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No.4846の一覧
[0] マブラヴ オルタ 現実からの逃避[ryou](2012/11/22 23:06)
[1] 2話 [ryou](2009/02/17 04:52)
[2] 3話[ryou](2009/02/17 05:00)
[3] 4話[ryou](2008/11/25 21:45)
[4] 5話[ryou](2009/01/13 01:47)
[5] 6話[ryou](2009/02/17 05:01)
[6] 7話[ryou](2009/02/17 05:03)
[7] 8話[ryou](2009/02/17 05:07)
[8] 9話[ryou](2009/02/17 05:10)
[9] 10話[ryou](2009/02/17 05:12)
[10] 11話[ryou](2009/01/13 01:48)
[11] 12話[ryou](2009/01/02 22:43)
[12] 13話[ryou](2009/01/13 01:49)
[13] 14話[ryou](2009/01/04 02:33)
[14] 15話[ryou](2009/01/04 20:50)
[15] 16話[ryou](2009/01/08 21:21)
[16] 17話[ryou](2009/01/05 22:25)
[17] 18話[ryou](2009/01/08 21:20)
[18] 19話[ryou](2009/01/09 01:55)
[19] 20話[ryou](2009/01/13 01:35)
[20] 21話[ryou](2009/01/26 00:04)
[21] 22話[ryou](2009/01/30 22:53)
[22] 23話[ryou](2009/01/30 22:53)
[23] 24話[ryou](2009/01/31 02:52)
[24] 25話[ryou](2009/01/31 23:35)
[25] 26話[ryou](2009/02/04 23:19)
[26] 27話[ryou](2009/02/02 00:43)
[27] 28話[ryou](2012/11/15 21:48)
[28] 最終話 第一部 完[ryou](2009/02/02 04:40)
[29] 外伝 この眼に誓って[ryou](2009/02/03 02:00)
[30] 外伝 愛に生きる男 その名は[ryou](2012/11/15 21:48)
[31] 外伝 うたかたの夢[ryou](2009/02/12 06:56)
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[4846] 28話
Name: ryou◆7da013d0 ID:3d61d876 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/11/15 21:48
 祐樹が部屋の外にでたことを確認した後、智呼はジッと夕呼を見ていた。

 智呼にとっては、ずっと探し続けていた人物だ。それがいざ目の前になると、どうしていいかも分からなくなってしまう。ずっと考えていたはずなのに、文句を言い、引っ叩いて、謝らせよう。そう思っていたはずなのに、それを実行しようという気は、綺麗さっぱり無くなっていた。何を話そうか、一言目に、何を言ったらいいか、智呼は静かに考えていた。それは、夕呼もまた、同じのはずだ。

 空気を察してか、左近は帽子を深く、かぶり直しては、音をたてずに部屋を後にした。親子水入らずという言葉を知らない訳ではないのだ。彼もまた、子をもった親でもあった訳なのだから。

 まるで、西部劇の抜き打ちのようだった。向き合っては動かない。違うのは銃を撃つことではなく、言葉を発することだけだ。どちらが先か、そう思って、とりあえずは厭味の一言でも言ってやろうと智呼は思う。

「……ずいぶんと老けたじゃない。皺、目立ってるわよ?」

 嘘でもいいから、何か言ってやりたかった。目立つ皴などないが、弱いと思われたくなかったのだ。

「あんたも、大きくなったじゃない。胸以外は」

 昔から気にしていることを、平気でよく言う。ほんの少しだけ、嫌いだと思う感情が蘇る。自分から仕掛けた事は棚に上げてだ。それは甘えだろう。子どもの悪口など、笑ってかわしてくれると。しかしそれは、夕呼なりのかわし方でもあるのだ。それが、確執の一因になっているとは知らずに。

「なんで、帰ってこなかったの? 並行世界に渡ったって、日高の口ぶりじゃいつでも戻ってこられたんでしょう」

 夕呼はその問に、目を逸らしたまま答えなかった。

「……黙ってないで、ちゃんと答えなさいよ!」

「その前に、聞かせて。どうして私を呼んだの?」

 その言葉に、どうにも反発したくなってしまう。智呼は、正直な心の内を明かしたくはなかった。それはなぜだろうと、智呼は考えるが、もやもやした頭で、考えられるとは思わなかった。ここで反発するのは簡単だ。簡単だけど、意味がない。理屈じゃないけれど、そういうものなのだ。

「……娘が、母に会いたがっちゃ悪い?」

 それを聞いて、まるでその言葉を待っていたかのように、夕呼は表情を和らげた。「十分よ」それだけ言って、大きく息を吸って、それを吐きだした。

「私はね、怖かったのよ。あんたが。あんたに嫌われてるって思うと、顔を見せようなんて思いもしなかった。並行世界を渡って、技術を集めるなんて、建前よ。私は、逃避してたのよ。現実逃避。自分の生まれた世界を現実とするなら、別の世界に行けるなんて、最高の逃避じゃない。大切な人に嫌われるって、つらいことなのよ。とっても」

 それは懺悔なのだろうか。己の悔いを曝すことで、救いを求めようとする。智呼はそう感じていた。それに、私が嫌ったから逃げたなんて、まるで私のせいだ。そう思い、智呼は自分の手を、強く握りしめている事に気づいた。

「私は、私はあんたなんか嫌いよ! 大っ嫌い。いつも自分勝手で、勝手な思い込みで自己完結して、だから研究ばっかり目を向けて私の事をほったらかしにしたんでしょう? だから嫌いになったの! あんたは私の何なのよ、私はあんたの何なのよ! そんなことなら、子どもなんて作らなきゃよかったじゃない! 何で私を生んだの? 私は、あんたの代替物じゃないのよ、もう演じきれないのよ!」

 そこまで言って、頬に熱いものを感じた。泣いていたのか。自分でも気づかないほど、昂っていたようだ。

「……ごめんなさい。私は、自分の子を見たかった。本当は、あんたには、軍隊とか、関係のない所で育ってほしかった。だから、あんたを遠ざけたの。研究は止める訳にはいかなかったけど、それでも、私と、あの子たちが繋いだこの世界で、幸せになってほしかったのよ」

 あの子たちとは、一体誰を指したものだろう。それは、世界を護る為に散っていった者たちに他ならないのか。今この世界を護るために、死力を尽くした者たちを送りだしたからこそ、夕呼はそう思うのか。

「そんなの、親のエゴよ。私のことなんか、本当の意味で何も考えちゃいないじゃない。私は、あんたに母親をやってほしかったのよ! 私があんたを演じても、何の意味もないの! だから自分勝手って言うのよ。……ちゃんと、分かる形で愛して、欲しかったの」

 膝を折り、床に座り込んだ。智呼は、初めて、人に弱さをぶつけた衝撃に、軽い錯乱にも似た状態に陥っていた。今まで溜め込んだ、甘えたい衝動。それが今、関を切って流れ出てしまう。智呼自身、止められる気がしなかった。

「そう。ごめんなさい。……ダメな母親ね。私はあんたの馬鹿な母親で、あんたは私の愛しい娘で。それだけよ。それだけ。ごめんなさい。愛しているわ。だから、ね? もうどこにも、いかないから」

「……お母さん」

「なに?」

 夕呼がそっと、項垂れ、泣きはらす智呼を抱きしめた。それ以上、智呼は何も言わず、そのままされるがままに、母の胸で泣いた。



 屋上に向かおうと、その前に月詠さんを探した。PXに顔を出すと、隊のみんなが揃っている。柏木がこっちに気づいたので、指をさして合図を送った。それは無事に伝わったようで、柏木が月詠さんに後ろを振り向くように促し、視線が合ったところで、上を指差して見せた。それだけで十分伝わるだろう。どうにも柏木のにやついた表情は腹立たしいが、それもまあよし。先に屋上へ向かい、手すりに背を預けて月詠さんを待った。

 少しもしないうちに、重い扉を開いて、月詠さんがやってきた。「まったく、日に全部吸わないと堪らないのか?」そう言っては律儀に付き合ってくれる。

「あと1本、今日の分は残ってるだろう?」

「それでも、減らす努力はするべきだ」

「日に10本以上から一気に3本に減らしたんだぞ?」

「……約束は守っているようだな」

 それに、「まあね」と返して、土産で持ってきたマルボルに火をつける。本日最後の一本。辺りは暗く、民家の明かりもないこの一帯は、ここにしか世界がないように錯覚させる。サーチライトがそれを照らし、輪郭を作り上げる。もう少しもすれば消灯時間だ。今日の締めくくりには丁度いい。

「月詠さん」

 呼びかけると、彼女は少し離れて、隣へ移動していた。同じように手すりに背を預け、星空を眺めている。目は空に見上げたまま、「なんだ」と返してきた。

「月詠さん、ここ卒業したらどうするんだ」

 しばし黙った後、空を見上げながら言った。

「さあ、わからん。本当なら、卒業したあとに実家に戻り、婚儀をあげる予定だった」

「……そうか」

 思い出させてしまっただろうか。なるべくそれに触れないようにはしていたが、思わぬ所で地雷を踏んだものだ。

「父から、手紙が来たんだ。婚約の破棄を知らせる文だった。新しい相手を急きょ探してるようだったから、断った」

「……そっか。そりゃまたなんで」

「なぜだろうな。自分でもわからん。空に、空に上がってみたい。宇宙で、衛士として、世界を守ろうとするのも悪くない。いや、そうありたい」

 それは新しい夢なのだろう。婚約で閉ざされた、未来への自由を、急に得たのだ。次の目標をそう定めたのか。自分は、どうするべきだろう。香月夕呼が戻ってきた場合、自分はどうなるのだろう。智呼は、助手になれと言った。しかしそれも、夕呼がいれば必要のないことだろう。ならば、自分も自由が得られた事になる。

「お前はどうするんだ?」

「俺は、俺は……」

 まだ答えなんて考えられない。自分も、任官すれば、空にいけるだろうか。衛星基地ホープ。戦闘はないにしろ、そこは最前線だ。そのうち月攻略も始まるだろう。そんな場所に、いってやれるのだろうか。

「空か、どんな所だろうな。月詠さん、どんな場所だと思う?」

 月詠さんはまだ星空を見上げたままだ。月詠さんは、空に何を求めるのだろう。よく考えれば、この平和も、207分隊の尽力があってこそ、この平穏があるのだ。……自分も、甘えるばかりじゃ居られないか。

「そうだな。きっと素敵な所だ。星が地上よりも近くに見えて、地上がまるで小さく見えて。きっと、素敵な所」

 それを語る月詠さんの横顔は、どこか輝いて見えた。夢を語る人の姿は、どれも眩い。希望に溢れ、夢を抱くその姿は、それこそが人間の正しい姿だと思える。

「祐樹は、どんな場所だと思う?」

 そう言って月詠さんは視線を自分へと向けた。慌てて視線をそらし、今度は自分が空を見上げる。

「……そうだな。どんな場所だろう。暗くて、空気がなくて、外に出たら死んでしまう世界」

「なんだ、ロマンのない男だな」

「でもさ、だからこそ、魂のある生き物が、輝けるんじゃないかと思う。空は、きっとそんな場所さ」

 まだ見ぬ世界を夢想しては、想いを馳せる。自分も、重力から解き放たれた時、素晴らしいと感じてみたい。宇宙に、地球に。世間というくだらない枠から飛び出して、解き放たれてみたい。

 意を決して、言ってみる。

「冥も、そう思うだろう?」

 少しきょとんと眼を丸くしたが、また空を見上げては、月詠さんは言った。

「そうだな。人は、綺麗だ。汚いばかりじゃない」

 ああ、綺麗だ。人は綺麗。だからこそ、魅かれ会うのだ。人と人は。そこまで臭い事を考えては、自分の指先を見る。まだ長かったはずの、一回しか吸ってない煙草が、根本まで灰になっている……。

「……しまった、吸うのを忘れた」

「はは、良い事じゃないか。今日はもう終わりだ」

「……殺生な」

 吸い柄をポケットに突っ込み、手すりから離れ、もう一度だけ星空を見上げた。地上に明かりがないと、こんなにもよく見えるものなのか。東京に、自分の世界にいた頃は、夜空を見上げるなんてこと、まったくしなかった。宇宙は、美しい場所であってほしい。ほんの少しだけ、空の魅力に取りつかれたようだった。

「それで、祐樹の夢はなんだ?」

 もう一度聞かれ、今度は答えた。

「俺も、空に行ってみたいかな。BETAを倒すとか、そんな大層な話じゃなく、空に上がりたい」

 月詠さんは軽く笑い、「そうだな」と答えた。

「一緒に行けるといいな。祐樹」

 そう言っては階下に降りる扉へと向かった。

「そうだな、一緒に。冥」

 自分もそれに続き、明日に備える事にした。煙草はまったく吸えなかったが、その代価はあまりに大きい。自分も現金なやつだと思ったが、こんなものかと納得した。

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どうもryouです。今回臭すぎます。死にそうです。

どうにも智呼の回は、三人称にしてしまいます。途中でそれを変えるのは一種のタブーなのですが、練習の意も込めて、勝手をさせていただいてます。
……思ったよりあっさりしてしまうのは悪い癖。さて、そろそろ将来の行く末を考える時期です。高校で言えば、3年生の冬。自分は就活生を横目に、遊んでいました……。一昨年の話です……。
と言っても、まだ後悔するには分からない時期。日高のように、悩み悩んでは、好きなようにやってくたばりたいと思います。
次回からは、さてどうなるか。お楽しみに。


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