しい。応援してる。
心の中で。

大きな呼吸を繰り返しながら冷たい酸素を取り込んでは吐きだしていく。
少し白い息が綺麗。

”―――誰か”

「ん?」

”―――誰か助けて”

ふと。念話を受信する。
それもオープンチャンネルで誰彼構わずに送信している。

”――――――誰か、力を!”

「スクライアだよね」

ひとりごちに呟く。
でも、今姉さんとなのはちゃんは別件に当たってる。
私は関わらない、と決めた訳でもないので念話を送る。

”姉さん、今の念話の送信者の所には私が行く”

”お願い。ちょっとこっちも手が離せないんだ”

”任せて”

そこで念話を切ると、レーベンに位置探索をさせて場所を特定。
一気に滑降する。雲を突き抜けみるみる間に街が近づいて行く。
ユーノ・スクライアの場所は夜の公園。

数秒で、公園近くまで来るとユーノの居場所に急行する。
まだ、思念体とユーノは対峙していたが

「!?」

そこにいたのは、まだこの世界では見ない車椅子姿の八神はやてであった。

「君は!?」

「魔導師―――救援!」

手が出せない。
状況が解らない。
レーベンを操作して目の前の相手が思念体と確認するけど――やっぱり八神はやてには変わりない。
何?
どうなってるの?
八神はやての近くにジュエルシードがあってそれが願いとして発動でもしたの?

「―――――」

考えても答えはでない。

「ぎぃ」



「ぎぃ」

???

「ぎぃ」

?????

「あぎぃ――」

奇妙な声が何度も聞こえた。
それは思念体・はやてから発せられているものだった。
口は大きく開かれ甲高くソプラノ歌手でも到達しないような大声が飛びだしてきた。
殺人ボイスというわけでもない。
それが

高く。
どこまでも高く。
美しい剣のように研ぎ澄まされた声が天に昇っていく。
類似する生物の声はない。

少女の姿とのギャップが大きい。
だが、狼の遠吠えを私に思い出させてくれる不思議な声だった。
身の毛がよだつ。
攻撃も、防御も、逃げもせずず思念体・はやての声を聞く。
透明であまりにも美しい声。

――これが死を覚悟している八神はやての内にためられているものっていうの?
私は迷い続ける。でもユーノ・スクライアは違った。
バインドを仕掛ける。

思念体・はやての声は途絶え私の意識も普段のものが戻ってくる。

「早く!」

リングバインドとチェーンバインドに締め付けられ身動きが取れない思念体・はやて。
とても苦しそうだった。どこか、罪悪感を感じてしまう。

――ごめん。

心の中で謝罪していた。
スタンモードに近い射撃を思念体に連続して加え一気にジュエルシードを封印してしまう。
後に残るのは美しい結晶と夜の公園の静けさだけだった。静謐さが私の心を覆う。

今浸っている感情は――苦しみだ。
そして僅かな後悔だった。
無念の想いに浸ってしまう。

「………………」

なんとも言えない気持ちだけが残った。
でも、いつまでもそうしてはいられない。
顔をあげ気持ちを切り替える。

「平気?」

「ああ、うん。だいじょうぶ――」

フェレットはそういいながら倒れてしまう。仕方がないので回復魔法をかけながら、ジュエルシードとフェレットユーノを手にするとその場を後にする。
空にあがると、丁度高町なのはとフェイトと出くわす。

「オルタナ」

「こっちも終ったよ、姉さん」

向こうも、さしたる問題も無く終ったみたいだった。

「高町さん」

「な、なに!?」

そんなに驚かないでよ。傷つくし。
ジュエルシードを投げ渡す。

「わ、わ」

「あげる」

それだけ言い残すと私はテスタロッサの家まで一足先に戻った。
自室の窓から中に入る。適当な籠に小さな毛布を敷いて、ユーノ・スクライアを寝かせる。
真っ暗な部屋の中は、公園同様静かだった。あの八神はやては何だったのだろうか?

答えはでない。
全身を覆うバリアジャケットを解除すると風呂に入ってそのまま寝た。






翌日。
当然、私には学校がある。
ユーノも起きていた。
リニスに説明して任せた。

なんだか、隣の席の高町なのはがそわそわしてる。
話しかけてこなかったので全部無視。
下校時、私は何気なく図書館に寄ってみた。
もしかしたら八神はやてがいるかもしれない、という下心だったんだけど。

「あれ――フェイトちゃん?」

いた。


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