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No.4464の一覧
[0] 【全編完結】俺の名は高町なのは。職業、魔王。 (転生 リリカルなのは)[かんかんかん](2010/08/07 21:21)
[1] 目次[かんかんかん](2010/05/18 19:49)
[2] 一話[かんかんかん](2009/02/02 16:18)
[3] 二話[かんかんかん](2008/10/18 22:20)
[4] 三話[かんかんかん](2008/10/21 06:58)
[5] 四話[かんかんかん](2008/10/27 11:58)
[6] 五話[かんかんかん](2008/11/01 17:45)
[7] 六話[かんかんかん](2008/11/04 22:09)
[8] 七話[かんかんかん](2009/02/02 16:20)
[9] 八話[かんかんかん](2008/12/25 18:38)
[10] 九話[かんかんかん](2008/11/15 13:26)
[11] 十話[かんかんかん](2008/11/19 10:18)
[12] 十一話[かんかんかん](2008/11/22 12:17)
[13] 十二話[かんかんかん](2008/11/25 14:48)
[14] 十三話[かんかんかん](2008/11/29 18:30)
[15] 十四話[かんかんかん](2008/12/02 02:18)
[16] 十五話[かんかんかん](2008/12/09 11:38)
[17] 十六話[かんかんかん](2009/01/20 03:10)
[18] 十七話[かんかんかん](2008/12/12 13:55)
[19] 十八話[かんかんかん](2008/12/30 16:47)
[20] 十九話[かんかんかん](2008/12/18 13:42)
[21] 二十話[かんかんかん](2009/02/20 16:29)
[22] 外伝1:オーリス・ゲイズ、葛藤する[かんかんかん](2008/12/25 18:31)
[23] 外伝2:ある陸士大隊隊長のつぶやき[かんかんかん](2009/01/09 16:15)
[24] 外伝3:ユーノ・スクライアの想い出[かんかんかん](2009/01/09 16:16)
[25] 外伝4:闇の中で ~ジェイル・スカリエッティ~[かんかんかん](2009/01/07 16:59)
[26] 外伝5:8年越しの言葉 ~アリサ・バニングス~[かんかんかん](2009/01/14 13:01)
[27] 外伝6:命題「クロノ・ハラオウンは、あまりにお人好しすぎるか否か」[かんかんかん](2009/02/02 16:22)
[28] 外伝7:高町美由希のコーヒー[かんかんかん](2009/01/17 13:27)
[29] 二十一話[かんかんかん](2009/01/20 03:14)
[30] 二十二話[かんかんかん](2009/02/23 12:45)
[31] 幕間1:ハヤテ・Y・グラシア[かんかんかん](2009/02/02 15:55)
[32] 幕間2:ミゼット・クローベル [かんかんかん](2009/02/06 11:57)
[33] 二十三話[かんかんかん](2009/02/12 21:44)
[34] 二十四話[かんかんかん](2009/02/23 12:46)
[35] 二十五話[かんかんかん](2009/03/05 06:21)
[36] 番外小話:フェイトさんの(ある意味)平凡な一日[かんかんかん](2009/03/12 09:07)
[37] 幕間3:ティアナ・ランスター[かんかんかん](2009/03/27 13:26)
[38] 二十六話[かんかんかん](2009/04/15 17:07)
[39] 幕間4:3ヶ月(前)[かんかんかん](2009/04/05 18:55)
[40] 幕間5:3ヶ月(後)[かんかんかん](2009/04/15 17:03)
[41] 二十七話[かんかんかん](2009/04/24 01:49)
[42] 幕間6:その時、地上本部[かんかんかん](2009/05/04 09:40)
[43] 二十八話[かんかんかん](2009/07/03 19:20)
[44] 幕間7:チンク[かんかんかん](2009/07/03 19:15)
[45] 二十九話[かんかんかん](2009/07/24 12:03)
[46] 三十話[かんかんかん](2009/08/15 10:47)
[47] 幕間8:クラナガン攻防戦、そして伸ばす手 [かんかんかん](2009/08/25 12:39)
[48] 三十一話[かんかんかん](2009/11/11 12:18)
[49] 三十二話[かんかんかん](2009/10/22 11:15)
[50] 幕間9:会議で踊る者達[かんかんかん](2009/11/01 10:33)
[51] 三十三話[かんかんかん](2009/11/11 12:13)
[52] 外伝8:正義のためのその果てに ~時空管理局最高評議会~[かんかんかん](2009/11/22 13:27)
[53] 外伝9:新暦75年9月から新暦76年3月にかけて交わされた幾つかの会話[かんかんかん](2009/12/11 00:45)
[54] 継承編  三十四話[かんかんかん](2009/12/18 09:54)
[55] 三十五話[かんかんかん](2010/01/05 07:26)
[56] 三十六話[かんかんかん](2010/01/13 15:18)
[57] 最終話[かんかんかん](2010/01/31 09:50)
[58] <ネタバレ注意・読まなくても支障ない、ウンチク的な設定集① 原作関連・組織オリ設定>[かんかんかん](2009/10/23 16:18)
[59] <ネタバレ注意・読まなくても支障ない、ウンチク的な設定集② 神話伝承関連解説>[かんかんかん](2009/12/07 19:40)
[60] <ネタバレ注意・読まなくても支障ない、ウンチク的な設定集③ 軍事関連解説>[かんかんかん](2009/10/23 16:19)
[61] 歴史的補講[かんかんかん](2010/08/07 22:13)
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[4464] 二十六話
Name: かんかんかん◆70e5cdb8 ID:d667eea5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/04/15 17:07
※4/15、ご指摘によりオーリス嬢の反応のあたりを一部書き換えました。引用した言葉について、後書きに追記しました。




「「逮捕は良いけど、大事なあるじ様は放っておいて良いの?」か……」
「ゴメン、なのは」
「ごめんなあ、なのちゃん」
今日、街中でおきたルーテシア・アルピーノたちとの遭遇戦と、ほぼ同タイミングで海から来襲した空中飛行型ガジェット群の迎撃戦の、合同戦訓検討会の席上。
 うなだれているハヤテとヴィータを見て、俺は軽いため息をついた。
「そう落ち込むな。レリックは確保できたんだし、相手の戦力の一部が新たに判明した。重傷者はいない。最低限の成果は挙げてる。夜天の王の守護が本分のヴォルゲンリッターが、ハヤテの安全を全てに優先して考えることを叱れんよ」
「でもよぉ……」
ヴィータは浮上しない。コイツはこれで大概、責任感が強いからなぁ。軍規からいえば叱責の対象なのは間違いないし。もっとも、こちらの指示でヴィータをハヤテから離しておいて、ハヤテが重傷を負ったりしたら政治的に面倒なことになるから、ヴィータが六課武装隊の副隊長としてよりヴォルゲンリッターとして動くのを、あまり咎めたくないんだが。そう言っても納得はしないだろうな。

 ましてや、心配された当のハヤテは、自力で自身とヘリとをSランク相当の砲撃から守ってみせた。古代ベルカ魔法の研究者にして使い手の面目躍如と言ったところか。よくもまあ、あれだけ強固で大きな障壁を数秒のうちに組み上げたものだ。
 そして、光学ステルス能力をもつ格闘型の使い魔らしき存在と、炎系を中心とした魔法を操る妖精タイプの使い魔らしき存在。これに、増援を即座に呼び出せる召喚士が加わった集団。しかも戦端を開いた場所は暗所で閉所。その状況で、新人4人が訓練の成果を見せ、ヴィータのフォローとカルタス二尉の加勢があったとは言え、見事に相手を全員確保したのに、上官たる自分が逃亡の隙を作ってしまったのだから、真面目なヴィータとしては、なおさら責任を感じるか。あまり引きずられても困るし、しょうがないか。
 「確かに動揺して犯人を逃したのは失態だ。あとでグラシア殿から適当な処分を下してもらう。それでこの話は終わりだ。いいな」
ヴィータはまだうつむいていたが、ハヤテは俺に目を合わせて頷いた。あとはハヤテに任せるか。夜天の王による処罰という形式なら政治的な枷は緩くなる。ヴィータはそこまで気づいてないっぽいが。
「わたしも間に合わなかったし、むしろ、予期しない能力をもつ戦力との遭遇戦で死傷者がでなかったんだから、幸運と考えたほうがいいよ」
 フェイトがフォローを入れた。捜査係は今回、外回り中で戦闘には間に合わなかった。高速移動できるフェイトが、ヘリ砲撃をして逃走しようとした2人組を至近で確認したくらいだ。

 ヴィータの気持ちを思ってのフォローだろうが、あながち的を外した意見でもないと思う。正直、戦闘機人との遭遇戦があるとは予想していなかった。スカリエッティがなにを目標にするにせよ、管理局に正面から喧嘩を売るなら、極力戦力は秘匿し、状況を整え、場を選んで、一気にぶつけてくるだろうと思っていたからだ。いくら研究者とはいえ、その程度の計算はできる男だろう。おそらく、奴にとっても、今回の遭遇戦は想定外のものではないだろうか。


 だからこそ、随分といいタイミングで侵攻してきたガジェット群を、こちらの戦力と注意をひきつけるための囮だと分析したロングアーチの判断を、俺も支持した。アグスタのときと違って、天照との通信も隊内の相互連絡も、ジャミングを食らわなかったこともある。ハヤテにリミッター解除とリィンとのユニゾンを指示してガジェット群を任せ、短時間で殲滅させた後に、改めて、ハヤテやティアナ、ロングアーチの管制班に、再度の増援の襲撃に注意するよう指示したのも、その判断を踏まえてのことだ。
 それを受けたティアナが、念のために、レリックを幻術でごまかしてすりかえておいたのは、いい判断だったと言っていいだろう。仲間内にも内緒にしてたのは……まあ、顔や態度に出やすいのがいたしな。
 週2の夜間特別訓練でも思うことだが、彼女は相当に優秀だ。魔力量とか魔力制御技術とかとは違う部分で、高いポテンシャルを持っている。だからなおさら、この魔法世界ではコンプレックスを抱いてしまったんだろう。正直、前世の俺はあそこまで機転は利かなかった。経験と努力で這い上がっていった高みに、すでに彼女は才能だけで手を掛けている。
 …………必死にしがみついて。才能にも親にも見限られ、切り捨てられながらも未練を引きずって。良いように使われて苦渋を呑んで。気持ちを囚われたまま、ただただ戦いつづけて。あげく、生まれ変わってまでそれをひきずって。ティアナに偉そうなことを言えた義理じゃない、本当なら。
 ……………ほんとうなら……………………………………………。




 少し物思いにふけりすぎたようだ。オーリス嬢の咳払いで我に返って、次の報告を促す。内容は、今回の戦闘で接触した敵方の新戦力について。

 立ち上がったのは、グリフィス。レリックケースと犯人1名と2体をかっさらった無機物通行した奴と、ヘリを狙撃した奴及びその支援をしたらしい眼鏡の女について、磐長媛命の捉えた情報を解析したところ、身体構成要素の60%超を無機物が占めていたらしい。地上本部のメインコンピューター「思兼」は、過去のデータから、彼ら3名を戦闘機人と推定した。……能力から見るに、スカリエッティのデータにあった、セインとディエチ、あとおそらくはクアットロか。

 グリフィスは、その推定を踏まえ、敵戦力は、ガジェットを用いた物量を背景に、そのAMF展開能力下でも戦闘力を減じることの無い戦闘機人を主力とし、遊撃的配置として召喚士ルーテシア・アルピーノとその使い魔2体及びアグスタで確認された魔導師、という形ではないかとの分析を提示した。無論、現時点で確保できた情報に推論を重ねただけの分析である。が、部隊構成としてみた場合、それなりにバランスがとれているので、戦闘機人や魔導師の数が増えるなどのことがあっても、大筋で変化はないだろう、との推測を付け加えた。
 フェイトが、スカリエッティの犯歴から人造魔導師の投入される可能性を指摘し、グリフィスが、少女の発見報告と前後して、カルタス二尉から入っていた緊急連絡の内容を報告した。車の事故現場から、空の生体ポッドが発見され、その近くでガジェットドローンⅠ型の残骸が確認されたという。従って、確保した少女が人造魔導師の可能性が高い、と。
 少女については、収容した病院に、健康診断と身元確認を兼ねた検査を依頼しているので、明日にでも結果が出るだろうことが報告され、そのほかには特に意見も無く、グリフィスに、新たに得られた情報を元に、敵方の戦術予測と対応策を、各所と協力して練り上げるように命じて、その議題は終わろうとした。そこで。


 「あ、ちょっとええやろか」
ハヤテからストップがかかった。
「使い魔やて推定されてるうちの、ちっこいほうの子な、ユニゾンデバイスやないかと思うんよ」
「なに?」
 武装隊長としてハヤテは、すでに新人達の戦闘記録と報告書に目を通している。そして、記録されていた魔力パターンや、妖精とも言えるような外見から、その可能性を推測したらしい。
「使い魔いうには魔力パターンが違うしな。純粋な肉体をもったパターンよりは魔法プログラム体のパターンに近いんや。それに使うとる魔法もベルカ式の、古代や。ルーテシア言う子の魔法はミッド式やろ。ほかにレアスキルとも言われる希少な古代ベルカ式の魔導師がおって、今回は別行動しとったと考えられんことも無いけど、それよりはスカリエッティが古代ベルカの遺産に積極的に手を出して使っとる、って考えるほうが辻褄があうんや」
「……なにかほかに、古代ベルカに関するものの使用を匂わせるものがありましたか?」
 オーリス嬢が尋ねる。ハヤテは古代ベルカ式魔法の研究をしているが、当然、研究の過程で、古代ベルカ時代の文化や遺産なども調べることがある。下手なミッド人の研究者程度の知識はあるだろう。

「その、保護された子のことなんやけど。目がオッドアイやったやろ?」
「ええ」
? 気のせいか? 少し口振りが重いような……。
「右目が翡翠、左目が紅玉のオッドアイは、古代ベルカで「聖者の印」って尊ばれてたんや。……聖王陛下もそうやったって、伝承されとる」
「え」
フェイトがポカンと口を開けた。右目が翡翠、左目が紅玉のオッドアイ……保護された人造魔導師と推定される子供と一致する。
 ハヤテが口振り重く続ける。
「あの、実はな。内緒にしといてほしいんやけど、あの子のもとになった遺伝子提供者、心当たり、あるんや」
「誰なの?」
素早く我を取り戻したフェイトが尋ねる。
「その、な。10年くらい前に、聖王教会から聖王陛下の聖遺物が盗まれたんや。ウチでも最高機密で、知っとる人はほとんどおらん」
「……よろしいのですか? そのようなお話をされても」
「よろしゅうはないけど、その人造魔導師らしい子のことを考えると、黙っとるわけにもいかん。盗まれた聖王陛下の聖遺物はな、当時の聖王陛下のDNAが付着しとったんやないかって推測されとるんや」
「……っ。それって!」
「うん。……聖王陛下の遺伝子を元にしとる可能性がある。もちろん、遺伝子を弄った関係で、たまたま「聖者の印」が現れたんかもしれんけど、発現例の記録は歴代の聖王陛下以外やと片手で足りるんや。古代ベルカ帝国時代からの長い期間を通じてな」
「推測に推測を重ねてるから、断定しないほうがいい、か。だが……」
「うん。最悪の可能性も考えといた方がええんやないかと思う」
「そうだな。言っちゃなんだが、人造魔道師製造技術は、ある程度技術力をもつ組織なら成功できる程度に確立された技術だ。エリオがいい例だ」
「っ! なのは!!」
「ああ、貶める気はない。すまん。
 話を戻すが、スカリエッティほどの男が、確立された技術だけで満足するか? プラスアルファのなにかの要素が、あの子にあると考えたほうが自然だ」
というか、俺はハヤテの推測が正解だと知ってるわけだが。

「でも、なのちゃん。あの子を、その、生まれさせた人がスカリエッティとは限らんのとちゃう?」
「あの子供の逃走路を逆行してぶつかった、アグスタで確認された召喚士。あの子を載せていただろう車が、事故に遭ったしばらくあとに出現したガジェット群。
 …もともとスカリエッティは生命工学の権威だ。よそで人造魔導師を製造してそれを仕入れるよりは、自分でつくるほうが、却って手間もかからんだろう」
 場が重い沈黙に包まれる。聖王のクローン……その政治的意味はとてつもなく大きい。使いようによっては、次元世界全体が大混乱に陥りかねない。そして俺は、スカリエッティの研究所から式を通じて入手したデータで、子供が聖王のクローンであるというハヤテの推測が、事実だと知っている。さすがに、その存在がこちらの手のうちに転がり込んでくるとは思わなかったが。戦力的にはともかく、政治的には、正直、扱いに困るカードだ。

「ハヤテ」
「うん?」
「会議終了後、教会本部に向かってくれ。この件に関して話をしておいたほうがいい。明日には検査結果が出るだろうが……数日はあちらにいて、調整にあたってくれ」
「……そやね。そのほうがええな。ヴィータとリィンはこっち残っとって」
「いや、行きは護衛としてヴィータを同行しろ。帰りは任せるが、護衛は絶対につけろ」
「……固いなあ、なのちゃん」
「悪いな、教会の絡む公務だし、そっちでの公人として扱わせてもらう」
「……ん。しゃあないか。わかった」
「それと。聖王のクローンを使うことで、考えられる戦術の可能性を月読に検討させてくれ。聖王自身のもつレアスキルの確認もだ」
「うん」

 そこで、俺は声の質を切り替えて、室内の全員に告げた。
「あの子供と聖王との関連については緘口令を敷く。ハヤテの教会行きも、戦闘機人に関して教会が持っているかもしれない独自情報の確認とでも……ああ、そうだな。小さい奴が、ユニゾンデバイスの疑いがあるから、それについての調査と意見交換のほうが自然か。部隊内での説明は、そういう理由にしておくように。
 グラシア係長不在の間の武装係長業務は、ヤガミ係長補佐が代行、キチンと引き継いどくように」
「了解や」
「了解」


 ほかに、幻影をガジェットに混ぜてきた相手の戦法と、地下道内の監視機器群が全て「適確に」無効化されていたこと、戦闘機人2体を磐長媛命から隠蔽しきった相手のステルス技術などが、検討の対象に上がり、それぞれ対応を決定した。





 翌日。

 教会関連の病院に移送していた子供の検査結果と状態の確認、可能ならば質問による情報取得にフェイトが行くことになっていたのだが……。
「打ち合わせ事項も多いし、誰か、連れて行ったほうがいいな。グリフィスかギンガか……」

 うかつにも、その点の調整と決定を忘れていた。怯えてるだろう子供への質問にフェイトが行くのは、職務からも能力からも当然だが、聖王教会側との意見交換や場合によっては利害調整、病院の診断結果に対する質問や今後の診断日程の調整なども必要なことで、子供との接触の片手間でできるようなことでもない。
 本来、真っ先に同行すべき捜査係長補佐たるシャリオは、兼任している技術主任の業務でいっぱいいっぱいだ。

「ギンガは、新しく判ったこと絡みで、あちこちの陸士隊の捜査部門をまわってもらうのに、朝から出かけてるんだ」
「ふむ、なら、ロウラン准……」
首を後ろに向けて呼びかけた俺の言葉は途中で途切れた。視線の先には、いくつものウィンドウを開いて、鬼気迫る勢いでタイピングしているグリフィスがいる。俺はそのまま、視線を流して、オーリス嬢の席へと向けた。こちらをみていた嬢と視線があう。嬢は静かに首を振ってみせた。……まあ、ロングアーチのまとめたるグリフィスだから、情報面でいろいろ盛り沢山だった戦闘の翌日には、ああなるのはわからないでもない。しかし、そうなると……。
「部署違いだが、リィンを借りていくか?」
「うーん、武装係も昨日の反省と対応訓練で忙しいと思う」
「……だな」
 さて、どうするか、とため息を一つ落としたとき、横から声がかかった。
「よろしければ、私がご一緒しましょうか」
いつのまにか、すぐ傍に立っていた彼女に、俺は思わず、目をパチクリさせた。
「オーリス嬢?」
「……勤務中です、高町一佐」
おっといかんいかん。彼女は年下の俺に嬢呼ばわりされるのが好きじゃない。
「……コホン。あー、その。構わないのか?」
「ええ。半日程度なら、私が率先すべきこともありませんし、打ち合わせや折衝も絡むとなると、以前からその関係の業務でおつきあいのある私が最初に伺っておけば、あとが楽でしょう。それに」
「それに?」
「部隊長がご自身で動かれるよりはマシかと」
いや、だからその目の笑ってない笑顔は怖いんですけど。フェイトも空笑いして逃げるな。
「……あー、そうだな。ちょっと、豪華メンバーだが、頼めるか?」

 そういうことになった。

 もちろん、そのときの俺は、2人が焦点の子供を連れ帰ってくるとも、ましてやオーリス嬢が「ママ」と呼ばれてべったり懐かれるなどとも、欠片も思いもしていなかった。……結果からみれば、良かったんだろうな。










 目の前にはレジアス・ゲイズ。
 戦闘機人が出現した上に聖王のクローンと推定される子供が保護されるなど、事態がそろそろ煮詰まってきたとみて、一度、レジアスと基本方針の確認から今後の動きまで、きっちり打ち合わせておく必要を感じて、設けた席だ。


 まずは現状の確認から。
「前提になる事実は、大きく2つ。教会の預言と最高評議会の犯罪だ」
顔をゆがめるレジアス。いや、「預言」と聞いて胡散臭がる気持ちはわかるが、教会と管理局の大部分が事実と受け止める以上、俺たちも事実として扱ったほうが、検討するときには混乱しないんだよ。
「それくらいわかっている」
はいはい。わかってても気にいらないのね。でも、気にいらなくても私情を挟むなよ?
「……当然だ」
……まあ、即答できなくても、受け入れてくれるならいいが。
 さて、預言の言葉と、現時点であてはまりそうな解釈はこんな感じだ。

 手元の紙に文章と矢印を書き込んでいく。


古い結晶と無限の欲望が集い交わる地        → 不明、「結晶」はあるいはレリックかとも推測される
死せる王の下 聖地より、かの翼が蘇る        → 不明
死者達が踊り、中つ大地の法の塔はむなしく焼け落ち → 前半部不明、後半は地上本部の物理的崩壊か
それを先駆けに 数多の海を守る法の船も砕け落ちる → 次元航行艦隊の物理的崩壊か


……いまさらながら、ほとんどなにもわからんな。
「預言など、その程度のものだ」
まあ、そうかもしれん。とりあえず、頭の隅においとくとしよう。
「ふん」



 最高評議会の犯罪だが、①人造魔道師、戦闘機人などの違法研究を推進したこと②情報漏洩を行い、捜査官ら局員を殉職に追い込んだこと。 の2つが大きな内容だな。①についてはお前も絡んでるから、扱いが面倒だが、それについてはまた別途考えよう。
「罪から逃げるつもりはない」
お前としちゃそうだろうがね。管理局解体とその後の混乱を最小限に収めるには、お前の政治的才覚が不可欠なんだよ。悪いが諦めてくれ。

 ああ、それと、これも前提としておくべきことだな。次元世界全体の治安を守るのに、管理局は戦力不足、おまけに各世界の反発を買っている。要は、現状のシステムが限界に近づいている、ということだ。お前も実感してるだろ?
「昔からのことだ」
 あー、悪かった。お前にはいまさらのことだったな。でも、当たり前と思っていることも確認するようにしないと、意外な認識の違いがあったりするから。だから、その顔で凄むな。
「……凄んでなどいない」
はいはい。じゃ、それらを踏まえた上での、俺達の目的だが。

 とりあえず、管理局の解体。



 その手段として、現在の膿の幾つかを白日の下にさらし、捏造と思考誘導を絡めて、「海」とそれと関係の深い「本局」の部門に押し付けて断罪する。で、残った部分を、各次元世界と協力して再編成。
 基本はこれでいくとして、現状での各世界との関係はどんな感じだ?
「特に問題はない。本局に敵対してまで我々とのつながりを維持するかと言えば、そこまで追い込んではおらんから、当然ノーだ。が、有力な諸世界については、即断は難しいレベルまで関係を強化している。明確なリスクが新たに出てこないかぎり、友好的な関係と言える。お互い弱みをにぎりあっていることもある」
 ふ。情や義でつながった関係より損得でつながった関係の方が健全だ、とか言った奴がいたな。
 俺たちと関係の深い世界が、政治的に大きな影響を及ぼせる範囲は、総計で次元世界のどれくらいだ?
「8割は確実に超えている。残りの2割足らずも、孤立主義の世界を除けば、有事は大勢(たいせい)につくだろう。あとは追い詰められたと錯覚させて、逃げ道を示してやれば、雪崩をうって走り出すだろう。ここ2年ほどは、各世界間での政治的接触も頻繁になっていると報告がきている。群集心理も働くようになってきていると、分析班は見ている」
 あとはいかにパニックに陥らせた上で、気づかれないように、こちらの望む方へ走る向きを誘導してやるか、か。その辺の仕込みはすすめてるんだろ。
「うむ。今も言ったが、各世界間の政治的交流が活性化したこともあって、撒いた噂の増幅効果が高まっている。明確な利益、あるいは明確な損害を提示してやれば火がつくだろう」
 あとは大義名分か。まあ、その辺を仕掛けるにはまだ早いか。当面、今までどおり、焦りを見せずに関係強化、か?
「うむ」
 しかし、さすがの手際だな。5年程度でよくここまで持ってこれたもんだ。
「下地はすでにあった。当然のことだ」
その当然を確実に仕上げてみせることの難しさは知ってるだろうに。
「……」
ふふっ。余計な一言だったようだな。
「……」



 それじゃあ、今後の予定だが、
 計画じゃ、「中つ大地の法の塔はむなしく焼け落ち」「それを先駆けに 数多の海を守る法の船も砕け落ちる」タイミングを待って、混乱しているだろう局員にアジ演説。彼らを煽って、最高評議会、本局上層部、「海」の上層部に感情の噴出する方向を向けさせ、拘束する。捜査官がとりこめていたら、先頭に立てたいな。パニック心理を助長して、皆殺しにしてやるのも魅力的だが。
「……無用な血は流さんようにしろ。我々の目的は戦闘ではない」
 わかってるわかってる。ただ、拘束程度で済ませてもいいものかどうか、片付けてしまったほうが後腐れがなくないか、と思っただけだ。ああいう奴らの囀りは癇に障るからな……。
「…………」
 んで、管理局を破壊する戦力に対しては、武装隊と陸士隊、それにいくつかの工夫で対処。まあ、「危機」の具体的戦力がわからん以上、2正面作戦は危険な賭けだが、この辺は、実行までにもう少し詰めて、リスクヘッジの手を打とう。
 ああ、クーデターのタイミングにあわせて、各次元世界代表を集めて、クーデターへの賛同を公言させなくちゃな。公開意見陳述会が狙われるなら少しは楽だが、根回しは面倒な作業になるな。大変だが、頼むぞ? 前に話した聖王教会に音頭を取らせる件も、そろそろ真剣に検討してくれ。

 で、現時点でわかってるそれらしい「危機」の戦力だが、①スカリエッティとガジェット、戦闘機人、レリック②聖王のクローン。
 で、うちに来てる「夜天の王」に頼んで、教会のシステムで聖王のクローンを使う破壊工作の手段を、預言との組み合わせで推測してもらったところ、所在不明のロストロギア「聖王のゆりかご」が2位を引き離しての最大確率。「蘇る翼」ってのは多分これだろうって話だ。

 さて、これは推測の割合が強いが、スカリエッティの性格なら、次元世界の注目が集まる公開意見陳述会時に襲撃してくる可能性が高いだろう。ヴィヴィオ、ああ、保護したクローンな、あの子がこちらにいる以上、「ゆりかご」は動かないはずだが、聖王のクローンが一体だけという保証もない。
 

 ……実のところ、公開意見陳述会時に襲撃予定ということも、聖王のクローンが一体だけだということも、式神の情報でわかってはいるが。レジアスといえど、手札、特に陰陽術関連は隠しておきたい。物事に絶対はない。人の心にも絶対はないんだ。それを、俺は前世でたっぷり思い知らされた。そう、これでいい…筈だ。

 そんな思いを心に隠して、俺は続きの言葉を紡ぐ。


 ……だから、①「ゆりかご」を使用しての襲撃②機人・ガジェットによる襲撃+ヴィヴィオ確保襲撃③「ゆりかご」と戦闘機人、ガジェットでの襲撃、のそれぞれを、陳述会時と陳述会以外のタイミングで考えて、計4通りの戦術状況を想定して、迎撃案を検討する方向でどうだ? ああ、想定外の兵器、特にレリック絡みのやつの登場も、予想に入れておいた方がいいかもな。

 あと、いずれにせよ、AMF対応の兵装と戦術の急ピッチでの推進は必須だな。ハッキングとジャミング対策もいる。召喚士のことも念頭に入れとかなくちゃならん。


 うーん、こうなってくると、開戦のタイミングをこちらで決められないのは、あまり望ましくないな。初動で受けに回れば、場合によっては、そのまま押し切られる可能性がないでもない。
「……聖王のクローンをスカリエッティたちに回収させてはどうだ?」
ふむ?
「そうすればある程度、あちらが動くタイミングが読めるし、ゆりかごとやらが起動すれば、危機を演出できる。地上本部の独力で処理すれば、大きな示威効果がある」
うん、そうだな……不安要素としては、①ヴィヴィオが確実に「鍵」だとは限らない②「ゆりかご」の戦力評定が確定できないから、無力化が確実に出来るか、不安が残る。といったところか。
「うむ……」
うーん……。
「…………問題がもう一つあったな」
ん?
「子供を道具に使ってまで、やらなければならないことなのか、ということだ」
……………………なるほど。ソイツは気付かなかった。矛盾だな。
「矛盾だ」

 レジアスのまじめくさった、苦悩に満ちた顔を、我に返った頭で見ているうちに、やがてほころぶ俺の顔。他人から見た、自分達の愚かさ加減と苦悩の滑稽さに、不意に気づかされ、笑いが吹き出す。笑い出すと、止まらない。高らかに、明るく笑い出す。最初唖然と、やがて憮然と見ていたレジアスも、屈託なく笑う俺を見ているうちに、やがて肩を震わし、声を上げ、腹をゆすって笑い出す。声を合わせて笑い出す。俺たちは本当に愚かで間抜けで傲慢だ。全く、我がことながら度し難い、馬鹿馬鹿しい。笑える話だ。

 子供を道具に使わなくては、俺たちは目的を達成できないか? 否! 否だ! そんな誇りを投げ捨てるような真似を、誇りを生贄に捧げるような真似をしたとしても、釣り合わない見返りしか得られはしない。そんなことは、もう何度も経験して、骨に刻みこまれるように理解させられた。俺達の全てを振り絞り、異なる手段で結果を達成しよう。取り戻した誇りはもう捨てはしない。俺たちが今なお生き恥をさらしている価値を今一度、証明しよう。


「とりあえず、戦略をもう一度練り直しだ。しばらく忙しくなるな」
「ふ、望む結果のために相応の代価を支払うのは道理だ」
「違いない」
俺は、不敵な笑みを浮かべたレジアスと、もう一度笑いあった。 





 ……これで綺麗に終わればいい話だったんだがな。残念ながら、それで終わらせるほど、俺は自分自身に全てを賭けられない。真っ当な手段だけで勝てると、勝とうと、思いこめない。……思い続けられない。

 後日、六課の部隊長室で、オーリス嬢と簡単な打ち合わせを終えた後。

「ゲイズ三佐」
「はい?」
退出しようと、扉に向かう足を止めて振り返った彼女に、俺は無表情に告げた。
「ヴィヴィオの衣服に、完全機械式の盗聴器と発信機を仕掛けておけ。着用する衣服全てにだ。万が一にも、彼女の居場所をロストすることがないようにな」
「……! なぜそんなことを? 磐長媛命があるじゃないですか」
「今まで上手く行ったことが今後も永遠に上手くいくとは限らん。ホテル・アグスタのときを思い返せば、スカリエッティは、天照の情報をある程度入手し、対策を練っていると見るべきだ。奴は役立つ駒を放置するようなタイプじゃない。必要なときに回収にくるだろう。それが、奴の本拠地を特定するチャンスになる」
「……あの子を…囮に使うおつもりですか? あんな子供を?」
「貴官の優しさは否定せんが、副隊長としての責任を忘れるな。
 わざと攫わせるつもりはない。対策はとる。だが、相手がこちらを上回る可能性は、常に想定しておけ。希望的観測で物事を量るな。何度出し抜かれても、最後には勝利するための準備を怠るな」
「……っ」
「返答は?」
「……わかりました」
「結構。退出してよし」
「……っ! 失礼、します」
 強く歯を食いしばり、関節が白くなるほど拳を握っていたオーリス嬢が踵(きびす)を返し、静かに部屋から出ていく。それを見送って、俺は椅子の背もたれに体重を預けると、息をはいた。

 ……知っていながら知らない振りをし、それを隠すために子供の道具扱いを命じる……笑える話だ。勝つのはいつも、正義ではなく、正義の皮をかぶった悪党ってわけだ。
 もっと笑えるのは、親しい人間を自分の都合で傷つけて、それに自分が傷ついていることだ。

 抑えきれなかった感情が口から零れ落ちた。
「ままならんもんだな。……いや、これも業か」
陰陽師たる俺が、業……転生といい、本当に笑える…………。


 ………レジアスが、今、俺の下した指示を知ったとしても、苦い顔をしながらも、結局は受け入れるだろう。あれはそういう男だ。責任から逃げるような真似はしない。だが、順調に行けば使わずに済むし、そうなれば、奴も知らないままで済む。なら、俺の独断で収めておいていい。自分の価値を、誇りを、自分で信じず投げ打つような真似をするのは、俺独りでいい。オーリス嬢もいちいち不愉快なことを他人に話すような性格じゃない。…………そう、それでいい、は、ず、だ。


「……「説明はするな。味方であれば貴方を理解し、敵であれば貴方を理解しない」か。まさしくその通り。正しいな、まったく」
だが、なんの意味もない。なんの救いにもならん。その思いは言葉にせずに首を振った。

 弱音など吐いてもどうにもならん。理想は理想として持ちながらも、誇りも自分自身も投げ打って、想定されるあらゆる状況に対する手を、打てるだけ打っておく。それが俺にとっての現実で。俺が求めるものを達成しようとするなら、目を逸らさずに見つめなければならないものだ。


 俺はウィンドウを開くと、想定する状況に穴がないか探すための何十回目かのシュミレーションを行ないはじめた。







■■後書き■■
 ちょっと特殊な表現を試みました。歪みが噴き出しはじめた人間の心の描写を一人称で、というのが難しく、試行錯誤です。陰陽師だと業や転生を笑える、と言う理由は「ウンチク設定」の1、神話伝承用語の「業」を参照ください。

※「情や義でつながった関係より損得でつながった関係の方が健全だ」
   ……典拠不明。こんな内容の言葉を(言い回しは大分違うと思う)見たか聞いたかしたんだが、はて。マキャベリか韓非子あたりが言ってそうな気もするが。
※「説明はするな。味方であれば貴方を理解し、敵であれば貴方を理解しない」
   ……典拠不明。メモ帳に残ってた言葉。多分、自作の言葉ではないと思う。けどHITしなかった。
  4/15追記:坂の上様より典拠について指摘あり。アメリカの啓蒙教育家エルバート・ハバードの言葉です。正しくは
          「説明はするな。 味方であればあなたを理解し、 敵であればあなたを信用しない。」
           この言葉で検索するとたくさんHITしました。坂の上様、ありがとうございました。ちなみになのはさんは間違えて覚えているということで、ひとつよろしく。


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