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No.4768の一覧
[0] ロードス島電鉄 (現実→ロードス島伝説)[ひのまる](2009/07/11 17:28)
[1] 序章 進め!未来の超英雄[ひのまる](2009/07/11 17:26)
[2] 01 ロードス島へようこそ[ひのまる](2009/01/10 22:15)
[3] 02 食卓にエールを[ひのまる](2009/01/10 22:15)
[4] 03 どらドラ[ひのまる](2009/01/10 22:17)
[5] 04 僕たちには勇気が足りない[ひのまる](2009/01/10 22:17)
[6] 05 戦場のヴァルキュリア[ひのまる](2009/03/01 16:09)
[7] 06 これが私の生きる道[ひのまる](2009/01/10 22:18)
[8] 07 Bの悲劇[ひのまる](2009/01/10 22:18)
[9] 08 バカの壁[ひのまる](2009/01/10 22:19)
[10] 09 僕の小規模な失敗[ひのまる](2009/01/10 22:19)
[11] 10 隠し砦の4悪人[ひのまる](2009/01/10 22:20)
[12] 11 死に至る病[ひのまる](2009/01/10 22:20)
[13] 12 夜空ノムコウ[ひのまる](2009/01/10 22:20)
[14] 13 ベイビー・ステップ[ひのまる](2009/02/19 20:04)
[15] 14 はじめの一歩[ひのまる](2009/01/10 22:21)
[16] 15 僕たちの失敗[ひのまる](2009/01/10 22:21)
[17] 16 傷だらけの栄光?[ひのまる](2009/01/10 22:22)
[18] EXTRA ミッション・インポッシブル[ひのまる](2009/01/10 22:22)
[19] RE-BIRTH ハクション魔神王[ひのまる](2009/01/10 22:23)
[20] 17 命短し、恋せよ乙女[ひのまる](2009/03/18 15:29)
[21] 18 気分はもう戦争[ひのまる](2009/01/19 17:26)
[22] 19 どなどな[ひのまる](2009/01/19 17:27)
[23] 20 屍鬼[ひのまる](2009/01/25 20:11)
[24] 21 残酷な神が支配する[ひのまる](2009/01/25 20:12)
[25] 22 ベルセルク[ひのまる](2009/02/19 20:05)
[26] 23 ライオンキング[ひのまる](2009/02/06 17:10)
[27] 24 激突─DUEL─[ひのまる](2009/02/06 17:11)
[28] 25 ブレイブストーリー[ひのまる](2009/02/13 17:12)
[29] 26 ビューティフルネーム[ひのまる](2009/02/19 20:06)
[30] 27 うたわれるもの[ひのまる](2009/03/07 16:27)
[31] REACT 我が青春のアルカディア[ひのまる](2009/03/14 15:31)
[32] RF 新牧場物語[ひのまる](2009/04/18 18:53)
[33] 28 少年期の終わり[ひのまる](2009/03/18 15:29)
[34] 29 ああ、勇者さま[ひのまる](2009/03/28 13:11)
[35] 30 陽あたり良好[ひのまる](2009/04/12 21:01)
[36] 31 呪縛の島の魔法戦士[ひのまる](2009/04/12 21:02)
[37] 32 ドキドキ魔女審判[ひのまる](2009/04/12 21:02)
[38] 33 Q.E.D.─証明終了─[ひのまる](2009/05/13 16:16)
[39] 34 GO WEST![ひのまる](2009/05/17 10:11)
[40] SUPPLEMENT オリジナル登場人物データ、他[ひのまる](2009/06/06 17:06)
[41] 35 山賊たちの狂詩曲[ひのまる](2009/05/23 19:44)
[42] 36 尋問遊戯[ひのまる](2009/06/06 17:07)
[43] 37 ドリーム・クラブ[ひのまる](2009/06/06 17:07)
[44] 38 笑っていいとも[ひのまる](2009/06/20 18:26)
[45] 39 電鉄の勇者の伝説[ひのまる](2009/06/27 17:57)
[46] DICTIONARY 幻想用語の基礎知識 第一版[ひのまる](2009/07/11 17:27)
[47] RE-BIRTH02 今日からマの付く自由業[ひのまる](2009/07/18 17:58)
[48] RE-BIRTH03 なまえのないかいぶつ[ひのまる](2009/07/18 17:59)
[49] 40 絶望[ひのまる](2009/08/18 19:06)
[50] 41 神々の山嶺[ひのまる](2009/09/01 17:06)
[51] 42 マイ・フェア・レディ[ひのまる](2009/09/01 17:07)
[52] FINAL THE SPIRITS M@STER SASSICAIA[ひのまる](2010/09/18 21:08)
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[4768] 35 山賊たちの狂詩曲
Name: ひのまる◆8c32c418 ID:ab74ed03 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/23 19:44
 ロードスという名の島がある。
 アレクラスト大陸の南に浮かぶ辺境の島だ。大陸の住人の中には、呪われた島と呼ぶ者もいる。遙かな昔から激しい戦乱が打ち続き、忌むべき魔物が跳梁跋扈するが故に。
 そして今。
 ロードスはその呼び名にふさわしい状況にある。
 モスの山奥に眠っていた古代魔法王国の遺跡から、異界の住人である魔神たちが解放されたのだ。そして魔神たちは人間をはじめ、大地の妖精族であるドワーフや森の妖精族エルフと言ったロードスの住人たちに、戦いを挑んできたのだ。
 魔神たちの初手、先制攻撃によって南のドワーフ族の集落、石の王国は滅亡した。石の王国の滅亡と同時に、魔神たちはロードスの地下に広がる大隧道をも支配し、それを通じてロードス各地へと散らばっていった。モス公国はもちろん、ヴァリス神聖王国で、アラニア王国で、カノン王国で、自由都市ライデンで、魔神達の襲撃が相次ぎ。ロードス各地で滅ぼされた集落は数知れず、魔神たちによる被害が続出していた。


 モス公国では石の王国に続き、鏡の森のエルフの集落が魔神に襲撃されて壊滅した。これを知ったモス諸国は、魔神の次の狙いはスカード王国と見て急遽、竜の盟約を発動。いつもはいがみ合い、戦いを繰り返してきたモス諸国が団結し、魔神の軍勢に向かう。
 魔神は多くの場合、単体では人に勝る。しかし、その総数は人より少ないし、モス公国の兵と言えば前述のように戦いを繰り返してきただけあって経験豊富。軍としての戦いでは人が勝り、スカード王国に押し寄せて来た魔神の第一陣はモス公国軍が打ち払う事に成功した。
 勝利で士気を高めたモス公国軍は勢いに乗り、このまま、魔神に対して優位な戦いをする事が出来る──と考えたのもつかの間。
 魔神たちは竜の盟約の隙をつき、モス公国大同盟を無に帰してしまう。
 竜の盟約。それは、小国林立状態のモス公国が外敵に対抗するための盟約。モスの一国一国は、ヴァリスやアラニア、カノンなどに比べれば規模が小さく、もし攻められた場合に単独では対抗が難しい。それ故の、対国外勢力のための大同盟。モス公国内の王国同士の戦いでは、竜の盟約が発動される事はない。魔神たちは、そこをピンポイントで突いてきた。
 スカード王国王城グレイン・ホールドへと攻め寄せる魔神の軍勢。
 その先頭には、行方知れずとなっていたスカード国王ブルークの姿があった。
 この瞬間、竜の盟約は破綻した。魔神軍が実はブルーク王率いるスカード王国軍であるかも知れない。この戦いは外敵との戦争ではなく、いつものようなモス公国内の内乱なのかも知れない。その疑いが生じた瞬間、大同盟は崩壊した。各国の騎士たちは疑心暗鬼となり、共に戦う他国の騎士たちを信用できなくなった。無条件で他国の騎士を信じる事が出来ないくらいに、モス公国内の争いは長く長く続いていた。この戦いもまた、どこかの国の謀略であるかも知れない。気を付けなければ、味方だと信じていた相手に背中から斬りつけられるかも知れない。ろくな連携も取れず、そんな疑いを抱いて戦う者達が、魔神を相手に勝てるはずもなかった。
 モス公国軍はほとんど自滅と言っていいような形であっさり敗北、解散。スカード王国は魔神に支配される事となった。
 どころか、モス諸国はスカード王国の王子ナシェルを迎え入れていたハイランド王国こそが黒幕、あるいはスカード王国と共謀しているのではないかとの疑いを抱き、こぞって宣戦布告。モス諸国はおのおのが睨み合いを始め、魔神との戦いどころではなくなってしまった。


 神聖王国ヴァリスもまた、混迷の中にあった。
 ヴァリスは折悪しく、長く病床にあった国王ワーレンがいよいよ重篤な容態となり、次の国王が誰になるか囁かれ始めていたところだったのだ。
 宗教国家ヴァリスの国王は世襲ではない。ファリス大神殿が上級騎士の中から最も優れたと見る人物を指名し、世俗の──治安維持、国家防衛、そして統治を任せる。そうした形式を取っている。
 今回、その国王選定の会議が紛糾していた。
 優れた人物がいないわけではない。能力、そして人柄共に問題なく国王にふさわしい、そう言う人物はきちんと存在する。次期国王は誰が良い?、なんて世論調査を行えばダントツでその名があげられるであろう人物は、白の騎士ファーン。長いヴァリスの歴史の中でも、これだけの人物はなかなかいないと言われる程に傑出した、高潔な聖騎士。
 だが、たとえ上にファリス大神殿が存在するとはいえ、巨大な権勢を持つ事になるヴァリス国王。その選出となれば綺麗事だけでは済まず、多くの人間の、様々な思惑が絡んでくる。
 あくまで国家の主権はファリス大神殿に。そして世俗の事は王に任せる。それがヴァリスのあり方。
 しかし、本神殿とて世俗の事を全て切り捨てる事は不可能。人は信仰のみで生きる事は出来ない。いかに神官とはいえ、霞を喰って生きていく事は出来ない。神殿や組織の維持にも、お金は必要。お布施イコール信仰心なんて生臭いことを言わなくとも、この地上に生きていく上で、やっぱり全ての世俗から背を向けることは不可能なのだ。
 また、権力に結びついた宗教は堕落する。秩序、正義をその教えとするファリス神に仕える神官たちもまた、そこから逃れる事は出来なかった。むしろ、宗教的な権威よりも世俗の富、権勢を重視する者こそ、今のファリス大神殿には増えてきていた。──ろくに神聖魔法を使えない神官が多いのもうなずけるというモノ。彼らにしてみれば、優れた人物よりもむしろ、多少ぼんくらで自分たちの都合で動かせる人物が国王になってくれた方がありがたい。高潔で傑物のファーンが王となれば色々やり辛い。そんな考えを持つ者達が一定数以上存在し、結果、国王選定は群を抜いて優れた候補者が要るにもかかわらず、遅々として進まなかった。
 実質国王不在、国家の舵を取る人物が不在のヴァリスは、何をするにも後手後手、その進むべき方向をうまく定められずにいた。


 アラニア、カノンの両王国も例に漏れず、魔神に対して後手に回っていた。
 どちらも長い歴史を誇る国。しかし、長い歴史は支配階級の間に、腐敗と堕落を産んでいた。
 貴族たちにとって政治とは権力闘争の事。民の生活を守る事よりも、いかに自分が多くの利益を得るか、権益を得るかと言う、駆け引き、パワーゲームの類に堕していた。あるいは逆に、政治に対する情熱を持たず、日々、美食に、芸術に、恋愛にと、己の趣味に耽溺している貴族も少なくなかった。
 そうした貴族たちに代わって統治の現場を仕切っているのが文官たちである。残念なことに、上が腐っているのに下が清いまま、とはなかなか行かないモノ。腐った蜜柑がエチレンガスを発生させ、箱の中の他の蜜柑も腐らせるように、こちらもまた、貴族同様に腐敗していた。上の監視が緩いのを良い事に、彼らの間では賄賂が横行し、おのれが儲けるのに一生懸命。こちらの視線も民に向いてはいなかった。
 彼らにとっては、魔神から民を守る事よりも、自分たちの生命財産を守る事の方が大事な事。
 魔神に対抗し、治安維持に回すべき軍事力を、自分たちを守るために振り分け。結果、辺境区を中心に、多くの軍事的な空白地帯を生んだ。辺境の村々は無防備に魔神の前に差し出され、両国共に魔神の本拠であるモス公国からは遠く離れているというのに、呆れる程の大きな被害を出していた。
 両王国は急速に民の求心力を失っていく。しかし、常と変わらぬ贅沢な生活に明け暮れる貴族たちは、民の目に宿る光に、未だ気が付いていなかった。


 そんな各国ぐだぐだな状況にあって、魔神と戦う主役たちは、国とは関係のない場所にいた。
 自由都市ライデンの評議長アイシグの呼びかけに応えて立ち上がった「百の勇者」と称せられる義勇兵たち。彼らが魔神戦争の主役となって、各地で魔神と戦い、そして、打ち破っていく。
 その中には、ロードス全国区で知られるようになった、「英雄」と称せられる者達も誕生していた。
 ライデンを封鎖していた魔神将と戦い、これを一騎打ちの末に打ち破った、マーモは蛮族の出身、ハイランドのマイセン王に代わってロードス最強の戦士と目されるようになった「赤髪の傭兵」ベルド。
 ファリスの正義をその細い両肩に背負い、各地で魔神と戦い続ける神官戦士長、「ファリスの聖女」フラウス。
 アラニア北部で暴れ回っていた魔神将と戦い、倒すまでには至らなかったものの撃退には成功した、自由騎士、「光の剣」シュリヒテ・シュタインヘイガー。
 荒くれ者をまとめ上げて魔神に対抗、自身は魔神の軍勢を精霊魔法で焼き払ってアラニア北部からたたき出したエルフの娘、「戦乙女」ペペロンチャ。
 氷竜ブラムドを古代魔法王国の呪いから解放した「竜を手懐けし者」「マーファの愛娘」ニースも、魔神の本拠、モスの現状を視察するためにマーファ本神殿から出立したという。
 各地で生まれいずる、綺羅星のごとき新たな英雄たち。
 魔神との戦いは、新たなフェイズを迎えようとしていた。


 ロードス島電鉄。
  35 山賊たちの狂詩曲


 アラニア王国では前述のように、多くの村々が魔神たちの襲撃に合い、壊滅の憂き目にあった。
 村は壊滅──とは言え、何とか逃げ延びる事に成功した人間もいる。
 焼け出された人たちは泣く泣く生まれ故郷を捨て、救いを求めて移動する。その行き先はアラニア王国王都アランをはじめとする近隣の大きな町であったり、北部であればマーファ本神殿であったりした。ろくな財産も持ち出せなかった彼らは早急な援助を必要としていたし、寄らば大樹の陰的な思考、近場の大差ないちっぽけな村へ逃げ込むよりも、大きな町の方が安心感があった。中には魔神に襲われてからでは遅いと、家財道具を抱えて避難しようとする者もいる。多くの人間が難民となり、大きな町に殺到する事となる。
 だが、いかに大きな町と行っても、その許容量に限界はある。避難民の数はそれをあっさりと超えてしまった。さらに王国のフットワークの鈍さもあって、ろくな対応策も取られることなく、彼らの多くは無造作に城壁外へあふれる事となった。彼らはそこに難民キャンプを作り、身を寄せ合って耐えながら、不安な日々を送っている。
 そんな中でも、マーファ本神殿に避難できた者達は幸せな方。
 普段であればマーファ本神殿は基本的に貧乏。日々のまじめな信仰と、農業労働の共同生活と言った感じで、金とは無縁。ごく少数の商売にさとい人間が土産物やらで稼いでいる程度。しかし、今はちょうどニースが氷竜ブラムドの財宝を手に入れたばかり。避難民に炊き出しやらをする余裕があったから。
 また、彼らは気持ちの余裕も持てた。マーファ本神殿に逗留していた2人の英雄──「光の剣」シュリヒテと「戦乙女」ペペロンチャの働きによりアラニア北部を蹂躙していた魔神の軍勢が撃退されたという胸がすく報告があり、彼らの顔には多少の笑顔が戻りつつあった。
 しかし、それは希有な例外。
 アラニアトータルで見れば、避難民の生活は厳しいモノだった。支配階層の人間は、前述のように権力闘争に、あるいは芸術、恋愛にかまけていた。城壁の外では飢えに苦しむ民衆がいる事に目を向ける事もなく、連日の如く豪華なパーティを開いて大量の食材を食い散らかし。どうしようもなくなった民衆が暴発しそうになれば、本来彼らを守るべき兵士を差し向けて鎮圧。
 そんな状況の中、全ての人間が真っ当に生きていけるかと言えば、そんなはずもなく。
 避難民の中には、悪事に手を染める者が出てくる。世情が不安になれば犯罪発生率が上がる。それはやっぱり、このおファンタジックな世界でも変わらなかった。


 アラン、ノービスに続く第三の規模を持つ町オバマ。街道を南に行けば王都アラン、西へ行けば第二の都市ノービス、そして北へはマーファ本神殿のあるターバ村へと至る祝福の街道と言う、アラニア王国内の交通の要所と言うべき町である。
 更にもう一本、北西へ延びる街道もあるが、こちらは最終的にはノービスへ至るとはいえ遠回りだし、街道沿いにたいした町もないしで、重要度は低い。
 この街道沿いで開業した「暁の山賊団」を名乗る男たちもまた、最初は生きるために仕方なく、窮余の策として、犯罪行為に手を染めていた。
 だが、人は易きに流れる生き物である。犯罪行為を繰り返しているうちに、当初あった罪悪感は薄れ、今では犯罪行為に後ろ暗い喜びを感じるようになっていた。以前の真っ当にお日様の下で汗水流していた生活を、馬鹿らしい事をしていたとまで思いはじめていた。
 彼らの多くは元農民。苦労して作った農作物は、税と称してその大半を国に持って行かれる。農作物の、食べ物の作り手でありながら、常に空きっ腹を抱えると言う馬鹿らしい生活。その上、彼らが本当に困ったとき国は、助けてもくれなかった。これは世間に対する復習であるとの思いで自分を理論武装。しかし結局の所、自分たちがやっている事は、自分たちと同じく弱い人間を苦しめているのだとは、全く気が付いていなかった。いや、気が付いているのかも知れない。しかし、ちょっと悪い事をするだけで簡単に手に入る、真っ当に生きていた頃には手が届かなかった贅沢。そんなものに目が眩んでいて、彼らは己を省みるつもりはなかった。
 むろん、犯罪者には犯罪者のリスクがある。
 たとえば、討伐隊を差し向けられる事。
 しかし、わざわざ重要な街道を外れた場所で悪さをしている事もあって、彼らのピンチにそうだったように、アラニア王国の動きは鈍い。せいぜい、地元民にはした金で雇われた英雄志願の冒険者が差し向けられる程度。実は彼らの実力的に、それだって十分なピンチだったが、「協力者」の与えてくれた戦力もあって、これまで、問題なく撃退に成功していた。
 協力者。
 彼らの事を考えると、正直、思う事がないでもない。怪しげな神に祈っているみたいだし、そもそも人間なのだろうか、なんて疑問もあったりする。するが、逆らうと怖いし、今が良いからそれで良いと、思考停止していた。少なくとも、ギブアンドテイクの関係はうまくいっている。彼らの要求は、老若男女問わず、人を捕らえて渡して欲しい、との事。怪しげな神様に祈っている連中である。引き渡した人間に待ち受ける運命については、ろくな事がなさそうである。しかしそれ以上思考を進めると怖いので、それについても深く考える事は放棄しておく。兎に角、要求に応えていれば、戦力を貸し与えてもらえるし、その報酬やおこぼれで美味しい目にもあえる。だから、わざわざ藪をつつく必要など無いのだと。
 そして今日も、暁の山賊団は脇の茂みに隠れて街道を監視し、獲物が通りかかるのを待っていた。
 昨今、流石に少々やりすぎた感もある。
 この街道周りで人さらいがでる。それは近隣の町や村に知れ渡り、街道を利用する人自体が減ってきている。代わりにやってくるのは前述のような、英雄志願の冒険者たち。それだって捕らえてしまえば協力者に渡して報酬が得られるのだが、その為に一般人を相手にする以上の労力がかかるのが面倒くさい。──主に戦うのは彼らではなく、協力者の貸してくれた連中であるのだが。
「お頭、来やしたぜ」
 と下っ端の報告を受けて街道を見れば、こちらへやってくる武装した5人組。
「ちっ、また冒険者かよ」
 舌打ちが零れる。めっきり街道を利用する人間が減っているから、選り好みをしていてはノルマが達成できない。面倒くさい事だ──と思いながら観察して、お頭は考えを改めた。
「女がいるな。しかも、神官にエルフか?」
 ひゅ~~、と、下っ端の1人が嬉しげに口笛を吹く。
 協力者に要求されているのは、捕らえて生かして引き渡す事。それだけ。つまりは、生きて引き渡しさえすれば、引き渡す前に何をしたかは問われないのだ。獲物が女となれば、引き渡す前に色々と楽しめて一粒で二度美味しい。
 さらに、獲物を渡す毎に報酬をくれるのだが、種族や老若男女、そして職業でそれぞれ値段が違ってくる。特に良い値段を付けてくれるのが、エルフや神官。エルフがそうである理由はよくわからないが、神官は怪しげな神様に祈っている協力者たちの事、おそらく商売敵だからだろうと想像している。
 彼らが獲物と目した5人組は、すぐに目鼻立ちまで見て取れる距離までやってきた。それを見て、お頭をはじめとして山賊団のメンバーは益々やる気に溢れていく。何しろ、エルフ娘と神官娘の2人、女がいて、趣が違うとはいえ、どちらも容姿が最高レベルに整った美少女達だったから。
 エルフ娘は金髪碧眼、さすがは人外の妖精族と言うべきか、夢見るような完璧な美貌。胸が薄いのが少々欠点だが、基本華奢なエルフ娘だからそんなモノ。贅沢を言えばきりがない。天使級美貌だけで十分おつりがでる。
 神官娘は黒眼黒髪。どこかおっとり、慈愛に満ちた感じの柔らかな美貌。どうやらマーファに仕えているらしく、ゆったりした法衣に身を包んでいるせいでスタイルは解らないが、これは着やせするタイプ、隠れ巨乳に違いないとお頭は見て取った。
 兎に角、滅多に見ない高レベルな美少女が2人も。
 そちらに注目しすぎて、彼らは、この5人組の装備が、整いすぎているくらいに整っている事には、全く注意を払わなかった。そもそも、戦いは協力者の用意してくれた戦力に任せてしまえばいいと、気楽に考えていたという事もあるが。
 目配せやらハンドサインを駆使し、5人組に気が付かれないように、包囲状態を作ろうとする。
 が。
「いるのはもうばれてるから、とっとと出てきなよ」
 エルフ娘は彼らの存在にとっくに気が付いていたらしい。足を止めると、まっすぐにこちらを見て告げてきた。
 どうするか?
 部下達と目配せ。やはり、こいつらの目的は自分たちの討伐。自信たっぷりの態度が気にはなる。
 しかし、とっくに結論は出ていた。
 これだけの上玉、見逃すなんてもったいなすぎる。これまでの冒険者よりも腕が立ちそうではあるが、それでも、協力者に貰った戦力のある自分たちにはかなわない。何しろ、これまで負けた事がないのだから、今回もきっと負けないに違いない。
 お頭は一つ頷くと、既に彼女らを捕らえた後の事を考えていきり立とうとする息子をまだ早いと宥めながら、街道へ降りていった。


 街道で5人組と対面したお頭達であるが。
「すげえ、なに、このテンプレ通りの山賊、って感じの生き物は」
「区別つけづれえなあ。そもそも、登場人物書き分ける実力に欠けているって言うのに」
「まあ、便宜上左から山賊A、山賊B、山賊Cって感じで」
「どうせ今回限りの使い捨ての敵キャラだしねえ」
 まるで緊張感の無いメタな対応をされて、思い切り面食らった。
 それでも、馬鹿にされている事はよくわかったので、お頭は額に井桁マークを浮かべる。
「……そうやって、余裕ぶってられるのも今のうちだぜ。すぐにお前らは後悔する事になる。そっちのエルフ娘とかは、俺の下でな」
 しかし、怒って声を荒げるのも小物臭いと自重、お頭は余裕ある態度を心がけながらあざけってみせる。
「なっ」
 この言葉に激しく反応したのは暗色の野暮ったいローブの男。
「俺のサシカイアをえろい目で見るなっ!」
「誰がお前のサシカイアだっ!」
 すかさず、エルフ娘が怒鳴りつける。
 どうやら、このエルフ娘はサシカイアという名前らしい。その名前に思い当たる事は何もない。これが(ありえないと思うが)ペペロンチャだったりしたら、回れ右をして逃げ出すか、土下座して謝り倒すしかないところ。しかし、ペペロンチャとは関係なさそうな、全然聞いた事のない名前なので問題ないだろう。
「そうだよ、サシカイアは僕のモノなんだから」
「違うっ!」
「そうそう、俺の──」
「それも違う!」
「……こほん」
 と、そこでマーファの神官娘が咳払い。話が進みませんので、そろそろ止めましょう。そう言って4人の言い争いを止めると、お頭の方をまっすぐに見る。
「あなた達の噂を聞いてきました。今すぐ悔い改める気はありませんか? 捕らえた人たちを解放し、自首して罪を償うもりはありませんか?」
 その黒く深い瞳に吸い込まれそうな気がして、お頭は頭を一つ振ると、自分では太々しいと思っている笑みを口元に貼り付けた。
「その気はねえな」
 そもそも、最早彼らが捕らえた人たちが生きているとは思えない。自首したところで、待ち受けているのは極刑だろう。自首する意味など感じない。
「俺も元々はまじめに生きてたけどな。働いても働いても暮らしは楽にならねえ。税と称して農作物の大半は持って行かれるし、魔神に村が襲われたって言うのに、国は何もしてくれやしねえ」
「──だから、魔神の配下になると?」
 ずばりと指摘されて、お頭は言葉に詰まった。
 そうではないか、と言う疑念は持っていた。気が付かない振りをしていた。だけど、これでもう、その振りは出来ない。自分が、自分の生活を台無しにしてくれた魔神の走狗をしている事に、気が付かされてしまった。
 ──だが。
「はっ、もう後戻りはできねえし、するつもりもねえよ」
 お頭は笑う。
「少なくとも、以前よりも今の方がよっぽど楽しんでるぜ。お前達みてえないい女を抱くチャンスなんて、以前の暮らしからは考えられない事だ」
「実はチャンスなんて欠片も無いけどね」
 ぼそりとドワーフの呟き。
「夢を見るくらいは自由だろ?」
 逆に同情的にローブの男。
「俺はそれすら不愉快だ」
 エルフ娘は自分をそう言う対象に見られる事が我慢できないと、眉をつり上げる。
 彼らから感じられる余裕。それがお頭の癇に障る。自分たちを取るに足りない相手と見ている。それが、もの凄く腹立たしい。だから、彼は切り札を切る。
「おい、お前ら、出てこい」
 背後の藪に向かって命令する。エルフ娘が、「山賊Cは仲間を呼んだ」とか言っていたが、とりあえずそれは無視。
 お頭の声に応えて、がさがさと藪を掻き分けて出てきたモノは、異形の怪物達。これが、協力者に与えられた戦力。5人組を信じるならば魔神であり、お頭は素直にそれを信じた。
 しかし、残念な事に5人組は、お頭が期待したような驚愕の様を見せる事はなかった。
「魔兵(スポーン)A~Fがあらわれた。──と、アレは?」
 お頭達はその詳細を知らなかったが、エルフ娘の言うように、ほとんどは魔兵と呼ばれる魔神達の作り出した疑似生命体。そして、その中に一体、与えられた戦力の主力となる、一際大きな体格を誇る魔神がいた。
 体高は4メートルに達し、概ね人型。ただ、首が存在せず、顔は半ば胸に埋まるような形で付いている。そして、更に特徴的なのが両方の腕。右腕は身体に比して大きく太く逞しすぎるモノが一本付いており、逆に左腕の方は細長い、身体に比して貧弱なモノが5本も生えている。酷く左右のバランスが悪いその魔神は。
「ええと……火炎王?、があらわれた」
「古っ」
 エルフ娘の言葉に、ローブ男がすかさず突っ込む。
「てか下位魔神をロードデアボリカと一緒にするなっ! そいつは下位魔神のヴァルブレバーズだ。SW2.0の方で出てきた魔神で、レベルは……ええと4くらい?」
 指折り数えて計算しながら、ローブ男。
 お頭をはじめ暁の山賊団の構成員も、そうだったのかと頷く前で、ローブ男がずらずらずら~とそのヴァルブレバーズについて説明する。SW2.0とかレベルとか言うのをはじめ、よくわからない単語も多々あったが。
 説明を聞き終え、お頭はそこで胸を張って声を張り上げる。
「どうだ、これが俺様の配下の魔神だっ!」
 借り物だが、それは言う必要はない事。
「痛い目にあいたくなかったら、降伏するんだな。そうすりゃあ、扱いに気を使ってやってもいい。──そうだな、エルフ娘と神官娘は素直にしとけば、あいつら引き渡さないで、俺の愛人て事にしてやっても良いぞ」
 引き渡した場合もらえる報酬は魅力的だが、近くで2人を見てみて気が変わった。これだけの高レベルな容姿を持つ娘2人、二度とお目にかかれないかもしれない。奴らにくれてやるのはもったいない、生かして有効活用するべきである、と。
 お頭ずるい、俺にも分けて、なんて声が山賊たちの間で上がる。これまでの事もあり、彼らは既に勝ったつもり。
 しかし、5人組はこれまでの相手と違って魔神を見ても絶望などせず、むしろ温い目でお頭達を眺めていた。
「ああ、ぶっちゃけ、その雑魚魔神が自信の源だってんなら、降伏するのを勧めるぞ。はっきり言って、時間の無駄にしかならんし」
「そうです。今自首するならば、助命嘆願書に署名するくらいはして上げますから」
 エルフ娘、神官娘の言葉を、お頭は戯れ言としか思えなかった。こいつらは魔神の強さを理解していないのだ、としか。
「ふん、魔神の強さも知らない田舎者かよ。所詮はマーファ神官なんて、山奥の方でこそこそ畑耕しているしか能の無い連中だしな。大地母神? しょぼいんだよ」
 元々、お頭は農民。普通にマーファを信仰していた。しかし、道を踏み外した今、その信仰を失い、むしろ逆に嫌悪していた。自分が困ったときに全く助けてくれなかった神。ふん、馬鹿らしい、と言った具合に。
 しかし、その言葉は死刑執行書へのサインとなった。
「しょ、しょぼい? マーファ様が?」
 ぴきっ、と。
 これまで温厚な表情を浮かべていた神官娘の額の当たりで、こんな音がしたように聞こえた。
「……サシカイア」
「は、はいっ」
 そして神官娘の小さな声は、まるで地獄の底から響いてきたみたいに不穏当なモノを感じさせ、エルフ娘が背筋を伸ばした直立不動の格好になって返事する。
「この破戒者達に、世の中の道理というモノを教えてやってください」
「イエス、マム!」 
 びしり、と敬礼をすると、エルフ娘は他の3人の男達に命令を下す。
「お前ら、やってしまえっ!」
「あらほらさっさっ!」
 男達も慌て気味に応え。
 そして山賊のお頭は、大人げない程の戦力差と言う奴を思い知らされる事となった。


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