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No.4701の一覧
[0] 砲撃生徒異世界奮闘記(リリなの系オリ主(少々御大成分入り)→ネギま):小ネタ分多め [あず吉](2009/05/26 23:11)
[1] プロローグ「Missing In Action」[あず吉](2008/11/05 19:55)
[2] 第一話「ケ・セラ・セラ」[あず吉](2008/11/06 22:52)
[3] 第二話「執務室にて」[あず吉](2008/11/05 20:05)
[4] 第三話「モスクワは涙を信じない」[あず吉](2008/11/05 20:11)
[5] 第四話「初仕事」[あず吉](2008/11/05 20:19)
[6] 第五話「変に律儀」[あず吉](2008/11/06 06:08)
[7] 第六話「学園長直轄砲兵」[あず吉](2008/11/05 20:32)
[8] 第七話「ゴールデンクラッシャー」[あず吉](2008/11/09 23:33)
[9] 第八話「ライオンの皮を被った驢馬」[あず吉](2008/11/13 21:28)
[10] 第九話「キノコだと名乗った以上は編み籠に入れ」[あず吉](2008/11/16 16:03)
[11] 第十話「バタフライ効果」[あず吉](2008/11/21 22:53)
[12] 第十一話「地底図書室」[あず吉](2008/11/29 02:37)
[13] 第十二話「学園放浪&弟子二号交流記」[あず吉](2008/12/02 23:03)
[14] 第十三話「始業式前後」[あず吉](2008/12/08 21:22)
[15] 第十四話「荷馬車から落ちたものは、失われてしまったもの」[あず吉](2008/12/15 22:09)
[16] 第十五話「嵐の前」[あず吉](2008/12/31 18:34)
[17] 第十六話「暴風警報」[あず吉](2009/01/08 23:04)
[18] 第十七話「狸穴町」[あず吉](2009/01/17 21:49)
[19] 第十八話「晴れた空、そよぐ風」[あず吉](2009/09/20 21:07)
[20] 第十九話「デウス・エクス・マキナ」[あず吉](2009/02/13 16:19)
[21] 第二十話「"悪人"の仮面」[あず吉](2009/03/02 21:29)
[22] 第二十一話「"悪い"お兄さん」[あず吉](2009/03/13 22:10)
[23] 第二十二話「突撃砲兵(上)」[あず吉](2009/04/30 22:52)
[24] 第二十三話「突撃砲兵(下)」[あず吉](2009/04/01 05:42)
[25] 第二十四話「パスハ」[あず吉](2009/04/16 19:07)
[26] 第二十五話「乳母が七人いると子供に目が届かない」[あず吉](2009/05/19 01:15)
[27] 第二十六話「埼玉県警麻帆良署」[あず吉](2009/05/19 01:15)
[28] 第二十七話「一日をくださる神様だもの、一日の糧もくださるだろう」[あず吉](2009/05/26 23:10)
[29] 第二十八話「熊の親切」[あず吉](2009/06/09 23:47)
[30] 第二十九話「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」[あず吉](2009/06/25 17:55)
[31] 第三十話「雨降って地固まる」[あず吉](2009/07/10 21:45)
[32] 第三十一話「雨に唄えば(上)」[あず吉](2009/08/18 23:05)
[33] 第三十二話「雨に唄えば(中)」[あず吉](2009/08/18 23:05)
[34] 第三十三話「雨に唄えば(下)」[あず吉](2009/09/04 21:59)
[35] 第三十四話「会議は踊る」[あず吉](2009/09/19 22:07)
[36] 第三十五話「華麗なる日々」[あず吉](2009/10/08 22:11)
[37] 第三十六話「どんでん返し」[あず吉](2009/10/19 20:28)
[38] 第三十七話「祭りの後(上)」[あず吉](2009/10/25 22:17)
[39] 第三十八話「祭りの後(下)」[あず吉](2009/11/12 22:39)
[40] 第三十九話「不確定」[あず吉](2009/11/21 23:37)
[41] 第四十話「あら何ともなや きのふは過ぎて 河豚汁」[あず吉](2009/12/08 22:51)
[42] 第四十一話「戦線拡大」[あず吉](2010/01/02 15:44)
[43] 第四十二話「千客万来」[あず吉](2010/02/17 22:01)
[44] 第四十三話「開幕前後」[あず吉](2010/02/17 22:09)
[45] 第四十四話「運動の第一法則」[あず吉](2010/03/13 21:47)
[46] 第四十五話「苦労しなくては池から魚は引き揚げられない」[あず吉](2010/04/06 21:44)
[47] 第四十六話「メフィストフェレス」[あず吉](2010/05/06 23:33)
[48] 第四十七話「狐と狸」[あず吉](2010/06/16 23:01)
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[4701] 第十八話「晴れた空、そよぐ風」
Name: あず吉◆d1f0c29b ID:8dd07ffc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/20 21:07
夕方の新東京空港国際線発着ロビー、麻帆良学園男子中等部ハワイ行きご一行様が集まっている。

そこにやけに整然と整列しているクラスがある、我がクラス3-Aだ。

「委員長殿 !3-A計6斑30名点呼終了致しました!」
そう、何の因果か知らんが、学級委員長なんて役職に就いている。



切っ掛けは編入直後だった。

前任の委員長は引っ込み思案で、統率力のない男だった。
よくある嫌々選ばれた類の奴だ。


そこで、士官候補生としての経験と、嘱託時代に下士官達に色々仕込まれた経験を生かして補佐してみた所、
副委員長の肩書きを送られてしまった。


仕方がないので昔々にハートマン陸曹(口が悪いんだが、愛を持って接するいい人です)に教わったあれやこれやを実践。
その結果、担任の推薦と委員長の譲渡発言で、副委員長から委員長への昇格を受けるしかなくなったのだ。


ええい、もう自棄だとビシバシやった結果、あのような整列と点呼が出来る連中へと変貌を遂げた。

「あの締まりの無いクラスが、君のお陰で整然としたクラスになった。ありがとう」と担任や生活指導の先生には好評だ。



え、逆らう奴出てこなかったのかって?
それが意外な所のお陰で出てこなかったのよ、パパラッチのお陰で。

あいつがあんな記事と「ゴールデンクラッシャー」の二つ名を付けたお陰で「逆らうと潰される」という恐怖で出てこなかったの。
それでも挑んできたクラスの武闘派連中を秒殺したのもあるんだけどね。


あと、見逃せる物は見逃して、緩める所はしっかり緩めているし、恐らくこの学園の中学生一の質と量を誇る猥談も提供してるし、
その類の物もばらまいてたりする。

締める側がばらまいてどうすんだと言う声もあるが、そこは飴と鞭という事で。
飴は良質なのを取りそろえているのでクラスの連中にも好評。


あいつらもキッチリ締める所を締めればいいと判ってきたしな。



ああそうだ、乗り込む前に電話しておくか。機内では携帯は禁止だからな。
「もしもし、僕だ。ちょっと頼みがあるんだが…、」



「…お礼は帰ってからな。うん、じゃあ頼むぞ」
電話を切り、今朝の事を思い出してみる。



****



朝、走っているとネギがいた。
その様は、何というか、年相応というか、遠足の時の小学生の顔だった。
 
「あ、アリョーシャさん!おはようございまーす!」

返答しつつも、いつものようにグリグリとしてやる。
元気なのはいいが、さんは付けるなって言ってるだろが。

「い、いたいですよー」「ホント兄貴達は仲いいなー」
ホント、コイツも懲りない奴だなぁ。



「へ?西への特使を仰せつかったって?聞いてないぞ?」
ネギとの話の中で出てきた話、東西の対立は聞いているし、時々西の陰陽師さん達を吹っ飛ばしているので判っている。


平和条約を締結して睨み合いを解消しようという話は分かる。とは言え、コイツを特使として派遣するのはどうかと思う。

そりゃ、プロパガンダの材料としては「英雄の忘れ形見」は絶好の素材だ。
西の反体制派に襲われれば体制派とっては粛清の発端に出来、東にとっては介入の材料となる。

とは言え、「英雄の仲間」で、強いタカミチの方が特使としては向いてると思うぞ。



それとも何か?千尋の谷に突き落とすって奴か?エヴァの時もそんな事を匂わすような発言をしていたな。
お得意の飄々っぷりではぐらかされたが、ほぼ間違いないと踏んでいるが…。


まあ、甘やかされて育ったガキにろくな奴がいないのは判っている。

それが麻帆良学園の教育方針なら、基本的に部外者の僕が口を出すべき事ではない。
バックアップ役を付けているだろうしな。


だけど、弟分にちょっとしたプレゼントとちょっとした助けを仕向けるぐらいはいいだろ?
あと神楽坂へのプレゼントもな。金が掛かってんだ、気に入らないとは言わせんぞ。



****



新幹線ひかり213号車内、発車して少し立った頃。


「あ、アスナさん。アリョーシャさんから一日遅れのバースディプレゼントだそうです。材料の調達に時間がかかったとかで」
そう言って、アリョーシャさんから渡された包みを渡す。

「アイツってば律儀ねぇ…。どんなのやら…、!!?」
固まるアスナさん、アルバムみたいだけど何が写っているんだろう?


「あ、タカミチだ」タカミチがお酒を飲んでいる写真ばかり貼ってある。変わった所と言えば、タバコじゃなくて葉巻を吸っている所ぐらいかな?
何で、アスナさん固まっているんだろ?


「な…」「な?」
固まっていたのが溶けてきたんだけど、震えているアスナさん。

「何で…、こんなに…、解ってるのよ。あたしの好みを…」
「確かに、アスナさんの好みをよく解っていますね。それに構図や照明、小道具が渋さを引き立たしていますです」

「あー、この写真の高畑先生かっこええなあ」
「むう、アスナの気持ちがちょっとだけ解る気がするわね…」


よく解らないなぁ、タカミチがバーみたいな所で誰かと一緒にお酒飲んでいる所ばっかりなのに。


「てゆうか、誰なのよ!?一緒にいるダンディーなオジサマは!?」


その時だ、アルバムから封筒らしき物がひらりと落ちた。拾ってみると「アンドレイから神楽坂へ」って書いてある。


封筒の中から出してみると「神楽坂へ、色々と考えた結果、お前の大好物を用意してみた。気に入らないとは言わせんぞ」
それを聞いたアスナさんはうれしさ半分くやしさ半分な顔をしている、何でくやしいんだろ?


続きにはキリルで何か書いてあるんだけどこれは…。

「なあ、ネギ君。この続きは何て書いてあるん?」このかさんに尋ねられたけど、
「ゴメンナサイ、ロシアで使われているキリルって言う文字なのは解るんですけど読めません」
と、ホントはアーニャから教えて貰っていて読めるのにウソをついてしまった。だって…、魔法の事が書いてあるんだもの。


「因みに一緒に写っているのは変身魔法で親父と同じぐらいの歳に化けた僕だ。追伸:ネギへ、お前キリル読めるって言ってたな?お前の教え子達は読めないだろうから魔法の事はキリルで書いておく」って、ね。


アスナさんにも教えるべきなのかなあ?
「今度、このステキなオジサマを紹介して貰おう」とか言ってるし…。



****



神楽坂へのプレゼント、それは「タカミチのダンディな写真集:オーセンティック・バー編」だ。

タカミチを捕まえて、変身魔法で親父と同じぐらいに化け、少し前に見つけたいい感じのバー一緒にで飲み、その時にサーチャーで撮影した写真だ。
一緒に飲んだバー、イ○デンホールのマスターの佐々倉さんは若いのに腕がいい、銀座にあるからちと高いのが難点だが。



その被写体が捕まらなくてなあ、昨夜になってやっと捕まった。

で、無理矢理約束を取り付け、とっ捕まえたら銀座まで転移、最初は誰か解らなくて戸惑っていたが、転移したら解って貰えた。
そのまま一緒に楽しく飲み、ダンディズムをパワーアップさせる為にタバコではなく葉巻を吸わせ、飲み終わり次第編集・印刷・製本と、
徹夜して仕上げました。


因みに、タカミチが吸っている葉巻はコイーバだったりする、高いんだコレが。

金は掛かったが、旨い酒が飲めたし、世話になっているお返しが出来たから良しとするか。



****



機内はヒマで有る。
だから新しいって言うか場合によっちゃあ劇場公開前の映画や、スーパー○リオや上海だとかの延々やってられる系ゲーム、新旧洋邦合わせた音楽等々、ヒマ潰しの為の手段が揃っている。


とは言え、ヒマである事には変わりはない。


いつもは騒がしい連中も割と大人しく暇つぶしをしている。
いくらエネルギーが有り余る年頃とはいえ大騒ぎするわけには行かない場所だというのを解っているからな。


…とは言え、「騒ぎすぎたり迷惑を掛ける客がいる場合、機長の判断一つで途中で引き返したり降ろしたりしますからね。いいですね」と凄んでみたのも効いているようで。



そんなこんなでエコノミークラスで7時間ほど、一般的なオアフ島のホノルルでは無く、ハワイ島コナ国際空港にたどり着きました。

クリア直前に消されて叫ぶ奴、ずっと寝ていて寝惚け眼の奴、酔って吐いて顔色悪い奴、「あんな鉄の塊が…」とか言って顔色悪い奴、
ナチュラルハイな奴、様々な人間模様を浮かべながら、皆降りていく。


搭乗口の近くでも空気の匂いが違う。ああ、遠い所まで来たんだなと、実感する瞬間だ。

そうして、タラップから降りる。日差しが眩しくて、風か気持ちいい。
ハワイへと辿り着いた瞬間だ。



****



ハワイ島の観光名所と言えば、キラウェア火山です。
他にもいっぱいありますが、第一目的地がそこなんです。



麓とは全く違う海抜1200mの風、ちょっと肌寒く、空気がちょっと薄い為か柔らかい風。
そんな風が吹く玄武岩の荒野、時折風と共に硫黄の匂いがする。

その荒野の中にあるカルデラ、その中にあるハレマウマウ火口。
ハワイの神話では火の女神ペレが住まう場所という。

眺めてみて、なるほどと納得した、硫黄臭さの元の噴煙が吹き、所々で溶岩の赤が見える。
人が留まれるような所ではない、神ならば留まれると考え、神の住まう場所とされたのだろう。



その次、第二目的地は酸素吸入器と上着必須の場所、マウナケア山頂です。

途中で必ず休憩するのだが、ここの学校の連中は適応能力高いなあ。
ここでも標高2800mあるのに高山病にかかってる奴が一人もいないとは…、恐るべし!麻帆良生徒!!

ものの10分で山頂近く、冬は雪が積もってスキーも出来る山頂平原となる。
かの有名な「すばる望遠鏡」もここにある。


時刻は夕方近く、間もなく日が沈む頃。その夕日を見に来たのだ。

そして西の空に日が沈む、海と島と夕日の作る光景。
この島で一番高い所からの絶景だ。


自然には敵わないねえ、色々見てきたけど、どれも飽きないわ。




短時間での気圧や酸素濃度の変化というのは結構体力を削るものです、


流石の麻帆良生徒も体力を消耗してしまっていてとても大人しくしています。
夕食のハワイ料理も、いつもの事を思うと大人しく食べています。

学級委員長としては楽でいいんだけどね。
いつものノリだったらこっちが疲れるのよ、ウチのクラスの場合は僕の一喝で大人しくなるからいいけど、他のクラスなんてもう…。

疲れと、枕投げも出来ない(ホテルだからね)のもあって殆どの生徒は大人しく就寝。そうして、修学旅行一日目は終わるのです…。




****




開けて二日目、朝食後に空路ホノルルへ。
ワイキキビーチ近く、カラカウア通り沿いのホテルに移った後、


ホノルル市内観光と銘打ってはいますが、メインは違います。
なにせ男の子ばっかりですから。


カメハメハ大王の銅像やイオラニ宮殿等々のハワイ王国時代の名所を見ますが、楽しみはその後、


アリゾナ・メモリアルセンターでございます。

一応選択式になっていて、ダイヤモンドヘッドとかに行くのも用意してあるが、殆どがこっちを選択した経緯がある。
とは言え、沈んでいる方にはあんまし興味がない連中ばかりで、大半がアイオワ級3番艦・戦艦ミズーリを見に行く人ばかりです、

一部の通が潜水艦見に行くけど。



そう言う僕も戦艦ですがね。


だって、第97管理外世界じゃあ武蔵に沈められてて、沖縄の海底に行かない限り見られないもん。
オアフ島で記念艦として公開されているのは4番艦ウィスコンシン、降伏文書に調印したのもこのフネ。


双方の世界ともアイオワ級は4隻現存してるけど、知ってる方では戦没した2番艦ニュージャージーとこのミズーリの替わりが5番艦イリノイと6番艦ケンタッキー。
2隻沈めた同型艦(大和)が浮いている事と、ソヴィエツキー・ソユーズ級が就役したのでその対抗で完成させたのだ。


因みに知っている人は知っている、サクラメント級AOEの機関は第97管理外世界の方は未成空母ユナイテッド・ステーツのを使い、こっちはケンタッキーのを使ってたりする。

酷似している世界なのに微妙な違いが結構あるんだよな。



****



さて、アイオワ級3番艦ミズーリですが、特攻機がぶつかって凹んだ後とか、あんまし改装されてない所とかの色々な違いが多くて面白いわ、コレ。



同じ様に記念艦になってるウィスコンシンならば昔に細かく見せて貰えた事がある、それも普通は立ち入り禁止の所までな。
何で見せて貰えたかというと、去年の夏期休暇後半、高町家に遊びに行った後、陛下他の友達連れで、


藤堂の爺ちゃんこと進さんと一緒に見に行ったからだ、僕の事は「曾孫みたいなもんだ」と言って可愛がってくれている。


見学に来た相手が、海自の元提督で、このフネと最後の戦いを繰り広げた「武蔵」艦長の忘れ形見。
「やまと」の艦長を務め、統一戦争時には第二機動艦隊司令で樺太強襲作戦の指揮を執ったと、

これだけ並んだ相手ならそれ相応に丁重に扱わなきゃダメでしょ、と爺ちゃんを知っていた担当者が考えたのかして
えらく丁重な扱いだったのを覚えている。

何てったって、案内役として付けてくれたのが退役時まで乗り込んでいて、退役後にここに就職したベテラン下士官と来たもんだ。

対応も現役時代と変わらなかったって、藤堂の爺ちゃんが言ってた。



****



隣のボウフィンの回天四型を見てたら時間となりまして、ホテルへと帰還。


夕飯はアメリカらしい固え上に火を通しすぎた牛肉、茹でるときの塩がちと多かった海老、えらく甘い上に不自然な色のお菓子等々。
素材は悪くないのよ、牛肉は牛肉らしい味で肉食ってるって感じだし、海老は新鮮なのでプリプリしてるし。


それらを打ち消してるのが、大雑把な調理法と大味な味付けなんだけどね、まあ、団体さん用だからしょうがないけど。
…レストランとかの個人向けは悪くないし、美味しいのよ。

藤堂の爺ちゃんに連れてって貰ったお店、太平洋艦隊司令部御用達(現役の頃に教えて貰ったそうだ)の店は美味しかったし。





夕食後、どうも一杯飲みたくなった。愛用のスキットルはバレたらいけないので持ってきていない。
買うのは後々の手間を考えたらイヤだし、日本に戻って飲むのも時間が掛かってしょうがないし…。

『片道1時間も掛けて一杯飲むなんて事をするよりも、この前のように変身魔法で歳を誤魔化して飲めばいいんです』そだな、そうしよう。



そうして20歳中盤に化けて、やって来ましたホテルのバーに。


そこには見知った顔が二つ、引率のガンドルフィーニ先生と弐集院先生だ。

元々引率をする予定だった先生達が事故や身内の不幸で来られなくなった為、代理としてきているのだ。
デカイ学校だから出来る技だな。


ふむ、あの二人とはあんましじっくり話をした事がなかったな、よし、一緒に飲んでみようと


「隣、よろしいですかな?」と声を掛ける。


「ああ、どうぞ」少々の驚きを隠せない顔をしつつも答える。
そりゃあ、ハワイで、黒人に、ロシア人が、流暢な日本語で声を掛けられたんだ。当然と言えば当然だな。


そうして、バーテンダーに注文をする「メーカーズマークVIP、ダブルをトゥワイスアップで。後、こちらの二人にも」と、英語で。

「いえ、見ず知らずの方の施しを受けるつもりはありません」と、
日本暮らしが長くとも日本人ではないのできっぱりと断るガンドルフィーニ先生。

「まあまあ、せっかくのご厚意なんかだからね。ガンドルフィーニ君」日本人らしく、
相手にも気を遣う弐集院先生。


「所が、見ず知らずの方ではないんですよね」と、一言。それどころか夕食時にも会っているんですよ。

「失礼ですが、どなたでしたかな。私の憶えている限りではお会いした事がないのですが…」
そりゃ、姿変えているんだからね。魔力パターンやら調べたら解ると思うが、そんな事ここではしないしなぁ。


と、注文したグラスが三つ並ぶ。


それを軽く傾け、口の中で転がしながら飲む。

喉を潤わし「ここからは、酔っ払いの戯言を思っていただいて結構です。変身魔法で姿を変えたアンドレイ・コンドラチェンコと言っても簡単に信じては貰えないでしょうからね」

会話の始まりだ。



****



「何?君は変身魔法まで使えるのか?」とガンドルフィーニ先生。

高度な魔法らしく、その用途と相まって必然的に使える人間が少ないらしい。
これも、英才教育のお陰でございます。魔力容量の少ない一族に生まれた大容量の子。

弟妹達もそこそこの容量を持っているとは言え、初めての子だったので小容量コンプレックスを多少なりと抱えていた親族一同大いに期待し、色々と教えてくれたもんです、ハイ。

だがしかし、放出量の少なさだけはしっかり受け継いだので、大出力魔法や相対的に大出力が必要な儀式魔法は使えないけどな!
防御も工夫しない限り、薄めだしな!


「色々と出来るねぇ。あんな砲撃は出来るし、転移も出来れば変身も出来る。ホントうらやましいぐらいだよ」
と笑みを浮かべて、グラスを傾ける弐集院先生。

単なる貧乏器用って奴なんですけどね、出力の関係で。


「オマケに酒の趣味もいいと来た。なかなか美味しいよ、コレ」お褒めいただき光栄です。

「弐集院さん、それよりも…」「…ああ、それよりもだ。一度訊きたかった事があるんだが、いいかな?」
二人が真剣な顔をする。

ええ、機密事項とプライバシーに類する事以外なら答えますよ。
酒のコレクションの内容とかね。


「何で、君は隠そうともせず、我々に苦労を掛けるのかな。そして、何故あそこまで過激な攻撃に出るのか。それを教えて欲しい」
ああ、やっぱりね。この類と思った。

この世界は「あくまでも魔法は存在しない物」として扱っている。
そこにやってきたのは「存在して当然」の世界の住人だ、かみ合わなくて当然でもある。


それもあるんだが、僕の経験もあるんだな。コレが。


「まあ、僕が異世界の出身で、魔法を使った法執行機関の人間である事はご存じでしょう?」

「ああ、学園長から少し訊いた事がある」
最初は隠していたが、派手にやりすぎたときに否定派の何人かに話したそうだ。その一人がガンドルフィーニ先生、
弐集院先生は元から知っている一人。


「それが隠さない理由かい?でも、隠密任務とかの目立ってはいけない仕事もありそうだけどね」
痛い所を突っ込む弐集院先生。でも、ちょっと違うんだよな。

「まあ、そう言う部署もありますけど、こっちで言えば公安や刑事の仕事ですから。僕の所属していた部隊は機動隊やSWAT…、いや救援もしていたからESUか、そう言う所ですよ。やってた事はPKF…、いやISAF的な事ですが」


「ISAF?言う事は君が所属していた部隊が配置されていたのは…」
顔が引き締まるガンドルフィーニ先生、ええ、予想している通りの世界ですよ。



「紛争地域ですよ。それも分裂した多民族国家に宗教が絡んだ最悪のね…」



****



重い沈黙が走る。自分たちの教え子と変わらない歳の男がクソッタレじみた世界を見続けてきた事。
そこから導き出された生き方を、知らぬとは言え否定し続けていた事を。


「何で、君のお祖父さんはそんな所に初孫を送り込んだのかなぁ」呟くように、閉じていた口を開く。

そうでもしない限り、この沈黙に耐えられなかったのだろう。


「祖父さんが言っていました。「闇を見ろ、そこから何か見出せ。何も見出せないのなら魔導師を諦めろ」ってね」
こちらも沈黙が辛かった所だ、ある意味ありがたい質問だ。


「「闇を見ろ」か、その闇が紛争地域という訳か。確かに人間の闇がありありと映し出される場所だな」
グラスを煽り、新しいのを頼んでいる。

思い当たる事があったのだろう、出来れば思い出したくない所に。


「ああ、ガンドルフィーニ君、君そんなに強くないだろう?もうちょっと控えて…。それで…、アンドレイ君は何か見出せたのかい?」
細い目でこちらを見据える。


「ええ、人間っていいな。と思える事を見出せましたよ。闇の中だからこそ綺麗なものが際だって見えて、それを守ってみようと思いました」

「守る為の魔法なんだね、君の魔法は。その過激なまでの砲撃が抑止力となると」

黒いのに赤い顔でこちらを見る、あーもー、そんな強い酒飲んじゃって。
その「ジョージ・T・スタッグス」、アルコール度数が70度以上のバーボンだぞ?


「とは言え、闇もまた人間、僕もまた闇で光。って事で折り合い付けてますよ。陰陽清濁持って人間、綺麗なだけでは生きてはいけません」

「確かに」頷く弐集院先生。

「それに、毒は毒で対抗するのが最も効率がいいんですよ。ほら、抗ガン剤や放射線治療は本来身体には毒ですが、癌細胞には有効でしょ?そう言うものだと思って、僕を使い潰していただければいいんですよ。それが本業の人ですから」


****


一通り話したら何か、スッキリした。
先生方も言いたい事や"何故"が解消したようで、一緒にたわいない話が出来るようになっていた。


「へー、娘さんいるんですか。小学校に上がったばかり?妹の一人と同い年ですね」
「そちらの娘さんは幼稚園と、同い年の双子の弟がいますよ」

二人とも結婚していて、可愛い盛りの娘自慢をする。
こちらは同じぐらいの弟妹がいるので結構盛り上がる。

「アンドレイ君の所は大家族みたいだね。何人家族かい?」
「ウチだけで10人。祖父さん以下合わせて35人の一族ですよ。だからみんな集まるともう…」

特に初孫の僕は、7人の弟妹に15人の従弟妹のお兄ちゃんなので大変だったらありゃしない。
叔父さん叔母さん、いくら懐いていて、扱い慣れてるからって押しつけないで…。


「それだけいると賑やかだろうねぇ。…そう言えば、アンドレイ君」
「はい?」

いい感じに酔ってる弐集院先生が訊いてくる「彼女いるの?」って。
ああ、訊いて欲しくない事なのに…。


「いますよ。ただし、向こうに置きっぱなしですが…」
やけっぱち気味に答える、飲まなきゃやってられません。

「「ジョージ・T・スタッグス」トリプルフィンガー、ストレイト・ノゥ・チェイサーで!」
グラスを傾け、強烈に強い酒を飲む、チェイサー無しは喉に効く。

「それはご愁傷様だね」
こんな時は素に戻らないで下さいよ、ガンドルフィーニ先生。

「しかもですよ?告白されて、OKして、さあこれからだ!と言う所で事故でこっちに来てしまったんですよ!?五ヶ月という中途半端な時間しか経っていないので余計に未練が残りますよ!」
鬱憤が溜まっていたのかして、するすると口から出てくる愚痴。


タカミチやエヴァは、この手の話向いてなさそうだからなあ。
二人とも妻帯者だから恋愛関係の愚痴を言えるのかも。

「まあまあ、新しい出会いを探すとか…」
「彼女がね、結構ヤキモチ焼きで、怒ると滅茶苦茶怖いんですよ」

そんな気軽に言わないで下さい、あの人を知らないからそんな事が言えるんですよ。

「そんなに怖いのかね?君の彼女とやらは」
「同期最強です。局全体でも対抗出来るのは一握りだけ、血筋さえも最強です」

模擬戦をした時なんてまあ…、虹色魔力光に対して死の恐怖さえも感じました。
お母様と同じく、全力全開でぶつかってくるお人です、陛下は。

「君よりも強いとは…。想像も出来ないな」
「浮気するなんて恐ろしくて出来ません。それに…」

「「それに?」」
「先に告白されたとは言え、僕も気になっていましたし…、惚れていた弱みと言いますか…、ね」

…なんですか二人とも、その優しい目は。ニヤニヤしないで下さいよぅ…。


「いやー、若い若い!青春しているねえ、アンドレイ君!」
「君が早く彼女と再会できることと、その後上手く行く事を祈ってあげよう。がんばりたまえよ?アンドレイ君」




京都ではえらい事になっているというのに、酔っ払い二人に弄られながらハワイの夜は過ぎていく…。








あとがき:作中の日程・描写は以前私が実際に行ったときのを元にしています。
とは言え、7年も前の事なので細かい所を思い出すのに時間が掛かりました。





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