『夢をみました。朝起きて、家を出て、学校に向かう夢です。
教室に入って席につき、友人と挨拶を交えている時に、目が覚めました。見慣れてしまった窓の外を見て、しばらくは何が現実だったのか、考えてしまった程です。
この世界へ来た時、十六歳になったばかりでした。高校に入学してまだ日が浅く、クラスでもお互いの様子を探るように、交流を深めていたはずです。そうして、息の合う学友たちを探し出して、そろそろ慌ただしい日常を繰り返すのだろうと、信じていました。
帰る方向が同じで、共に帰路についていた友人は、その日、確かに僕に向かって言いました。「また、明日な」と。
僕は友人が発したその言葉に、特に深い感慨を受けることなく、言葉を返したはずです。再び訪れる明日のことを、何も疑いはしていませんでしたから。しかしその日を境に、僕は日本という国、いえ、地球という星の上に立つことすら、叶っていません。
この世界は、紛れも無く『異世界』なのだと認識するまで、それなりの時間がかかりました。しかし一度認めたからには、逃げるわけにも行きません。この世界が、今の僕の現実です。
そういう心構えで、今はなんとか前向きにやっています。ご家族の皆様も色々大変だと思います。それも自分が原因であるのに、こんなことを言えるのかどうか分かりません。だけど、どうかお元気で。また手紙を書いて送ります』