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No.4709の一覧
[0] ナルト異伝 第1話 [丸与](2015/04/19 01:10)
[1] ナルト異伝 第2話[丸与](2010/01/03 00:05)
[2] ナルト異伝 第3話[丸与](2010/01/03 00:06)
[3] ナルト異伝 第4話[丸与](2010/01/03 00:06)
[4] ナルト異伝 第5話[丸与](2010/01/03 00:06)
[5] ナルト異伝 第6話[丸与](2010/01/03 00:07)
[6] ナルト異伝 第7話[丸与](2010/01/03 00:07)
[7] ナルト異伝 第8話[丸与](2010/01/03 00:07)
[8] ナルト異伝 第9話[丸与](2010/01/03 00:08)
[9] ナルト異伝 第10話[丸与](2010/01/03 00:08)
[10] ナルト異伝 第11話[丸与](2010/01/03 00:08)
[11] ナルト異伝 第12話[丸与](2010/01/03 00:09)
[12] ナルト異伝 第13話[丸与](2010/01/03 00:09)
[13] ナルト異伝 第14話[丸与](2010/01/03 00:10)
[14] ナルト異伝 第15話[丸与](2010/01/03 00:10)
[15] ナルト異伝 第16話[丸与](2010/01/03 00:10)
[16] ナルト異伝 第17話[丸与](2010/01/03 00:11)
[17] ナルト異伝 第18話[丸与](2010/01/03 00:11)
[18] ナルト異伝 第19話[丸与](2010/01/03 00:11)
[19] ナルト異伝 第20話[丸与](2010/01/03 00:12)
[20] ナルト異伝 第21話[丸与](2010/01/03 00:12)
[21] ナルト異伝 第22話[丸与](2010/01/03 00:12)
[22] ナルト異伝 第23話[丸与](2010/01/03 00:13)
[23] ナルト異伝 第24話[丸与](2010/01/03 00:13)
[24] ナルト異伝 第25話[丸与](2010/01/03 00:13)
[26] ナルト異伝 第26話[丸与](2010/01/03 00:14)
[27] ナルト異伝 第27話 (改訂版)[丸与](2010/01/03 00:14)
[28] ナルト異伝 第28話[丸与](2010/03/10 23:54)
[29] ナルト異伝 第29話[丸与](2010/01/03 00:14)
[30] ナルト異伝 第30話  (増記改訂版)[丸与](2010/03/23 01:46)
[31] ナルト異伝 31話[丸与](2010/04/14 23:54)
[32] ナルト異伝 最終話[丸与](2010/04/14 23:58)
[33] ナルト異伝 外伝[丸与](2010/06/19 00:01)
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[4709] ナルト異伝 第17話
Name: 丸与◆90a9f496 ID:984f6b55 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/03 00:11
中忍試験当日、ナルト達下忍第7班は、試験会場であるアカデミーの門前に集まっていた。


既に、ナルト、白、そしてサクラの姿があるが、サスケだけがまだ到着していない様だ。
彼是30分近く、サスケの到着を待っているのだが、来る気配が全くない。

「サスケ君、遅いですね・・・何か、有ったのでしょうか?」

開口一番に白が、呟くようにして言った。

「確かに、試験まで後1時間も無いのに」

「そうね、何だかサスケ君、益々カカシ先生に似て来ているわよね」

白の言葉に、ナルトとサクラも賛同する。


それから10分程すると、サスケが走って来る姿が見えた。

「すまん!!遅れた・・・」

ナルト達は、少しは文句を言ってやろうと思っていたが
サスケの姿を見て、それを止めた。
何故なら、本当に急いだのだとわかるほど、服装も乱れ
髪の毛も寝癖を貼り付けたままだったからだ。

それを見た白は、一つ笑みを零してサスケに言った。

「サスケ君、これから教室へ向かいましょ」

「ああ、そうだな」

「しかし、その前に、サスケ君は、お手洗いに行って髪を整えた方がいいですよ」

「えっ!?ああ、そうだな」

白の提案に、サスケも素直に従う。

「と、言う事で、ナルト君とサクラさんは、先に教室の方へ行っててもらえますか?」

「わかった、じゃ、サクラちゃん行こうか?」

「うん!!白さん達も遅れない様にしてくださいね」

「わかりました、では、サスケ君。こちらも行きましょう」

「そうだな」



ナルトとサクラは、建物に入り階段を昇って目的の302号室へやって来たが
何やら騒がしい、視線をそちらに向けると扉の所に二人の忍びが陣取っている。

その2人は、扉の所に立ち入ろうとする受験生達を入らせんとしている様である。
ただ、サクラの目には、不自然にそれは映っていた。

―――何か・・・変よね?やっぱり。

何が変であるのか、それ自体は、わからないのであるが
変である事は、ハッキリと言えた。

「ねぇ、ナルト」

「何?サクラちゃん」

「何か、変よね」

「何処が変なの?」

ナルトは、素直に聞き返した。

「いや、何処がと言えるほどハッキリとは言えないんだけど。
何処か、違和感の様な物を感じるのよね」

それを聞いたナルトは、気がつかれない様に笑みを零す。

―――サクラちゃんは、そういう方面の能力に長けているのかも知れない。
ただ、これが幻術だと言えるほど、まだわからないみたいだけど。

「サクラちゃんの疑問は、最もだと思うよ。
彼らは、恐らく幻術をかけているんだよ。
たぶん、この階に来ると自動的にかかる様に設定されているんだ」

「あっ!?そうか、幻術・・・。だから、少し違和感があったのね。
でも、どうしてなのかしら?この場でそれをする意味があるのかしら?」

「詳しく理由までは、わからないけど。
あの2人が、それを仕掛けたのは間違いない、それを考えると
あの2人とも試験官なのかも知れない。
まぁ、単純に自分のライバルになるであろう、受験生を邪魔している
だけかも知れないけど」

「でも、それにしても酷いわよ。ああ、今男の子が殴られたわ」

ナルト達が見ている前で、全身緑タイツに、オカッパ頭の少年が例の二人に
殴り飛ばされている。
それを同じ班員なのだろう、団子頭の少女が抱き起こしている。

「何で、こんな酷いことするんですか?」

「酷い?これは俺達の優しさだろ、ここから先は、中忍試験会場だ。
知っているか、この試験じゃ下手すれば死人がでる。下忍の認可試験とは
訳が違う、だから、俺達は、そうならない為にお前達の力を見ているんじゃないか」


その2人の言葉を聞いたサクラは、聞き捨てなら無い言葉を呟いた。

「死人?死亡者が出るの?この試験!?」

「そうみたいだね、まぁ、彼らが言っている事が全て正しいとは
言えないけど、そういう事もあるだろう位に聞いていた方がいい。
それに確実に、出るとは決まっていない」

「そっか、忍びだなら。常にそういう事態も頭に入れていないといけないのね」

「そういう事だね、中忍になれば、BランクやAランク任務も請け負う筈だから
対忍び戦闘も視野に入れる必要があると言う事さ」


そこまで来て、後ろから声がかかった。

「あれ、お2人ともここで何をしているんです?」

「何か、あったのか?」

それは、お手洗いに行った白とサスケだった。
2人は、ナルトから今までの経緯を聞く事になった。

「なるほど、そういう事でしたか」

「だったら、その幻術を解けばいいだろ」

「まぁね」

と、ナルトが返事を返す。

「だけど、あの幻術。可能性としては、こちらがあるキーワードか何かを言わなければ
解けないと思うんだ、しかもそれは、適当に言うのではなく、ある種の確信的な事を
言わないと解けない筈だ」

「確かに、そうですね。そういう仕組みになっていると考えるのが普通ですが、
僕達は、普通に通れるんじゃないんですか?みんな、これが幻術だと
見抜いている訳ですから」

「白の言う通りだ、こんな所で屯ってないで、さっさと行くぞ」


そして、ナルト達も例の2人組みの前へと出て行く。

「なんだ、お前らも通りたいのか?」

「ええ、通して頂けませんか?」

代表して白が、2人に告げる。

「ダメだ・・・」

「そうですか、しかし僕達は既にこの場の異変には気がついているのですが?」

「そうか、気がついたか?やるじゃないか、最初に気がついたのは誰だ?」

そう言われると白、サスケ、そしてナルトは、サクラを指差した。
それに気がついて、サクラは慌てる。

「えっ!!ええっ!!私だけじゃないでしょ、みんなも気がついて」

「でも、最初に違和感を口にしたのは、間違いなく。サクラちゃん」

驚いているサクラに、ナルトが話しかける。

「そうか、その子が先に気がついたのか・・・なるほど、だが・・・」

その2人は、サクラに向かって殴りかかって来た。
サクラも咄嗟に、チャクラ防御を発動させるが、彼女に攻撃が
届く事はなかった。

「「なっ!?」」

白とナルトが、それぞれ2人の腕を掴み、瞬時に千本とクナイで首筋を捉える。

「先輩、これ以上やると言うなら」

「ああ、俺達が黙っちゃ居ないですよ」

サスケはサスケで、印を組む仕種を見せ、後一つで術が発動する寸前で止めている。

「俺は、この場でも躊躇はしない、あんたら2人を丸焦げにしてやるよ」


突然の事に、唖然とした表情を見せる他の下忍達。

ナルト達の行動が、早すぎた為に見る事すら叶わなかった様だ。
気がついたら、そうなっていたと言う顔をしている。

一方では。

「あいつら・・・中々の実力者みたいだな・・・」

「そうね、あの動き全てに無駄が無かったわ」

「ええ、それに最後に印を組んでいた子は、確か・・・」


そう言ったのは、先ほど殴られていたオカッパ少年と団子頭の少女
そして、長い黒髪を持った少年であった。
彼らは、唯一ナルト達の行動を見切っていたのだ、それは先ほど無様に
殴られていた少年も同じで、先ほどまでの行動は全てフェイクなのだとわかる。


扉に居た2人は、諦めた様に緊張感を解いた。

「なるほど、見破っただけじゃなく、瞬時に行動を起せるだけの
力量も持ち合わせていると言う事だな」

「ああ、それにかなりの腕前だ。よし、お前達は通っていいぞ」

その言葉を聞いてナルトと白は、武器を収め、扉の中へ入っていったが
そこは、教室ではなく階段であった。

「なるほど、ナルト君の言う通りみたいですね。
彼らも試験官のようですね、あそこで恐らく、篩にかけて、本当に
中忍試験に耐えられるのかを見極めていたのでしょう」

「ああ、サクラが居てくれてよかったな、ナルト」

「そうだね、サクラちゃんが居なかったら、ここは通れなかったかもしれないね」

「ええ、全くですね」

男3人は、三者三様でサクラを褒め称える。
それを聞いたサクラは、頬を染める。

「ありがとう・・・みんな・・・」


そして、4人は、階段を昇って踊り場までやってくると後ろから、声がかかった。

「ちょっと、待ってください!!」

そう言ったのは、先ほどのオカッパ少年である。
どうやら、彼も通れたようだ。

「先ほどの動き、見事でした」

「あの、あなたは?」

一番後方に居た、サクラが少年に声をかける。
だが、その少年は、サクラを見て頬を染める。

「僕の名前は、ロック・リーです、あなたサクラさんと仰るのですか?」

「えっ!?ええ、そうよ」


ナルト達が何かを言おうとした時、少年は、サクラに言ってきた。

「サクラさん!!僕とお付き合いしてください!!」



その場が痛いほど、シーンと静まり返る。
どれ位、その沈黙が続いたであろうか、言われたサクラも
何を言われたのか、わかっていないようで。

「はぁ!?」

「ですから、僕とお付き合いをしましょう!!」


白も沈黙に耐え切れずに、呟いた。

「それって、所謂愛の告白と言うやつでしょうか」

「あっ・・・ああ・・・そうみたいだ」

サスケも何とか、返事だけは返せた。
しかし、当のサクラは、白の言葉が段々と頭に
浸透してきた。

―――愛の告白?えっ!?誰から!?ナルトなら今すぐにでも!!


「嫌です!!私、既に心に決めた人が居るんです!!」

サクラは、有りっ丈の声で叫ぶ。
その言葉を聞いた、リーは、衝撃のあまりムンクの叫び状態の顔をしている。

「なっ!?なんですとぉ!!」

「ああ・・・見事に轟沈しましたね」

「そうだな、哀れな奴だ。寄りによってサクラに告白するとは・・・」

「サクラさん、取りあえず行きましょう。
もう、それほど時間もありませんから」

白の言葉に、サクラも頷いて歩き始め階段を昇りきった時
背後から、猛烈な勢いでリーが駆け上ってきた。

「待ってください!!」

「もう、なんですか?」

サクラもいい加減苛立って来たのか、強い口調になる。

「その、あなたの想っている人というのは・・・」

「えっ!?それは、その・・・」

サクラは、リーの言葉を受けてナルトの方をチラチラと見る。
それを目敏く見つけたリーは、捲くし立てる様にナルトに言った。

「君か!!君、名前は!?」

「えっ!?俺?俺は、うずまきナルトだけど・・・」

「そうですか、ナルト君ですか。僕は、今からあなたを恋のライバルとさせてもらいます!!」

「えっと・・・」

その言葉に、何と答えて良いやら困り果てるナルトは、一言言うだけしか出来なかった。
ただ、リーの標的は、ナルトだけではなかった。

「それから、君!!」

今度の標的は、サスケの様だ。

「なっ!?何だよ!?」

「君は、確か今期下忍一番のうちはサスケ君ですね?」

「ああ、俺がサスケだけど・・・」

「これから僕と勝負してください!!」

「はっ!?お前、何を言って・・・」

「お願いします」

そういうとリーは、頭を下げるが、サスケは援護を期待してナルトや白に
視線を向けるが、苦笑いをしているだけで、何ら助けにはなりそうに無い。

―――おっ・・・お前ら・・・・。

「いや、しかし、試験開始までもうあまり時間はないんだ」

「どうしても、ダメでしょうか?」

そこまで来て漸く、ナルトが援護を出す。

「サスケ、いいじゃないか。少しくらい、まだ30分もある。
それに教室は、すぐそこみたいだから」

「ええ、彼は、君を知っていて挑んで来たわけですから」

白もナルトの言葉に追随する。

「お前ら、人事だと思って」

そういうサスケに、2人は、笑顔で手を振って如何にも頑張れと
言っている様子である。
それに、諦めたようにサスケは、リーに言った。

「わかった、いいだろう」

「ありがとうございます!!」

場所を同じ階の少し開けた場所に、移り両者は、相対している。

「じゃ、俺が一応審判をする。試験前だから、5分で終らせる様に」

「ああ」

「お願いします」

「じゃ・・・サスケ対リー始め!!」


この勝負、体術合戦になったが、両者いい勝負と言う所だ。
どうやら、このリーと言う少年は、体術を主体に戦う忍びの様である。

結果的には、引き分けに終る。

「ハァハァ・・・やりますね、サスケ君・・・」

「ああっ・・・お前もな・・・」

「噂に名高い、うちは。流石と言うべきでしょうか、僕も体術には
自信があったのですが、最後まで攻め切れませんでした」

「そんな事は無い、俺も何発か喰らってしまったが俺自身は
お前に攻撃を当てられなかった」

「しかし、それは写輪眼を使わなかったからでは?」

「確かに、写輪眼を使えばな。だが、今は試験前だ。
お前は、この眼について知っていたみたいだが、これは
かなり体力を使うんだ、何をさせられるかわからない
試験前で、使うほど、馬鹿じゃない」

「それもそうですね、しかし、流石ナンバー1の実力」

それを聞いたサスケは、鼻で笑った。

「フン、何処でその情報を聞いたのかは知らないが、そいつは違う」

「えっ!?何がですか」

「俺が、今年の下忍ナンバー1という事だ」

「えっ!?それは、どういう」

「俺は、今年認可された下忍の中で、実力的に上位に入るかも知れないが
一番じゃない」

「そっ!?そんな!!うちはの名を持つ君が一番じゃない!!」

「そういう事だ。たぶん、一番だと想像がつく奴を俺は、2人知ってる。
正直、どちらの方が上なのか、俺にはわからない。
ただ、その二人に言えることは、俺じゃ、まだ敵わないという事だ」

サスケの言葉を受けて、驚愕の表情を浮かべるリー。
そして、サスケは、自分の後方に居る班員に目を向ける。

「ほら、居るだろ。後ろに2人」

「えっ!?」

そう言われてリーも視線をサスケの後ろに向けると、先ほど審判をしてくれて
サクラの想い人だと聞かされたナルトと、黒い長い髪の毛を結わいている少年が
立っている。

「黒髪の方は、白。金髪が、ナルト。
この2人が、恐らく、下忍の中で一番強い奴のどちらかだ。
俺は、過去戦ったが、全く刃が立たなかった」

それを聞いていたナルトと白は、苦笑いを見せる。

「サスケ君、そんな事ないですよ」

「そうそう、サスケだって、強いじゃないか」

「フン、言ってくれるぜ。俺は未だ、お前達に勝っていないんだからな。
わかったか、リー・・・、俺が一番じゃないんだ」

リーは、何も言えないのか、そのまま黙ってしまった。
それを見たナルト達は、残った方が良いのではとも考えたが、試験開始まで
後僅かしかない為に、教室に向かおうとすると、リ―が声をかけた。

「ナルト君に白君と、いいましたね。
君達は、既に名門として名高いうちはの彼を打ち破るほど
強い、そんな君達が正直羨ましいです・・・。
実は、僕の班にもサスケ君の様な名門出の人が居ます。
彼は、僕の代では、敵無しの下忍です。
僕は、彼を越えようと今も必死に努力を続けています。
そんな僕からすると、君達二人は、僕にとって先駆者と
言える」

それを聞いたナルトは、リーに向き直った。

「そっか、だからサスケと戦いたかったのか」

「はい」

白は、リーに近づいて言った。

「リー君、君には、大切な人はいらっしゃいますか?」

「えっ!?」

「もし居ないのであれば、早く見つける事です。
僕もナルト君も、大切な人たちを命がけでも護りたい、そう思っています。
誰かを護ろうとする時、人は、本当に強くなれるものなんです。
君の言葉を借りるなら、先駆者である僕ら2人からのアドバイスです」

その言葉に、リーは感動していた。

―――どうして、この人たちが・・・強いのか何となく判ったような気がします。

白は、それを言うとナルト達の元へ行き、教室に向かっていった。


残されたリーは、彼らが行った先を見詰ていた。
そんな彼の背後から、声がかかった。

「リー」

「えっ!?」

リーが振り返ると、自分の見知っている人物が立っていた。

「ガイ先生!!いらっしゃったんですか」

「ああ、先ほどからな。リーよ、悔しかったか?」

「そうですね、正直悔しいと言う思いが強いですが・・・」

「その気持ちを忘れるな、そして、彼の言った事を心に留めて置きなさい。
かぁ・・・何と響きの良い言葉なんだ。誰かを護ろうとすれば、本当に強くなれる。
あの白と言う少年は、それを本当によくわかっているのだろうな。
だからこそ、うちはの彼よりも強くなった訳だ、なっ、リー」

「はい!!」

彼の名前は、マイト・ガイ。
リーの担当上忍であり、その容姿は、リーをそのまま大人にした様な感じである。

「さっ、リーよ。その重要な事がわかったんだ、堂々と試験を受けて来い!!」

「はい!!」




ナルト達は、漸く302と書かれた部屋に辿り着き、その扉を開けた。

そして、部屋が見えると揃って眼を見開いた。

「「「なっ!?」」」

「スゲェ、人数だ・・・」

教室の中には、既にざっと身100人ほどの人達で埋め尽くされていた。
ただ、幸いこの教室は、小会議場の様になっており、窮屈さを感じる事は
なかったが、ここまで人数が多いとは予想もしていなかった。

その人数に圧倒されている4人に、声がかかった。

「ああ!!お前ら!!」

その声は、教室の中から聞こえて来た。
声の主は、人を掻い潜って4人の前に姿を現した。

「キバ!!」

彼の名前は、犬塚キバと言い、ナルト達の同期生である。
その彼の後ろから、続々と見知った顔が出て来た。

「ああ、久しぶりね。ヒナタ」

サクラは、目敏くヒナタと呼ばれた少女に声をかけた。

「うん、久しぶり、サクラちゃん」

彼女は、日向ヒナタと言い、同じく同期生である。
彼女の横には、同じく同期の油女シノの姿もあった。

彼ら3人は、下忍第8班として行動を共にしているのだ。
いつも物静かなシノが、声をかけてきた。

「お前達、早く教室に入った方がいい。
何故なら、そこだと目立ちすぎるからだ」

シノの言葉を受けて、ナルト達は、奥へと入っていく。
すると、突然ナルトは誰かに抱きつかれた。

「ナルト!!」

「イノ!?」

「もう、遅かったじゃないの。来ないんじゃないかって、心配したのよ」

抱き付いたのは、イノであった。
そして、そのナルトに対して別の声がかかった。

「本当に、騒がしかったぜ。イノの奴」

そう声をかけたのは、同じく同期の奈良シカマルであり、その背後には
同じ同期の秋道チョウジの姿もある。

「久しぶりだね、ナルト」

「ああ、チョウジも元気そうだな」

未だ、ナルトに抱きついているイノに、黙っていられない人物が居た。

「ちょっと!!イノ!!いい加減私のナルトから離れなさいよ!!」

「煩いわね、このデコリン!!」

「なんですって!!イノブタ!!」

あまりの大声に、ナルトは耳を押さえた。

「2人とも頼むから、少し小さな声で・・・」

それを聞いたイノは、体を離してサクラに向き直り、言い合いを始めた。

「相変わらずだな、ナルト。それより」

シカマルは、ナルトの首を掴み声をかけた。

「どうしたんだよ、シカマル?」

「ああ、そいつ誰だ?」

「えっ!?」

シカマルは、白に指を指した。
それに気がついたナルトは、説明をする。

「ああ、彼の名前は、白。
訳有って、途中から俺達の班員になったんだ」

「そうか、白だったな、俺は奈良シカマルだ。
よろしくな、でっ、こっちがチョウジだ」

「よろしく、シカマル君とチョウジ君」



そして、そこに控えめな声がナルトにかけられた。

「ナルト君・・・・」

ナルトが視線を移すと、ヒナタが話しかけていた。
それを見たナルトは、笑顔になり声を返した。

「久しぶり、ヒナタ」

「うん・・・ナルト君は、元気・・・だった?」

「ああ、見ての通り」

2人は、顔を見合わせて話をし始めた。
ナルトは兎も角、ヒナタは、恥かしそうに頬を染めながら必死に言葉を返す。
その光景を見ていたサクラとイノだが、いつもの様に行動を取れなかった。

「イノ、止めないの?ヒナタとナルト、良い雰囲気よ」

「そうね、あれがヒナタじゃなくて、サクラだったら
是が非でも止めに入るけど、どうもヒナタだと、逆に応援したく
なっちゃうのよね。見なさいよ、あんなに恥かしそうに」

「私だって、あれがイノだったら命を賭けてでも止めるけど。
ああ、ヒナタって本当に、乙女乙女しているわ・・・」

「そうね、サクラには乙女何て言う言葉は、似合わないものね」

「うんうん、そうそう・・・。って!!何てこと言うのよ!!
それは、あんたの事でしょうが!!」

「あら、自分で認めたのはあんたでしょ!!」

「しゃんなろぉ!!あんたが言わせたのよ!!」


ナルト達が久しぶりの再会に、話を盛り上がらせている。
それらを見詰る目線が、教室のあちらこちらから向けられる。

砂の3兄弟も目線を送っていた。

「テマリ、おまえは行かなくて良いのか?」

「そうじゃん、試験が始るまで・・・」

「いいんだ、私は。
ここから、ナル君を見ているだけで、それにこれ以上
一緒に居ると、いざと言う時動けなくなる」

我愛羅もカンクロウもテマリに、提案するが彼女からこの様な答えが
返ってきた。
そう言われては、何も言えなくなる。

「そうか・・・」



目立ちに目立ち捲くっている木の葉の下忍達に、一人の男が近づいて来た。

「君達、久しぶりに会って騒ぎたいのは、わかるけど、もう少し静かにした方が良い」

そう言った男に、ナルト達も視線を向ける。

「あんた誰よ?」

イノが代表して、男に尋ねたが、額当てを見る限り木の葉の忍びだとは
わかったが、見た目の年齢的にも、同期ではないのがわかる。

「僕は、薬師カブトだよ、君達よりも数年早く、下忍になったんだ」

「そうなんですか」

「それより、静かにした方が良い」

「どうしてよ?」

カブトは、静かに目線だけを教室の方に向けた。
そこには、明らかに殺気の篭った目線を向けている者達が居た。

ただ、ナルト達は別段気にした様子はない。

そこで、イノが言った。

「あれが、どうかしました?」

「えっ!?」

予想外の言葉だったらしく、カブトは驚いた表情を見せる。

「あの連中の目線ぐらい、気がついているんですけど」

「そうなのかい?あれだけ、殺気を向けているんだから」

攻撃してくるかもと言葉を繋げようとした所を、イノが遮る。

「その時は、返り討ちにするだけです、ねっ、ナルト」

「えっ!?まぁ、攻撃して来たらだけどね」

「ほら、カブトさんでしたっけ、そういう事です」

「でも、イノ。カブトさんの言う事も尤もだよ。
俺達は、一応初受験なんだから、もっとこう緊張感を」

「要らないわよ、緊張感なんて・・・、ねっ、サクラ」

「えっ!?急に、振られても困るけど、緊張は少ししてるけど
試験が始ったら、そんな事言ってられない気が・・・」

「そうですね、サクラさんの言うとおりです。
緊張すれば、言いと言う物でもありませんから」

サクラの言葉に、白が賛同する。


言われたカブトは、一つ笑みを零して言った。

「なるほど、それにしても凄いな君達は。
僕が、最初に受けた時は、緊張でガチガチだったんだけど。
今でも少し、緊張していると言うのに、これじゃ先輩の僕も形無しだな。
よし、少しでも先輩らしい所を見せないとね」

そういうとカブトは、懐からカードの束を取り出した。

「これは、認識札と言って、この中には様々な情報が入っているんだ」

そのカードに興味を寄せたナルト達は、まじまじとカードを見る。

「情報ってどんな事が入っているんですか?」

サクラが質問をした。

「本当は、企業秘密なんだけどね。
特別に、少しだけ見せてあげるよ。
この札には、今回の試験を受ける各里やその下忍達の
情報が入っているんだ、みんなの中で何か気になる
人物とか居る?」

急に気になる人物と言われても、困ってしまう。
ただ、イノが物は試しと言う所で、知っている名前を言った。

「じゃ・・・砂隠れのテマリさんは?」

カブトは、名前を聞くと札に指を当ててクルクルと札を回して
札を開いた。
すると、テマリの写真と共に、年齢や性別と言った基本的な事から
任務実績などが、表示されている。

「えっと、砂隠れのテマリ、歳は17歳。
任務は、凄いな、これまで数回のBランクをこなしている。
しかも、殆ど完遂に近いな。
班員は、我愛羅とカンクロウだね、担当上忍は、バキ」

「へぇ・・・流石テマリさん・・・」

イノは、札に対してもテマリに対しても感心した。

「でも、意外だね、君達からこの人の名前が出るのは?」

そのカブトは、同盟国とは言え、別の里の下忍の名前が出た事に驚いく。

「別にいいじゃないですか、誰か他に聞きたい人いないの?」

イノが振り返り、他の同期に聞く。
だが、他から声が上がる事はなかった。

「無いみたいだね、それじゃ、最後に一応先輩として。
木ノ葉・砂・雨・草・滝・音…今年もそれぞれの隠れ里の優秀な下忍がたくさん受験に来ている。
ただ、音隠れの里に至っては近年誕生した小国の里なので、余り情報はないが―。それ以外は凄腕ばかりの隠れ里だ。
だから、気を抜かない様に、中には既に中忍の実力を持っている者も多く居るから、気をつけてくれ」



その声は、決して大きくはなかった。
カブトも先輩だけあって、小声で話していた筈なのだが
どうやら特定の人物達には、聞こえていた様だ。

「音隠れは、小国でマイナーな里だとさ」

「心外ですね」

「あいつら、ちょっと遊んでやるか?」

「そうね、残り物みたいに言われちゃ・・・」

「彼のデータに、付け加えさせましょう。残忍だという事を」

そういうと彼らは、動き出した。



カブトと未だに、話をしていたナルト達もその動きに気がついた。

カブトに向かって、教室の天井擦れ擦れに飛びかかって来たのは、死と書かれた服を
来ている少年で、その手には、クナイが握られている。

そして、もう一人。
人垣を掻い潜りながら、目標に向かって突き進むのは、顔を包帯で巻き
外套の様な物を着飾った少年であった。
彼は、外套の中から穴の開いた手甲を填めた右手を抜き出した。

先に動いていた、クナイを持った少年がカブトに向かってそれを投げつける。
それを見たカブトは、後ろに跳躍して避けた所に、先ほどの包帯で顔を覆った少年が
右手をカブトの顔面に向かって振り上げる。

ただ、流石に先輩下忍である。
突然の攻撃にも、対応を見せ、その殴りかかって来た腕を
首を動かすだけの動作で、避ける。

ナルト達が見守る中、行われた戦闘だが、カブトは完璧とも言える動作で
避けた、筈であった。
しかし、カブトは、自分の身に着けている眼鏡のレンズに、無数のヒビが入った。

そして、傍目には、何も変化が起きていなかったが、当のカブトは、膝を突き
嘔吐を繰り返す。




そんな中で、ナルトとイノは、耳を強く押さえて顔を歪める。

それには、隣に居た白だけが、異変に気がついた。

「ナルト君?イノさん?どうされました?」

「くっ!?凄い音だ・・・」

「本当ね、鼓膜が破れそうだわ」

「ナルト君?」

「ああ、すまん。白、もう大丈夫だ」

「何があったんですか?」

「いや、わからない。ただ、アイツが右腕を振り抜いた時に
物凄い耳鳴りがしたんだ、それが恐らくカブトさんの眼鏡を割ったんだ」

そこまで聞いていた白は、顎に手を置いて考え始める。

「ナルト君の言った事とカブトさんの現状を考えると、あの右腕を
振るうと超振動か超音波を発する物なのでしょう。
そう考えれば、ナルト君の耳鳴りも、カブトさんの嘔吐も説明が出来ます」

「ああ・・・俺達にとっては、厄介な武器だが、音や振動なら対処の方法もある」

だが、ここで白は、イノに言った。

「もしかしてなんですけど、イノさん」

「何?白さん?」

「イノさんも、ナルト君と同じなんですか?」

「へっ!?同じって?」

「いえ、ですから、あの姿に変われるのかと?」

白が何の事を言っているのか理解出来たイノは、眼を大きく見開いてナルトを見る。
白の疑問に、ナルトが答えた。

「白、お前の想像通りだよ。イノも同じだ」

「そうだったんですか、じゃ、イノさんもあの姿になるんですね」

「ああ、そうだ」

「ちょっと、ナルト・・・」

「えっ!?どうした、イノ?」

「白さんは、知っているの?私たちの事」

「ああ、そうだよ」

「そう、いきなり言われたから、ビックリしたじゃない」

「ごめんなさい、イノさん」

「いいんです、ナルトが説明しなかったのが全て悪いんだから」



一方で、攻撃をしかけたのは、音隠れの忍びであった。
彼らは、未だ膝をついているカブトに言った。

「何だ、ベテランの癖にたいした事ないんだな」

「そうですね、貴方の札に書いて置いてください」

「ああ、音隠れの下忍は、中忍間違いなしってね」

それだけ言い残すと彼らは、自分達の席に戻って行った。


「大丈夫ですか?カブトさん」

サクラがカブトを心配して、声をかける。

「ああ、大丈夫だよ。後輩の君達の前でとんだ無様な姿を晒してしまったね」

「いいえ、大丈夫ならいいんです」

カブトは、サクラにそう告げると自分の席へと戻って行った。


そして、タイミングを合せたかの様に、室内にある黒板の前に白煙が上がった。
その光景を見て、受験者達は、何事かと注視する。

その白煙の中から、10人程の忍びが現れた。
彼らは、皆木の葉の額当てを身に着けている。
彼らの中心に居る人物が、声を上げる。

「貴様ら、さっさと自分の席に着け!!これから試験を始めるわけだが、
その前に音隠れの貴様ら、今後勝手に暴れりゃ即刻失格とするから、覚えておけ!!」

その言葉を受けて、受験者達は、受験番号が書かれてある席にそれぞれ座った。

「さて、今から試験を始めるわけだが、1次試験の内容は、筆記試験だ。
これから俺達が、用紙を配るから、始めと言われるまで見るんじゃないぞ。
そして、俺は、1次試験を担当する、森野イビキだ」

そこまで聞いていて、教室内で幾人もの声が上がった。

「「「「「ペーパーテスト!!」」」」」

全く、予想出来なかった訳ではない。
こういう試験の相場は、筆記と実技がセットとなる事がよくあるからだ。
ただ、その多くは、下忍として認定されてから、今の今まで実技のみを磨いてきた者が
多いと言う事もまた事実である。

その受験者を無視する形で、試験用紙が配られる。

受験者達は、手を合せて何かに祈ったり、必死に用紙を透かして見ようとしたり、真っ白に燃え尽きていたりと
千差万別である、そんな中で今回の受験者の一人、ナルトも似た様なものであった。

―――クッ!?試験とは、実技と筆記が鉄則・・・という事か・・・。
不味いぞ!!不味い!!この半年間、勉強のベの字もしてない。
植物関係の試験なら、問題ないんだけど、有っても1問ぐらいだろうな
毒物関係とかで・・・、ハァ、気が重い・・・。

今回の試験担当である森野イビキに向かって、恨めしそうな視線を知らず知らずに
送るナルト、それをイビキも気がついたのか、とても嫌な笑みを見せた。
ナルトは、視線を回りに移すと、自分の見知っている姿を2人見つける事が出来た。

―――玉藻に蒼妃まで居る・・・絶望的とも言えるペーパーテストと知らされて
気がつかなかった、でもな、教えてくれるわけ・・・ないよな・・・。
答えを知っているとも思えないし・・・。

ナルトは、静かに玉藻と蒼妃に視線を向けるが、笑みを返されるだけであった。

「ハァ・・・・」

盛大に溜息をつくナルトに、隣の席から声がかかった。

「ナっ・・・ナルト君・・・」

非常に小さな声だったが、ナルトの耳には、確りと聞こえている。
ナルトが視線を移すと、ヒナタが頬を若干染めながら、こちらを見ていた。

「あっ!?ヒナタ・・・」

「ナルト君・・・その・・・頑張ろうね・・・」

「ああ、出来る限りは・・・」

「大丈夫、ナルト君なら」

「ありがとう・・・ヒナタ」

ナルトは、彼女の声援に笑顔で答えた。
それを見たヒナタは、頬を赤く染め上げる。



そして、暫くすると試験用紙が全員に配られた。

「さて、試験を始める前に、この試験にはルールが存在するという事を言っておく。
そして、それを今から、黒板に書いていくと同時に、口頭でも説明する。
ただし、質問には一切答えないから、そのつもりで居ろ。
まずは、第一のルールだ」

そう言ってイビキは、黒板に文字を走らせる。

「お前達には、それぞれ10点の持ち点が与えられている。
試験は全部で10問あって、点数は各1点だとする。
そして、これがこの試験の最大の特徴とも言える、それは減点方式。
つまり、3問間違えれば7点となり、全問正解すればそのまま10点となる」

黒板にも今と同じ内容が、簡素に書かれている。
ただ、ここまでは少し腑に落ちない点もあるが、普通の試験と言える。

「続いて、第2のルール。
この試験は、受験申請の時に、自分の班員の名前を書いた筈だ。
それがそのまま自分達のチームとなる訳だが、それは、これより以後の試験が
チーム戦である可能性がある為に、書かれたのだが、そして、それは
この1次試験でも採用される、つまり、この試験もチーム戦と言う事になる。
つまり、基本は、1チーム3人、今回の場合、中には4人チームが存在するから
その班については、こちらが不公平にならない様に計算をする。
それは、さておき。
一人の持ち点が10点であるから、チーム3人で30点という事になる。
そして、その点数をどれだけ減らさない様にするかが、大きなポイントになる」

第1ルールと違い、疑問だらけのルールに表情を傾げる者が多く出て来た。
しかし、ルールはそれだけに留まらずに次々と言われていく。

「そして、この試験では、カンニング等の不正行為を行った者は、持ち点から2点引かれる事になる。
気がついていると思うが、この教室には、俺以外10人の試験官が居る。
その彼らが、不正行為についてチェックをする事になる、だから、例え全問正解して居ようとも
カンニング等をして5回彼らにチェックされた者は、即刻失格となるから注意しろ」

そう言われてナルトは、玉藻と蒼妃の方に視線を向けると、相変わらずの笑顔でボードを手に持って
筆記具をトントン音を発てて、受験者全員に自分達の存在を知らせている。

「わかったな、では、これが最後のルールだ。
この試験は、第2のルールにある様に、チーム戦となる事は言ってある。
その為に、カンニングまたは、試験の結果でチーム内で一人でも0点が居た場合は、
チーム全員道連れ失格となる事を忘れるな・・・無様にカンニングなど行った者は自滅して行くと心得て貰おう。
仮にも中忍を目指す者、忍びなら…立派な忍らしくする事だ」

それを聞いたサクラは、小さく呟くように言った。

「つまり、一人も0点者を出すなと・・・」

サクラの声が聞こえたのだろう、イビキは、不敵に笑って言った。

「その通りだ、一人でも0点者を出さなきゃいいわけだ・・・」



イビキの言葉を聞いた受験者達は、顔を青くする者、自信に満ちた顔をする者または、
顔も上げずに、絶望に浸る者と千差万別であった。
それを見たイビキは、笑みを零して、最後に告げた。

「さて、ルールは以上だが、精一杯の健闘を祈ると共に。
試験の開始を宣言する、試験時間は、1時間だ。
さて、始めてもらう・・・」



イビキの言葉と共に、紙を捲る音が教室に木霊す。

カッカッと鉛筆を動かす者、頭を抱えて唸る者、鉛筆を転がす者、寝始める者が
開始20分ほどすると、色々出て来た。
ナルトはと言うと、頭を抱えて唸りっぱなしである。

―――暗号問題・・・次は、問題の意味すらわからない・・・。
毒薬とかそう言った類の問題もなし、植物関係の問題も・・・なし。
サスケの恋人は?・・・何て言う問題もない・・・。
困ったぞ、本当に困った・・・、マジでヤバイ・・・。

サスケの恋人問題なんぞが、出たら木の葉の下忍第7班以外わかる筈もないが・・・。
それはさておき、当のサスケも唸っていた。

―――1問目・・・2問目・・・3・・・ダメだ・・・全く判らん・・・。
風雲姫の問題なら、全問正解する自信は、有るが・・・。

中忍試験の筆記に、映画の問題など出るはずも無い。

「ハァ・・・・」

最早、溜息しか出ないサスケ。

―――・・・国王になると更に難しい問題をさせられるのだろうか・・・。

と、かなり未来の事を考え始めるサスケだが、筆記試験の場合、
全く関係のない内容が、頭を過った時点で、そいつは集中力も思考能力も
停止していると見て、間違いない。


ナルトとサスケが、悩んだり、別の方向に考えが向かっているのに対して、
他の白とサクラは、順調に鉛筆を進めていた。

そんな中、勇気のある少年が質問をした。

「あの一つだけ、聞かせてください!!」

そいつを見たイビキは、無表情で答えた。

「何だ?」

「いったい、何チームが合格するんですか?」

「ふん・・・お前がそんな事を気にする必要はない。
どうしてもと言うなら、今すぐに失格にしてやるぞ」

「えっ!?いや・・・いいです・・・」

勇気ある少年は、そそくさと席に座った。
だが、この少年のお陰でサスケは、いい加減風雲姫の内容から
試験へと思考が戻って来た。

―――いかんいかん・・・試験中だ・・・。
それにしても・・・厳重だな・・・試験官が10人。
そいつらが・・・カンニングした奴を狙っていると言う訳だな。
だが、この試験意味がわからん。


サスケがそう思っていると試験官の一人が、スラスラとボードに何か書き込んでいる。

―――あれは・・・誰かがカンニングして、バレタのか・・・。
じゃ・・・そいつは、2点減点されて8点になったと言う事だな・・・。
ハァ?8点か、そうか、1回ダメでも8点になるだけか、それなら
1回カンニングしても、まだ俺には、8点残って、あわよくば試験も1問正解する。
つまりは、0点だけは、回避出来ると・・・。

そこまで考えたサスケは、不意にイビキの言葉を思い出した。

{無様にカンニングなど行った者は自滅して行くと心得て貰おう。
仮にも中忍を目指す者、忍びなら…立派な忍らしくする事だ}

―――あの試験官の言葉・・・言い返せば、無様にカンニングするなと言える。
あっ・・・なるほど、そうか、この試験って、カンニング公認なのか!!
そうか、だから、1回失敗しても2点減点で済むわけだ・・・、普通の試験は、1度でも
カンニングが発覚したら、その場で終了だもんな・・・。
試験が、始って30分経った、俺と同じ様に気がついている者が出て来ている筈!!


サスケは、この試験の真の意味に漸く気がついた。
既に、受験生によっては、行動に移しているものも多い。

そんな中、ナルトの問題用紙は未だに白紙のままで、名前と受験番号しか書かれていない。
だが、そんな時である。

教室に、犬の鳴き声が聞こえて来た。

「ワンワン!!」

普通の人間には、例え忍びと言う特殊な連中であっても、ワンワンとしか聞こえないが、ここに犬語を理解できる者が3人居た。
一人は、犬の飼い主である犬塚キバであり、情報を集めている当人であるが
彼にとって、残りの2人は、予想違いも甚だしい程、思いもよらない人物達であった。

その2人は、キバの忍犬赤丸の声と共に、紙に鉛筆を即座に滑らせた。

「ワンワン!!」

またも、その2人は、文字を綴る。
それから幾度と無く、同じ事が繰り返され、その2人の問題用紙には、答えが全て埋まっていた。

まさに、その2人にとって見れば、天の声かそれとも棚から牡丹餅状態と言える。
その2人とは、言わずもがな、ナルトとイノである。

彼らは、種族柄動物の言葉がわかるし、会話も出来るのだから当然とも言える。

2人は、心から赤丸に敬意を表し、感謝の意を向けようと心に決めた。

―――ありがとう!!赤丸!!恩にきる!!

―――ありがとう、今度ビーフジャーキーでもプレゼントしないと!!
これなら、心転身の術を使わなくても良かったわ・・・。
よし、早速この答えを・・・シカマル達に・・・。


そして、全ての答えを埋めて心に余裕の出来たナルトは、最後の問題について
考えていた。

―――最後の問題は、45分後に出題するって書いてあるけど、フッ・・・
これも赤丸に・・・任せるしかない・・・。
例え、それが間違っていたとしても、俺には、9点と言う強い味方が居る!!


そうイビキのルールで言うなら、ナルトは既に失格と言う言葉は当てはまらない。
何故なら、カンニングがばれた訳でも、試験問題が解らずに0点と言う訳でもないからだ。
ちょうど、そんな時に自分の目の前を、クナイが通り過ぎて行った。

それは、ナルトの隣の席に居た受験生の試験用紙に刺さった。
その受験生は、驚きの声をあげる。

「うわぁ!!」

その彼に、試験官の一人が言った。

「お前は、5回ミスった!!こいつと同じ班の連中も席を立て!!道連れ失格だ!!」

これを皮切りに、次々と受験生が席を立ち、部屋を出て行くが
中には、試験官に異議を言う者も、当然出て来た。

「本当に、俺が5回ミスったって言えるのかよ!!」

彼は、下忍として力もあり、自信もあったのだろう。
彼の目には、それらが齎した、凄みがあった。
しかし、その彼は、一瞬にして姿を消す事になる。

一人の試験官が、疾風の様に彼の胸倉を掴んで、壁に叩きつけたからだ。
その試験官の行動を窺い知れた者、見切れた者は、誰一人居なかった。

試験官は、その受験生に言った。

「ウフフッ・・・これがあなたと私達の実力の差よ・・・。
この試験の為に、私達は、選ばれたの。謂わば、精鋭と言えるわ。
その私達が、あなた達の不正を見過ごすと思う?」

試験官の声は、冷やかであり、全く感情の込められてはいなかった。
その声の主を知っている木の葉の者達は、否が応でも普通とは違うのだと認識したと同時に
それ以外の里の者達は、実力の差を強く感じてしまった。

そして、今回それを成したのは、ナルト達同期にとっては、自分達の師とも呼べる玉藻であった。

叩き付けられた受験生も玉藻の言葉と行動に、頭を縦に振り認めるしか術は無かった。
それからも次々と脱落者が続出したが、意義を言う者は一人として、現れなかったのである。

試験開始から45分が経過した。

試験用紙に書いてある様に、試験担当イビキが言葉を発した。

「よし、時間だ。これから10問目を出題するが、ここで更にルールを
幾つか付け加える」

残された受験生達は、固唾を呑んでイビキの言葉を待った。

「さて、このルールだが、その前にお前達には、この10問目の試験を受けるか受けないかを
選択してもらう、まぁ、当然これだけなら、受けるを選択する者しか現れないだろう。
そこで、追加のルールは、もし受けるを選択して、10問目を間違えた場合は、そいつから
一生、中忍試験の受験資格を剥奪する。そして、もし受けないを選んだ場合は、即刻0点となり
失格となるが、次の受験資格は残る・・・どうだ?絶望的だろ・・・」

彼の言葉が、段々と浸透して来たが、開いた口が塞がらないもしくは、唖然とすると言う言葉が
シックリ来る様なルールとしか言う様が見つからない。

だが、先ほどの試験官の行動で言葉を失っていた受験者達も矢継ぎ早に抗議をする。

「そんなバカなルールがあるか!!」

「そうだぜ!!ここには、何度も受けている奴だって居るんだ!!」

その言葉を聞いてイビキは、鼻で笑った。

「フンッ!!お前達は、運が悪いだけだ。今回の試験は、俺がルールだ。
それにちゃんと逃げ道を用意してあるだろう?逃げれば、来年だろうと
再来年だろうとまた、受ければ良いだけの話・・・何も、難しい事ではない」

その言葉を受けて、受験生は、息を呑む様にして言葉を発せ無くなった。
それを見ていたイビキは、言葉を続けた。

「さて、選んでももらおうか・・・受けるのか・・・受けないかを・・・」

そして、受験生は一様にして背筋に冷たい汗を滲ませる事となった。
部屋中に、嫌な沈黙が続く、それに耐え切れなくなったのか
イビキの絶望的とも言える質問に、答える者が続々と出て来た。

「オ…オレはっ…やめる!『受けない』ッ!!す…すまない…源内!イナホ!!」

「50番、失格…130番!111番!道連れ失格…」

「お…オレもだッ!!」

そして、また1人また一人と挙手する者が現れた始める。

「わ…私も…」

「す…すまない、みんな!」

「オレもやめる!」

「わ…わたしも…」

それから10分間ほどで、かなりの人数が減り、試験前には100数十人居たが
今では、半分ほどまで減っていた。

そんな中、イビキが受験生達に目を向けると木の葉の下忍で今年認可された者達が
全て残っている事に気がついた、彼らの先輩下忍達も次々と脱落していったのにも関わらずだ。
そこで、イビキは、興味本位で聞いてみた。

「木の葉の新人下忍達、お前らはどうだ?受けるのか受けないのか?
先輩達も、次々に抜けていったと言うのに・・・・」

そこでイビキは、シカマルに目線を向けた。
それにはシカマルも気がついて、メンドクサソウに喋りだした。

「俺か?俺は、別にこんなメンドクサそうな試験一回愛けりゃいいと思っているだけだ。
それに、俺は一生草むしりでもいいなぁって、思っただけだ。命がけの任務何ざメンドクセェし。
そもそも今回受けたのだって、担当上忍が勝手に推薦しちまって、それを断るのもメンドクセェから
受けただけだ」

そして、次に視線はキバに向いた。

「俺かよ!?俺は、まぁシカマルの言う事もわかる。確かにメンドクサイ。
それに、ここで受けないで帰ったら本当に負け犬の遠吠えみたいでカッコ悪いだろ」

更に、イビキの視線は白に向いた。

「僕ですか?僕は、そうですね。この里にご恩を返したいと言う思いがあります。
その恩に報いる為には、少しでも上の立場に立った方がより重要で、重い任務に就けると思ったからです。
それに、うちの班には、一日でも早くお金を稼がなければならない人が居るので、その人の為という事も言えますね」

「ほう、誰かの為に自分の人生を棒に振ったとしても厭わないと言う事か・・・」

「ええ、そういう事です」

「そうか・・・」

この3人の言葉は、残された受験生の心に強く響く事になる。
特に、白の言葉には、自分達がどうしてここに居るのかなどを
思い起こさせるのに十分であった。

それを見たイビキは、悟られぬ様に鼻で笑った。

―――今のところ、79名・・・。これ以上待ってももう出ないだろうな・・・。
中々に優秀じゃないか・・・これからの木の葉は安泰かもしれん。

そして、一つ咳払いをしてイビキは、話を始めた。

「よし、これ以上待ってももう出ないだろう。
では、ここに残った者全員は受けるを選んだと判断する。
よって・・・お前達に一次試験合格を申し伝える!!」

その言葉を聞いて、受験生達はポカンと口を開けて何を言われたのか
わからないでいた。

「クククッ・・・どうした、お前ら?一次試験だけとは言え、一応合格したんだ
ガキらしく喜んだらどうだ?」

そこまで来て漸く、自分達が何を言われたのか浸透して来たが、全員の第一声は
似たり寄ったりであった。

「「「「「はい!?」」」」」

「クククッ・・・信じられねぇか、まぁいい。
取りあえず、合格だよお前らはな・・・」

それを聞いてサクラが叫ぶ。

「ちょっと待ってください!!」

「どうした?」

「10問目は、どうなったんですか!!」

「10問目・・・そんなものは、最初からない。
しいて言うなら今の2択が、10問目と言う所だろうな」

「えっ!?じゃ・・・じゃぁ・・・今までの9問は何だったんですか!?」

「その事は、既に事を成している。
お前は、気がつかなかったみたいだな。
まぁいいだろう、説明してやる。
今までの9問は、お前達の情報収集能力を測った物だ。
まず、この試験では、チーム制の試験である事をお前達に告げ
そして、一人でも間違えれば他の班員も道連れになると言うルールの為に
お前達は、酷い精神的な苦痛或いは、冷静な判断能力も失われる事になった。
そんな中で行われたこの試験問題は、到底アカデミーを卒業した程度では、解けない問題と
なっていた、まぁ、中には自力で解いた兵もいた訳だが。
だが、普通では解く事は難しい、そこでこの受験生の中に全ての答えを知る
者を数名参加させ、そいつから情報を盗む、それこそがこの試験の真骨頂。
だが、無様な真似をして盗もうとした者には、当然ハンデが科せられる。
そして、それが基準を超えれば、退場となったわけだ」


そして、イビキは話の途中で自分が身に着けていた額当てを取ると
頭が露となった。
そこで、受験生が見たものは、酷い拷問の痕であった。

「情報とは、時によって命がけの戦いともなる、
敵に渡った情報は、常に正しいとは限らず、時に仲間や里に壊滅的な影響を与える事にもなりかねない。
だからこそ、正しい答えと言う情報をを見極めさせる事、そして、どんな状況下でも自身を失わずに
行動できる精神力も中忍という部隊の隊長職には、求められる。
そして、10問目では、「受けるか」・「受けないか」の選択・・・言うまでもなく、苦痛を強いられる2択だ。
「受ける」を選び、問題を答えられなかった者は『永遠に受験資格を奪われる』実に不誠実極まりない問題をだされた」

9問目までについては、理解を見せた受験生達だが、やはり10問目の問いには理解が出来ていないで居るのを
悟り、言い方を変える事にした。

「うむ、では、この様な質問に変えよう。
君達が仮に中忍になったとしよう・・・。
任務内容は秘密文書の奪取・・・敵方の忍者の人数・能力・その他、軍備の有無一切不明。
更には敵の張り巡らした罠と言う名の落とし穴が有るかもしれない・・・さあ、『受ける』か?『受けない』か?」

そこまで聞いて受験生達にも閃くものがあった。

「答えは、受ける以外ない・・・。
どんな危険な賭けであっても、降りる事のできない任務もある。
ここ一番で仲間に勇気を示し、突破していく能力。これも中忍と言う部隊長に求められる資質だ!
いざと言う時、自らの運命を賭せない者、『来年があるさ』と不確定な未来と引き換えに心を揺るがせ
そんな密度の薄い決意しか持たない愚図に・・・中忍になる資格などないとオレは考える!!
「受ける」を選んだ君達は、難解な『第10問』の正解者だと言っていい!
これから出会うであろう困難にも立ち向かって行けるだろう…。
入口は突破した…『中忍選抜第一の試験』は終了だ…君達の健闘を祈る!!」


強面と言っても過言ではないイビキであり、その纏う雰囲気も一流の忍びと言っても間違いではない。
そんな彼だが、今目の前に居るのは、先輩の忍びとして、頼もしい後輩達に向けての激を飛ばした。
それによって、受験生達は、この試験に対しても理解を示し、更に自分達が一次試験を見事
突破出来たのだと実感する事が出来た。

彼らは、それぞれが安堵の表情を浮かべる。

だが、その和らいだ雰囲気は、一瞬にして霧散する事となる。











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