祖父さんとバルタ○星人が向かい合って座り、僕とヴィヴィオは祖父さんの横に並んで座っている。
「若い者同士はいいですのう。うちの木乃香にも早く相手が見つかってほしいものですぞ」
「お孫さんですかな?その木乃香さんというのは」
「ええ、娘夫婦の一粒種でしてな…」
「ウチはコイツを含めて23人、半年ほどしたらもう二人ほど増える予定です。コイツの弟妹ですよ、双子だぞ」
年寄り二人の孫談義、一見穏やかに見える。
つーか、母さんと親父まだ頑張るのか。まあ、母さん(28歳)まだまだ若いし。
「それは賑やかでよろしいですのお。うちは一人だけでしょう、じゃから早う曾孫の顔が見たくて堪らんのですわ。ヴィヴィオちゃんと付き
合っておらんかったらアリョーシャ君に勧めてみようかとも考えておりましたぞい。フォフォフォ」
聞いた途端、"これは私の"と言わんばかりに腕にしがみついてくるヴィヴィオ、それを横目で見た祖父さん、
「それはそれは高く買ってもらいましたな。残念ながら聖王女陛下と恋仲になってしまいましたからなあ、ウチの孫は。代わりと言っては何ですが、今年で24になるウチの末息子なぞどうでしょうか。親に似ずマジメな奴でね」
横で話を聞いている僕とヴィヴィオ、黙って聞きながら茶を啜り続けている。
いい葉で適温適時に入れてはいるが空気のせいで不味い茶を。
ぬらりひょんと鬼の妖怪大決戦だ。
鬼はウチの祖父さんな、作戦時の苛烈さと容赦の無さから鬼だと言われてる。
両方とも表面上はさわやかに談笑しているが、裏は真っ黒い腹の探り合い。
お陰で空気が悪いったらありゃしない。
腹の探り合い合戦に参戦出来るわけがない僕とヴィヴィオは、黙って茶を啜るしか有りません。
あー、茶が不味い。
そんな時、
「さて、アリョーシャ君。今事件の首謀者、超鈴音から君宛に手紙が届いておる。封はまだ解いておらん、見てもらえるかね?」
バル○タン星人が執務机から封筒を取り出してきた。
受け取ってみると、魔法使いが使うホログラフィ手紙だった。
別荘と言い、こういう所はやけに進んでいるんだよな。
興味を持った祖父さんに説明し、再生する。
「やあ、アリョーシャサン。コレを見ているという事は罠に引っ掛かったと言う事ネ」
映し出される超、今となっては小憎たらしい顔だな。
「私はアナタの事を気に入っていた。ダカラ仲間に引き入れようとしたガ、見事なまでに断られたネ。モウ怒りを抑えるのに精一杯だたヨ」
やっぱ悔しかったんだなあ、手紙の中でも悔しそうだもん。
「まあ、一理あったのも確かネ。私のやった事は秩序に対する反逆、クーデターに等しいネ。本来ハ数多くの同志と共に行い覆す革命でアルべきだとは解ってもいたし、本来はそうしたかったヨ。権力を得た少数派は力を用いるしか多数派に対抗する術を持たない。時には強硬な手段や恐怖を用いるしかない時もあるヨ」
何だ、解ってんじゃん。上辺では無い本物の狂信者はそれを理解出来ないからなあ。
「しかしダ、それでも私はやらねばならなかったのダヨ。何故かは言えないガ。ダガこれだけは言わせてもらうネ」
何だ?何を言うんだ。
「ザマアミロこの負け犬ガ、私の勝ちネ」
勝ち誇った笑みで、親指で喉を掻き切る仕草。
明確な勝利宣言だ。
手紙はそこで終わり。これ以上は言い訳がましくなると判断したのだろう。
超にしてみればこれでおあいこのつもりなのだろうし、理解は出来る。
が、
我がコンドラチェンコ家の男共にそんな理屈は通用しない。
何としても成し遂げるのが我が家の血、特に状況を引っ繰り返せるジョーカーの存在を知っている。
「ミーシャ、ドラグノフにデータ転送、その後カシオペア関係の資料をピックアップしてくれ」
『了解、リンクします』
祖父さんのデバイス「ドラグノフ」へと資料や未整理データを転送する。
途中のレポートに私見にと、ここで調べて知った事全てを送る。
その後、カシオペアのレポートを表示し、祖父さんに見せる。
「…コイツは一級のロストロギアだな。あれやこれやを限定する事で時間跳躍…、いや、世界の上書きだな。それを実行するとは…」
「祖父さん、家に一報は入れた?」
家族の皆や、士官学校の同期に無事だという報告をしたかを尋ねる。
「いや、まだだぞ。どうせなら無事な姿を見せてやろうと思っているからな。後でゆっくりと…」
正面に移動し、頭を下げて頼む。
「このままMIAにしておいてくれ。理由は聞かないでくれ」
今からネギ達を引き連れ、あっちから売って来た癖に勝ち逃げされたケンカを買いに行く。
但しこれは犯罪だ。過程がどうであれ受け入れればならない結果を無視し、改変…、いや改竄だな、故意に過程を書き換えに行くのだから。
調査団司令の孫が犯罪者じゃあ示しが付かないだろ?
コンドラチェンコ候補生は行方不明のままで、重要参考人と証拠物件を強奪したのは、あくまでも正体不明の犯罪者。
それで何の問題もないのならそれでいいのだ。
「…矢張り俺の血を引いているなお前は、戦場に行くんだろ?自己満足の為の戦場に」
真剣な顔した祖父さん、この人も若い頃に"似た様な事"を行ったから理解してもらえると思っている。
しかし、次に口から出てきたのはちょっと意外な言葉だった。
「今は許可は出せないな」
「…部下引き連れての軍規破りに非戦闘員の虐殺までした戦争犯罪者に言われたくないな。いくら兄弟の亡骸を取り戻す為とは言え」
"似た様な事"をあえて口に出し、非難する。
バルタン星○人の顔が歪んでいるが無視しよう。弱みと取られても知るもんか。
「まあ待て、"今は"と言っただろう?俺だけじゃなくて横も見てみろ」
横?って、ヴィヴィオが…、あ。
「私を無視して話を進めるんだー。また置いてけぼり?」
ほっぺを膨らませてすっごいむくれ顔をされています。陛下はお怒りです。
うっすら虹色魔力光が見えております。
「いや、その、無視してたんじゃなくて、自分勝手な満足の為の戦いに巻き込みたくないと言う意志が働いた結果であって…」
人が必死になって説明している所を、
「一介の将軍如きが許可は出せないなあ、陛下の許可をいただかなければなあ」
しれっとした顔で茶々入れやがってこのジジイは。
「そうですじゃのう。我々下々の者は陛下のお言葉には逆らえませんからの」
一緒になるなバ○ルタン星人。つーか、仲良くなるな妖怪コンビ。
しどろもどろの僕にある種トドメの一言、「私は何と言われようと着いていくからね」
うれしい事言ってくれるじゃない…、じゃなくて!犯罪行為をしに行くのよ!?
ホントにいいの?
「散々置きっぱなしにしておいてまたサヨウナラ、は許さないからね。それに犯罪行為ならゆりかご事件の時にしちゃったから気にしないの」
「ヴィヴィオ…」
「若い者はいいですのう」「全く」
****
「はーい、あ、アリョーシャ?うん今、愛衣ちゃん達に保護されて魔法使いさん達の支部だったっけ?そこに向かう所。え、愛衣ちゃんに変
わってくれって?ハイ、愛衣ちゃん」
「あ、ハイ、教官ですか?ええ、任務でして間もなく着くところです」
保護後、聴取をする為に日本支部に向かう道中、割と平穏な空気が流れていた。
カモの企みに愛衣が限定的な賛成をし、知りたい情報を教えてもらえたからだ。
「愛衣さんと皆さん、仲いいですねー」
「ネギ先生とは兄弟弟子の関係だからね。私たちよりも一緒にいる機会が多いから可愛い後輩だと思われているんでしょう。それに、あの子は人に好かれる子だしね」
前を歩く高音とナツメグは知らないが。
共犯者が出来た事で精神的余裕が出来ている9人。
「にしても、この端末スゲーな。このサイズでこれだけサクサク動くのが出来るとはなー」
知りたかった情報も貸してもらった関係者用情報端末(iPh○ne3GSの丸パクリ)で調べる事が出来た。
そんな空気を木っ端微塵に砕く物がやってくる。
「東南東の方向、風速2m」「了解、照準補正完了。弾着は15秒後の予定」
気の抜けた風切り音、前を行く二人の近く、風上の方向で「5、4、3、2、弾着今っ」それは弾ける。
「い、一体何っ!?」
「げほっ、ごほっ、喉が…、目が…」
催涙性の煙幕、涙と咳が止まらなくなり、まともに動けなくなる。
風向きの関係で煙がほとんど流れてこなかった神楽坂達は戸惑う。
「一体何でえ、あの煙は!?」
「咳とかが聞こえるけどさ、催涙ガスとかの類?こっちに流れてこない?」
そんな皆に「風上ですし、一応防護フィールド張ってますから大丈夫です。もしも吸っても後遺症とかは残らないですよー」
あっけらかんと答える。
事前に知らされていたからだ、「今から催涙煙幕弾を高音の姉ちゃんの方に発射する。風向きと風速を知らせろ」と。
****
「はーい、謎の魔法使いAでーす。これから皆さんを拉致いたしまーす」
皆に「謎の魔法使いA」である事を強調しておく。
これらの事件は「謎の魔法使いA」が行う事であって、アンドレイ・コンドラチェンコでは無いと言う事を示す為だ。
「謎の魔法使いって何よ、サングラス掛けて、リュック背負ってるだけじゃないの」
「それ以外は何時もの軍服姿でござるからなあ、してそちらの御仁は?」
グラサン掛けてるだけだからバレバレだけどね!!
「初めまして、高町=スクライア・ヴィヴィオです。よろしくお願いしますね」
「はー、初めましてー」
こら「謎の魔法使いB」、自己紹介して正体バラすんじゃありません。
せっかく買ってきたサングラスの意味がないでしょう。
「アリョーシャの彼女?可愛い子じゃん」
「ナカナカ強そうな子アルネ、身体のブレがほとんど無いヨ」
だから「謎の魔法使いA」だって、君たちは今から拉致されて人質にされて行方不明になる事になってんだから、ネギもね。
「行方不明て、どーゆー事なん?」
証拠品として抑えられてるカシオペア使って戻って超を懲らしめに行くの。
「あや?それってカモ君の作戦と同じやん」
うん、そこの弟子二号から聞いた時は愕然とした。ネコ目イタチ科が同じような作戦を立てていたとは…。
まあ、使える奴である証拠だからいいんだけどね。
参謀教育させてみるか?悪知恵が効く奴なんだから結構物になるかもな。
大隊指揮官資格持ちで上級キャリア資格持ちの佐嶋二佐に教授してもらえば…。
****
さて、弟子二号に煙幕攻撃食らったところを襲われたましたと言えと申しつけて気絶させた後に、
日本支部へスネークした我々、螺旋階段の前に立っています。
弟子二号情報では警備システムの抜け穴に当たるそうなのだが、保守点検とかはしてるみたいだから存在は知られてるんだろ?
さっき、襲撃事件があったばっかりだから見張りぐらい立たせても良さそうなもんだけどなあ。
まあ、祖父さんが取引したんだろ。
若い頃から家族思いだからなあ、「家族を大事にしない奴は男じゃない」と言うドン・コルオレーネの言葉がお気に入りみたいだし。
だから部下も大事にする、故に忠誠心の高い部下が多いのだ。
「深いなー」
『普通に降りればかなりの時間が掛かると推定されます』
地下30階へと通じる螺旋階段、その入り口。測距してみたらかなーり深いことが判明した。
因みに、待ち伏せされていた時の用心として音響弾も一緒に打ち込んでおいた。
今頃目を回して倒れていることだろう。…ショック死してなきゃいいけどね。
「音が聞こえるまでムチャクチャ時間掛かってんなー、降りんのか?コレを」
うん、その問題を一気に解決する方法が一つあるのだよ、千雨ちゃん。
近くにいた千雨ちゃんとこのかちゃんの手を取り、ヴィヴィオに本屋ちゃんとパルにゆえっちを任せる。
「残りは歩いて降りてきてねー。時間が掛かりそうなら迎えに行くから。神楽坂以外」
「何で私だけなのよ。ていうか何するのよ」という批判を背に、「おい、ひょっとして…」3、2、1、降下っ!!
螺旋階段で中央部分は吹き抜け、測距した時に障害物がないことは確認済み。
ならば、最短距離で進める方法を採ればいい、僕とヴィヴィオは飛べるし。
「ばっきゃろーっ!!」
「こ、こここ、これは想像してへんかったなー」
これが一番手っ取り早く降りる方法なのよ。
上に残した4人は足が速いけど、みんなで降りるとなると一番遅い人に合わせなきゃならなくなって時間が掛かる。
ならば、遅い人を最速の方法で降ろせば時間のロスは少なくなるって寸法なのだ。合理的でしょ?
「言わんとすることは解るぜ?だがな…、説明無しで飛び降りるんじゃねーッ!心臓に悪いだろがぁーっ!!」
「そやなー、一言言うてほしかったなー。チビるか思たわー」
言ったら言ったで文句言われるんだから、一度で済むこっちの方がいいの。手っ取り早いし。
「ちょっと乱暴だったかな?降下も自然降下が大半だったし」
少し遅れてヴィヴィオが降りてくる。降下速度を落として降りてきた模様。
「速度を落として降りてくれたので助かったです」
「アリョーシャは気が利かないところがあるからねー」
「気を遣っていただいてありがとうございますー」
僕は"飛べる陸戦魔導師"であって空戦の専門家ではないの。
ヴィヴィオは空戦魔導師だからそこら辺の制御が上手い、その違いよ。
残りがくるまで暫し待つ。人類の規格外な連中だから早々来るだろう。
****
警備要員休憩室、そこに待機している魔法使いは苛立っていた。
「ガンドルフィーニ先生、何故待機が続くんですの!?私たちに催涙弾を打ち込み、メイを気絶させ、重要参考人を強奪されましたのに、何故!?」
目と鼻の先で行われた犯行、それを食い止められなかった自分への怒りと、待機指示の為に動けない現状、その二つに高音は一層苛立っていた。
思わずその苛立ちをガンドルフィーニにぶつけてしまう。
「学園長の指示だよ。関東魔法協会理事の権限で発動されたこれに、我々は従うしかないのだよ。解ってくれ…」
彼女の気持ちはわかる。しかし、組織の長に「動くな」と言われているが故に自分も動けない。
一種のジレンマに陥っていた。
「時空管理局の皆様方はどうなんですか?犯罪者を相手にする組織なのでしょう、こちらから要請すれば…」
ここ一週間接触している組織に一縷の望みを託すが、
「あちらも同じく、司令官の指示で待機中。別命有るまで動けないそうよ」
葛葉刀子の一言で打ち砕かれる。
組織に所属している限りつきまとう宿命に翻弄されている魔法関係者の面々。
同じ頃、学園長執務室。
「申し訳ありませんな。ウチのバカ孫の為に全員待機命令を出していただけるとは」
「なあに、あのままでは強制送還の上、オコジョにされてしまうところだったウチの連中を助けていただいた恩がありますからなあ。その返済の一つと思っていただければ結構ですぞい。それに…」
「それに?」
「若いもんが自ら判断し、自らの意志で動こうとするのを老人が邪魔してはいかんでしょう」
「ご尤も、老人の仕事は間違っていた時に指摘してやることと経験からの助言を与える事ぐらいですからな。…取っときの酒が艦に積んであります、今夜はそれで一杯飲みましょう。クローリク、私室の戸棚の左奥だ。取ってこい」
「は、畏まりました。少々お待ちください」
「ひょひょひょ、御馳走になりますぞい」
****
タカミチの細工でネギと無事合流出来た。
予想通り祖父さんとバ○ルタン星人が取引をして、全員待機の命令を出したそうな。
よって、警備網が停止状態だったとか。
「管理局式念話を使える人間と学園長だけの秘密だよ。あと、資料を渡しておくよ」
タカミチから資料と、「後は任せたよ」無言のメッセージを受け取る。
任せとけ、あの女をギャフンと言わせてやる。
石造りの回廊、世界樹の根が張り付き、誰も使っていないことが容易に想像させられる。
魔力が残っている為にぼんやりと光るそれは徐々に光を失っていく。
まだまだ後ろの方だが、グズグズしていると追いつかれる。
そんな時だった。戦馴れしていない皆さんが固まる存在がやってきた。
地下を住処にする「トカゲ…」ドラゴンです。
この前襲われたゆえっちと本屋ちゃんは余計に固まってます。
ヴィヴィオは「凶暴モードなフリードだね」と割と落ち着いてます。
我々は龍を見慣れてるからね。
うなり声を上げるドラゴン、本来なら即刻攻撃をし叩くべき存在、しかしだ。
実は恐れるに足らない存在であったりする。僕が居るとき限定だけど。
「ポチー、ご飯だぞー」
僕の姿を見、この言葉を聞いた途端にしっぽ振り出すドラゴンさん。
そう、地底図書室にちょくちょく行く関係で顔を覚えてくれた。なので試しに餌付けしてみたら成功したのだ。
ついでにポチという名前を勝手に付けてみた。
「あー、つまりはだ、アンタは野良猫を手懐けるみたいな感覚でこのドラゴンに勝手な名前を付けてエサをやってたと言うことだな?」
「うん、そう言うこと。手間と時間と大量の各種肉が掛かったのよ。お陰で肉屋の兄ちゃんが仕入れ先教えてくれたぐらい」
リュック一杯の丸鶏を一つずつやりながら千雨ちゃんの質問に答える。
投げた鶏を一口で食べてしまうポチ、お前は大食いだからなあ。これぐらい用意しないとダメなのよ。
「んな常識外れな事すんなぁッ!!お前も餌付けされるなぁーッ!!」
んなこと言われてもなあ、ポチ?
「グル」一声鳴いて頷く、同意見の様だ。
「やっぱりアリョーシャはスゴいや」
「色んな意味でね…」
「同意でござるな」
「初めて見ました…、二重の意味で」
「ドラゴンとそれを餌付けする人間って事だね?」
****
満足したポチの見送りを受け、更に進む。
目指すは光の進む先、恐らくは魔力が一番残っている場所。
そこは広大な場所、魔力は中央部、魔法陣の上に集まっている。
何に使うかは解らないが、魔力集積目的の施設だと推察出来る。無事戻れて、やっぱり祖父さんが来たらここも調査対象にしてもらおう。
たどり着き、ネギに指示する。"初日の早朝に設定しろ"と。
準備期間は長い方がいい、半日と二日半では雲泥の差がある。
そして、この場合の時間は値千金、何よりも貴重だ。
「だがアンドレイの兄貴、それじゃあ膨大な魔力が必要で兄貴の魔力だけじゃあ足りねえぜ!?一体どうすんでえ?」
カシオペアは駆動エネルギーとして使用者の魔力を使う。
作動用触媒の世界樹の魔力は十二分、後は使用者の魔力次第。
だがしかし、手はある。
「エロオコジョ、契約陣書け。ネギが従者になるやつ」
「え、あ、てぇ…、そう言うことかぁ!流石はアンドレイの兄貴!!」
「え、どういう事?」
解ってないネギは置いといて、契約陣を用意する。
陣の中に立たせてと、
「じゃ、行くぞ」「行くぞって何が…、ええっ!?」
「あああああ、アリョーシャ、アンタ…」
「生やおいっ!?義兄弟モノッ!!?」
「あわわわわ」
「何をやってるですかーっ!」
皆、大パニック状態。
そりゃ、右頬にとは言え男同士のキスなんて思春期の乙女には刺激が強すぎるもんねえ。
が、これはちゃんとした目的有ってのことなのだ。
そこ、ヴィヴィオ他何名興味深げに見ない。
「ほい次」「みんなゴメンね」
続けてヴィヴィオが左頬にキスする。頬へのキスはヨーロッパ圏では挨拶の一種だから問題ないのだ。
最後に「ちょっとゴメンね」とこのかちゃんに耳打ちする。
「そないな事やったらしゃーないなー」とネギにでこちゅをして貰う。
「唇にだったら15万オコジョ$入んだがなあ…」
エロオコジョがぼやく中、三枚のスカカードが出る。
目的はこれが無いと出来ないのだ。
こらネギ、いつまで惚けてんだ。さっさと次行くぞ次。
「設定終わったか?」「う、うん。初日の早朝に設定したよ」
皆に手を繋がせるか掴ませる。
「このかちゃん!契約執行10秒間」
「あ、こやったな契約執行10秒間、木乃香の従者ネギ・スプリングフィールド」
「「契約執行10秒間、アンドレイ(ヴィヴィオ)の従者ネギ・スプリングフィールド」」
これが目的、ネギ一人で足りなければ他から持ってくればいい。
幸いにも僕の魔力容量はかなり多く、ヴィヴィオとこのかちゃんは半端ではなく多い。
そこに目を付け、供給目的でスカカードを作ったのだ。
とは言え、これで上手くいくかは解らない。
成功する可能性は高いが、絶対失敗しないことは証明出来ないからな。
失敗する可能性がジンバブエのインフレ率ぐらいでも有るのなら絶対失敗しないとは言い切れない、悪魔の証明ってやつだ。
ま、分が悪かろうが良かろうが賽は投げられてしまったんだ。この賭がどうなるかは出たとこ勝負だ。
時は戻り、物語は進む。嘗ての時とは違う形で。
あとがき:ちょっと詰め込みすぎたかな?な、後編でした。
次回から学祭編始まります。
余談:お気付きの方も多いやるやらコンビ、実は三十四話の時点で出てたりします。一言だけですが。
後、某戦鳥は十年以上前からの住民です。