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No.4708の一覧
[0] 歩く道先は 憑依・TS有り (旧題 ゼロの使い魔、憑依物?テスト)[BBB](2010/02/12 04:45)
[1] タイトル、なんにしよう・・・ 1話[BBB](2010/06/17 04:00)
[2] 以外にご好評で・・・ 2話[BBB](2010/06/17 04:00)
[3] 今回は前二つより多め、しかし原作なぞり 3話[BBB](2010/06/17 23:10)
[4] まずは一本立ちました 4話[BBB](2010/06/17 23:10)
[5] 大体15~20kb以内になっている・・・ 5話[BBB](2010/06/17 23:10)
[6] まさかの20kb超え 6話[BBB](2010/07/04 04:58)
[7] 区切りたくなかったから、25kb超え 7話[BBB](2010/07/04 04:59)
[8] 14kb位、そういうわけで原作1巻分終了の 8話[BBB](2010/08/21 04:01)
[9] 2巻開始っす、しかし7話は並みに多く 9話[BBB](2010/07/04 05:00)
[10] やばいな、中々多く…… 10話[BBB](2010/07/04 05:01)
[11] 区切りたくないところばかり 11話[BBB](2010/10/23 23:57)
[12] 早く少なく迅速に……がいい 12話[BBB](2010/10/23 23:57)
[13] やっぱこのくらいの量が一番だ 13話[BBB](2010/10/23 23:58)
[14] 詰まってきた 14話[BBB](2010/10/23 23:58)
[15] あれ、よく見れば2巻終了と思ったがそうでもなかった 15話[BBB](2010/10/23 23:59)
[16] こっちが2巻終了と3巻開始 16話[BBB](2010/08/21 04:07)
[17] これはどうかなぁ 17話[BBB](2010/03/09 13:54)
[18] 15kb、区切れるとさくさく 18話[BBB](2010/03/09 13:53)
[19] 区切ったか過去最小に…… 19話[BBB](2010/03/09 13:57)
[20] そんなに多くなかった 20話[BBB](2010/08/21 04:08)
[21] ぜんぜんおっそいよ! 21話[BBB](2008/12/03 21:42)
[22] 休日っていいね 22話[BBB](2010/03/09 13:55)
[23] 詰めた感じがある三巻終了 23話[BBB](2010/03/09 05:55)
[24] これが……なんだっけ 24話[BBB](2010/10/23 23:59)
[25] 急いでいたので 25話[BBB](2010/03/09 03:21)
[26] おさらいです 26話[BBB](2010/01/20 03:36)
[27] 遅すぎた 27話[BBB](2010/03/09 13:54)
[28] 一転さ 28話[BBB](2009/01/10 03:54)
[29] スタンダードになってきた 29話[BBB](2009/01/16 00:24)
[30] 動き始めて4巻終了 30話[BBB](2010/02/12 04:47)
[31] 4巻終わりと5巻開始の間 31話[BBB](2010/03/09 05:54)
[32] 5巻開始の 32話[BBB](2010/10/23 23:59)
[33] 大好評営業中の 33話 [BBB](2010/08/21 04:12)
[34] 始まってしまった 34話[BBB](2010/08/21 04:09)
[35] 終わってしまった 35話[BBB](2010/02/12 04:39)
[36] まだまだ営業中の 36話[BBB](2010/01/20 03:38)
[37] 思い出話の 37話[BBB](2010/01/20 03:39)
[38] 友情の 38話[BBB](2010/02/12 04:46)
[39] 覚醒? の 39話[BBB](2010/08/21 04:04)
[40] 自分勝手な 40話[BBB](2010/08/22 01:58)
[42] 5巻終了な 41話[BBB](2010/08/21 04:13)
[43] 6巻開始で 42話[BBB](2010/10/24 00:00)
[44] 長引きそうで 43話[BBB](2010/10/24 01:14)
[45] あまり進んでいない 44話[BBB](2011/11/19 04:52)
[46] 昔話的な 45話[BBB](2011/11/19 12:23)
[47] もしもな話その1 このポーションはいいポーションだ[BBB](2010/08/21 04:14)
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[4708] あれ、よく見れば2巻終了と思ったがそうでもなかった 15話
Name: BBB◆e494c1dd ID:b25fa43a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/23 23:59

「相棒! 来るぞ!」
「分かってる!」

 迫り来る影に向かい、デルフを振り払うが容易く避けられ、鋭い一撃が身を貫こうと襲い掛かる。
 場所は礼拝堂近くの倉庫、ワルドからルイズがここで待っていると聞いて来て見れば、いきなり襲い掛かってきた仮面の男。
 デルフが気が付かなければ、不意打ちの一撃で殺されていた。
 ぞっとする、避けていなければ首や胴が一発で落とされていた、なんてデルフが脅しを掛けて来ていた。

「ッ!」

 迫る仮面の男。
 もう一方の剣で捌き、デルフを突き出す。

「鈍いな、やはり伝説は伝説か」
「うおぉぉぉ!」

 ひらりと、ラ・ロシェールの桟橋で襲ってきた仮面の男は簡単に避ける。

「フッ!」

 剣と杖がぶつかり合い、甲高い音を鳴り響かせる。
 攻めて攻められ、守り守られ一進一退の攻防、のように見える戦い。
 先のラ・ロシェールでのワルドとの戦いと似ている。
 軽やかに、しなやかに、強靭の体現した仮面の男。

「『エア──』」。

 魔法の呟き、目標を叩く空気の槌だと判断して飛び退くが。

「『──ハンマー』!」










タイトル「ロリコン、それも一種の真理」











 真上から叩き落された。

「ガァッ!」

 才人の体が床に叩きつけられて、弾んだ。
 とんでもない威力、1メイルも無い高さから叩き落された人の体が、2メイルほどまで弾んだのだ。
 威力は押して知るべし、肉体の強度を引き上げるガンダールヴでなかったのなら、車に轢かれた蛙のように叩き潰されていた。

「ほお、今のを耐えるか」

 感心した様に呟く仮面の男。
 激しい痛み、背中と頭を地面で強打した。
 クラクラと、視界が歪む。
 特に左の視界が激しい、文字通り歪んで見ている風景が認識できない。

「相棒! 起きろ! やられちまうぞ!」

 クラクラと歪む、歪みが一際大きくなった時には、左目には全く別の物が見えていた。

「え?」

 下から見上げるように、ワルドの顔が左目に映っていた。
 杖を握り、にこやかに。
 視線はゆっくりとワルドから遠のくが、一歩近づいて距離を埋める。

「なん……?」

 よく分からない、何故目の前に居ないはずのワルドの顔が浮かぶのか。
 何故この視界はゆっくりとワルドから離れるのか。

 何故、あんなにもワルドの顔が、喜悦に満ちているのか。

「耐久に富むだけがガンダールヴか、伝説を学べてよかったよ。 それじゃあ──」

 仮面の男が杖を上げる。

「死ぬがよい」
「あいぼぉぉぉ!!」
「ッ、ァアア!!」

 死の宣告と、叫びと、全力の回避。
 片腕の力だけで、体を跳ね起こして、首を刈り取るエア・カッターの一撃を避けた。

「しぶとい、小賢しい平民が」
「ッうるせぇ!」

 距離を詰めてくる男、対して剣を構えて受ける。
 切り、払い、突き、縦横無尽に迫るレイピアを避けて、受け流して、捌く。

「──そろそろ終わらせるとしよう、それに向こうもかたが付く」
「ッ、やらせねぇ!」

 右目だけで仮面の男を捕らえ続けるのはかなり無理があったが。
 痛む体で踏み込み、逆袈裟に切り上げる。

「……そうだな、冥土の土産に教えてやろう」

 あっさりと、飛び退いて避ける。
 右目に仮面の男、左目に何かを喋りながら迫るワルド。

「何をだよ!」

 訳がわからない、何でこう言う事になってるのか。
 あの時頭を打ったからこんなのが見え始めたのか。

「何、ウェールズは今死んだと言う事だよ」

 疾風、受け流し損ねた刺突が肩を掠める。
 パーカーが裂け、血が滲んだ。

 ……こいつ、今なんて言った?

「相棒ッ! 魔法が来──!」
「ッ!」

 仮面の男が言った、信じられない言葉。
 まだ戦いが始まっていないのに、ウェールズが死んだと言って退けた。
 その言葉で呆けた隙に突風、ウインド・ブレイクによって車と激突したような、激しい衝撃が才人を襲った。

「ッガ……ァ」

 吹き飛ばされ、床を何度も転がる。
 全身を叩かれたような、激しい痛み。
 先ほどのエア・ハンマーにも劣らない威力。
 視界が歪む、今にも両手の剣を落としそうになる。
 咳をしながら、迫っているだろう仮面の男を見た

「信じられないのかね? まぁ、魔法を知らぬ平民では無理は無いか」

 こいつの他にも敵が居た?
 何時入ってきた、今城の中に居る軍人は少ないけど、簡単に見逃すようなへまをしない筈だ。
 くそ、見たくもねぇワルドの笑顔がうざったらしい!

「もう一つ土産だ」

 そう言った仮面の男は、左手を顔の、仮面に手を掛けて外した。
 仮面の下の素顔、それは今も左目に映るワルドだった。

「嬉しかろう? 正体が知れて」

 何でワルドがここに居る? 今左目に見えてるのは何だ?
 ルイズは今どこに居る? ウェールズは誰に殺された?
 
「護衛がスパイだった、なんてとても面白かっただろう?」
「何で、何であんた……」
「ウェールズを殺して、手紙を手に入れて──」

 区切る、ため息を付いて

「ルイズも死んでしまう」
「───」

 は? 誰が死ぬって?

「残念だ、彼女は一緒には来てくれないだろう」

 誰が殺すんだ? 何で殺すんだ?

「如何に愛らしい小鳥とは言え、言う事を聞かなければ首を捻るしかあるまい。 そう思わないか? 使い魔君」
「てめぇ……」

 才人が唸る、瞳には殺意が漲る。

「──そうだ、相棒! 心振るわせろ!」

 左手のルーンが一際、今まで以上に輝く

「そうだ、ガンダールヴ! 力を溜めろ! お前は主を守る盾だ!」

 言うより速し、床が陥没するギリギリの踏み込み。
 右手に持つ剣で、才人が放った袈裟懸け。
 先ほどとは二周り以上の違いを見せた一撃に、辛うじて受け止めたワルドの体が沈む。

「娘っ子に仇なすこんなくそ野郎、ぶった切っちまえ!!」

 左手、輝く刀身を現すデルフリンガーが、ワルドの右肩から順袈裟に両断した。

「───」

 呻きさえ上げず、ワルドが切り裂かれて、消えた。
 こんな奴の死に様なんてどうでも良い、消え始める前から才人は駆け出して、部屋を出た。














 才人が、ワルドの遍在を切り裂くたった数分前。
 今までルイズが寝ていた来賓室のドアの向こう側。
 開けてみれば立っていたのはワルド、その笑みは爽やか。
 その笑顔を見てまずった、と思った。
 落ち着いて状況を確かめるべきだった。
 杖を取り出してイリュージョンでも先に掛けるべきだった。

「ルイズ、もうすぐ正午になってしまうよ」
「……もう、そんな時間なのね……」

 ゆっくりと扉を閉めて、通路に出る。
 下手な行動はしない、杖を持ったワルドがどれだけ危険か承知している。
 どうする? 杖を取り出すか?

「迎えに来てくれたの?」
「ああ、そうだよ。 もうすぐ奴等が攻めてくる、さっさとこんな城から抜け出そう」
「……そうね、早くサイトを探してフネに乗りましょう」
「使い魔君のことは心配要らない、彼はイーグル号に乗ってもう逃げて行ったよ」

 嘘付け、才人が俺を置いて行く訳無いだろう。
 一緒に帰ると言ったのに、こんな約束を守れない奴じゃない。

「……そんな訳ないわ、早く探しましょう」

 走り出そうとして、ワルドに腕につかまれた。
 ゆっくりと引っ張られて、振り向かされた。

「そっちではないよ、ルイズ」
「ッワルド、痛いわ」
「ああ、すまない」

 無理やり引っ張られれば、簡単にこの身を引きずる事も出来るだろう。
 言って離してもらえたのは僥倖か。

「……ワルド、何故杖を持ってるの?」
「何って、もうすぐ奴等が攻めてくるからさ。 君にもしもが有ったらいけないからね」
「……ありがとう」

 一歩下がる、それを見てワルドから笑みが消える。

「何故、離れるんだい?」
「……、探しに行かなきゃ」

 一歩、また下がるがワルドも一歩、前に歩を進める。

「彼はもう逃げてしまったと、言っただろう?」
「………」

 ワルドの抜いた状態に、勝てる訳がない。
 杖を引き抜いた瞬間には、俺か杖が吹き飛ばされる。
 もしかしたら、切り刻まれるかもしれない。

 やばい。

「ワルド、その目、怖いわ」

 俺は下がる、ワルドは進む。

「そうかい? 僕は普通と思うんだけどね」

 既に濁っている。
 ……もう、ウェールズはやられたのか?

「……行こう、ルイズ。 僕と一緒に」
「ええ、脱出してトリステインに──」
「いいや、違うよ」

 くそ、もう殺したのか。
 才人は、何処だ?

「行こう、ルイズ。 僕には君の力が必要なんだ」
「……トリステインじゃないって、何処に行く気?」
「決まっているだろう? 『レコン・キスタ』だ」

 ここで言うか!
 どうする? 付いていく気は無いが、付いていかなければ殺しに来る。

「……貴方、貴族派だったの……?」
「そうだよ、我々はハルケギニアの将来を憂い集まった貴族連盟、国境など無く全てが繋がっているんだよ」

 手を大きく広げ、見えもしない天を仰いで喋る。
 凶悪な笑み、俺ではなく俺の力を見て笑っている。

「わかるかい、ルイズ。 我々は『聖地』を奪還する、忌まわしきエルフを駆逐するには君の力が必要なのだ」
「……何を言ってるの? 私に力なんて──」
「あるのさ、大いなる力が。 エルフどもを消し飛ばせる大いなる力が!」
「何を言ってるのかわからないわ、ワルド」

 後退る、狂気と言って良い信仰。
 持たざる力を信仰し、その力を持つ俺を手中にせんと迫る。

「さぁ、行こう。 世界を手に入れるんだ」
「……私、世界なんて要らないわ」
「ルイズ、君が必要なんだ。 君の才能が、君の、始祖ブリミルに劣らぬ力が!」
「要らない、要らないわ、ワルド。 だって、私の世界は生まれた時から手に入れているんですもの」
「……ルイズ、頼むから言う事を聞いてくれ。 聡明な君なら、分かるだろう?」
「分かるわ、貴方が……力尽くで私を従わせようとしているって!」

 体を傾けながら、かかとを翻して走る
 ワルドはそれを見ながら、呟いた。

「……残念だよ、ルイズ」

 ワルドは、一瞬で加速した










 
 

「ッ!?」

 角を曲がったと同時に、T路地の壁が切り裂かれた。
 強引に連れて行くんじゃなくて、すぐ殺しに来るか!
 駆け行く場所は……礼拝堂しかない。

「ハァ、ハァッ!」

 尻目に見れば、光が見えた。
 魔法が来ると、全力で駆けて逃げる。
 次の時には、風の塊が身を掠った。

「ッ、ハァ、ハァ」

 不味い不味い不味い、杖を抜いて振り返る暇が無い。
 そうすれば振り向く前に殺される。
 そんな必死な思いを他所に、背後から風がワルドの声を運んでくる。

「ルイズ、待ってくれ。 一緒に行こう、そうすれば……」
「ッァ、嫌よ! 貴方に付いて行っても何も良い事なん──」

 ボン、と背中に強すぎる衝撃が走った。
 飛ぶ、差し詰め思い切り背中を押されたように飛ばされて、転がる。

「駄目だよ、ルイズ。 僕は君を殺したくは無い、そうさせないでくれ」

 風が、声を運んでくる。
 痛む背中、それを我慢して無理やり起き上がる。
 くそったれが、……しょっぱなから殺しに来る奴が何言ってやがる。
 ズグンと痛みが走るがそれを我慢して駆ける、曲がり、直進して、あの場所へ。

「ッア、アア、ハァ……」

 飛び込んで入れば、見えたのは

「ウェールズ……」

 血を流し、始祖ブリミル像の前で倒れ伏すウェールズが居た。
 血溜りが出来て数分は経っているのだろうか、恐らくは事切れているだろう。

 ……してやられた、来賓室で見たあの笑みは任務成功を確信して浮かべたのか。
 不自然なまでにあっさり眠った俺、『スリープ・クラウド<眠りの雲>』や薬か何かで俺を眠らせたか。
 終わったことだ、それの詮索はもう良い。
 俺が寝てもすぐには動かなかったのだろう、先ほどまで俺の部屋に来なかったのがその証拠。
 朝になり、もうすぐ戦が始まると言う時に動いたワルド。

 何か大事な話があるとでも言って二人きりになったのか。
 最初からウェールズより勝っているワルド、すぐに魔法を行使してウェールズを仕留めた。
 才人のほうは分からない、俺と同じで眠らされたり……もしかしたら。
 嫌な考え、訪れてはいけない結末が脳裏を過ぎる。

「違う、死んでいない……」

 絞り出した声、最悪すぎる結末。
 何としても才人を探し出さなければ、だが。

「ルイズ」

 声だけが耳に入る、とっさに礼拝堂の長椅子の傍に隠れる。
 探しに行くには、こいつを如何にかしなければ。
 袖から杖を取り出し、小さく呟いた。






「ルイズ、どこだい?」

 追いついて、礼拝堂の入り口に立つワルドが居た。
 カツンカツンと、床が靴音を鳴らす。
 杖には明かりが灯っている、俺が姿を現せばすぐにでも撃ち込んで来る。

「ここかな? ……違うね、ならこっちかな?」

 いちいち長椅子の足元を見ながら歩くワルド。
 俺に大いなる力が有ると分かってるんなら、それを使えるかもしれないと考慮に入れろ。

「どこだい? かくれんぼはすぐ終わってしまうよ」

 確かに、このまま続けても終わるだろう。
 俺を見つけられず、逃げられたと言う結末に。
 ウェールズ、あんたの事はしっかりアンアンに伝えて──。

「めんどうだ、炙り出させて貰うよ」

 こいつッ!?

「『ウインド・ブレイク』」

 先ずは一発、礼拝堂の置くにあるブリミル像へ向かい、強力すぎる突風を打ち出した。
 複数の長椅子と、ブリミル像が吹っ飛ばされて壁に打ち付けられ、中ごろから折れ壊れる。
 なんつー威力、部屋の半分、端から端まで見事に吹き飛ばされていた。
 俺ごと、まとめて吹き飛ばす気か!
 危険を感じて一気に駆け出し、礼拝堂の外へ出ようとして。

「居ないね、こっちか」

 振り向き様に、空気の壁を撃ち放った。
 一瞬で、まるで絨毯が捲り上がるように長椅子が突風で巻き上がった。
 その効果範囲にいた俺も、同じように吹き飛ばされる。
 長椅子が砕け、空中でルイズの体を打ち付ける。
 砕けた破片も、手足に突き刺さっている。
 顔は腕で守ったので破片刺さっていないし、他に刺さった部分も致命的な物ではない。

 が、打ち付けられた痛みが半端ではなかった。
 床にも叩きつけられた、全身を強打して、気絶してもおかしくなかったのになんとか今も意識があった。
 故に、全身を襲う痛みが一気に気分を悪くする。

「そんな所に居たのかい」

 床に叩きつけられた衝撃で杖を離してしまっていた。
 メイジにとっての命綱を離してしまい、イリュージョンの効果が失われた。
 周囲と同化して、隠していた姿が露になった。
 杖が傍に落ちる、その音が嫌によく聞こえる。

「ああルイズ、僕の可愛いルイズ。 なんて痛ましい姿だ、もう大丈夫だよ」

 い、ってぇ、お前がしたんだろうが……。
 あああああ、くそ。
 うごけ……。

 動かぬ体、辛うじて回る思考。

「さっきの言葉は嘘だったんだろう? 僕を困らせるために言った冗談だろう?」

 歩み寄ってくるワルド、杖先は一度として俺から逸らさない。

「嘘だと、冗談だと言ってくれ。 まだ間に合うよ」
「……お、断り、よ、貴方なんか、に、付い、て……」

 たどたどしい、上手く回らぬ呂律。
 コイツには絶対に付いて行かない。
 死にたくはないが、死んでも付いて行かない。

「……残念だ、とても、残念だ」

 俺が言った言葉を聞いたワルド、その表情は一瞬で消えて無表情。

「これで僕は、君を殺さなくてはいけなくなった。 分かっていただろう? こうなる事を君は選んだ、とても残念だよ」

 歩み寄る。
 俺を殺すと、歩み寄る。
 息が苦しい、上手く呼吸を出来ない。
 胸の上に何かが圧し掛かっているかのように、ずっしりと俺の動きを阻害する。
 腕が動かない、足が動かない、頭は……ギリギリで。

「ぁ……ぅ……」

 呂律も回らない。
 絶望的な状況で、数秒後には死体となる自分で。
 ワルドが魔法を放つだけで、終わってしまう。
 迫り来る死に、意識が痺れる。
 才人は、才人は無事なのか、と終わりかけの意識はそれに集約されていた。






「…・・・さようならだ、ルイ──」

 そう、言い切る前にワルドが止まった。

「まさか……」

 あの使い魔と戦っていた遍在が消えた。
 その事実に、ワルドは一瞬だけ驚き狼狽した。
 それを逃さなかったのはルイズ。

「ぅ……」

 止まったワルドを見て全力。
 腕に掛けた力は出しえる最後の力。
 腕が動いて、そばに落ちている杖に指が届いた。

「ェクスゥ──」

 指に掛かる、杖の感触が意識をたたき起こす。
 狙いは一点、揺れる視界にワルドを捉えた。

「プロゥ、ジィオン──」

 回らぬ呂律で限界まで省いた詠唱。
 代償として、俺の精神をガリッと、抉った。
 視界は文字通り白黒、毎秒十回を超えて脳に危険信号を送る。
 落ちるなと、歯を食いしばる。
 落ちれば終わると、意識を叩き起こす。
 モノクロの世界に、意識の端っ切れを乗せる。

「ッガア!?」

 人の胴体ほどの、小さな爆発。
 直撃ではなかった、ワルドの数メイル前方で爆発。
 ワルドが放つウインド・ブレイクに届く風圧を持って、その部屋にある全ての物を吹っ飛ばした。
 その風圧に糸が切れた人形が二つ、ゴロゴロところがって壁に叩きつけられた。
 ワルドは空中で姿勢を直して着地、怪我を負っているように見えない。

 くそ、くそ……。
 倒せなかった、こっちに来る。
 やばい、殺される。

 意識が無くなれば、死の恐怖から逃れるために気絶していればどんなに良いか。
 でも、それでも落とさない。
 しがみ付く、死にたくないと。
 もうどうも出来ない、杖はどこかへ飛んでいった。
 だから願った、ルイズの命を救う、最後の望みを呟いた。

「……イト」














「くそ、くそ、くそ!!」

 左目には、今だ映るルイズの現状。
 光る手の甲、ガンダールヴになって駆ける才人は風。
 それでも、足りない。
 ルイズが吹き飛ばされ傷ついた。
 それを見てズシリと、心に重い何かが圧し掛かる。

「クッソォ!」

 ルイズの体に突き刺さる木片、血を滲ませ流す。
 ワルドと、血だらけで転がっているウェールズも見える。
 見えるだけで、何も出来ないもどかしさ。

「ルイズゥゥ!!」

 叫んで走る、もっと速くと願う。
 もっと、もっと速くと願う。
 もっともっと、もっと速くと願った。

「相棒、心を振るわせろ! そうすればお前の願いはきっと叶う!」

 もっと、間に合うように、速く!
 光が強く、願いに答えるように、強く光る。
 既に人類最速、人では出せない速度で駆ける。
 場所なら分かる、ガンダールヴが主の居場所を教えてくれる。

 曲がり角は強引に、壁に剣を刺して減速し。
 引き抜けばクラウチングスタートのように、体を低く。
 床に着く指は、抉りそうな勢いで力を込め。
 足で床を蹴り上げた。

「まにあえぇぇーー!」

 右手に剣を取り。

「うおぉぉぉ!!」

 壁に向かって振りぬいた。
 













「ッ……、して、やられたか」

 もう身じろきさえしないルイズを見て、嘆息。
 怪我は負ってないが、少し耳に勘高い音が鳴っている。
 既に目覚めていたのか、大いなる『虚無』。
 先ほどの姿を隠していた魔法も、恐らく虚無の力か。

「……君の命を、奪わねばならないとは……」

 故に、残念な気持ちになった。
 歩み、杖を掲げる。
 エア・カッター、風の刃で命を切り刻む。
 彼女の力は聖地奪還のためだけで良い、それ以外に使われるなら、要らない。

「……さようなら、愛しの可愛いルイズ」

 杖を振り下ろそうとした時、壁を切り裂いてぶち抜いた才人が現れた。

「……邪魔だ」

 振り向きざまにエア・カッターを放つ。
 不可視の風の刃が、才人に襲い掛かるが。

「てんめぇぇぇぇ!!!」

 激怒している才人に、振るわれたデルフリンガーによって簡単に打ち消された。

「なに!?」

 風より速き踏み込み。
 先の遍在を切り裂いた斬撃をお見舞いするが。
 紙一重、薄皮一枚で避けきるワルド。

「おおぉぉぉぉ!!!!」

 咆哮、許さないと迫る才人にワルドは飛び退きながら呪文を呟く。

「ユビキダス・デル……」

 途端にワルドの姿がぶれ、3体の遍在ワルドが現れた。
 着地して、ほぼ同時に襲い掛かった遍在ワルドたち。
 左右から繰り出される、レイピアの攻撃を受け止め、斬り返しの一撃で遍在ワルドの首を落とす。
 霞のごとく消え去る遍在に目をやらず、本体と残り一体への攻撃を加えようと走る。

「ック、違いすぎる!?」

 圧倒的、ラ・ロシェールで才人を簡単に打ち据えたワルドがいまや、簡単に切り裂かれようとしていた。
 先ほどの遍在さえも切り裂いたその力、これが本当のガンダールヴかと考えを改め直した。

 バックステップ、本体は遠ざかりながら呪文を唱え。
 遍在は隙を生み出すべくレイピアで攻撃を加える。
 だが、それも簡単に切り裂き、迫る。

「風の領域に飛ぶか!」

 天井すれすれ、才人は飛び上がって両手の剣を振りかぶる、狙いはワルドの両肩。
 それを見て一瞬の詠唱、『閃光』の二つ名に相応しい速度で魔法を放つワルド。

「地へ落ちろ!」

 風の槌、エア・ハンマーが正面から振り下ろされ。
 同じように振り下ろされたデルフリンガーによって、容易く吸い取られて消える。

「ば、かな」

 呻く、魔法を打ち消し、あまつさえこの身に届くとは。
 ワルドの左前腕、才人の剣は胴体にこそ届かなかったものの、ワルドの左腕を切り落としていた。

「ッぉ……」

 追撃が来ないのを良いことに、飛び退きながら礼拝堂入り口まで飛んだ。
 ガンダールヴの傍に落ちた腕は諦める。
 どうするか、このまま戦うか、引いて後を任せるか。
 考えを巡らせる。



 もう一方、追撃を掛けない才人は、急激に力を失っていくのを感じていた。
 足は棒のようになり、立ち上がることさえ非常に厳しい。
 腕だって、何十キロもある重りを付けられているかのような感覚。
 これ以上戦える状態ではなかった。
 まだ奴は生きている、左手を切り落としたとはいえ俺より体は動くだろう。
 立てる、まだ立てると言い聞かせるように力を足に入れる。

「ぐ……、目的は一つだけ達成された……、それだけでも、良いか」

 才人は立ち上がり、ワルドを見据え。
 ワルドは立ち上がった才人を見据える。
 あの速度でまた攻撃を加えられて、今度は避けれるだろうかと考え、否と結論。
 もうすぐ攻め入ってくるだろう、レコン・キスタの軍勢に後を任せようとして。

「……いつ、わりの……」

 そう、ルイズが呟いたのが聞こえた。
 それ以上は小さく、聞こえなかったワルド。
 才人はどうやってワルドを追い出すか考えて、聞いていなかった。

「………」

 数秒の停滞、ワルドは才人が開けた穴から飛び出して、礼拝堂を後にした。
 才人はそれを確認して安堵、足に力を入れ続けて立つ。
 ガランと、右手に握っていた剣を落とし、デルフを杖代わりにして歩く
 たどり着けば、ウェールズとルイズの倒れた姿。
 呼吸が荒くなる、二人とも赤いのだ。
 もしかして、と最悪の状態を想像して青くなる。

 ゆっくりと、ルイズの手に触れる。
 暖かい、一瞬躊躇ったが耳をルイズの胸に当て、心音を聞いた。

「動いてる」

 安心してもう一方、ウェールズを見てみると、胸に赤い穴が開いている。
 中身が、見えた。

「グッ……」

 一瞬で襲ってきた吐き気を何とか抑える。
 素人の自分から見ても、これは死んでいると分かった。
 ルイズは生きているがウェールズは死んでいる、前者は嬉しく後者は悲しい、一概に喜べなかった才人。

「くそ……、くそ……」

 落ち込む、外では戦いが始まったのだろうか、音が聞こえ始めていた。
 ルイズは気絶しているのか、動かない。
 どうする、背負って逃げるか。
 でも、こんな動かない体で、ルイズを背負う事すら難しい。
 どうしようかと悩んでいれば、ルイズの口が開いた。

「ぁっ……」
「ルイズ!」
「ぁあ、サイ、ト」
「ああ、俺だ!」

 抱き起こしたルイズの表情が一瞬だけ、笑みとなる。

「うぇ、ルズ、ゆ、……」
「何だ? 王子様?」
「ゆ、び……ぃ」
「指?」

 震え上げられた腕、指を刺しているつもりだろうが手首は上がっていない。
 見れば、ウェールズの指には赤く染まった指輪が嵌められていた。

「これか? 外せば良いのか?」
「そ……ぉぅ」

 その血に濡れた死に顔、半目でとても悔しそうな顔に見えた。
 ウェールズを見て黙祷をささげ、指輪を抜き取る。

「相棒……、体はどうだ?」
「……凄く重いけど、なんとか」
「そうか、限界まで動いたって訳だ。 ガンダールヴの限界までな」
「限界が着たら、こうなるのか……」
「ああ、体を強くするのがガンダールヴ。 勿論限界もあるさ」
「そうか……」
「娘っ子も死にゃあしないだろうが、このまま放って置くのも不味いぜ」
「ああ、どうすりゃあ……」

 ガンダールヴの力が無かったら、ルイズが殺されていた。
 俺だってワルドの野郎に殺されてたかもしれない。
 これからどうするかと、考えれば。

「待つ……の、くる」
「待つ? 誰か来るのか?」

 この城で誰が来るのか、上では戦っているはずだし。
 来るとしたら敵だけだけど……。

「待……て、る、くる……け」
「くる……? くる、け? ……キュルケたちか!?」

 小さく頷く、キュルケたちが無事で、助けに来るのか。

「ま……つ、の……」
「ああ、来るのを待とう」
「ぁ、ぅ……ぅ」

 まだなんか喋ろうとして、項垂れるルイズ。
 気絶したのかもしれない。
 ルイズが言ったとおり待つべきか。
 俺の動かない体で、ルイズも同じ。
 喋るだけでも精一杯だったルイズを歩かせるなんて出来ない。
 歩いて逃げられないから、ルイズが言った様にキュルケを待つことにした。
 抱き起こした体勢のまま、何分経ったか。
 どんどん大きくなる音、上で戦ってる人はもう居ないかもしれない。

「来るのかな……」

 ルイズはキュルケたちが来ると言っていたが、先に反乱軍の奴等が来そうだ。
 もしそうなったら、何が何でもルイズを守る。
 動かない体に鞭打ってでも、絶対に。
 誓い、ルイズを見れば瞼を閉じて、寝て、……気絶している。
 早く来いと、何度目か考えていると、やっとお望みの連中が来た。
 すぐ隣の土が盛り上がり、床石が割れて頭を出したのはモグラ。

「まさか床下からかよ」

 シルフィードとかで飛んできて、ここまで歩いてくるのかと思ってた。

「こら、ヴェルダンデ! お前は何処までって、サイトじゃないか!」
「おせぇよ! 危なく敵が来るとこだったぜ!」
「いきなり何の話……」

 ギーシュが俺を見て、俺が抱き起こしているルイズを見て固まった。
 全身に破片が刺さって血を滲ませているルイズ。

「な、なな! ル、ルイズが!!」
「おい! 回復魔法は使えないのか!?」
「え、いや、僕は使え──」

 ギーシュの顔を足蹴にして、穴に押し込む。
 それを確認してキュルケとタバサが穴から出てくる。

「サイト、無事──ルイズ!?」

 血に塗れたルイズを見て驚愕の声を上げるキュルケ。
 すぐ隣ではタバサが座り込んで杖をルイズに向けていた。

「頼む、ルイズの怪我を治してやってくれ!」
「抜いて」

 頷いて、3人でルイズに刺さった破片を抜く。
 それを確認してすぐに光が傷を塞いでいく。
 これが大きな傷だったなら、確実に治せなかった。
 小さな破片でよかった、とタバサが呟く。

「……ねぇサイト、何があったの?」
「……あいつが、ワルドが裏切り者だったんだ」
「子爵が?」
「ああ、王子様も……やられちまった」

 才人の視線の先。
 仰向けに倒れ伏すウェールズ。
 キュルケは目を細め、ギーシュは慌てふためく。

「して、やられたようね……」
「こ、皇太子なのか!?」
「……ああ」

 最悪、殆どワルドにしてやられた。
 最初からルイズと手紙と皇太子を狙っていたのだ。
 見抜けなかった、いけ好かない奴だけど仲間なのだと心の中で思っていた。
 その結果がこれだ、お姫様を守る奴が裏切るなんて思っても見なかった。

「くそ……」

 大体の破片を抜き終え、傷が塞がったのを確認する。

「行こう、帰ろう」

 吐き出すように言った。
 任務は終わった、もうすぐ敵が来る。
 ルイズを抱え上げようとして、倒れかけた。
 それをギーシュが支える、ルイズのほうはキュルケが抱き上げて背負う。
 タバサ、キュルケ、ギーシュ、そして才人の順にモグラが空けた穴に入った。
 穴にもぐる一瞬、才人はウェールズを見て呟く。

「お姫様に、必ず」

 この指輪を届けると誓った。
 指輪を抜き取った時、そうした方が良いと思った才人であった。


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