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No.4809の一覧
[0] 天災異邦人『高橋良助』~オワタ\(^o^)/で始まるストーリー~(現実⇒原作)[マッド博士](2009/01/25 02:30)
[1] ――― 第 01 話 ―――[マッド博士](2008/12/27 21:09)
[2] ――― 第 02 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:09)
[3] ――― 第 03 話 ――― [マッド博士](2008/12/22 07:12)
[4] ――― 第 04 話 ―――[マッド博士](2009/01/09 08:04)
[5] ――― 第 05 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:19)
[6] ――― 第 06 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:21)
[7] ――― 第 07 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:21)
[8] ――― 第 08 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:22)
[9] ――― 第 09 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:22)
[10] ――― 第 10 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:23)
[11] ――― 第 11 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:23)
[12] ――― 第 12 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:23)
[13] ――― 第 13 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:24)
[14] ――― 第 14 話 ―――[マッド博士](2009/01/17 22:23)
[15] ――― 第 15 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:24)
[16] ――― 第 16 話 ―――[マッド博士](2008/12/22 07:25)
[17] ――― 第 17 話 ―――[マッド博士](2008/12/27 21:09)
[18] ――― 第 18 話 ―――[マッド博士](2009/01/17 22:23)
[19] ――― 裏 話 1 ―――[マッド博士](2009/01/09 07:58)
[20] ――― 裏 話 2 ―――[マッド博士](2008/12/25 14:26)
[21] ――― 裏 話 3 ―――[マッド博士](2008/12/27 21:29)
[22] ――― 裏 話 4 ―――[マッド博士](2009/01/09 08:01)
[23] ――― 裏 話 5 ―――[マッド博士](2009/01/09 08:02)
[24] ――― 裏 話 6 ―――[マッド博士](2009/01/09 15:05)
[25] ――― 第 19 話 ―――[マッド博士](2009/01/17 22:22)
[26] ――― 第 20 話 ―――[マッド博士](2009/01/25 02:18)
[27] ――― 第 21 話 ―――[マッド博士](2009/01/25 02:43)
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[4809] ――― 第 19 話 ―――
Name: マッド博士◆39ed057a ID:eca59468 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/01/17 22:22






星と街が煌くヨークシンシティの夜。

薄ら闇が立ち込める高級ホテルの一室を、そこに立っていた3人の男たちを、
その高らかな嗤い声は一瞬にして支配した。

男が地面に転がって腹を抱えて嗤っていた。
ゲラゲラと笑いが抑えられないその姿は、壊れて止らなくなった笑い人形のようだった。
狂笑はスウィートルームの豪華な装飾に反射し、空間を木霊していく。

金髪長身の男と背の低い東洋系の男は、その姿を目を見開いて見ていた。
もう1人の額に刺青を入れた男は、その様を静かにそして冷たく視認している。

そんなギャラリーのことなどまるで気にせずに、男は爆笑し続けていた。
本当に面白いことがあったと言わんばかりに愉快そうに笑っている。
だがどこかこの世の無常さを、滑稽さを嘲笑う笑いのようにも見えた。

一しきり嗤った後、男は疲れたようにして床に大の字になった。

「……ハァ……ハァ……。
 いやぁ~、思い出した思いだした」

男は目尻の涙を拭ってユラリと立ち上がる。
そしてヘラヘラと笑みを浮かべて、両手を広げ、他の3人を見渡した。

「俺、死んだんだったわ」

セリフの中身に比べてあまりに軽過ぎる一言。
彼の名前は高橋良助、先ほどまで首を断たれていたはずの男である。






第19話 『覚醒』






「こいつは具現化された念だ」

そのたった12文字の言葉は、高橋良助に決定的な変化をもたらした。

まず始めに心臓が五月蝿いほどに鼓動し始めた。
まるで耳の傍に心臓があるかのように聞こえてくる鼓動の音。
暴れるように荒々しいその音には、人間のありとあらゆる情念が混ざっている気がした。

だがおかしい。既に自分は首と胴体が切り離されているはずだ。
なぜ切り離されたはずの胴体にある心臓の音が聞こえるんだ。
そんな疑問を感じた瞬間、良助はそれを認識した。

自分と何かがが繋がる感覚。
コンセントに電源を差し込んだ時のような感触が意識に浮かんだ。
今まで途絶えていた2つの閉路が線1本で繋がったような気がした。

良助は最初それが一体なんであるか分らなかった。
だが、その繋がった何かから迸るように流れ入ってくるモノが、その疑問を氷解させた。

それは見知らぬ光景だった。

自分の体とは思えないような黒々と焦げた己の四肢。
その焦げた両手で体を掴まれ、死んでいった数多の人間達。

良助が覚えている限り、こんなのは見た記憶がなかった。
しかしそれは確かに良助が見た光景だったのだ。
良助の体の中に眠る、もう1人の彼……『化物』が。

その化物は、焼け付くような痛みとドロリとした暗黒の牢獄で生まれた。
燃えるような狂気と妄執で練られた存在。
それが彼が今、繋がったと感じたモノの正体であった。

良助は全てを理解した。

本当の自分はもう既に死んでいたという事を……。
チェリーも、トンパも、フランクリンも、衰弱死事件の被害者たちも、
みんな自分が殺したのだという事を……。

気付けば首と胴体は元通りになっていた。

なるほどなるほど。確かに自分は人間ではないようだ。
この世界は化物じみたキャラクターが多いと思っていたが、
自分はそんな比喩なんて関係ない正真正銘の化物だ。

……おもしろい。おもしろ過ぎる!!

せっかくHUNTER×HUNTERの世界に来たにも関わらず、一切念が使えない。
自分はそれを、なんとつまらないことだろうと思っていたが、まったくの間違いだった。
この世界に来た時から、既に自分は念に関わっていたのだ。
彼は人を喰らって生きる念の化物なんていう、
とんでもなくイカれた存在に生まれ変わっていたのだ!!

「ククク……クハハハハハハハハハハ!!」

込み上がってくる高揚感を抑えきれず、高橋良助という名の存在は……哂った。






「いったいどうなってやがる……」

フィンクスは混乱と共に呟いた。額からはじっとりと汗が滲んでいる。
見ればフェイタンも目を細め、眉間に皺を寄せている。
おそらく自分と同じく、今起きたことが理解できないのだろう。

フィンクスはその目で確かに、胴から切り離されて床に転がる男の生首を捉えていた。
決して目を逸らしていなかった。それどころか瞬き一つしていない。
そうであるにも関わらず、その何一つ動く気配ないその生首が、
団長が「こいつは具現化された念だ」と言った次の瞬間、
まるでそれが幻であるかのように消え去ったのだ!
フィンクスは一瞬、何が起きたのか分らなかった。

すると、そんなフィンクスを嘲笑うかのように、突然笑い声が上がった。
直ぐ横を見ると、斬首されたはずの男が何事もなかったかのように抱腹絶倒していたのだ。
転がっていたはずの頭は胴体にくっつき、首には傷一つ残っていなかった。
首だけではなく、床に広がっていたはずの血溜りまでも消えていた。

本当に、フェイタンが男の首を切ったのが嘘であるようだった。
男が首を切られたという痕跡は何一つ残っていなかった。

自分は幻覚か何かを見たのか? いいや、そんなことはありえない。
間違いなく男は首を切断されていたのだ。
なら、一体なぜ?

男の「俺、死んだんだったわ」という台詞は、更にフィンクスを混乱させた。
今死んだはずの男が、生き返り、そんな言葉を話している……いったいどういうことだ。

「……やはり、本体はもう死んでいたか」

混乱するフィンクスとフェイタンを尻目に、
団長クロロ・ルシルフルは鉄のように冷たく静かな声でそう言った。

クロロには今の現象を見て、驚いている様子は無かった。
どちらかというと、こうなることが予想できていた節すら見える。
この不可解な現象の理由を分っているのだろうか。

きっと団長ならこの不可解な現象についても説明してくれるはずだと、
フィンクスはフェイタンと共に、クロロの次の言葉を待った。

だが、次に言葉を発したのは、その不可解な現象を起こした当の本人である男であった。
男は指をパチンッと鳴らして、明るく楽しそうに言う。

「そそ。俺ゃいわゆる『死者の念』って奴さ~」

それは本当に愉しくて愉しくて堪らないという子供っぽい声であった。
無論、緊迫したこの場の空気には全く馴染んでいない。
異常なまでに場違いな男の言葉と態度にフィンクスは強い違和感を感じる。

だがそれはともかく、彼も今の会話でだいたいの事態を把握した。

念と言うものは死ねば消えるとは限らない。
それどころか逆に死ぬことで強まる念というのも存在するのだ。
それゆえ、死者の念というものは最も強力な念の一つとして考えられている。

今の話を聞く限り、
この男は死者の念……即ち、どこかの念能力者が遺した念獣だろう。
念能力者が念獣を遺して死んだという話をフィンクスは聞いたことがなかったが、
そういうことがあってもまぁありえなくは無い。
そして「俺、死んだんだったわ」と言うことは、
術者そっくりの念獣を作りだすという能力だったのだろう。

「……なるほど、死者が遺した念獣となればまだ話はわかるな。
 んで団長、こいつの能力ってのは何なんだ? さっきのはそのせいなんだろ?」

ならばおそらく、先ほどの現象はこの念獣の能力のせいなのだろう。
きっと目の前に立つこの男は、そういう能力を持った念獣なのだ。
そう考えるフィンクス。だがクロロは首を振ってそれを否定した。

「いや……これはこいつの能力ではない」
「はぁ? じゃ、なんだってんだよ?」

クロロの言葉に困惑したフィンクスがそう言うや否や、
件の男は眉を八の字にし、ヤレヤレと肩をすくめて話し出した。

「おいお~い、フィンクス君。そりゃないだろ~??
 今までの情報からその理由(わけ)はわかるはずだZE~」
「……なんで俺の名前を知ってやがる!?」
「ハハハ、さ~て何故でしょう?」

自分の名前を気安く呼んだその男を、フィンクスはにらめつけた。
だが肝心の相手は、相変わらずニヤニヤとこちらを見ている。

こいつはなぜ自分の名前を知っているんだという疑問が浮かぶが、
今はそれよりも団長の言っていた話のほうが気になる。
フィンクスは団長に視線を送り、話の続きを促した。

「こいつは具現化した念……言わば念獣と同じなんだ」
「だから、それがどうしたってのかよ?」

そんなことはフィンクスも分っていた。
だが、念獣でも具現化物でも傷はつくし、壊れるはずだ。
それなのに何故、男が無傷であることに繋がるのかわからない。

団長はここでフェイタンに視線を向けて、話を続けた。

「フェイタン、お前は能力を出す時、防護服も一緒に具現化するな」
「そうよ。でも、それがどうかしたか?」

『許されざる者(ペイン パッカー)』、それがフェイタンの能力の名前だった。
オーラを灼熱の球体などに変化させて敵を攻撃するものだが、
効果範囲が広くフェイタン自身もダメージを喰らいかねないという強力な能力だ。
そのためフェイタンは防護服も具現化してから、その能力を発動するようにしていた。

「もしもその服が傷つけられたら、どうなる?
 また具現化し直した時もそのまんまか?」

変なことを団長も聞く、フェイタンの防護服は具現化したもの。
いくら傷つけられたところで、フェイタンの頭の中にあるイメージ自体は変わらない。
もう一度具現化し直せば……

「「!!」」

そこまで考えてフィンクスは気付いた。おそらくフェイタンも気付いたのだろう。
男の体が元通りになった理由が!

「そうだ」

団長が険しい顔をして、目の前に立つヘラヘラとした男を睨む。

「よほど強いイメージが残らない限り、再具現化時にその傷は再現されない!」

団長の言葉を聞き、フィンクスとフェイタンがその目を見開いた。
まさかと思った予想が当った。

「ピンポーン!! ピンポーン!! 大当たり!!
 そう!! 俺様は自分自身を再具現化することができるのさァ!」

驚く2人の顔を見て、良助は楽しそうにカラカラと笑い、そう言った。
そしてその言葉を聞き、2人の表情が先ほどよりも険しくなる。

当然だ。
念獣が自分自身を再具現化することが出来る。
それを意味するところはつまり……

「こいつは……不死身だってーのか!!?」
「ハハハハハ! まぁ驚くよね~、ふ・つ・う!!」

フィンクスの叫びに、良助はこれ以上面白いことは無いと言わんばかりに笑った。

念獣は本来自分自身を具現化することはできない。
当たり前である。どこにそんな念獣がいるのだ。
だがこの男の場合、己で己を具現化しているという。
おそらく本体は既に死んでいて、既に念獣自身が本体のようになっているからであろう。

具現化することで全ての状態は元通りにリセットされる。
己に負ったどんなに傷を負っても具現化し直せば、元に戻すことができる。

即ち不死身。
ありえない。あまりにも無茶苦茶過ぎる。
しかもこれはこの念獣の能力でも何でもなく、ただの特性に過ぎないのだ!!

「厳密には不死身じゃないだろうな。
 おそらく自身を構成するオーラが少なくなれば、こいつは消滅するはずだ」

具現化にだってそれなりのオーラが必要だ。
念獣だって激しい動作や再具現化にはかなりのオーラが消費されるはずだ。
とすれば確かに、それはこの男の弱点と言えるだろう。

「そうそう! ハンター試験の時は一回オーラが足りなくなってヤバかったなぁ。
 いや~、さすが団長さま。わかってらっしゃる!!」

ニタニタしながらそんなことをほざく念獣の男。
だがそれをフィンクスは無視した。それよりももっと気になることがあったからだ。

「じゃぁ団長……こいつには別の能力があるってことかよ!?」

そう。不死身がこの男の『特性』となれば、『能力』は別に存在するということになる。
ただ単に不死身であるというだけであれば、話は簡単である。
クロロの言うように、復元できなくなるまで、消滅するまで、
この念獣を壊し続ければいいだけの話なのだ。

だがそれに更にもう一つ能力が付くとなれば……厄介なことになる。

「精巧な人型念獣作り出すのは、能力違うか?」

フィンクスの疑問を受け、フェイタンがそういった。
確かに、自分と同じ姿の念獣を具現化するだけでも、かなりメモリが必要となるはずだ。
それに加えて人間そっくりに動くとなると、そう簡単に具現化できるものではない。
となれば人間型の念獣を生み出すことが、死んだ念能力者の能力だったのだろうか。

だがそんな2人の考えをクロロは否定した。

「いや、フランクリンが衰弱で死んだことを忘れたか?
 こいつの能力は別にある」

そうだった。
火傷男は人を衰弱死させる何かしらの能力があるのだ。
とすれば、間違いなくこの念獣は人間型であるという以外に能力を持っていることになる。
不死であるというだけでもやりづらいというのに、最悪である。
ではいったいその衰弱死を起こす能力とは一体なんなのだろうか。

2人の心の中の疑問に応えるように、クロロが話し始めた。

「こいつが衰弱死事件を起こしたのはおよそ半年前からだ。
 つまりこの男は少なくとも半年間、自律行動していたということになる」

フランクリンの死因は衰弱死。
故に旅団のメンバー達は目の前の男を今起きている衰弱死事件の犯人だと予想していた。
つまり、もしそうならば、この念獣は半年以上前から存在していたということになる。

「だが……それは……」
「そう! ありえない!!」

フィンクスの呟きに、クロロが強く言った。

おかしいのだ。
具現化した能力者が死んでいるのに、念獣が半年近く動いているのは。
いくら死者の念が強いといっても、自律稼動する念獣が半年も存在できる訳ではない。
しかもフランクリンを倒してしまうような念獣である。
明らかにオーラが足りないはずなのだ。

ではどうやってこの男は今まで存在していたというのだろうか。
本体が死んだ今、一体どうやってオーラを確保して……

そこまで考えたフィンクスの脳裏にある考えが浮かんだ。

それはこの念獣の能力!
その能力ならば、半年以上念獣が存在していることができる!!
それに、これならばフランクリンが敗れたのも納得がいく!!

つまり、この念獣の男の能力、それは……

「『オーラの吸収』か!!」

フィンクスの叫びに、クロロが頷いた。

「そう! この念獣の能力はオーラを吸収するというもの。
 この半年間、衰弱死が定期的に起きていたのは……
 こいつは犠牲者からオーラを吸っていたから! 即ち『食事』!!」

それがこの念獣の能力、そして衰弱死事件の真相であった。
3人の会話をニヤニヤと黙っているこの念獣の男は、
この半年間、人間を食らって生き永らえてきたのだ。

「なるほどね。その能力、フランクリンと相性最悪よ。
 フランクリンの念弾、全部吸収されるね」

そして、もしオーラを吸うのがこの念獣の能力だとすれば、
フランクリンの念弾もまた吸収されてしまう可能性が高い。
もし念弾が効かなかったのであれば、フランクリンの敗北したの当然だ。

更に続けてクロロは言う。

「ここからは俺の予想だが、おそらくコイツは能力者が意図して作った能力ではない」

クロロのその言葉を聞いた瞬間、
男は目をキラキラとさせ、これまで以上に楽しそうな表情を浮かべた。
まるで祖父の昔話を楽しみにする幼い子供のように。

「この能力はありえないレベルで『人間』と言うものを再現している。
 人間の外見を持ち、人間の言動をし、俺の調べでは食事も普通に行っていた。
 それほど完成度が高い念獣なんだ、こいつは」

それはフィンクスも感じていたことだ。
フィンクスは最初、この男が念獣であることに気が付かなかった。
人間によく似たモノを具現化するのはそう難しいことではない。
だが、そいつの体にしっかり怪我が残ったり、血が出たりするとなると話は別だ。
人間を具現化したとしても、大抵は通常時の状態でしか再現できない。
普通は傷つけられても、血が出たりなどしないのだ。
これほど高いレベルで具現化ができるのは、
フィンクスが知る限りコルトピぐらいなものだ。
だが、コルトピだってその具現化物を操作することはできない。

「それに加えて『オーラ吸収』。これは極めて特質系に近い性質だ」

そしてその精巧な人間型の念獣はオーラを吸収するという能力を持っている。
具現化物の付加効果にしては、少々特異すぎる。特質系である確率が高い。

「つまり具現化・特質・操作をバランス良く鍛えた末に出来た、
 異常なまでに高度な能力……ということになるのだが、
 この能力は一つ致命的な欠陥を持っている」

フィンクスはクロロの言わんとしていることに気付く。
それは念獣を扱う全ての能力に関して言える問題。

「それは『本体から離すのが極めて難しい』ということだ」

念獣と言うのは本来、効率の悪い能力なのだ。
なぜならば念獣を『具現化』するもので在るにも関わらず、
自分の身から話して活動させるために『放出系』の要素も必要になるからだ。
具現化系と放出系は六性図の対極に位置する系統、相性が悪い。
しかも念獣を操作するためには、『操作系』も鍛える必要がある。
念獣とは高難易度の能力なのである。

「もし戦いに使うだけの能力であるならば、人の形などしている必要な無い。
 自分と良く似た念獣というのは、本体から離すことで初めて意味が出る!!」

この能力の場合、もはや極限に近いまでに操作・特質・具現化を使っている。
これほどまでに複数系統を極めたとなると、放出系を扱うのがかなり難しくなる。
具現化を極めてだけでも放出系を扱うのが難しいというのに。

これでは、念獣と言うものの特性を活かせない。
術者から独立した別の存在であるというのが、念獣の利点なのだ。
特に術者に酷似している念獣は、自分の影武者にしたり、
危険なところに自分のふりをさせて送り込んだりと、本体から離すことで利便性が上がる。
だが逆ならばほとんど意味がなくなってしまう。

「であるならば可能性は二つだ」

本体から離すのが難しいという致命的な欠陥を抱えた念獣が存在する理由。

「この能力を作り出した念使いは具現化・特質・操作に加えて、
 放出まで使いこなす能力を持っていたか……」

まずそれが考えられる可能性の1つ。
かなりのポテンシャルを誇る能力者であれば、
四つの系統であっても使いこなすことができるだろう。
だがそんな才能を持つ存在はほとんど居ないだろう。
団長であるクロロだってそこまでの才能を持っているかどうかだ。

そして次の可能性、それは……

「それとも念獣自体が本体になってしまったから、放出系は必要なかったかだ!!」

念獣を本体から独立させて活動させるために放出系が必要だったのだ。
だが、もし念獣自身が本体であるのならば、最早関係なくなる。
具現化系と操作系、そして目の前にいる男の場合はそれに加えて特質系があればよい。
全て隣り合う系統、相性はいい。

では一体どういう状況になれば、念獣自身が本体となるのか。
その可能性は一つだけである。

「つまりコイツは、能力者が死ぬその瞬間に初めて発動した能力!!」

それは術者の死!!
つまりこの男のように、本体が死んで
念獣のみが遺されるという状況でのみありうる可能性!!

「おそらくは『生きたい』という強い未練や執念が形になったもの!!」

そして死せし術者が残したのが自身に良く似た念獣であるのならば、
その術者が一体どんな未練を残していたかは大よそ推測できる。
十中八九、『生きたい』『死にたくない』という思い。
または『何か』のために生きなければならないという未練。

「オーラ吸収というのも初めからあったわけではなく、
 生まれた念獣が生き永らえるために自ら作り出した能力なんだろうな」

クロロは最後にそういって口を閉じた。
これがクロロの推測、目の前にいる人間の形をした念獣に関する推理の全て。

(さすがだぜ……)

フィンクスは心中でクロロに対して、賛辞を送った。
フィンクスやフェイタン、いや旅団の誰だってここまでの推理はできないだろう。
いつもながら恐ろしい頭の回転の速さである。

だがそのレベルの高い推理に舌を巻いていたのはフィンクスだけでは無かった。

「素晴らしい! 素晴らしすぎるぅうううううう!!!」

それは今、クロロによって説明されていた当の本人である念獣の男であった。
目をウルウルとさせ、感極まったという表情を浮かべている。
敵であるクロロの推理に純粋に感動しているようだった。

「俺が死者の遺した念獣ってだけで、まさかそこまで推測できるなんて!!
 流石は超A級賞金首、幻影旅団の団長クロロ・ルシルフル!!!
 いや~、ヒソカが惚れ込むのも分るね~」
「ヒソカだと……!?」

セリフの中にあった旅団員の名前にフィンクスは声を上げた。
だが男はフィンクスの言葉を無視するように話を続ける。
そしてフィンクスも次の言葉に気を取られてしまって、それ以上の追求ができなかった。

「そう!! フランクリンは……俺様が殺したのさッ!!」

歯を剥き出しにして笑い、両腕を大きく広げる男。
突然のカミングアウトに、フィンクスは声を失った。

「知らないって言っていたのは嘘か?」

クロロがそういうのも当然だ。
この男は今の今まで本当に知らないかのように振舞っていたのだから。
一体なぜここに来てあっさりと自分がフランクリンを殺したことを認めたのか。

「いやいやいやいやいやいや!!
 忘れていた……、いや本当に知らなかっただけなのさ!!
 さっきまでね~」

男はヤレヤレと言ったくさい仕草をする。
雰囲気が軽薄で一体どこまでが本気でどこまでがふざけているのかわからない。
しかも知らなかった? 一体この男は何を言っているのか。

「そういえば、まだ一つだけわかってない謎があるよなぁ」

男は俯いて、両手を顔で覆った。

「では俺がフランクリンを殺したのなら、一体火傷男はどこにいるのか?」

そして顔を覆い隠したままそんなことを言った。

確かにフランクリンの記憶を読み取ったパクノダは、
全身に酷い火傷を負った男がフランクリンのことを殺したと言っていた。
だがこの男はどこにも火傷を負ってはいない。
それならば火傷男とは一体誰のことなのか?

「ククク」

突然男が笑いを漏らし始めた。
笑いを堪えようとしているのか、体全体がブルブルと震えている。
いや、本当にそうなのだろうか。それにしては震え方がおかしい気がする。

「楽しませてくれたご褒美に……教えてやるよ!!!」

男がそういった瞬間であった!!
顔と顔を覆う手の平との間から湯気……いや、煙が上がり出したのだ!

「いや~、まぁどちらにせよ、こうしなきゃならなかったんだよ。
 ついさっき自分の秘密に気付いた俺が、この体を上手く使えるわけないもんな~」

男が話していくにつれ、手だけではなく全身から1本2本と煙が上がっていく。
そして徐々に強まっていく震え。ここでフィンクスは気付いた。
この男が堪えているのは笑いなんかではないと!

「だ・か・ら!! ここはお任せすることにしたのよ~。
 もっとこの肉体を上手く使える存在にね~」

まるで焼きごてが肌に押し付けられているかの如く、体から大量の煙が発生し出した。
人の肉を焼ける匂いがフィンクスのところまで届いてくる。

「ハハハハハ!! さ~て、さ~て、どっちかにゃ~~!
 不死身が勝つのか、それとも数で有利の蜘蛛が勝つのか!!」

男の体が、何か見えない焔に焼かように、どんどんと黒く煤けて焦げていく。
男が震えていたのは、自分の体が熱されるのに耐えているためだったのだ!!

「オレッチ生き残れるのかにゃ~!? それとも死んじゃうのかにゃ~!?」

ドンドンと醜く変貌していく、男の肉体。
しかしそれとは対照的に男の声は相変わらずふざけたままだった。
まるで今話している存在と肉体を持っている存在が別であるかのように。
フィンクスは得たいの知れない不気味さを感じた。

「ま、どっちでもイイや、だって『生きたがっている』のは俺じゃなくて、
 この体に眠る『俺』なんだからな!! はははははは!!」

男の声は愉快そうな色を残しつつ、どこか引き攣っている。
話しぶりも、話している内容も、どう考えても人間ではない。
この男は狂っている。確実にどこかが壊れている!!

狂人の体には最早煤けていないところなど存在していなかった。
それどころか至る所が炭化し、まるで悪魔の鱗のようになっている。

そしてその狂人は叫んだ。

「では、ご開帳ォーーーーーー!!!
 会わせてあげるよ……チミたちが探していた『化物』にィーーー!!!」

その言葉の直後、男の体はビクンッと大きく痙攣した。
今まで顔面を覆っていた両手が剥がされ、両腕が下にダラリと落ちた。

そしてそこには……

「……」

じっとりとこちらを見つめる白く濁った両眼が存在していた!!

男の全身は生きているのが不思議なほどの酷い火傷が覆っていた。
肉体の所々はもはや硬く炭化しており、肌色であるところのほうが少ない。
黒々とした体の中で、その白い油絵の具に塗りつぶされたような眼だけが目立っていた。

先ほどまでの飄々とした男の姿はもはや消えていた。
そこに居たのは一体の化物。人ならざるもの。
地獄の焔の中から這い上がってきた、焼け爛れた忌むべき魔物であった!!

最早説明は何も必要なかった。これは今まで話していた男ではない。
この存在こそが、自分たちが探していた『化物』であるとわかった。

火傷男。

これこそがパクノダが見たという、フランクリンの最後に記憶に映っていた相手。
旅団トップクラスの戦闘力を誇るフランクリンを殺した化物。

火傷男はググッと身を前に傾け、手をブラブラとさせ始めた。
先ほどの男とは違い、こちらは野生の獣のように隙が感じられなかった。
見ただけで感じ取ることができた。この男が危険であると。

不死身という特性とオーラ吸収という能力を持つという規格外の化物。
全てがフィンクスにとって予想外の相手であった。

であるが故にフィンクスはこう言った。

「……おもしれぇじゃねぇか」

フィンクスは右手拳を固め、大きく肩を回した。
そしてそれに伴い、フィンクスが纏っているオーラが徐々に膨らんでいった。

確かに予想以上に手強そうな相手だ。だがそれに何の問題があろうか。
今まで訳のわからない相手と戦ってきたことなど何度もあった。
自分よりも強い相手と戦ったことだって何度もある。

だが念の戦いに絶対なんてものはないのだ。
相手が誰であろうと、どんなに強かろうと、フィンクスの右手は相手を打ち破ってきた。

むしろ相手が強ければ強いほど、破り甲斐が在るというものだ。

「こいつちょっと調子こいてるね」

フェイタンがコメカミに血管を浮かべながら、隠し持っていた刀を両手で構えた。
相変わらずキレやすい奴だ。だがそれでこそフェイタンである。

「あぁ、ちょっと俺らで灸をすえてやろうぜ」

この2人が居れば、不死身だろうがなんだろうが、関係ない。
おまけにクロロまで一緒なのだ。
自分達3人を相手して、何とかやっていけるという思いあがりをへし折ってやる。

(「生き残れるのかにゃ~? それとも死んじゃうのかにゃ~?」……だと?
 馬鹿が!! 死ぬに決まってんだろ!!)

そう心の中で叫び、フィンクスは一歩前に出た。
そしてそれに伴い、フェイタンも一歩前に出る。

「サポートする。お前らは好きにやれ」

クロロが右手に本を具現化させながら、そう言った。
まったく頼もしい限りである。

「んじゃ、いっちょ化物退治としけこむか」

そう言ってフィンクスは一歩一歩、化物に近づいていった……。






人々が寝静まるヨークシンシティの深き夜。
闇の住人達と一匹の化物の死闘が始まろうとしていた。






つづく


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