目覚めたそこはボロボロの見知らぬ一室だった……
まず最初に考えたのはただ一つ、これは非現実的なことが起きたのだ、ということだった。
夢や目標もなく高校を卒業し自堕落な毎日を送る日々、就職もせずただバイトとタバコを吹かしながらゲームや漫画を読む、それだけの毎日。そんな生活に自分自身嫌気が指していた。常日頃から自分は漫画やゲームの主人公に憧れていた。そう、何か不思議なことが起きないかと妄想に耽り何も変わらない日々を送っていた。
だが今は違う。そう違うのだ。朝起きたらまったく見知らぬ場所で。これだけで自分はまだ眠気の覚めない頭で、どこかワクワクしていた。
一体ここはどこなのか。部屋を見渡す限り人が住んでいた形跡もない。何年も放置されたような埃まみれのベッド、ヒビが入った今にも崩れそうな壁。最早何が描いてあったかもわからない壁に貼られた紙。ベッドの横にある窓から見える景観は倒壊した町並みであった。
その光景には思い当たる節がある。崩れた町並み、そしてこの部屋。おそらく外にでればすぐにわかる。
マブラヴの世界だ……
「マブラヴの世界……マブラヴ」
あまりの感動に心が躍り思ったことを口にでてしまった。戦術機を駆けBETAと戦う世界。そう、俺が大好きだった作品の一つだ。
とりあえず外へでてみよう。この物語はそこから始まるのだ。
玄関を開け外を見渡す。瓦礫の山。倒壊し、人の気配のない町。いや、もはやそんな観察はどうでもいい。まずは戦術機が見て見たい。初めて見る人型ロボット。それがまさか戦術機だなんて、そう。隣にある鑑純夏の家に戦術機が……
「ない、撃震があるはずなのに……」
辺りを見渡す。たしか玄関から出て左の家だったはず。右か? ……ない、どういうことだろう?
道路をよく見てみると、最低限の舗装がされている。BETAに襲われたのだ。道路がそのままの原型をとどめているのはおかしい。
不意に遠くでエンジン音がした。車やバイクの音じゃない。音は上から聞こえていた。
「……ヘリ? ……まさか、光線級は? ありえない、マブラヴの世界じゃありえない」
そもそも俺はなぜここをマブラヴの世界だと思った? ゲームで使われた背景と部屋、町並みが酷似していたから? まずそこから考えよう。ここは、どこだ?
色々思うことはある。まず俺は、この世界をマブラヴだと認識した。他に知ってる話のなかで、今の現状に当てはまる作品はしらない。ならまったく知らない別の話? 何かの世界、じゃなくまったく知らない世界へ来たのか? しかしそれだとあの部屋の説明がつかない。あの部屋は白銀武の部屋だ。それだけは確信している。が、しかし……
思考がループしていた。考えてもおよそ答えなどでるわけのない、出口のない迷路を彷徨っている感覚だ。
だがその思考をある音が現実に引き戻した。
「……うるさいな、ヘリの音がこんなに近くに聞こえるなんて…さっさとどこかへ……な!」
ヘリは近くを飛んでいた。そう、近くなんてものじゃない。空を見上げるとこちらのほうへ降りてくるヘリが見えたのだ。
「うわ!」
強い風が体を揺らした。ローターは一つ。しかし大型の、軍隊を思わせるヘリだ。
「……やばい」
こんな状況なら普通の思考をもっていれば誰しもが思うだろう。こんな何もない場所に、軍隊を思わせる黒塗りの大型ヘリがこちらに向かってくる。この状況、狙いは自分自身だと少なからず思考の中に入れて置くべきである。民間人がここにいるのが不審なのか? それともこれはただの考えすぎでただこの近くに着陸するだけなのか? いや、待て。周囲をもう一度見渡してみよう。ここはあくまでも住宅街なのだ。すでに家屋が倒壊してるとはいえ、いや、逆に倒壊してるからこそヘリが着陸するのに十分な場所はない。なら、着陸はしない?
自分は可能性を疑いながらも消していき、結局は狙いは自分だという結論をだした。だがそこはただのフリーターだっただけの人間だ。非現実的な今を認識し、ちゃんと思考できることはできた。それすらも出来ずに混乱する人間だっているだろう。しかし、自分は考えに溺れ、結局のところ何も動けずにいた。
結論を出した直後である。ヘリの両側面がスライドし中からロープが2本、そしてすぐにまた2本垂らされた。
「……やばい!」
そう頭で考えたときにはすでに状況は停滞していた。ロープを落ちるような速度で滑り降りてくる兵士4人にアサルトライフルの銃口を向けられた最悪の状況でだ。
「貴様…ここは立ち入りを禁止されたエリアだ。知らないとは言わせない。両手を頭の後ろに当てろ。10秒以内に行動を起こさない場合は射殺する」
兵士の一人が銃口を近づけながら言った。距離は2mは離れているが初めて向けられる銃口の威圧感はありないほど生きた心地をさせないものだった。
「わかった…わかったから「何も喋るな」……」
兵士は無言で威圧を続ける。10秒たったら撃たれる、機械的な対応がそれに真実味を実感させた。
自分は黙り、両手を頭の後ろに上げた。それを見た正面で銃口を向けていた兵士が左右の兵士に合図を送った。どうやらこいつが隊長らしい。
「下手な行動は起こさないほうが身の為だ。ほんの少しでもその傾向が見られれば射殺する」
隊長らしい男がそう言い、一人の男が至近距離から銃口を向け、一人が横から、もう一人が俺が武装しているか確認していた。
「何も所持していないようです」
「貴様、なぜこんな場所にいる」
依然状況は最悪、銃口を向けられたままでまともな思考ができるわけがない。ここはどう答えるべきか。
本当のことを言う。NOだ。信じてもらえるわけがない。それこそ本当のことを言えと壊れた蓄音機のようにリピートするだけだ。
「答えろ!」
隊長らしい男が銃口を更に近づけて威圧する。冷たい汗が頬を伝った。手足の感覚がまるでない。意識してみるとガタガタと震えているのがわかった。
一度意識してしまうとその感覚はうっとうしいものでしかなかった。ガタガタと震え、震えは全身に伝染し仕舞いには倒れてしまいそうだった。
「答えろと言っている!」
ドッという鈍い音がした。隊長らしい男がライフルの銃床で自分を殴りつけたのだ。顔を右下から左上に振り切るように。手足に力が入っていなかったせいもあって自分は地面に突っ伏した。口の中は血の味でぐしゃぐしゃだ。唇は当然切れているだろうし歯だって折れているかもしれなかった。
「立て。どうやって立ち入り禁止エリアに侵入した。エリアとの境界線は兵士が見張っているはずだ。答えろ!」
最早頭は回らない。まともな思考などできるわけがない。なら一か八か賭けてみることにした。だんまりを続けて射殺されたなんてあまりにも愚かだ。
「記憶が、ないんだ。ここはどこなんだ? 禁止エリアってなんな「黙れ。質問を許可した覚えはない」……」
会話は成立しない。ペースは完全に向こうが握っていた。
「嘘をつくとためにならんぞ? どのみちここで嘘をついたとしても調べれば答えはでる。ここで嘘をついてあとでバレたとなったらそれこそ貴様の少ない立場を削ることになるぞ?」
と言われても今はこう言い逃れるしかできない。立場なんて元からあったもんじゃなかった。
「嘘じゃない…ここがどこかも…なぜここにいるのかもわからないんだ…」
隊長らしい男の顔が強張る。自分も多少落ち着いてきたのか、相手の顔を始めて認識した。20代半ばの少し眉毛の太い日本人だった。
「……ここで問答しても埒があかない。基地へ連行し調べ上げる」
了解、と兵士3人が答え、乱暴に腕を拘束され開けた場所に降りていたヘリに乗せられた。わずか一時間も立つ前に帰りたいなどと思ってしまった。まさに滑稽な姿だった。
後書き
どうも 読んでくれてありがとうございます。今回ここへ初投稿になります よろしくお願いします。
この作品は頭からシナリオや名前などを明記してないせいで1話が読みにくかったりするかもしれませんが作品のなかで書いていきますで御了承ください…。
一応オリジナルで考えたつもりですが過去作品を全て読んだわけではないので何かの盗作だ!と思えた方は教えてください。すぐに削除いたします。
一応現実→マブラヴで行きます。
12年11月22日 晒し中