別荘にて爛れた状態で迎えた二日目。
そのお昼時、武道会は三回戦で棄権したので店にいる。
一回目の時も三回戦で終えたので全く問題はない。どうせあれこれしに戻るし。
「店の方を優先します。文句のある奴は食いに来い。味に不満があるという奴だけ相手してやろう」と、
啖呵切り兼宣伝を言ったのが功を奏して繁盛している。
言ったのはパパラッチだがな。
ただ、優勝賞金が少し惜しかったりもする。出費嵩んでるからなあ。
「くっ…、美味いから不満が言えん…」
で、乗せられてやってきたお客様と言うか中村さん、毎度あり。
さて、繁盛していると色んな人がお客様として来店される。
一回目の時は忙しさで細かく見れなかったが、二回目となると細かい所まで見れるものだ。映画と同じだな。
妙な行動を取られるお客様も居れば、店側への様々なご意見を仰って頂けるお客様も居る。
改善点の発見に役に立つので拝聴しております。
まあ、中にはいちゃもんつけて優越感に浸りたいだけのだけのクレーマーの方も居られますが、その様な方は特別料金と特別サービスを持って対応させていただいております。
内容は言えませんが。
これを受けた皆様は素直に帰っていただいております。
目が虚ろになっていたり、何かブツブツ呟きながらだけど。
そして頭を抱えたくなるような、色んな意味で、客も居る。
つーか、全員五月蝿い。つべこべ言わずに静かに食え。
例えば、
「ブラボー!このコク深く熟成されたソースと具の旨味が合わさることで調和を生んで…」解説しながら叫んでる爺さんとか。
何だよ、あの「すばらしいぞう!」とか絶対言いそうな爺さんは。
十中八九名字は須原に違いない。
だって、一緒のテーブルにいるお孫さんとおぼしき女の子が「椎造おじいちゃん」って言ってたもん、間違いない。
でだ、ブラボーな須原さんが居ると言う事は味○皇様な村田さんもいると言う事。
美味い物を食べると「うー・まー・いー・ぞぉぉぉぉっつ!!」とか叫びながら過剰の極み的リアクションを取るあの人、
オ○ラバトラー宜しくハイパー化したり口からビームを放ったりするあのお方だ。
可能性は低いがもしも来た時を想像してみる。
何故か緑色に光るウチのカレー、んな色に光りそうな物質は一切入っておりませんし、入れた覚えもありません。
食した後に何故か電撃が走り、何時ものBGMが流れ始める。
一呼吸置いてハイパー化。湖の上走ったり、世界樹を引っこ抜いたりのとってもカオスな今川監督的演出で大暴れ。
他のお客様方も何故か一緒に大暴れ。
それを呆れ果てた顔して見てる僕、セイフティとファイアリングロックを解除してるミーシャ。
…頼むから来るなと我らの父に祈っておこう。来ねえだろうけどな、つーか来るな。
その次、
「牛肉や鶏の旨味に野菜や果物の甘みが溶け込んでいるこのソース、少し辛めだがミディアムレアに焼いた牛肉の肉汁と合わさる事で丁度いい塩梅になる。そこまで考えて作ってあるんだ!」
ビーフカレーを注文した万年同じ格好をしているグータラ社員が誉め、
「イカ、タコ、エビ、スズキ、アナゴ、ホタテ、六種類も入ってるわ。きちんと下揚げや炒めてから合わせてあるからそれぞれの味が逃げないでいるのよ!」
シーフードカレーを注文した栗毛の奥さんも誉める。
とっても見覚えのある夫婦である。幼なじみの山岡のお祖父さんとお祖母さんだ。
時々孫に会いに来てて、その孫の幼馴染みだから何度も会ったり、御馳走になったことがある。
半端なく美味いんだよな、師匠の一人の山岡のお父さんも腕をふるうからもう…。
因みに山岡のお父さんの仕事は宇宙開発事業団嘉手納宇宙港福利厚生部調理課主任。
主な仕事は施設内食堂のメニュー開発。
それと各種VIP、目的がよく解らない視察に来る金バッジの先生方やNASAにESA(欧州宇宙機関)のお偉方等々への料理も担当。
で、その両親で東西○聞の「究極○メニュー」担当が何故ここに来る。
学祭で学生が作る、悪く言えば素人料理だぞ?
味やサービスのレベルはプロ級だと思っているが。
「すごいですお!委員長殿のカレーが究○のメニューの担当者に評価されてるですお!」
クラスの連中は素直に喜んでいるが、僕は素直に喜べないんだよなあ。
小さい頃から知っているので、そんな人じゃなくて素直に誉めてくれているのは解るんだけどね。
世界の(別世界だが)汚い所を一杯見てて捻くれてる関係上、どうしてもねえ。
直したくても直らない所です。
そのまた次、
「何よこれぇ。模擬店のカレーって聞いてたから期待してなかったけどぉ、すっごく美味しいじゃないの!!」
銀髪で黒いお姉さんが予想外な味に驚き、
「レベルがとっても高い味なのかしら。スプーンが止まらないのかしら」
緑の様な灰色の様な…、間を取って利休鼠にしておこう、な髪色でオレンジ色のお嬢さんは食べ続ける。
「味は無論のこと、内装もサービスも模擬店とは思えないのだわ」
金髪で赤い、鎌とハンマー持たせりゃ完璧だな、ってぐらい赤いお嬢さんは店を誉め、
「同意見だね。皿はボーンチャイナで、スプーンやソースポットは洋銀だよ」
同意した茶のショートカットの子は皿やカトラリーに着目する。全般的に金掛けてますから。
「うにゅ~、Scrumptious!!」
そして、楽しく美味しく笑顔で食べてくれている小っちゃい金髪ピンクの子。ウチの妹の一人と同じぐらいの年頃かな?
そんなに幸せそうに食べて貰えると料理人冥利に尽きます。
そんな面子のお人形さんみたいな団体さん、全員フリル多めのロリータファッションが特徴。
おいそこのお前ら、一番小さい子を何妙な目で見てんだ。このロリコンどもめ。
どうやらウチの白饅頭とその相方の身内らしく、
「こんな美味しいのが白饅頭のオゴリだと思うと余計に美味しく感じるですぅ」
茶のロール付きロングヘアの子、ショートカットの子の姉妹だろう、両方ともオッドアイで、目の色が左右の違いがあれど同じだし。と、
「…誰もオゴるなんて言ってないお。割引するだけだお…」
こんな会話を交わしていたりする。
心配するな、ちゃんとお前ら二人の所から天引きしておくから。
余談だが、ウチの売り上げは均等に分けることになっている。
とは言え、諸経費を引いた純利益をだが。
で、この支払いはこのコンビの取り分から天引きする。
依って、利益が出せなかった場合はコイツらの純損となる可能性もあるのだ。
「委員長殿っ!それは酷いだろぉ!!」
男なら見栄を張れる位の甲斐性を持ちなさい。常時やれとは言わんが。
「そうよぉ、男ならそれ位やりなさい。流石は委員長さん、解ってるわねぇ」
「まったく、どこぞの白饅頭と違って委員長さんは大人ですぅ。爪の垢でも飲んでちったあ見習うですよ」
「レディに恥を掻かさないのが紳士なのかしら。と言う訳で御馳走さまかしら」
そんなこと言いつつも、「お代わりなのー」「もう一杯頂くのだわ」再度注文する皆様方。
ウチのカレー、高いよ?
「取り分が減っていくお…」「悲しいだろ…」男というものはつらいものなんだよ、解ったか?
「何寅さんみたいに締めようとしてるのよ」女にゃあ解らねえもんだよ。…てかヴィヴィオ、「男はつらいよ」見たことあるのね。
「…流石に僕は自分で払うよ」
そのまたまた次、
「ほれ、遠慮しないで食ってみろよ。前に偶々食ってな、美味いんだよコレが」
「それじゃ、いただきます…」
先行販売時に来てくださったツナギを着たお客様とお連れのチェックのシャツにニットのベストの方。
一見、男二人が一緒に食べているだけなのだが、
「ところで俺の具を見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく…大きいです…」
会話の節々がなんか変。カレーじゃなくて他のもん食ってんじゃねえのか?ってぐらい変。
「委員長殿、あのテーブルのお客様って、ひょっとして…」
まあ、尻の穴がすぼまってしまう様な空気を放つ様な人種はそうはいない。
前の時にも薄々判ってはいたが、二人連れで来たことでハッキリと判った。
新宿二丁目や堂山町に屯している薔薇な感じで「ウホッ、いい男」な人種。
即ちガチホモカップルだ、アレ。
ヴィヴィオ、微妙に目を輝かせない。つーか、教えたの誰だ。
「えっと・・・、はやてちゃん。昔にそういう本を書いてたぐらいだから詳しいんだよね」
またあの人か。うん、仕返しは手加減一切無しで行こう。加減する気は元々ないけど
それはさておき、何で判るかというと嘱託時代の知り合いにいるんだなコレが。
管理局は様々な次元世界からの人員が集まる関係上、異文化に寛容な組織である。
思想信仰の自由もよっぽどのことがない限り保証されている。反体制的思想や、教義が犯罪行為な宗教はお断りだがな!
故に同性愛者も一杯居るのだ。
とある技術を使えば子供も作れるしね!
人為的に減数分裂させた細胞同士をくっつけて作るのだ。後は子宮か培養ポッドに入れればOK。
プロジェクトFなんちゃらとやらはこの技術を元にどうのこうのして出来たそうな。詳しくは知らんが。
で、第34管理世界停戦監視団にも無論と言うか結構居る。
結婚している上司(女)と部下(女)が居れば同僚(男)と交際中の男も居る。
8歳から士官学校入学までの5年間をそんな環境で過ごせば判るようになるのだ。
因みに、年下好きでどストライク(本人談)だった僕に色目を使ってしまう奴も居たりした。
其奴は祖父さんに心酔していたので、「あのお方の孫に手を出すなんてとんでもない」と言うスタンスをとり続けていた。
ありがとう、七光り。お陰で男同士の道を歩まなくて済みました。
「腹ン中がパンパンだぜ。次は何をするかな」
「それじゃ…、良かったらですけど、僕と…」
「しょうがねえなあ。俺は場所とかかまわないで食っちまう人間なんだぜ」
「いいんです…。僕、そんな所が好きですから…」
…頼むから早く清算してくれ…、ここはハッテン場じゃねえんだよ。
そして次から次に来る変わった客。
客足の増加に比例してアレなお客様も増える事が実証されたのでした。
あとがき:今回はちょっと短めです。武道会本番は次回より。
で、プロットの段階では後何組か出すつもりだったのですが、各種事情で敢え無くボツ。
後々加筆するやも知れませんので、その折は宜しく。
追記:誤字指摘感謝します。
で、「直」と「治」の違いですが、ATOK内蔵の「明鏡国語辞典」によると
直す:〔直〕よくないものを正しく改める。ただす。「欠点[偏食・誤字]を─」
とありましたので「直」の字としました。