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No.4919の一覧
[0] ハッピーエンドを君達に(現実→シークレットゲーム)【完結】[None](2009/01/01 00:10)
[1] 挿入話Ex 「日常」[None](2009/01/01 00:05)
[2] 第A話 開始[None](2009/01/01 00:04)
[3] 第2話 出会[None](2009/01/01 00:05)
[4] 第3話 相違[None](2009/01/01 00:05)
[5] 挿入話1 「拠点」[None](2009/01/01 00:06)
[6] 第4話 強襲[None](2009/01/01 00:06)
[7] 第5話 追撃[None](2009/01/01 00:06)
[8] 挿入話2 「追跡」[None](2009/01/01 00:07)
[9] 第6話 解除[None](2009/01/01 00:07)
[10] 挿入話3 「彷徨」[None](2008/12/20 20:05)
[11] 挿入話4 「約束」[None](2008/12/10 20:01)
[12] 第7話 再会[None](2009/01/01 00:07)
[13] 第8話 襲撃[None](2009/01/01 00:08)
[14] 挿入話5 「防衛」[None](2009/01/01 00:08)
[15] 第9話 合流[None](2009/01/01 00:09)
[16] 挿入話6 「共闘」[None](2009/01/01 00:09)
[17] 第10話 決断[None](2009/01/01 00:09)
[18] 挿入話7 「不和」[None](2009/01/01 00:10)
[19] 第J話 裏切[None](2008/12/19 04:13)
[20] 挿入話8 「真相」[None](2008/12/20 20:40)
[21] 挿入話9 「迎撃」[None](2008/12/20 20:07)
[22] 第Q話 死亡[None](2009/01/01 00:10)
[23] 第K話 失意[None](2008/12/25 20:01)
[24] JOKER 終幕[None](2008/12/25 20:01)
[25] 設定資料[None](2008/12/24 20:00)
[26] あとがき[None](2008/12/25 20:02)
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[4919] 第3話 相違
Name: None◆c84e4394 ID:a86306dc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/01/01 00:05

色条のPDAの解除条件を確かめようとした時に、部屋の外で柔らかい物を打ち付けたような大きな物音が発生した。
PDAの画面から即座に顔を上げる。
外に敵が居るのなら対策を考えなければ成らない。
持っていたPDAをポケットに仕舞い込み、入り口の扉へと近付いて耳を澄ました。
俺達の緊張が高まる中、外からは戸惑った感じの声がして来る。

「痛たぁ。もう埃塗れですわ。どうにか成らないかしら。
 大体何ですの?どうなっているのですか?もう帰りたい…」

少し泣いているのだろうか?
弱気そうな掠れた呟きが聞こえて来る。
声だけで判断するならば若い女性であろう。
かなり近い所に居る様だが、部屋の中に居るこちらには気付いていない様だ。
3人に対して口に人差し指を当てて静かにしておく様にと促してから、そっと扉を小さく開けた。
声の大きさと感じから相手はかなり近くに居ると考えて、音を立てない様に努める。
部屋の内側に開く扉だった為、外向きよりは視界が確保出来た。
此処から3メートル程度離れた極近い所で、尻餅をついた状態の女性が俯いて座っている。
背を向けているため容姿は判らないが、背中の中くらいまでストレートに伸ばした黒髪とカジュアルな服装をした女性だ。
あんな参加者は居たか?
若い女性の声だったので矢幡か或いは、若いと言えるのかは微妙ではあるが陸島を想像していたのだが、どちらとも違いそうだ。
『ゲーム』についての情報を思い返してみるが、該当者が見当たらない。
確かめた方が良さそうなので、3人には部屋で待機するようにと小声で告げる。
廊下へと出てからドアを薄く開いた状態までで留め、ゆっくりと女性に近付き声を掛けた。

「もしもし、お嬢さん。怪我でもされましたか?」





第3話 相違「3名以上の殺害。首輪の作動によるものは含まない」

    経過時間 6:26



突然後ろから掛かった声に驚いて振り返る女性。
容姿はそれなりに整っており、どちらかと言えば可愛い系である。
服装も可愛い感じの明るい色調のものであり雰囲気に合っていた。
若く見えるが高校生か大学生くらいだろうか?
結局『ゲーム』内の登場人物では該当者無しの見知らぬ人物だった。
桜姫の様なアクシデントでも有って参加者が変更になったのだろうか?
それとも俺の様な現実参入者の可能性もあるのか?
自分が非現実な状態である事を不意に思い出す。
今まで出会った人物は『ゲーム』の登場人物と一致していたし、自分も違和感が無かったので失念していた。
自分だけがこうなのか、他にも居るのかで事情が大分異なって来る。

突然声を掛けた事で警戒されるかと思ったが、女性は振り向いた体勢のままこちらを見上げ続けていた。

「あの、大丈夫ですか?」

再度声を掛けると、少しだけ顔を赤らめてから頷いた。

「ちょっと滑って転んでしまっただけです。大きな怪我はしておりませんわ」

泣き言を聞かれた事が恥ずかしかったのか、早口で答えて来る。
先ほどまでの弱気そうな掠れた声とは異なり、落ち着いた綺麗な声だ。
人と会えて少しだけ精神的余裕が出来たのだろうか。
取り敢えず彼女の現在持っている情報を確認しておきたい。
それと彼女が何者なのかも、確認しておきたい。

「廊下で済まないが、ちょっと話しても良いかな?」

彼女がどんな人物かの見極めが出来てない内にかりん達に会わせる訳にはいかない為、この場で話そうと彼女の隣に座る。
あちらもこちらへと座る向きを変えてくれた。

「俺は外原早鞍。大学院生だ。宜しく」

「ご丁寧に有難う御座います。私は生駒愛美(いこま いつみ)と申します」

彼女は笑顔を見せながら、軽いお辞儀と共に名乗って来る。
出会う前の様子とは異なり随分と畏まった自己紹介だ。
仕草一つにしても自然体で無理をしている様子は無い。

「はは、こちらの方がご丁寧にどうも、って感じだな。それで生駒はどこまで判っているのかな?」

「愛美で構いませんよ。判っている、とは何の事でしょうか?
 考えられるものといえば、何かゲームみたいな機械にルールとか解除条件とか書かれていた事でしょうか?」

「解除条件?」

「はい、確か、全員に遭遇すると書いてありました」

上手く誘導に掛かってくれたが、全員に遭遇という事は7番だろうか?
漆山は棄権でもしたのか?
生駒愛美という参加者も初耳だし困った事態に成ったものだ。
出来れば直接確認したかったので頼んでみる事にする。

「その機械は今持ってる?」

「ええ、こちらにありますよ」

上着のポケットから出てくるPDA。

「その機械見せて貰って良いかな?」

と手を出すと、躊躇いなく出した掌の上に乗せて来た。
余りにもあっさりと進み拍子抜けをしてしまう。
もし彼女が現実参入者であれば、こんなに無防備だろうか?
だが『ゲーム』の事を知らない現実参入もあるか。
それでは「ゲーム」側に意味は無いのだろうが、『ゲーム』と違う世界の者なのかについての確認が出来ないのが痛い。
取り敢えずPDAを確認する事にした。
画面に表示されているトランプの絵柄は<スペードの5>である。
5番?
それが全員に遭遇なのだろうか?
解除条件を出すと、そこには予想も出来ない様な文面が表示されていた。


    「開始から12時間経過以降に、開始から48時間の経過までに全員のプレイヤーと遭遇する。死亡者は免除する」


何だこれは?
確かに全員に遭遇するという条件だが、それ以外の付加条件は見た事が無いものだった。
今までにも小さな「違い」はあった。
でもそれは俺自身の部分を除けば、エピソードが違うのだろう程度で済む話だったのだ。
だが今この目の前にある情報は元々の『ゲーム』設定すら異ならせていた。
『ゲーム』では7の解除条件が、「開始から6時間以降に全員と遭遇する」だけだった筈だ。
PDAの番号も異なっているし、条件も厳しくなっている。
まだ経過時間は7時間も経っていない。
つまりこれから5時間以上も後から開始して、1日半の間に全員と遭遇しなければ成らない。
どうやったらこんな条件が満たせると言うのか?
そういえば、さっきの9番を確認し損ねていた。
持ってきたままだった9番のPDAをポケットから取り出し、こちらの解除条件も確認する。


    「自分以外のプレイヤー全員と遭遇する前に、6階に到達する。未遭遇者が1人でも居れば解除は可能。死亡者に対しては未遭遇扱いとする」


皆殺しではないのか?
色条の解除条件は『ゲーム』に比べれば大分緩和されているが、逆に言えば全員と出会ってしまったら首輪が外れないと言う事か。
いや、解除条件を良く見れば、それは違う。
全員死亡したなら遭遇者無し、で首輪が外れる仕掛けの様だ。
明言は無いが、隠れたキラーカードとも言える。

「どうされましたか?」

こちらが2台のPDAを見て絶句していると、愛美が俺の顔を覗き込んで来た。
どう言えばいいのだろうか?
ある意味5と9の解除条件は相反していた。
9番を優先した場合、出来るだけ会わないようにするので時間制限が厳しい5は生存確率が下がる。
5番を優先した場合、見かけた者には全員会って行くので6階到達前に解除不可になる可能性が有り、9の生存確率が下がる。

「ちょっと君の解除条件について考えていたんだよ。随分と慌しそうな条件だなー、とね」

「そうでしたか?12時間とか48時間とか、まるで映画のようですよね」

暢気にも映画ときた。
しかし事の重大さが判らないとこんなものか。
『ゲーム』でも最初の御剣達の反応は同じ様なものだった。
返す前に愛美のPDAのルール欄を確認してみると、1・2・3・6が記載されている。
ルールの9は残念ながらお預けの様だ。
しかし本当にルール9が見付からない。
現状未確認のPDAもあるがそこは『ゲーム』通りとして、A・2・3・5・9・10・J・Q・Kの9つに載っていない事になる。
残りの4・6・7・8に載っているという事だろうが、重要なルールが中々判らないのは痛い。
どちらにせよルールは知っておいて貰わなければならないし、それで現実も理解するだろう。
上着に入れていたルール一覧の紙を、彼女のPDAと共に渡してしっかりと読んで貰った。
ルールを読み進める内に愛美の顔が強張っていく。

「此処に書いてある事は、本当に事実なのでしょうか?」

一通り読み終わったのか、顔を上げて問い掛けて来る。
しっかりと頷き、これまでの経緯を掻い摘んで話していった。
その後、ルール一覧の紙は返して貰っておく。

「だから、首輪を外さないと本当に死ぬ可能性が大きいんだ。
 君の場合は12時間待たずに、協力者を出来るだけ多く集める必要があるだろうね」

「協力者、ですか?」

「ああ、同行者、と言っても良いかな。
 12時間経過時に一緒に居れば、その時点で遭遇の条件を満たせるから、都合が良いだろう。
 後はその同行者達と協力しながら、他の参加者に会えれば、首輪を外せる訳だ」

「つまり上へ上がりながら、他の参加者を探して行く事に成るのですね」

「その通り。ただ好戦的な参加者には気を付ける事。
 あとPDAの地図についてだが」

そう言ってから彼女のPDAを出して貰い、「機能」の「地図」へ画面を切り替えて貰う。
こちらのPDAの地図も出して現在位置を確認して、その位置を愛美に伝えた。

「今が此処。そして使える階段は×印のついていないもの。これは1フロアに1つしかないみたいだから注意して。
 あと今までの経験上からだけど、各部屋の中には物資が置いてある場合がある。
 真新しそうな段ボールや木箱を見付けたら、出来るだけ中身を確認した方が良いよ。
 飲食物やツールボックスが有ったり。あと武器とかが入っているから」

「武器、ですか?」

「そう、武器。こっちでは残念な事にこんなものを見付けてしまったからね」

言いながら、かりんが見つけた自動拳銃を腰の後ろから取り出す。
勿論銃口を向けるような真似はしないが、それでも愛美の顔は蒼白に成っていた。

「正直、他の参加者がこんなものを持った場合、どのような行動に出るか判らないからね。
 もし君が見付けて武装したとしても、無闇に使用して欲しくは無いな」

話を聞いているのか判らないくらい、愛美は拳銃をじっと見つめ続けている。

「愛美?」

「あ、はい。…申し訳ありません」

銃を持つのとは逆の手を愛美の目の前で振ると、やっと精神的ショックを脱した様だ。
腰の後ろに銃を戻して、話を再開する。

「行動指針は理解して貰えたと思う。慎重に行動しつつ、信頼出来る人をまず見付けて欲しい」

俺の言葉に理解が及ばないのか、不思議そうな顔をする。
こちらが必要なのは早急に6階を目指す事。
時間制限のある彼女には悪いが、条件制限のある色条を今は優先すべきなのだ。

「申し訳無いが愛美。
 こちらには出来るだけ人に会わずに、上を目指さなければ成らない解除条件の子が居てね。余り多くの人に会いたくないんだ。
 勿論48時間経過までには、再度会える様に努める。しかし、一旦此処で別行動としたいんだ」

切り出すと、キョトンとした顔で見つめて来る。
小首を傾げながら。

「一緒に行っては駄目なのですか?」

と尤もな意見を述べる。

「確かに安全を考えたら一緒の方が良いかも知れない。けど君の解除条件を考えると、別行動の方が良いんだ。
 48時間経過時に全員に会えない可能性を減らすため、そしてこの広い建物を探索するには別れてする方が効率が良い。
 こちらに付き合ってしまうと、6階到達までに出来るだけ他者に会わない様にするため、君の解除条件を満たし難いんだ。
 そういう訳だから、次に会う時までに出来るだけ多くの人に会っておいて欲しい」

彼女なりに理解しようとしているのか、悩み顔を見せてうんうん唸っている。
9番の解除を優先すると決めた以上、こちらとしては引けない。
彼女の為にもこれが一番だろう。

「…判りました。
 ですが絶対、必ずですよ?ちゃんと48時間までに会いに来て下さいね?」

暫くの間悩んでいた彼女は、渋々といった感じでこちらの意見を受け入れてくれた。
後の方はこちらの服の一部を掴んで迫って来る様に懇願している。

「勿論だ。何とか遭遇出来るように努めるよ」

そう請け合い、彼女に手を貸して立たせる。

「気をつけて。無事に再会出来る事を祈るよ」

「はい、そちらもお元気で」

寂しそうではあるが、それでも微笑んで立ち去ろうとする愛美。
そこへ場違いな声が響いた。

「待って下さい~~」

「綺堂!?」

待機していた筈の綺堂が俺のすぐ横に立って居たのだ。

「一人は寂しいと思うから~、私が一緒に行ってあげますね~」

にこやかな笑顔で言い切る。
愛美は突然出現した人物に呆気に取られている様だ。
俺も全く気付いていなかったので、心臓が止まりそうな程に驚いた。
だが、この申し出はこちらとしては非常に有り難い。
色々な意味で。

「そうだな。綺堂、愛美を頼むよ」

こっちも出来るだけ明るく言ったつもりだが、この言葉に綺堂の頬が膨れる。

「綺堂?」

「愛美ちゃんの事は~、愛美っ、はーとまーく、って呼んでるのに~。私も~渚って~呼んで下さい~~」

いや、その「はーとまーく」はおかしいだろう。
しかもニュアンス的になんだが、平仮名かよ。
だが『ゲーム』内で結構頑固な所を見せていた綺堂だから、此処で抵抗しても空しい時間の浪費に成ってしまいそうだ。

「判った判った。渚、で良いんだな?」

「はい~。これでラブラブですね~」

「いきなりラブかよっ。あっりっえっねぇー」

途中で冗談と気付いたので、付き合っておく。
愛美の方もこの間抜けた遣り取りで綺堂、改め渚が無害な人物であると判断したのか表情が和らいでいた。
それは間違いなのだが、此処で指摘するのは拙いので黙っておこう。
しかし結局、愛美の正体については判らず終いだった。



通路の向こうへと彼女達が去って行くのを見送る。
後は愛美自身の運に頼るしかない。
だが、1階で何もせず死亡するという拍子抜けな終わり方など、運営側も望んでいないだろう。
それに渚も居る。
彼女が居ればそうそう早期の退場は無いと思う。
いや、これも楽観的か?
同人版だと陸島、コンシューマ版Ep1では葉月と思ったより序盤死亡者の近くに彼女は居たかも知れない。
まあこれは、同じく近くに居た御剣の所為と言う事にしておこう。
そう心の中で言い訳をしてから、かりん達が居る部屋に戻った。
渚が途中で出て来た事もありこちらの様子を見ていたのだろう事は予想していたが、それにより説明が最低限で済んで助かった。
そして現状についての話が終わったので、今後についての話に切り替える。

「以上だが、真っ先に9の条件を満たして色条の首輪を外したい。良いか?かりん」

「ああ、問題無い」

頷いてはっきりと答えるかりん。
最初の頃からすると大分顔つきが良くなって来ている。
妹とほぼ同い年らしい色条が居る為だろうか?
今更気付いたが色条の右上腕部についていた切り傷には、彼女か渚が手当したのだろう包帯が巻かれていた。

「では、まず6階を目指す。到達で色条の首輪が外れるから、出来るだけ一直線に目指そう。
 それから、他の参加者を探すなりして行こう。PDAが無いとかりんの首輪が外れないからな」

そう結論付けて荷物を纏め始める。
色条にはこの説明中に、簡素な固形栄養食を渡して食べさせて置いた。
水も残り少なくなってきたので何処かで補充したいが、飲料水が補給出来るとしたら戦闘禁止エリアの部屋くらいだろうか?
荷物を纏めていると、服を引かれる。
前にも一度かりんに引かれた事を思い出しながら振り向くと、予想とは異なり色条が服の腰辺りを掴んでいた。

「どうした?色条」

「…優希で良いよ。お兄ちゃん」

自分の年齢的に、10歳前後の子供に「お兄ちゃん」と呼ばれるとは思わなかった。
でも「おじさん」と呼ばれたらそれはそれでショックかも知れない。
彼女は俺を恐れていた様だから、これは多分仲良く成ろうとしているのであろう。
今後の彼女の精神状態にも関わるだろうし、その案に乗る事にした。

「判った、優希。俺の事も早鞍で良いぞ」

頭を撫でて答えると、途端に少女の顔が破顔する。

「うんっ、早鞍お兄ちゃん」

輝く笑顔というのはこういうものを言うのだろうか。
満面の笑みを見せた優希が、俺の腕にしがみ付いて来た。

「うわっと。こらこら、これじゃ準備が出来ないだろう?」

いきなりの事に体のバランスを崩しそうに成るが、何とか持ち堪えて苦笑交じりに注意しておく。

「はーい。えへへ、ご免なさい」

注意されたのに優希は笑顔を崩さず、けれども邪魔に成らないように離れてくれた。
こちらの荷物は大きかったり重かったりな物が中心なので、比較的軽いもの中心のかりんの荷物の整理を手伝う事にした様だ。
2人の笑い合う姿を横目で見ながら、彼女達の首輪を外せるように頑張ろうと心の中で気合を入れる。
6階まではまだ遠い道のりなのであった。



一直線に6階に向かう究極兵器、それはエレベーター。
他者と出来るだけ遭遇せずに、そして時間を掛けずに6階に到達するには打って付けの移動手段である。
同人版裏ルートの高山もまず6階にエレベーターで到達したと言っていたので、直接到達する事が可能だろう。
その為に妨害も有り得るが、利と損を比べて利を取った。
現在の経過時間は7時間12分。
愛美と別れてから、40分近くが経っている。
機能強化された俺のPDAのお陰でかなりの速度でエレベーターホールに向かってはいるが、まだ道のりは半分を過ぎたくらいだ。
途中で戦闘禁止エリアの近くを通ったので、此処で食料と飲料水を補給するために立ち寄る事にする。

    ピー ピー ピー

戦闘禁止エリアとなる部屋の扉の前に立った時、PDAのアラームが一斉に鳴り始める。
俺のPDAの画面を確認すると、次の文章が表示されていた。

    「あなたが入ろうとしている部屋は戦闘禁止エリアに指定されています」
    「部屋の中での戦闘行為を禁じます。違反者は例外なく処分されます」

例外無く、であるのが曲者と言えた。
ルールの7及び8を思い出しながら、2人を促して部屋の中へ入る。
無人ではあったが部屋には物資の詰まった段ボールが置かれており、中には食料品とカセットコンロなどの調理道具が入っていた。
特に飲料水は消費が思ったより多い事が解ったので、今迄保有していたペットボトルや水筒から更に追加して用意する。
幸い背負い袋や水筒等も置いてあったので、小さいバッグに小さい物や軽い物を入れてそれぞれを2人に持たせる事にした。

体力の無い優希には歩き通しはきつそうだったので、一旦この戦闘禁止エリアで休憩を入れる事にした。
建物内の他の場所とは全く異なる塵一つ無い様な清潔な戦闘禁止エリアの部屋は、休憩をするには向いていたからである。
これが上の階に行くと、そうは言って居られなく成るのだが。
此処で今迄確認して来なかった事も確認しておこうと、優希に話を振ってみる。
話の中心は、優希が天井から落ちて来るまでの情報だ。
多少は渚の言葉で理解したが、詳しい所は未確認である。
そこで御剣達が、俺や手塚が去った後にPDAの情報を交換していた事が判った。
幸い優希のノートは彼女のリュックに入りっ放しだった為、そこへ御剣が記載した情報も見る事が出来た。
それに寄れば御剣はAであり、解除条件は次のものだった。


    「クイーンのPDAの所有者を殺害する。手段は問わない」


残りの姫萩は4番らしく、解除条件は次のものである。


    「他のプレイヤーの首輪を3つ取得する。手段を問わない。首を切り取っても良いし、解除の条件を満たして外すのを待っても良い」


姫萩が4番?
本来の姫萩のPDAはQの筈である。
Ep1の様に口だけの嘘をついているのだろうか?
しかし解除条件まで出されては信じるしかないのか?
少なくとも『ゲーム』の登場人物で、今まで彼女以外にPDA番号が異なっていた者は居なかった。
姫萩だけが違うと考えるのは不自然ではある。
他にも会って見なければ確証は得られないが、本来の4番である筈の葉月に早目に会いたいものだ。
彼女のPDAにルール4が在った事から考えて、彼女がJOKER持ちである可能性も考慮した方が良いだろう。
しかしこれを今言及する訳にはいかない。

そして手塚も考えたものだが、詰めが甘いと思う。
それとも遊んでいるのか?
最初の明確な戦闘行為であろう、この顛末を再度頭の中で整理させる。

「時間ごとに性質の違う罠、か」

『ゲーム』内で誰かが呟いていた言葉。
まさにその通りの事態が起こったという事だろう。
今回の性質は分断。
丁度下の部屋に俺達が居たのは、偶然の産物である。
ただこれはあの優希を殺させない為に、渚がわざと落とし穴の罠を作動させた可能性もある。
彼女はサブマスターだから、館内のシステムに割り込む事が出来るのだ。
しかしそれなら愛美に付いて行くだろうか?
もし優希を助けたのならその正体は知られている筈だし、それならサブマスターとして確保指令が出ているだろう。
訳が判らない渚の行動も大いに疑問ではある。

一応この休憩中に、ルールを記載した紙の裏側へ現在判明している各PDAの解除条件をメモして置く。
こうして見て考えると、少しずつだが『ゲーム』との違いが浮き彫りに成って来た。
『ゲーム』に居た参加者の中で出会っていないのは、エントランスホールで会う筈だった5番の郷田。
残りは3番の長沢、4番の葉月、6番の陸島、7番の漆山、8番の矢幡、の計6名だ。
その内2人は3番の俺と現5番の愛美と入れ替わっているのだろう。
現在判明している「人物」は俺を含めて9名で、残りは4名。
とはいえ、PDAまで完全に判明しているのは手塚を除いての8名である。
姫萩は怪しいが。
内2名が『ゲーム』とは異なる解除条件である以上は、他も油断は出来ない。

それと共に、その愛美の5番も気になる所だ。
5番は本来「郷田真弓(ごうだ まゆみ)」が保有しており、彼女はゲームマスターと言われる運営側の人間だった。
なら彼女はゲームマスターなのか?
サブマスターである渚の例もあるので、彼女のあの態度が演技ではないとは言い切れない。
しかしそれでPDAを易々と手渡すものなのか?
こちらについても渚があっさりとPDAを渡しているので、無いとは断言出来ない。
だがマスターが2人ともこれではゲームの進行に差し支えるだろう。
もし彼女がゲームマスターでは無いとなると、今回は渚1人になったのか、別の番号が役割を持った事になる。
大体サブマスターである渚が、わざわざゲームマスターたる人物との同行を願い出るものだろうか?
ゲームマスターは特に警戒が必要だが、それすら異なるとなれば『ゲーム』の知識が役に立ち辛く成りそうだ。
これから先どれだけの「違い」が発生するか予測がつかない為、悩ましいばかりである。
色々考えていたら、ふと気付くと優希の顔がドアップで目の前に有った。

「どわぁっ!ゆ、優希!?」

「お兄ちゃん、考え事?」

滅茶苦茶驚いた俺に構わず、素直な疑問をぶつけて来る。

「あ、ああ。今後の事とか、色々考える事が多いんでね」

「駄目だよ、お兄ちゃん。今はゆっくり休まないと、疲れて倒れちゃうよ?」

「そうだぞ早鞍。お前、根詰め過ぎてないか?」

苦笑して頷いた俺に、困ったような表情で優希が注意し、かりんが追い討ちして来た。

「…判った判った。今はゆっくり休む事を優先するよ」

今時間を無駄にするのは憚られた。
しかしこの子達に無用の心配をさせても仕方が無いので、2人の頭を撫でて彼女達の提案を受け入れる。
そうして30分ほど他愛ない話をして休んだのだった。
ついでに綺麗に掃除されたトイレで、気分良く用も足しておこう。



休憩を終えた後、一応出発前に荷物の確認と整理を行なった。
俺が持つ拳銃には予備の弾は無く、マガジン内にある7発のみ。
保存食料と飲料水については、3人だけで考えれば一週間は保つだろう量がある。
その他の武器になりそうなものは、1階と言う事もあり全く見付かっていない。
調理道具として簡易コンロや鍋、やかんなどは在るが、包丁などの刃物は一切置いていなかった。
大分荷物も増えて来たので、全てを持って行けば進行速度が鈍くなるだろう。
だが今後必要に成りそうな物は持っていっておかないと後悔するかも知れないので持って行く事にする。
2人に休みながら行こうと話して、この荷物量を3人で分けて運ぶ事を了承して貰った。
これは2人には話していないが、『ゲーム』では上の階に行くに従って食料品の配置が少量に成っていくとあった。
後半は生存者も残り時間も少なくなる予定だから当然なのだろうが、こちらの予定は出来るだけの人間が生存する事である。
他のプレイヤーが持って上がる可能性もあるが、飲食物は多い方が後々助かるだろう。
最後にもう一度忘れ物が無いかを確認して、俺達は初めての戦闘禁止エリアを後にした。

エレベーターに向けての道程は、現在までは特に問題は出ていない。
途中3つほど罠の起動スイッチと思われるものを見付けたが、幸いそれらに掛かる前に気付いて回避していた。
それでも罠を見付けられなかった時が怖いので慎重に歩いていた俺達に変化が訪れる。
この入り組んだ建物内では珍しい、100メートルくらいの直線通路において遠くに人影を発見したのだ。
あちらが先に気付いていた様で、こちらへと足早に近付いて来ている。

「かりん、優希。一先ず少し戻った小部屋に身を隠しておいてくれ。俺が話をつける」

9番の解除不可条件に抵触する訳にはいかないので、愛美の時と同じ様に2人を隔離する事にした。
2人とも理解が出来ているのか、すぐに動いてくれる。
歩いて来る相手は、肩くらいまで伸ばした髪に受付嬢の様なきちんとした服を着た女性だった。
年の頃は俺と同じくらい、20中盤だろうか?
俺1人が残って居ると、訝しげな顔をしてから距離を空けて立ち止まる。

「初めまして。ご機嫌如何?って良い訳無いわよね、こんな状況じゃ」

口調に緊張は見受けられない。
しかしその態度は充分に警戒心が表れている様で、こちらに対してやや半身構えで立っていた。

「初めまして。俺は外原早鞍。故あって彼女達とは会わせられないが、現状首輪解除を優先して行動中だ」

こちらは特に構える事無く、ただし通路は行かせない為に塞ぐ様に立って挨拶をする。
首輪解除の部分で微かだが反応があった。
こちらの解除条件について気になる、といった所だろう。

「先に理由だけ述べておく。その方が話が早いだろうからな」

さて、彼女が『ゲーム』の通りなら陸島と言う事に成るが、少し振ってみるか。

「離れて貰った2名の内小さい方、色条優希と言う子なんだが、彼女のPDAは9番。
 解除条件は、全員との遭遇前に6階に到着する事だ」

優希の名前を聞いた時に目に見えて動揺を顕にする。
その動揺を繕う様に大きな動作で成程と頷いた。

「で、そちらの現在保有する情報はどのくらいだ?こっちは出来ればルールの9番が知りたいのだが」

「御免なさい、ルールの9番は知らないわ。と言うか、それ以外は判ってるの?」

「ああ、既に何名かのプレイヤー?と言って良いのか判らんが、人間と遭遇している。
 その全員とルールの確認をして来たが、未だにルールの9番のみ未判明でな」

「全員と?!ふぅん、そうだったの。
 残念だけど、あたしのPDAには4と5のルールしか書いてないわ」

少しだけ疑いの眼差しが入ったが、すぐに消える。
流石に感情の制御は上手い様だ。
しかし、また外れである。
13台中これで10台目なのに1つもルール9が無いとは、かなりの確率だろうに。

「そうか。残念だが嘆いてもどうにもならんしな。
 それと、り、えっと…あー、何て呼べば良いかな?」

一瞬陸島と声を掛けようとしたが、まだ名前を聞いていない事に気付いた。
聞いてもいない名前で声を掛ける訳にはいかない。
不自然に成らない様にしたつもりだが、ばれていなければ良いが。

「あれ?あーっ、御免なさいっ。あたしは陸島文香よ。文香ちゃんで良いわ」

彼女も名乗っていない事に気付いたのか慌てながら、最後はニカッと笑って自己紹介をする陸島女史。
やはり彼女は陸島で正しかった様だ。
先ほど優希の名前に反応も示したし、コンシューマ版の様に「エース」の工作員なんだろう。
ならばPDAの番号は『ゲーム』と同じく6だろうか?
ちゃん付けの方は華麗にスルーしておく。

「現在判明しているルールの8までと、これまで聞いたプレイヤーの解除条件だ」

懐から例のルール一覧のメモを取り出して、文香に向かって差し出す。
表にあるルール9を除くルール一覧と、裏に記した現在判明している解除条件の一覧を一通り読んで貰った。
彼女には特に今までのプレイヤーのような動揺は見られない。
それも当然だ。
彼女はこの「ゲーム」の事を知った上で参加しているのだから。
目を通したのを見計らって、今迄出合った人についても説明を行なっていく。
PDAの確認は出来ていない手塚義光と、後に確認出来た4名。
A(エース)の御剣総一、4番の姫萩咲実、9番の色条優希、そしてJ(ジャック)の綺堂渚。
5人と別れてから出合ったK(キング)の少女北条かりんと、戦闘禁止期間に出合って別れた2番の高山浩太。
戦闘禁止が解除された後に、手塚に襲われて罠に掛かった優希と渚に再会した。
そして渚と共に俺達とは同行しなかったが、友好的に話せた5番の生駒愛美。
最後に今目の前に居る陸島文香と俺を合わせて、計10名が確認されている。
此処まで説明した所で、文香の顔色が曇った。

「エース、4、9、ジャック、キング、2、5?と言う事は、外原さん、貴方は…」

「ああ、お察しの通り3番だ」

自分のPDAの画面を文香に向けて見せる。
顔色が曇った原因は、今も手に持つルール表の裏面側に書かれている解除条件一覧からだろう。

「さっき言った優先する首輪の解除対象者は、当然9番だぞ?俺を優先するなら既に外れている」

肩を竦めて言う。
無いとは思うが、文香に敵対されるのは余り宜しくない。
なんと言っても正規の訓練を受けて居る上に、最後の頼みの綱にもなる可能性が大きいのだ。
運営「組織」と対抗する勢力である「エース」所属の工作員なのだから。
彼女には訝しげな顔をされたが、先に気付かれていた事で俺に2名の小さな同行者が居る事は見られている。
それでこちらに他者を殺害する意思が無い事を理解してくれると有り難いのだが。

「そうね。御免なさい、あたしもこんな状況で疑い深く成っているのかも」

一つ溜息をついて表情を緩め、申し訳無さそうに謝って来る。

「いやいや。普通は殺さないと死にますよ、って人間が目の前に居たら、警戒するだろ?」

苦笑しながらフォローをしておく。
それから文香はボールペンを取り出してからルール表に何か追記している様だ。
一瞬止めようかと思ったが、記入しているのが裏面である事に気付いて留まる。
多分自分の解除条件を書いてくれているのだろう。
記入が終わったのか、ボールペンを上着の胸のポケットに挿し直してから俺にルール表を返して来た。

「あたしのPDAは6番よ」

確かに裏面の解除条件一覧で空白だった6番に、今は条件が記されている。
その解除条件を、彼女の声を聞きながら読んでいく。

「条件は、JOKERの偽装機能が10回以上使用されている事よ」

「10回だとっ?!」

思わず叫んでしまう。
確かに記載された文章も次の様に成っていた。


    「JOKERの機能が10回以上使用されている。自分でやる必要は無い。近くで行なわれる必要も無い」


回数の部分だけが知っているものと異なっていた。

「な、何かしら?」

突然叫んだ俺に、文香が驚く。
拙い。
『ゲーム』だと5回だった為に、異なる条件で驚いてしまった。
此処は何とか誤魔化さないと変に疑われてしまう。

「いや、JOKERの偽装機能って1時間のインターバルが必要じゃないか?
 10回となると、手に入れてから最低9時間は首輪が外せないな、と思ってね。
 仮に他で誰かが使用していても、10回は使用しない可能性の方が高い。
 数が多いのは不利だな、と思ったんだ」

焦って早口に成らないように気を付けて、尤もらしい理由を繋げていく。
我ながら上手く誤魔化せそうな理論だ。

「そうね、確かに10回は多いか。でも、そう書かれてある以上は満たさないと死んでしまうわ」

最後の方は真剣な顔で訴えて来る。
それは当然だ。
俺は「ルール」の抜け道を幾つか知っているから冷静で居られるが、他の連中は死の恐怖に苛まれ続けていてもおかしくない。

「ああ、そうだな。だから早めに2番の高山にはこの事を伝えておく必要があるだろう。
 こっちで見掛けたら伝えておくから、そっちも強面のおっさんが居たら宜しく」

「強面?」

「ああ、結構ガタイの良い30台前後の青年だ。
 間違っても、チンピラ風の男には近付かないようにな。優希達を襲ったらしいし」

「手塚って人ね。判った、気を付けるわ。
 後は愛美ちゃん、だったかしら?こっちも出来るだけ早く会っておかないと危険ね」

「そっちも宜しく頼むよ。こっちは一度6階に行ってから探す事に成るから、合流は遅く成るだろうし」

高山及び愛美についても俺達よりかは文香の方が、より良い状態に持っていけるだろう。
だが何とか誤魔化せた様で良かった。
文香は地図が読み切れなくてかなり迷っていたらしい。
こちらのPDAで現在地はすぐに判ったので、周辺及び此処から階段までの最短ルートを互いのPDAで確認しておく。
此処からならエレベーターの方が近いが、こちらの9番に配慮してか文香は階段で行く事にしてくれた。

「そうだ、御剣達に出会ったら、優希は無事だとも伝えておいてくれるか?」

別れ際、最後にそう切り出すと、文香は強く頷いてくれる。

「ええ、勿論よ。しっかり伝えておくわ。
 ではまた、ね。早鞍くん」

笑顔で請合うと、片目を瞑りながら別れの言葉を述べて彼女は去っていった。



文香と別れてからは罠も人にも遭わずに、エレベーターホールまで辿り付けた。
通路に2人を残して1人でホールへと入り、周りを見渡す。
見える所に人影は無い。
こういったホールの様な見晴らしの良い所は襲撃され易いのである。
『ゲーム』でも階段ホールやエレベーターホールなどで何度か戦闘があった。
その為に警戒しているのだが、周囲に危険は感じられない。
エレベーターの前まで行ってその状態を観察する。
カゴが居る場所を示すランプは5階に点いており、そのまま動く気配は無い様だ。
1階なので上側分しかないが、そのボタンを押してみる。
少し待つとランプが4階へと移行した。
問題なく動いているようなので、もう一度周囲を見回してから待機している2人を呼んだ。

「2人とも、静かにこっちに来い」

出来るだけ響かないように注意して声を出す。
カゴが1階に到着する頃には、2人共俺の所に到着していた。
扉が開くと想像していたよりも広々とした、20人くらいは入る事が出来そうな空間が目に入る。
まあこれくらい広くないと、重機関銃を持って下りるのは無理があるだろう。
Ep1で高山が重火器を持って下りていた事を思い出す。
考えながらも真っ先にカゴに入り、中に問題が無い事を確認しておく。
異常が無い様なので2人を中に招き入れてから、目標階の6を押して暫くするとカゴが上昇し始めた。
その間にもカゴの中をぐるりと見回してみる。
『ゲーム』でも指摘が有ったがエレベーターは完全な密閉空間であり、此処で襲撃されたら一溜まりも無い事を再度認識してしまう。
脱出経路は有るか?
定番の天井の脱出口は1つ、目に見える位置に有った。
しかし上に逃げるのは、下から攻撃を受けている事が前提だ。
上昇しているエレベーターに下から攻撃してくるのはかなり酔狂と言える。
あるとすれば既に上階に上がっている者からの攻撃の方が妥当だろう。
上から攻撃が来ているのに上に脱出しようなど愚かにも程がある。
そのために下側へ出られる脱出口が欲しかった。
取り敢えず床の絨毯を一部捲くって見ると、開きそうな感じの部分が早速見付かった。
ビンゴ、か?

「何やってるんだ?早鞍」

俺の行動が不可解なのか、聞いてくるかりんに簡単に答えようと口を開く。

「ああ、何かあったら困るから、脱出経路を…」

    ズガンッ!

轟音と共に乗っているカゴが激しく揺れた!


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