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No.4919の一覧
[0] ハッピーエンドを君達に(現実→シークレットゲーム)【完結】[None](2009/01/01 00:10)
[1] 挿入話Ex 「日常」[None](2009/01/01 00:05)
[2] 第A話 開始[None](2009/01/01 00:04)
[3] 第2話 出会[None](2009/01/01 00:05)
[4] 第3話 相違[None](2009/01/01 00:05)
[5] 挿入話1 「拠点」[None](2009/01/01 00:06)
[6] 第4話 強襲[None](2009/01/01 00:06)
[7] 第5話 追撃[None](2009/01/01 00:06)
[8] 挿入話2 「追跡」[None](2009/01/01 00:07)
[9] 第6話 解除[None](2009/01/01 00:07)
[10] 挿入話3 「彷徨」[None](2008/12/20 20:05)
[11] 挿入話4 「約束」[None](2008/12/10 20:01)
[12] 第7話 再会[None](2009/01/01 00:07)
[13] 第8話 襲撃[None](2009/01/01 00:08)
[14] 挿入話5 「防衛」[None](2009/01/01 00:08)
[15] 第9話 合流[None](2009/01/01 00:09)
[16] 挿入話6 「共闘」[None](2009/01/01 00:09)
[17] 第10話 決断[None](2009/01/01 00:09)
[18] 挿入話7 「不和」[None](2009/01/01 00:10)
[19] 第J話 裏切[None](2008/12/19 04:13)
[20] 挿入話8 「真相」[None](2008/12/20 20:40)
[21] 挿入話9 「迎撃」[None](2008/12/20 20:07)
[22] 第Q話 死亡[None](2009/01/01 00:10)
[23] 第K話 失意[None](2008/12/25 20:01)
[24] JOKER 終幕[None](2008/12/25 20:01)
[25] 設定資料[None](2008/12/24 20:00)
[26] あとがき[None](2008/12/25 20:02)
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[4919] 第7話 再会
Name: None◆c84e4394 ID:a86306dc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/01/01 00:07

草原を駆け抜ける時に感じる風は格別だ。
それも自分の足で走るのではない、自分の足では出せない速度で感じる風は。
ある程度走ってから歩行に切り替えて、ゆっくりと草原を歩く。
俺は久しぶりに馬に乗り、最近欝気味だった気分を吹き払っていた。
セルフランセ種の5歳雌である彼女は俺の言う事を良く聞いてくれる。
その首筋を撫でる様に軽く叩き労った。

「鞍兄、先行き過ぎだよ」

後ろから遅れて俊英がやって来た。
彼の乗る馬も俺の馬と同じ種である。
双子の姉妹なのだから当然なのだが、馬との相性が悪いのか俊英の馬術は生かせていない。
彼女達が生まれた時より世話している癖に、たまに帰ってくる程度の俺に負けている様では困ってしまう。
彼には跡継ぎとしてしっかりして貰わないといけないのだ。
もう兄さんは居ないのだから。

「そういや調子に乗って走っちゃったけどさ。今日叔父さんから家に居てくれって、言われてたんじゃなかったっけ?」

そう言えばそうだった。
だが夏季休暇で久しぶりに帰って来たので、早くこの子に乗りたかったのだ。
大切な人が居なくなった寂しさを埋める上でも。
だが、叔父も案外煩いので今日はもう帰る事にしよう。

「そうだな。そろそろ帰るか。
 晩御飯にはまだ早いが、俊英も来るか?」

「御免っ。何か今日はそっち行くなって叔父さんが煩いんだ。
 また今度行くよ。大学の話も聞きたいしさ」

彼が今言っている叔父とは先ほどのとはまた別の、彼が現在厄介になっている家の家長である。
俊英には産みの両親が共に居ない。
元々は父無し子だったのだが、母親も精神を病んでおり俊英を生んでから2年で亡くなった。
親戚は誰もが厄介者の子供など面倒見たがらなかった。
そんな経緯で育てる親が居なかったので、親族の長である曽祖父が引き取ったのだ。
本来直系には親族が迷惑を掛けない様にする為この様な事は無いのだが、余りにも親戚一同が薄情なので曽祖父が怒ってしまったらしい。
そうして曽祖父に可愛がって貰っていた俊英は聡明な少年に育った。
俺なんかより思考の巡りは良かったし、運動神経も悪くない。
本当にどちらがあの優秀な兄の弟なのかと、周りに揶揄されたくらいである。
そんな彼も、曽祖父の家に居るのは直系の家族に迷惑を掛けると言って、中学入学を機に親戚の家に厄介になる事にしたのだ。
俺や兄、両親、曽祖父も気にする事は無いと言ったのだが、彼は自立の第一歩だと笑っていた。
他の親戚の家に居る彼に、戻って来いと何時も言っているのだが首を縦に振ってくれない。
甘えてしまうかららしいが、別に甘えてくれても良いと思う。
だが彼に強制する事も出来ないし、今日も引き下がるしかないか。

「判った。じゃあ厩舎まで走ろうか」

「おうよっ。今度は鞍兄に負けないぞ。しっかりしろよ、サリン!」

何度聞いても可哀想な名前である。
約5年前にこの子達が生まれた時、曽祖父であるじっちゃんが大学合格祝いにと名付け親になる権利をくれた。
と言っても俺にはセンスは無かったので、無難に自分から一字を取り「早織(さおり)」と名付けた。
女の子らしい名前だし特に深く考えてでは無かったのだが。
そこでもう一匹生まれていた子に俊英が名付けたいと我侭を言い出したので、俺が権利を譲った所「早麟」などと付けてくれたのだ。
せめて自分の一字にしろと言って名前を変えさせたかったのだが、頑として変更はしなかった。

結局厩舎までの競争も圧倒的な俺の勝ちで終わってしまう。
大体この村の中では俺と早織のコンビに此処1年で勝てた者は居ないと言うのに、負けず嫌いは相変わらずだ。
1年以上前ならば兄さんが俺より速かった。
その兄が亡くなってからは誰も俺を追い越せなく成ったのだ。
正直、困ったものである。
厩舎の管理人に声を掛けて、彼女達の手綱を引き渡す。
別れる時に早織が頭を擦り付けて来るが、頭を撫でて宥めた。
何時も別れる時は寂しそうにするが、これも仕方が無い事だ。

「それじゃまた。俊英、本当に何時でも遠慮せずに来て良いんだからな?」

「判ってるって。今回は叔父さんが絶対って煩いからだってば。
 また明日にでもからかいに行ってやるからな!」

「いや、からかうんなら来るな」

俺の言葉をものともせず、彼は笑って去って行った。
さて、俺も家に帰るか。
日は高いしまだ走りたかったが、夏季休暇は長いのでまた来れば良い。
そして俺は家に向かって歩き出した。
その先にある事など何も知らないまま。





第7話 再会「残りプレイヤーを5名以下にする。手段は問わない。自分で殺す必要も無い。またこのPDAには最初から「Tool:PlayerCounter」が導入されている」

    経過時間 24:00



耳障りな電子音に叩き起こされる。

    ピー ピー ピー
    ピー ピー ピー
    ピー ピー ピー

幾つか重複して鳴る音に起こされてしまい、身体は横に成ったまま周りを見渡した。
起きても寝る前と変わらない薄暗い建物の中で気が滅入って来るが、そんな場合でも無いか。
音は脇に置いたジャケットから聞こえて来ている。
またPDAからの警告だろうか?
もぞもぞと動こうとすると身体の筋が引き攣った様に痛む。

「ぐおぉ?」

筋肉痛だろうか?
日頃使わない筋肉を昨日1日で酷使したからだろう。
御剣達はこんな苦労をしたとは描写されていなかったではないか。
それとも奴等は日頃から鍛えているとでも言うのか?
痛みに身体を引き攣らせていると、隣のソファーから囁く様な声が聞こえた。

「24時間、か」

見ると高山も起きてPDAを見ていた。
痛みを我慢しながらPDAを1つだけ引っ張り出して俺も画面を見てみると、そこには次のような文章が2ページに渡って表示されていた。


    「開始から24時間が経過しました!
     これよりこの建物は一定時間が経過するごとに1階から順に進入禁止になっていきます」
    「1階が進入禁止になるのは今から3時間後の午後1時を予定しています。
     1階にいるプレーヤーの皆さんはただちに退去して下さい」


とうとう各階の進入禁止が始まるのである。
1階のみ制限時間を知らせるのは本当に陰険だ。
この後の進入禁止時間の警告は無いのだから。
そしてこの警告は愛美の解除条件の残り時間が丸1日を切った事も示していた。

PDAの音で女性達も起きて来た。
丁度良いので、皆寝不足かも知れないが行動を開始する事にする。
まずは朝食を取った。
考えてみれば昨日寝る前に食べるべきだったのだが、完全に忘れていたのだ。
俺を含めて皆疲れていたのだろう。
その癖、風呂には入りたいなどと言うのも女の不思議な所だ。
机の上に少し多目に食料を用意していく、と言っても持って来た食料品を並べて開けるだけなのだが。
その準備の間に、情けないが高山にマッサージをして貰う。
高山の技術は確かであり、とても気持ちが良かった。
マッサージで良く身体が解された後に、俺も食事に参加する。
皆がほぼ丸1日振りと言って良い食事だ。
その為、並べられる食料を餓えた目で見ている子供達が正直怖かった。
固形の総合栄養食にチューブ系、缶詰などを中心にして飲み物は煮沸した水道水を使ったコーヒーか紅茶。
俺の荷物に食料は大量に入れていたので、これには問題は無い。
食事後に各自トイレを済ませてから作戦会議に入った。

まずする事は寝る前から時間が経っているので、各PDAの位置を再確認する事だ。
この結果によりこちらの行動が変わって来る。
7番で再度PDA検索を実行した。
バッテリーバーを見ていたが、やはり減少量は数ドット程度だ。
他のPDAで同じソフトウェアを動かしてみないと確証は得られないが、もしかしたらゲームマスター用に大容量バッテリーなのではないだろうか?
前回から約4時間の内に、プレイヤーは大きく動いていた様だ。
4階は2名から1名に、3階は2名から3名に変化していた。
1階の2名は2階に上がった様で、2階の途中に光点表示が在る。
2階の2名は同じ所に居て、3階の3名は2名と1名で行動中の様だ。
単独行動が2名とペアが2組である。
今PDAを持っていない7番は5階のままなのだろうか?
そう言えば渚のPDAも此処にあるのか。
彼女も今は何処に居るのだろう?
さて、どれが誰なのかだが。

「手塚と言う男がどれかが問題ね。彼とは交渉出来ないと考えた方が良いでしょうし」

まず注意しないといけない事を麗佳が声に出してくれた。
現在明確に敵対行動を取っているのは7番と手塚である。
この二人との再接触は多くの者の首輪が外れた後が良い。

「奴の性格からして、単独行動のどれかだろう。
 そして他者を狙っている様だし、3階の確率が高いな」

昨晩と同じ様にホワイトボードを使って各階の現状を図にする。
これで思考も纏まり易いと言うものだ。
その図を見てやっと理解が出来て来たのか、優希が質問して来た。

「2人なのは総一お兄ちゃんと咲実お姉ちゃんかな?」

「そうだろうな。2階の2人の方だろうけどな」

「何でそう考えるの?3階のペアでない理由があるのかしら?」

本気で判らない風に麗佳が聞いて来るが、これは想像すれば簡単だ。

「2階の方は昨日の時点で1階に居た。もう20時間経過も近い危険な時間なのにだ。
 あんな時間まで1階に居続けるとすれば、普通考えられるのは何だ?」

「ルール5を知らない、かしら?」

麗佳の答えに頷き返す。

「そう。普通に考えられるのはそれだけだ。
 しかしそれは有り得ない」

俺の断言にかりんが首を傾げる。
高山も疑問の様だが、麗佳は気付いてくれた。

「そうか、早鞍さんがあの時点で既に11人と遭遇している。
 早鞍さん本人を含めれば12人、つまり複数行動を取っている以上、最低1人はルール5を認識しているのね」

そう、俺が会って居ないのは後1人のみ。
7番とはルール確認をしていないが、現在奴はPDAを持っていない為このペア表示そのものの数に入っていない。
麗佳の言う通り2人以上で行動する限り、7番を除いてだが、ルール9以外は皆知っている筈なのだ。
更に7番のPDAにはルール一覧のソフトウェアが入っていたので、知らない事は無いだろう。
だからこそ20時間経過時点で1階に居るというのは明らかにおかしい。

「それで考えたのが、御剣達が優希と渚を探すために1階に降りていたんじゃないか、って事だ。
 あいつ等ならやりそうだしな。
 どちらにせよ、まず合流する対象は、現在3階に居るペアだがな」

「4階のソロはどうする?」

「万が一、それが手塚だったら面倒な事に成りかねん。
 相手に気付かれないように確認出来るならしたいが、状況次第としよう」

高山は俺の答えに満足したのか、それ以上は言って来ない。
他も特に意見は無いのか沈黙している。

「んじゃ、この方針で良いな?良かったら出発しよう」

「は~い」

「うん、行こうか!」

年少組が元気に返事を返し、年長組は軽く頷いて席を立つ。
各自が荷物の調整を行なってから、俺達は出発した。



7番のPDAには昨夜確認したソフトウェア以外にも色々と導入されていた。
結果、以下のものが確認された。

    プレイヤーカウンター:PDAに現在の生存者数を常時表示する。
    PDA位置検索:検索時の全PDAの位置情報を取得可能。検索時バッテリー消費、極大。
    ドア操作機能:各部屋のドアや通路の隔壁の開閉操作が可能。ロックを掛ける事も出来る。
    爆弾遠隔操作機能:特定の爆弾(地雷)を遠隔操作で爆破操作可能。
    擬似GPS機能:PDAの地図上に現在地と進行方向を常時表示する。    
    地図拡張機能:地図上の各部屋の名前を追加表示する。
    ルール一覧:機能タブ内に全ルールの一覧が表示するための項目が追加。
    罠表示機能:PDAの地図上に館内に設置された罠を追加表示する。

以上の8つである。
機能名称と説明文は、俺が自分に判り易い様に勝手に作ったものだ。
しかしこれを持って俺達を追い詰めて来ていたのかと思うと、かなり不利だった事が理解出来る。
特にこのトラップの表示機能は俺達の行動速度を大きく変えた。
今まで罠を警戒して移動が遅く成っていたのが、劇的に早く成ったのである。
本気で優希の体力を心配して歩調を緩めなければ成らないくらいだったのだ。
6階からの5階への移動は地図上で使用可能とある、例の襲撃を受けた所の階段を使う事にした。
エレベーターシャフトを使って一気に3階まで降りる事も考えられたが、今回は止めておく。
落ちたら怖いし。
5階から4階への移動については、6階からの階段位置のものをそのまま爆破する事を麗佳が提案して来た。
それと言うのも、4階から3階へ降りる正規の階段がそこから近いからである。
大幅なショートカットが出来るので、時間が無い俺達には打って付けの地理だったのだ。
後々下から上がる場合にも一気に6階まで踏破し易く成るので、この案を採用した。

爆破と言えば、装備もあれから大分強化されている。
優希以外アサルトライフルと拳銃とコンバットナイフを標準装備としていた。
かりんと麗佳は予備武器としてサブマシンガンも荷物に加えていた。
防具としても全員が防弾チョッキを着込み、荷物に最低1つ以上のガスマスクを保有している。
俺の荷物にも予備の防弾チョッキが入っており、ガスマスクはバッグの横に吊り下げられていた。
他にも煙幕手榴弾や閃光手榴弾は基より、音響手榴弾まであったのでこれらも幾つか俺の荷物に入っている。
特殊手榴弾は俺が持つ物以外にも高山が持つ物もあるので、数としてはかなりのものだろう。
グレネードランチャーとそれに使用される各種弾頭は、火力が大きいのも有り高山に任せた。
近接用には日本刀を高山が、トンファーを俺が、スタンガンは3つあったので俺とかりんと麗佳が持つ。
麗佳しか持って居ないが麻酔銃何て物もある。
麻酔銃とは言っているが、見た目は普通の38口径の拳銃だ。
ただ込められている弾が麻酔弾であるのでこう呼んでいた。
グリップの所に緑色のラインが入っているので、他とは区別出来るのが特徴と言える。
爆薬にしてもC4?爆薬とかの高山にしか扱えないような専門的な物から、お馴染み手榴弾などの簡易な物まであった。
そして、このPDA内のソフトウェアで使用出来る対人地雷も2つほど残っていたので回収してある。
あまり嬉しい物ではないが、何かに使えるかも知れない。
武器に関しての知識が俺達に全く無かったが、此処でも高山が説明してくれたので何とかそれぞれが何であるかは認識出来ていた。
特殊手榴弾なんて素人には説明書でも無いと判る訳無いだろ、と運営に文句を言いたい。
荷物は増える一方だが、それでも一部食料品と装備を6階に置いて来たので、その分頑張って持って歩くのであった。

4階までは何事も無く到着した。
背後には瓦礫の散乱した階段があるのだが、今は無視して置く。
此処でもう一度PDA検索を実行した。
未だ光点は5階以上には存在しない。
それを確認してホッと胸を撫で下ろした。
俺達が降りる前に上がられたら面倒が増えるので避けたかったのだ。
頻繁に検索を実行する訳にもいかず不安を殺して進んでいたが、杞憂に終わって良かった。
ただ俺達の分を除いて4階の光点が無くなっている。
その代わり3階の光点が4つに増えていた。
わざわざ下に下りているとは、4階に居たのが手塚だったのだろうか?
どちらにせよ全員が3階以下に居るのならこちらも降りなくては成らない。
そうして今度は3階への階段を目指す途中で、もうお馴染みと成りつつあるPDAからの電子音が耳を打つ。

    ピー ピー ピー

PDAを見てみると画面が変わっていた。

    「1階が進入禁止になりました!」

そこには1階が進入禁止に成った事を告げる文章が表示されている。
それでもプレイヤーカウンターには変化が無い事から、PDAを持たないプレイヤーが1階には居ない事が判明した。
誰も指摘しなかった事だが、7番や渚のPDAのように他の者にPDAを奪われている可能性も有るのだ。
現状2つ以上が揃って動いているものが安全とは限らない。
だがPDAを集める解除条件が双方ともこちらに居る以上は、可能性が低いとして目を瞑っている。
全て俺の脳内会議での結論だが、皆を不安にさせても仕方が無いので黙っていた。
しかしこう考えると、PDAよりも首輪の検知の方が便利そうである。
7番や渚の位置が判らないし。
そうこうしている内に何事も無く3階への階段に到着した。

3階に降りてから再度PDA検索を実行する。
上で確認した時と変わらず、4つの光点が存在していた。
2階の2つもそろそろ3階に上がろうとしている。
そして3階のソロの光点が階段のかなり近くまで来ていた。
階段を目指しているのならば程無く鉢合わせしてしまう。
この単独行動者が手塚だったとしたら余計な戦闘をする事に成りかねない。
俺達は階段ホールから離れて光点が居た通路とは別の通路で待機してホールを監視する。
隠れてから3分くらい経過した時、階段ホールへ一人の女性が姿を見せた。
青い受付嬢の服を着たその女性には見覚えがあった。

「文香!」

隠れていた通路から飛び出して文香に声を掛けた。
彼女は俺の声にビクッと反応して、手に持った拳銃をこちらへと向けて来る。
いきなりの行動に、俺はある程度の距離を取って立ち止まった。

「外原さん、無事、だったのね」

そう言う文香の顔は緊張したままだ。
構えた銃も下ろさずにこちらへと向けている。
随分と警戒しているが、俺が一人なのが高山の時と同じ様な疑心を呼んでいるのか?

「…何故貴方が此処に居るの?6階を目指していたのではない?」

少し早口で矢継ぎ早に聞いて来る。
そう言う文香の姿を良く見ると所々服は破れ血が滲み、幾つかの怪我をしている事が判る。
言葉にも焦燥が見受けられ、これまで相当な苦労をして来たのだろう事が伺えた。

「文香、誰に攻撃を受けた?」

「手塚、って人だと思うわ。貴方の言っていたチンピラ風の男よ」

奴か。
全く、手当たり次第にやっているのだろうか?
だがまだ死亡者が居ないのは幸いである。
どちらにせよ彼女と無事再会出来たのは喜ばしい。

「こっちは順調、とは言えなかったが、目的は一部果たしたぜ」

そう言って通路へと合図を送ると、ゆっくりとではあるが通路から4人が出て来る。
俺一人だと誤解を広げそうだと思って皆、特に子供達を見せた方が良いと判断したのだ。
出て来る時、高山と麗佳がアサルトライフルをこちらへ向けて構えていた。
俺が銃を向けられているので警戒しているのだろう。
出て来たメンバーの中に少女2人が混じっており、その首輪が外れている事を確認した為か、文香の銃はやっと下ろされた。

「…随分と増えたのね」

明る目の口調で文香が少し笑っていた。



俺以外は互いに初対面となる、文香と皆の邂逅は自己紹介から始まった。
それからそれぞれの、ほぼ1日分となる情報を交換し合う。
それによると文香はあの後暫くしてから渚と愛美に合流出来たらしい。
2人とも地図を見るのが苦手らしく散々に迷っていたとの事だ。
サブマスターの渚にそれは有り得ないのだが、演技中のままなら仕方が無いか。
…いや、渚はPDA自体持ってないので地図が見られないのか。
2人との合流後に急いで2階を目指したが、2階に上がる前に謎の攻撃を受けた。
相手が誰かも判らないまま逃げるが、その最初の攻撃で渚と逸れてしまう。
逃げ続けながら2階に上がり、更に移動していたら何時の間にか攻撃は無くなっていた。
渚が狙われたのではないかと心配したが、合流手段も無いのでルール通りに上を目指す事にする。
2階の戦闘禁止エリアで、最後の1人となる葉月克己(はづき かつみ)という壮年の男性と出会う。
情報を一部交換してから同行していたが、3階で隔壁が突然降りて文香一人に成った所を手塚に襲撃される。
これを何とかかわして逃げ続けて、4階へと上がった。
4階で手塚と暫くの間追撃戦をしていたが、その内諦めたのか攻撃が止む。
それから傷ついた身体を休める為に4階に留まっていたが、まだ皆が下の階に居ると思い再度下りてみた。
通路を行くと地図とは異なり行き止まりに成っていたので、引き返して来た所で俺達に合ったと言う事だ。

此処で重要な事の一つは愛美と別れた時間だ。
これを聞くと、渚が逸れたのは大体10時間過ぎくらいで、文香が分断されたのは18時間経過くらいらしい。
と言う事は、愛美が条件を満たしているのは文香と葉月の2名だけという事だ。
時間が少ないので、急ぐ必要がある。

ただ、もう一つの重要な事を聞いて置かなくては成らない。
1階で受けた謎の襲撃とはどんなものだったのか。
これについては帰って来た答えは「銃撃」であった。
1階で銃撃を受ける。
武器としてのラインナップの無い場所での攻撃は明らかにおかしい。
いや俺は手に入れてたけどね。
渚が居る中での攻撃だから、回収部隊の連中では無さそうだが。
大体、優希が居ないのに襲っても仕方が無い。
手塚が先に3階で銃を手に入れたのか?
3階で手に入れてから更に1階にと言うのも可能性は薄い。
他に考えられるのは、渚が注目対象へ接近するために現在の同行者との分断を演出したくらいか。
考えても結論は出なさそうなので、この問題は頭の片隅へと引っ込めた。

情報交換を終えた後は、葉月と愛美に合流しようと文香が提案して来た。
当然俺は賛成するが、これに麗佳が難色を示す。

「その葉月と言う人は大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫だよ、人の良さそうなおじさんだって、な?文香。
 …あの愛美と一緒に居るんだぞ?ははっ」

「え、ええ、そうよ。この「ゲーム」何て全く似合わないおじ様だったわ」

俺の確認に文香がちょっと驚いた様に反応してから、その人柄を伝える。
危ない危ない、俺が葉月の事を知っているのはおかしいのだから、言うべきではない事を言ってしまった。
何とか誤魔化せただろうか?
だが此処で悠長にしている間に、葉月達が手塚に攻撃されるかも知れないのだ。
早く移動したかった。

「だから、まずこの2つの光点を目指そう」

文香の言う事が正しいなら、3階にあるペアの光点は葉月と愛美で間違い無さそうだ。
その為、最初の予定通りこちらを目指す事にしたのだった。

歩いている中で、文香は優希とかりんの首輪が外れている事に対して素直に喜んでくれた。

「本当に首輪解除優先で動いていたのねぇ」

ニヤニヤ顔で俺の脇を突いて来る。

「だからそう言ってただろう」

からかわれるのは苦手なので憮然と答えておく。
ニヤついた顔を崩さず、俺の右腕にしな垂れ掛かって来た。

「それじゃ、あたしの首輪も解除してぇ。ねっ」

「あー、JOKER見付かると良いですねー」

真正面を見て歩き続けながら、棒読み口調で告げる。
実際にJOKERは急遽欲しいくらいなのだが。
からかい甲斐が無くて詰まらないのか、文香は拗ねた顔をして離れた。
正直こういう事への真っ向からの対応は苦手なのだ。
7番のPDAを見て現在の位置と周辺の地理及びトラップの有無を確認しながら先頭を歩く。
文香の次の目標は優希となった様だ。
素直な反応をする優希はからかい甲斐が有るのだろう。
文香の愛嬌のある明るい性格は優希の精神に良い効果があった様だ。
考えてみれば、あんなに明るい性格の人間はこれまでに居なかった。
場所や状況的なものもあり、皆精神的に緊張が拭えないのも大きい。
まあ彼女には裏の目的も有るのだろうが、それでも助かるので黙って好きにさせておく。
そんな中俺達が通る通路の先に分断用トラップが有る事が表示されているので、一応注意を促した。

「この先分断用のトラップがあるから、気を付けてくれ」

「はーい」

優希の元気な返事だけが聞こえて来るが、大丈夫だろう。
そんな軽い気持ちでトラップの位置を通り過ぎた時、異変が起きた。

    ガシャン!
    ガシャン!

「何っ!?」

誰のものだっただろうか。
俺も声に出していたかも知れないが、そんな事はどうでも良い。
知っていた筈のトラップに掛かってしまったのだ。
『ゲーム』のEp1であった様に2枚の鉄格子が通路を塞いでおり、それにより俺達は3つの組に分断されていた。
1つ目は先頭の俺とかりん。
2つ目に鉄格子に挟まれている文香と優希。
残りが鉄格子の向こう側に居る高山と麗佳である。
不幸中の幸いか組み合わせとしてはバランスが良い。
文香の所が不安だが、彼女は正規の訓練を受けている筈なので何とか成るだろう。
その後、鉄格子に挟まれた区画の天井が開き縄梯子が下りて来た。

「誰かスイッチの類を押したか?!」

一応皆に聞いておく。

「いや、そんな感じは全く無かった!」

一番後ろに居た高山は皆の様子が見えたのだろう、こちらに聞こえる様に大声で答えて来た。
そうなると考えられるのはゲームマスターの介入か?
そろそろ本気で回収部隊が乗り込んで来るなら、優希の周辺が危険である。
それだけではない。
Ep1では同様の状況で郷田の攻撃を受けていた。
7番は位置的に難しそうだが、手塚に強襲させる手も考えられる。
急いで7番のPDAにあるドアコントローラーで鉄格子を上げに掛かった。
しかし上に上がろうとする駆動音はするものの、一向に上がる気配が見られない。

「早鞍、どうした?」

「鉄格子が上がらん!」

かりんの問いに焦りを含んだ口調で答える。
拙い、このままでは狙い撃ちだ。

「どうも普通のトラップじゃないみたい。鉄格子を上げられないわ」

俺の操作と鉄格子の反応を見ていたのだろう。
文香が高山達に説明を行ってくれているのが目の端に映った。
裏事情を知っているのが早期理解に繋がってくれている。
しかし、これでは分断を甘んじて受けるしかないか。

「文香、すまん。優希を頼む。
 高山!麗佳!戻って4階に上がり、文香と合流してくれ!俺は愛美達と合流してから向かう!
 最悪、拠点に篭ってでも安全を確保してくれ!」

高山と文香の戦闘能力と麗佳の知力が有れば何とか優希を守り切れるだろうか?
幸い高山と麗佳にはPDAを返しているし、こちらには位置検索が有るので、後の合流には問題は無い。
それを察したのか、各人行動を起こし始めてくれる。

「お兄ちゃん…」

「すまん、優希。文香の言う事を良く聞いて、良い子にしてるんだぞ」

鉄格子越しに優希の頭を撫でる。
不安そうな顔のままだったが、この鉄格子がどうにも成らない事を理解したのだろう、力無く頷いた。
上の階に何が待ち受けているのか判らないので、文香は先に上がってくれたのだろう。
優希が文香の後に続いて縄梯子を上がって行く。
その頃にはもう高山達は姿を消していた。

「それじゃ、かりん。俺達も行くか」

「…うん」

優希と別れたのが寂しいのだろうか?
かりんは力無く頷く。
元気付けようとその頭を撫でてから進むように促した。

30分程度歩いた時、一旦立ち止まってPDA検索を掛ける。
高山達はやっと4階への階段下くらいまで到達した模様だ。
文香も急いで階段へ向かっている様だが、相当な回り道をしないと辿り着けなさそうだ。
予定されていた罠だけあって、そう簡単には合流出来ないようにされている。
3階の方はあと10分程度も歩けば出会えそうな位置だ。
向こうも上への階段を目指しているので合流し易いのは当然なのだが。
残念、この先は行き止まりである。

「あ、のさ。早鞍」

立ち止まったのを良い機会と思ったのか、後ろに付いて来ていたかりんが遠慮がちに声を掛けて来た。
随分と暗い声を出す。
そんなに優希と別れたのが精神的に効いたのだろうか?
努めて明るく聞き返しておく。

「ん?何だ?」

「えっと、さ」

歯切れが悪い。
何が言いたいのか?

「有難うっ。本当に…あり、が…」

言葉の途中から涙声が混じり、最後は零れた涙で言葉に成ってなかった。
いきなり泣き出したので何がなにやらだ。

「お、おい、かりん。どうした?」

「あたし、あいつが、お金と…」

「ああ、もう。話は良いからまず泣き止め。なっ」

無理に話そうとするかりんを抱き寄せて宥める。
冒頭の言葉からすると、7番の奴についてだろうか?
何も泣く事も無いだろうに。
かりんが泣き止むまで、暫くそうしていた。



10分くらいでやっと泣き止んでくれた。
先を急ぎたいがかりんの精神状態も心配なので、仕方が無く此処で座って話をする。

「あたし、お金が必要じゃないか。妹の為に」

「ああ、そうだったな。保留にはしてるが」

「それでさ、あいつ、7番の奴もお金が必要だって、妹を助けるんだって言ってた。
 でもあいつが選んだのは皆を殺す事だ。
 人数が減れば貰えるお金は増える。あいつの解除条件の為にもなんだろうけど。
 あたしも5人以下にしないと、って事では条件はあいつと同じだったんだ。
 早鞍に会ってなかったら、ああやって他の参加者を殺すために銃を振り回して、皆を殺して…」

此処まで口にして寒気でも感じたのか、両手で身体を抱える。

「だから、あたしっ、もうっ、駄目だよ。
 いつ、あいつの様に成るか…」

「ああ、もう判った判った」

どんどんと自分を追い詰めて行こうとするかりんの言葉を遮る。
何時もの様に頭を撫でた。
本当に何度もやってしまっているがかりんは嫌じゃないのだろうか?

「お前は一度も俺に危害を加えて無いだろ。今までのも正当防衛だけだ。
 そんな事を言ったら、俺だって銃をぶっ放してるんだぞ?
 かりん、お前はな、妹の所に胸を張って帰る事を考えれば良いんだ。なっ?」

責めない様に、穏やかそうな口調で諭す様に話す。
彼女の瞳は不安に揺れているままだが、俺にはこれ以上の言葉は無かった。
もうちょっと気の利いた言葉があれば良かったのだが。

「なぁ、何で早鞍はそんなにしていられるんだ?
 自分が死ぬかも知れないのに…」

「死ぬかどうかは判らんと言っただろう。
 それに、自分が生きるために人を殺す、何て御免だな。
 別の方法で生き延びて見せるさ」

おどけた様に肩を竦めて答える。
最初に『ゲーム』の登場人物だから殺してしまっても良いか、とか考えていた事はこの際措いておく。
逆に今こうやって和解して行けて居るのは、相手が『ゲーム』の登場人物だったからかも知れない。
性格も裏の設定も知らない全くの他人だったら、こうまで上手く立ち回れた自信は無かった。
あの7番の彼に対した様に。

「あたし、早鞍に何をしてあげられるんだろう…」

「気負わなくて良い。でも何かしたいってのなら…。
 ただ一つだけ有るな」

「何っ?!」

身を乗り出して聞いて来る。
そんなに何かしたいのだろうか?
此処でエロゲーなら「身体」とか言うのだろうが、俺には恥ずかしくて言えない。
考えた時点でアウト、か?

「生き延びろ!ただ、それだけだ」

思考とは切り離して真剣な表情で告げた。
短い返答に呆気に取られたのか暫く呆けていたが、そのうちに彼女の瞳から涙が溢れ出て来る。
何で泣き出すのか判らないが、焦って再度頭を撫でておく。

「うん、うんっ」

かりんは目を擦りながら、何度も頷く。
再度かりんが泣き止むまで、暫く時を待つのであった。



かりんが調子を戻した様なので、再度合流に向けて進軍する事にした。
しかし、何かおかしい。
当分の間こちらが止まっていたとは言え、そろそろ鉢合わせしてもおかしくない時間なのだが。
俺としては泣いているかりんと居る状態で相手が到着してしまい、変に勘繰られてしまう恐れまで抱いたくらいだ。
不安に成ったのでPDA探知を実行して見ると、その光点状況は大幅に変化があった。
まずこちらへ近づいていた筈の2つの光点は、近付くどころか大きく離れていたのだ。
更に1つずつの光点2つが、その2つに近い位置にある。
3つではなく4つの光点がある事がおかしい。
2階の光点は依然2つあるので、こちらからの離脱組では無さそうだ。
4階の地図を見ると、光点が1つずつのものが2箇所にある。
という事は、麗佳と高山が別行動を取っているのか?
それとも鉄格子が上がって、文香が降りて来たのだろうか?
後者だと更に4階で高山と麗佳が別行動となるから、可能性は薄いかも知れない。
色々と不明だが、愛美達と合流すれば判るだろう。
どれかが手塚なのだろうが、4つ共近い位置にあるのでそちらへと向かう事にした。

先ほどから何度か遠くで銃撃音が何度も聞こえて来ていた。
そんなに長い交戦では無い様だが、間隔を空けて幾度か聞こえる。
当然ではあるが通路を進むにつれて銃撃音は大きく成っていった。
あれから2度ほどPDA検索を行なったが、PDAの場所は細かく位置を動くものの位置関係に変化は無かった。
高山なら葉月と愛美の二人は足手纏いにしか成らないと、合流をしないと言うのは考えられる。
内心苦笑しつつ、そろそろPDA検索をしようと思いながら三叉路に入った時に、いきなりかりんでは無い声が掛けられた。

「いよう、外原。元気そうだな?」

横に伸びる通路の向こう、曲がり角から半身を覗かせた手塚が声を掛けて来たのだ。
此処まで近付かれていた?
バッテリーを気にして検索の間隔を大きく空けていたのが裏目に出た。

「待てかりんっ!」

アサルトライフルを構えようとするかりんを制して、その身体を通路を通り過ぎる形で隠れさせてから、手塚に答える。

「手塚、まだやり合うのか?」

俺のアサルトライフルの銃口は下に向けたままなので、手塚は一旦隠れたが再び半身を出して来る。

「言っただろぉ?殺そうって奴は止められないって」

ニヤけた笑いを顔に貼り付けて答えて来る。
そう言えば言っていたな。
回想していると手塚が疑問調で聞いて来た。

「お前、凄い武装してやがるが、そっちもエクストラゲームがあったのか?」

エクストラゲーム?
横のかりんを見てみるが、かりんは首を横に振る。
つまりこちらでエクストラゲームは発生していない。
成らば奴個人か又は一部プレイヤーに発生したものだろうが、そうなると考えられるのは何だ?
…武装の強化か!

「手塚、お前っ!」

「違ったか。余計な情報、与えちまったようだなぁ!」

後ろ手に隠し持ってたのであろうサブマシンガンを構えて、その引鉄を引いて来る。
俺も慣れたもので銃口を跳ね上げて手塚を狙うと、一回だけ引鉄を引いてからかりんの隠れた通路へと飛び込んだ。

「ちっ。いーい反応じゃねぇかっ」

「手塚!止めろ!こっちにお前と争うつもりは無い!」

「ふざけろっ!こっちはツインテールのお嬢ちゃんに問答無用でヤられてんだよっ!」

麗佳が?
下に降りた光点は麗佳だったのか。
見た所手塚の半身に怪我は見当たらなかったが、上手く躱したのだろう。
しかし何故麗佳に攻撃を受けたから俺の説得を受けないと言う結論に至るのだ?
手塚は俺と麗佳が合流した事は知らない筈なのだが。

「クックック、まぁ良い。今は見逃してやるよ。俺も気に成る事があるんでな」

笑いながらの楽しそうな声が聞こえた後、笑い声が徐々に遠ざかって行く。
去ったのか?
PDA検索をして見ると、彼のだと思えるPDAが早くも2ブロック先まで移動していた。
だがこれで気を抜く訳にはいかない。
逆に2つの光点がすぐ近くまで近付いていたのだ。

「手を、あげろっ!そ、そこを、どいてくれっ!」

曲がり角に隠れながら、震えて拳銃を構える人影がある。
あれではまともに撃てるかも怪しい。
この声は壮年の男性のものである事から葉月だろう。
かりんを俺の身体で隠しながらそちらへ声を掛けた。

「待ってくれ。俺は外原早鞍。愛美、居るんだろう?」

暫くすると恐る恐るではあるが、ジャケットを羽織っていないスーツ姿の壮年の男性と御淑やかそうな女性が出て来た。
思ったよりあっさりと出て来たものだ。
もう少し問答すると思ったのだが。

「本当に、大丈夫ですか?攻撃して、来られないですよね?」

愛美が怯えながら聞いて来た。
そういう事は出て来る前に確かめるべきだろうに、暢気な子である。

「此処で俺が大丈夫、何て言っても保障に成らないだろ?
 それでは改めまして。約束を果たしに参りました、御嬢様」

苦笑した後で真面目な態度で一礼する俺に、顔を見合わせる2人。

「また恥ずかしい事言ってるよ」

背後のかりんがボソッと突っ込んで来たのだった。



完全武装している俺達に警戒心を中々解いてくれなかったが、暫く情報交換のため話している内にそれも解けていった様だ。
文香と一度出会った事を話してから、まずルールの確認から行なう。
こちらが晒す前に葉月のPDAに入っているルールが知りたかったので、聞いて置いたのだ。
PDAの操作方法が判らなかったらしいので、それを教えて書いてあるルールを読んで貰う。
それによると、追加のルール表示は5と9であった。
ルール9は結局4と7の2台にのみあったという事である。
次に葉月のPDAそのものの確認に移る。
現在判明していないのは、姫萩が4番であるという嘘を通したとして、10とQである。
彼が10なら協力する為には5名が死ななければならなくなる、とルール上なるらしい。
考えてみれば文香が話さなかったと言う事は、葉月は文香に明かさなかったのだろう。
俺達が聞いても渋っていたが、かりんの首輪が外れているのが幸いして答えて貰えた。
彼のPDAは『ゲーム』通りの4番であった。
これに対してかりんはちょっと首を捻っただけである。
優希の情報で姫萩が4番と言っていた事を忘れているのだろう。
此処で騒がれるかと思っていたが、都合が良いのでこのまま話を進める。

「彼女の首輪が外れているという事は、首輪が余っているんだよね?それ、あるなら僕に貰えないかい?」

「今余ってる首輪は2つある。しかし、これはまだ渡せない」

葉月が当然の提案をして来たが、俺はきっぱりと断った。
勝手に葉月に首輪を外されて、その首輪を破棄されるのが怖かったのだ。

「何故かね?!」

「簡単な話だ。首輪が壊れても良いなら渡すが?俺としてもそれは困るんだがな。
 それとも今後こんな武装で襲い掛かって来る奴等相手に、荷物も含めて守り切れると豪語するかい?」

適当な事を言っておく。
確かに首輪が壊れると俺も葉月も困るが、俺が首輪を持つ決定的理由には成らない事に葉月は気付いてない様だ。
良かった、と胸を撫で下ろす。
今あの情報を言う訳にはいかなかった。
ルールの穴の1つに成るかも知れないこれを、運営側に知られて封じられる愚は冒せない。
俺の真剣な目に、葉月は渋々ながら提案を引っ込めてくれた。

それから文香と別れた後の事情を聞いてみる。
文香と分断された後は回り道と成るが4階への階段を目指していたらしい。
相当な回り道となった上に途中で休んだ為に時間が掛かっていたが、そうしていた彼等にチンピラ風の男が近付いて来たのだ。
完全武装に見える手塚に警戒するものの、最初から友好的な態度で2人に会話をして来たので警戒を解いていた。
互いのPDAを取り出して情報交換をしている最中に、ツインテールの女性から銃撃を加えられる。
その銃撃により手塚が自分を囮にして逃げたお陰で、自分達は難を逃れているのだと言う。

哀れ、麗佳は悪役襲名中である。
何故3階に麗佳が残っていたのやら。
それと彼らにはどう説明するべきか。
手塚が10番である事は未判明となっている。
その為、友好的に近付いたのが首輪を作動させる為との説明は出来ない。

「早鞍さん、そちらへ行っても宜しいかしら?」

悩んでいると、葉月達が現れた通路の方から別の声が掛けられた。
声からして麗佳だろう。
目に見えて2人が動揺し始める。

「大丈夫、俺の味方だよ。攻撃を受けたってのは何かの手違いだから、安心して」

穏やかな笑顔を繕って、2人を宥めた。
しかしこの怯えっぷりでは、このまま合流は難しいか?
…よし、これでいこう!

「麗佳、両手を挙げて出て来てくれ!」

曲がり角向こうの麗佳に指示を出す。
麗佳も状況を察しているのか、反論せずに両手を挙げてゆっくりと姿を現した。
2人の怯えもクライマックスの様だが、此処で俺は努めて明るい声でもって言い放つ。

「ほら。良く調教されているだろう?だから安心便利さっ!」

「されてないっ!」

「調教とか何言ってんだ?!」

おどけて言った俺の言葉に、麗佳とかりんから突っ込みが来たのだった。

この茶番に葉月達も毒気が抜けたのか、先ほどまでの酷い怯えは無くなっていた。
ふっ、天才に掛かればこんなものよ。
格好を付けては見るが頬に付いた赤い手形、俺には見えないが、がひりひりと痛む。
麗佳の平手打ちは中々に痺れるものであった。
あ、俺、マゾじゃないッスから!
取り敢えずこの身体を張った一幕で、皆の緊張はある程度抜けてくれた様だ。

丁度合流出来たので、麗佳からも話を聞いて置く。
俺達と分断された後急いで4階へ上がったのは良いが、その4階の階段ホールで7番の奇襲を受けてしまう。
その際に高山は先に4階の通路へ入ってしまい麗佳は階段に残されたそうだ。
そしてグレネードと思われる爆発物で追い立てられて3階へ逃げ帰らされてしまう。
このまま4階に上がるのは危険だったので俺と合流する為に移動を始める。
その途中に手塚と一緒に居る2人を見掛けたのだ。
2人が危険だと判断して手塚に銃撃を加えたが、手傷を負わせられずに逃げられてしまう。
此処で深追いは避けて2人と合流しようとしたが、先ほどの手塚への攻撃を自分達への攻撃と思ったらしく、頑として聞いてくれない。
仕方が無く付かず離れずの状態で手塚からの攻撃を牽制していたとの事である。
行き成りの攻撃は不味かったのでは無いかと思うが、麗佳が見た時には手塚が手に持ったPDAを葉月の首輪に挿そうとしていたらしい。
其れ為らば緊急措置も已む無しである。
俺でもそうしただろう。

情報交換が終わったので、これからについて話し合う。
此処で俺は自ら分断する事を提案した。
理由はゲームマスター又は運営の介入と手塚の完全武装化だったが、皆には後者しか告げない。
兎に角高山と文香の2人との合流が急務である。
内心としては優希の防衛が急務と言った方が良い。
しかし御剣とも合流しなければ成らない為、二手に別れる事を提案した。
出来れば俺のみが御剣と合流しに行きたかったが、かりんが頑として俺と行くと言って聞いてくれない。
仕方が無いので、麗佳、葉月、愛美の3名に高山との合流をお願いした。

「けれど、4階のホールはどうするの?」

麗佳の問いは、当然の疑問である。
だがこれに対して俺は楽観視していた。
今話し込んだ事で大分時間が経った事も少しはプラスに成っているだろう。

「手塚が先に階段へ行った。奴等が交戦するんだ、あそこは一旦蛻の殻に成るさ。
 時間的にもこれから行ったら丁度良いだろう。余り時間をずらすと、手を組まれた場合が怖いからな」

麗佳の喉が鳴る。
手を組まれる、それが一番怖いのだ。
8名死ななくては成らない7番と、5階以下で5名死ねば勝手に条件を満たすだろう手塚。
奴らの解除条件は相性が良いのだから。

「もし奴等のどちらかが待ち伏せしている様なら、3階の階段ホール付近で待っていてくれ。
 どちらにしても、俺達もそこを通らないといけないからな」

「判ったわ。では行きましょう、葉月さん」

「う、うむ。宜しく頼むよ」

もう事態は自分の手に負えないと理解したのか、葉月が麗佳に軽く頭を下げる。
麗佳も頷きを返して階段へ向けて出発した。
愛美が通り過ぎる時に不安そうに俺を見る。

「御剣達を連れて行く。期待して待ってろ」

安心させるように微笑んで声を掛けた。

「あ、はい。いえ、そうではなく。気をつけて下さいね?」

「当然だ。まだ死ぬつもりは無いさ」

微笑みを崩さず答える。
この時はまだこの約束が果たせると、そんな甘い考えを持っていたのだ。
不安な様子は消えないまま、彼女は麗佳達について行くのだった。



俺とかりんは御剣たちと合流する為に3階を移動していた。
途中で何度かPDA検索を実行したが、先ほどからある場所で2つの光点が止まっている。

「戦闘禁止エリアで休憩中なのかな?」

かりんの言葉の通り、御剣達は3階へ上がった後で最寄の戦闘禁止エリアに1時間近く留まっている。
休憩中なのか、それとも待ち受けているのか。
もう目の前に見えて来た御剣達の居る筈の戦闘禁止エリアの扉を見て考える。
俺達の接近に気付いているとしたら、御剣達はどう対処するだろうか?
やるとしたら俺が7番にした様に戦闘禁止エリア付近に誘い込むか?
もしかしたら安全に話し合いをする為に戦闘禁止エリアを使用する、Ep1や2の高山の様に考えたのかも知れない。

「かりん、止まれ」

後1ブロックで到着する場所で停止した。
あの御剣に限っていきなり攻撃して来る事は無いだろうが、用心はして置いた方が良い。
もしかすると、渚が裏切って2人のPDAを回収しているのかも知れないのだ。
プレイヤーカウンターではまだ13名の生存者が確認出来るので、死んでは居ないだろう。
ただPDAが盗られていた場合は御剣達の居場所が判らなく成る。
愛美の解除条件を満たす為には面倒に成るが。
…それが目的の可能性もあるのか?
色々と嫌な予想が脳裏を過ぎる。

「おい、早鞍。どうするんだ?」

止まったまま黙ってしまった俺に、かりんが急かして来る。
そうだ、早く決めなければ成らない。
このままだと相手が戦闘禁止エリアに居るのなら自分だけが行くと、かりんが言い出し始めかねない。
こちらには反論の材料が無いのだ。

「良しっ、取り敢えず部屋を覗いてみよう。かりん、発砲は極力しないように、な?」

「判ってるよっ!」

ちょっと拗ねたかりんはとても可愛いかった。

扉を開けた。
開ける前にPDAから例の警告が鳴るが、判っていた事なので無視しておく。
当然、部屋の中へは一歩も入らずに中を見る。
部屋の中には3人の男女が応接セットに座ってこちらを見ていた。
一人、姫萩だけがPDAの画面を凝視していた様だ。
3階で既にPDA又は首輪の探知ソフトが有ったとでも言うのか?
疑問には思うが後回しにして俺が声を掛けようとすると、彼等はいきなり立ち上がって部屋の奥へと逃げ始めた。

「って、ちょっ、まっ!
 待て待て待て。話し合いをしよう!うん、そうしよう!」

急いで部屋の中へと3歩足を踏み入れる。
俺が入ったのを見て、彼らの動きが一旦止まった。

「まあ待て。話し合いをしようじゃないか?なっ?」

「お前が、話し合いだとか言うのか?」

まさかとは思うが、手塚から俺の解除条件でも聞いたのだろうか?
渚に話した覚えは無いのでそれしか無いだろう。
いや、文香経由も有り得るが、どちらにしろ俺の解除条件は知られていると思って良い反応だ。
それならこの警戒も頷ける。
だが此処で話し合いをしないと始まらない。

「それをお前が言うのか?御剣」

御剣の言葉に俺はニヤついて返した。
俺の言葉に御剣は気まずそうに顔を顰める。
そして渋々と3人共、ソファーへと引き返して来た。

「それじゃ座って話をしようか。
 かりん、入って来て良いぞー」

皆を座る様に促しながら、かりんを呼ぶ。

「ひっ」

姫萩が喉の奥から悲鳴を上げた。
何をいきなり驚いているのだろう?

「く、首輪が、外れて、て」

「ああ、もう解除者が出てるんだ。良い事だろ?」

御剣に微笑みかけるが彼は青ざめた顔で震えている。
後ろの姫萩など御剣の服の裾を手が真っ白に成るまで強く握り締めて、今にも失神しそうなほどだ。
渚もこの事態に目を丸くしている。
はて?
彼等とかりんに接点なんてあっただろうか?
渚は少しはあるだろうが、かりんの解除条件も驚く様なものでは無い。

「なあ?どうしたんだ?」

「こ、殺さ、ないで…」

俺が言葉を掛けた途端に姫萩がガタガタと震えだす。
その姫萩を御剣が強く抱きしめていた。
こんな所でラブラブイチャイチャか、こいつ等。
そう思ったが、姫萩の言葉は何かおかしい。
殺すって、此処は戦闘禁止エリアなんだから無理だろうに。
…禁止?

「おお、かりん、お前此処で攻撃可能なんだっけ?」

部屋に入る前の検討事項に入っていたのにド忘れしていた。

「すまん、かりん。武装解除して貰えるか?
 このままじゃこいつ等、話し合い出来る状態に成らないし」

「へいへい。はぁ、本当に頭良いんだか、馬鹿なんだか」

かりんに盛大な溜息を吐かれてしまった。

取り敢えず5人全員で応接セットに腰掛けてから、御剣達にこれまでの事について説明して貰った。
まずエントランスホールから手塚の裏切りまでは優希と渚の説明通りである。
その後1階に落ちた渚と優希を迎えに行く為、再度1階に降りたが一向に見付からず時間が過ぎていく。
その時エクストラゲームが提案された。
そのクリア報酬に仲間との合流と有ったので、渋々ながらこれを受けてクリアして渚と合流出来たのだ。
渚から別れてからの事情を聞いた二人は、3人で上を目指す事にする。
再会した時間はもう18時間を経過しており、このままでは危ないと急いで2階へ向けて移動を始めた。
しかし1階の奥まった場所での再会だったので、2階に上がった時は22時間を過ぎていたらしい。
俺達が寝る前に探知したのはこの間の時のものだろう。
彼等は各階の進入禁止化に怯え急いで此処まで上がって来たのだが、最初の手塚の襲撃により警戒心が強く成っていた。
その為ずっと緊張を張り続けて上がって居たので疲れ果ててしまい、この戦闘禁止エリアをPDAのソフトウェアで見て確認出来たので立ち寄ったのだ。
此処での休憩中に姫萩のPDAに何時の間にか導入されていたPDA探知ソフトにより俺達の接近を知った事で、再度緊張を高めていたとの事である。
戦闘禁止エリアなら安全だと思って待っていたが、俺達の武装を見て肝を潰したらしい。

成程、PDA探知、ね。
さて、状況が大分見えて来た。
これから先は時間との勝負に成るが、愛美の為にも頑張らないといけない。
それに一つ、はっきりとさせなければ成らない大事な事項がある。

「大体事情は判った。
 まず言って置くのはかりんについてだ。彼女のPDAはキングだった」

「えっ?でもお二人だけでは…っ」

はっとして中断した姫萩の台詞を、此処はまだ流す。

「俺達は上の階でルール9を見付けたんだが、御剣の方は見付けてるか?」

「いや、まだ未判明なんだ」

即答である。
御剣の性格では嘘も無いだろう。
やはりこの時も姫萩が動揺する。
では最後だ。

「姫萩、君の4番のPDAを出して貰えるかな?」

「あっ、う」

「4番?って葉月さんじゃ?」

「どうしたんだ?咲実さん?」

姫萩が絶句してしまい、その様子に御剣が不審がる。
かりんも俺の言葉に首を捻るが、追求はして来なかった。
出せないだろうな。
それとも今すぐ再偽装をするか?
この衆人環視の中で違和感無く偽装行為が可能か?
彼女には無理だろう。

「言い直そうか?姫萩。
 君の持つ、2つのPDAを、机の上に出してくれ」

姫萩がカタカタと震える。
2つ、この言葉に何かを感じたのだろうか、御剣が俺と姫萩の顔を交互に見比べた。

「咲実さん、まさか…」

「ごめ、ごめん、なさい。私、卑怯者、でした…」

言いながら2つのPDAを机の上に出す。
1つは<ダイヤの7>を表示させている。
もう一つはトランプの<ハートのQ>を表示させていた。
やはり姫萩はJOKERで偽装したPDAの追加機能を利用していたのだ。
7番に偽装したのは偶然なのだろうが、その中のソフトウェアは有効な物が多い。
もしかすると、この戦闘禁止エリアの近くに来たのも偶然では無いのかも知れなかった。

「7番?!って、ええっ?!」

この事態にかりんも驚愕した。
7番はその特殊性の為、俺が肌身離さず持っている筈なのだ。

「姫萩。この7番、貰って良いかな?こっちの仲間に2と6が居るんだ」

「…はい、宜しく、お願いします」

力無く答える姫萩。
やはり4か7のPDAから各解除条件を見ていたのだろう、返答は早かった。
許しを貰ったので机の上の7番、JOKERを手早く回収する。
渚の制止や妨害は無い。
彼女こそが一番警戒する対象だったが、戦闘禁止エリアなのがこちらにも有利に働いたか?
早速そのPDAを確認してみる。

「私、御剣さんが、怖くて、偽ったんじゃ、ないん、です」

俯いたまま涙を零して小さな言葉を途切れ途切れに紡いでいる、みたいだ。
…しかし、さっぱり判らん。
姫萩の言葉に対して御剣は努めて明るい声を出して返していた。

「判ってるよ、咲実さん。俺に負担を掛けないようにする為だろう?
 良いんだよ、そんな事は」

御剣は優しく慰めた。
手元の作業を止めて彼らを、半眼で見る。
これからこいつらのラブラブイチャイチャを見なければ成らないのか?!
冗談じゃ無いデスッ!
っは!嫉妬の炎が全てを爆破する所だったゼ!
内心の冗談は措いておき、…本当に冗談ですよ?
次に話を進めよう。
本当に時間が無いのだから。

「渚も含めて、3人とも生駒愛美に会って貰わなくては成らない。48時間経過前にな。
 その為、辛いだろうがすぐに同行して貰えると助かる」

この俺の意見に、既に渚から愛美の解除条件を聞いていたのだろうか、皆が頷いてくれる。

「それでは早速出発したいが、その前に1つ…。
 重要な事を聞いて置きたい!」

立ち上がりつつ、最後の方は声を張り上げる様な俺の言葉に、皆が驚いてこちらを向く。

「な、何をだ?」

御剣の真剣な問いに対して、俺は「ソレ」を確実に知っているであろう姫萩の方を向き、直角に腰を折って頭を下げる。
残念だが俺にはどうしても判らなかったのだ。

「JOKERの解除方法を教えてくれっ!」

姫萩がソファーからずり落ちた。


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