第四話 前篇
「はやてーーーー！」
ヴィータ副隊長が叫びながら大空へと旅立った
だから見えてるって…水玉
勝負の判定に疑問が尽きない
とはいえ、オレは副隊長の様に飛んでいけない
魔力尽きたってのもあるけど……ぶっちゃけ背中痛すぎ
座り込んだまま、空を見上げる
雲が流れていく様子を見ていると腹が減ってきた
「あ～、麺類食いてぇ」
≪えらく漠然とした願望ですね≫
「おぉ、おはようファルゲン」
≪さっきぶりです 相棒≫
魔力不足により待機状態に戻った相棒がピカピカ光る
こうやって見てると、安物のオモチャみてぇだな
≪非常に不快です。不貞寝します≫
「どこの世界に不貞寝するデバイスがいるんだ！？」
≪今現在、相棒の目の前に存在しています≫
「やっぱりオレの事嫌いだろ？オマエ」
≪ワタシは武器なので好意などという感情は理解できません≫
本格的にスネた様だ
以前もこういう風にスネた事があったのだが、その時は機嫌を直すのに5日掛った
…なんか子供がスネてるのと大差ない気がする
強いデバイスってのは総じて子供っぽいモンなのか？リインも似たようなもんだし…
あ、でもアイゼンとかレイハさんは大人っぽいしなぁ
今度AIログ見て調整するかなぁ…
「東く～～～ん」
「ん？」
そんな事をボーっと考えていると、空から白いバリアジャケットを纏った高町が降りてきた
「東君、大丈夫？」
「うむ、ストライプは神だ」
「だ、大丈夫そうだね」
女性魔導師全員に言いたいのだが……スカートなのは何故なんだ？
あれか？どうぞご覧下さいってなもんなのか？
ストライプのデルタゾーンを思い出し……タマリマセン
高町は、意味が理解できないなりにリアクションしているが
キミの下着の色だという事に気付いて欲しい
ダイレクトに見るのも好きだが、恥じらう姿を見る方が萌える
きっとオレだけじゃないと信じている（そうだろ諸君！）
何か言いながら手を伸ばし、オレを引き起こしてくれる高町を見ていて思う
六課内でも、その容姿で女性局員の人気を獲得しているユーノ先生の彼女との噂が絶えないが
二人の様子を見てると……ユーノ先生の片思いに見える
まぁ、高町も少なからず好意を寄せているのは分かるのだが
どっちかと言うと、友人や幼馴染に向けるようなものだと感じる
先生の押しが弱いってのもあるが……幼馴染とはいえ異性なのだから少しは考慮してあげて欲しいものだ
「なぁ、高町」
「ん？どうしたの？」
「『東なのは』にならないか？」
「にゃ！？じょ、冗談でそんな事言っちゃダメだよ！」
「む？『なのは・シュテルン』のが良かったか？」
「そういう事じゃなくて！」
「ははははは、あんまり怒るとおばさんになっちまうぞ？」
「もう！失礼だよ！」
高町に「冗談だ」と笑いながら答えつつ思う
（むぅ、オレのハーレム計画の中に 高町の加入は欠かせないのだが……
毎回毎回こんな感じで断られる
なぜだ？自然な流れだったというのに…
あれかな、やっぱりバラの一つでも持ってきたほうがよかったのか？）
≪（相棒、ワタシはアナタが時々分からなくなります）≫
「（奇遇だな、オレもだ）」
いけるかな？と思うと、体が勝手に動き出すのだ
成功率は０％！絶賛記録更新中！！………アレ、しょっぱい水が目から溢れてくるよ？
「にゃ！？どうしたの東君！？」
「いや、何でもない。何でもないよ高町」
ふらつくオレを見て、高町は慌てて肩を貸してくれる
女性独特の柔らかい感触を近くに感じる
ん～～、もう少しボリュームが欲しいな……ドコとは言わないけど
贅沢は言いませんよ？紳士ですからオレ
無言のオレを見て、高町が心配そうに聞いてくる
「大丈夫？あんまりにもツライなら、シャマルさんに来てもらおうか？」
「い、いや、ソコまでしなくても…
それに向こうに行ったら見てもらうんだし、いいよ別に」
「ホント？本当に大丈夫？
あっ！私が飛行魔法で連れて行ってあげようか？」
「だ・か・ら」
何がそこまでさせる？
フラグか？……いや、さっきバッキリ折られたばっか…あ、心の汗が
く、このままではオレの心が持たん！
（やむおえん、この感触が離れるのは惜しいが…）
オレは高町から離れると、出来るだけ真剣な表情で話しかける
「高町、一人で大丈夫だから先に行っといてくれ」
「え？でも……」
「大丈夫だって
心配掛けて悪いな」
「あ…」
なるべく元気を装うために、キモイぐらいの爽やかスマイル！
……うん、きっとこんな顔してるヤツ見たらぶん殴りたくなるね。間違いなく
（失敗だったかな？高町も下向いちゃったし）
もしかして、余りにもキモイ過ぎて魔王を降臨させてしまったか？！
「た、高町？」
「～～～～～っ」
覗きこむと、もっそい勢いで後ろ向かれました
さすがに傷つくぞ？オレでも
……これ以上ココに居ると高町が爆発しそうだ
オレは空腹でフラつきながら高町を追い越す
「一人で歩いて行くから、お前は先に戻っとけ」
「だ、だけど…」
「ふぅ……高町隊長！」
「は、はい！」
突然声を張り上げたもんだから、ちょっと喉痛い
向こうは声量でびっくりしながらコチラに振り返り…
ゲ！？薄ら涙が……
泣くほどイライラしましたか！？そんなにキモかったですか！？
このままではミッドの流星にされかねないので敬礼をして告げる
「レイナード空曹長は、只今より本部に帰還し
シャマル主任医務官による治療を受けて参ります！
では失礼致します！！」
「あっ！」
ニゲロニゲロニゲロ
残り少ない体力を振り絞り、オレは虚実の街中を走り去った
50m走ったらコケタのは御愛嬌という事で………イタイ
なのは SIDE
ヴィータちゃんとの模擬戦が終了してすぐ、私は東君の様子を確認した
やっぱりランク的にも圧倒的だから、東君が無理してないか心配だった
ヴィータちゃんは、物凄いスピードではやてちゃんの所に飛んで来ていたから大丈夫そうだけど
東君の姿は一向に見えない
（どうしたのかな？ドコかケガでもしたのかな？）
非殺傷とはいえ、アームドデバイスはそれ自体が武器の役割を果たしているからケガがないとは言えない
戦っていた本人に聞こうと思うんだけど……
「はやて～、なんで引き分けなんだよー！」
「まぁまぁ、それは後で説明するから落ち着きヴィータ」
「納得いかねぇーーー！！」
あの調子だとしばらくは無理そうだ
私は、後の事をシグナムさんとフェイトちゃんにお願いして
レイジグハートと共に模擬戦場へと飛び上がった
…………少し飛んでから気付いた。通信すればよかったんじゃ？と……
（な、なにかあった時に通信だと対処できないし…
そう！すぐに治療とかしないといけない場合だってあるしね！なのは間違ってない！！）
自分にそう言い聞かせながら東君を探す
映像の感じだとこの辺なんだけど……いた！
「東く～～～ん」
自分でもびっくりするぐらい大きな声に、東君は静かに反応した
空を見てボーっとしてたけど大丈夫かな？
「東君、大丈夫？」
「うむ、ストライプは神だ」
「だ、大丈夫そうだね」
意識はしっかりしてるみたいだけど……我慢してるんじゃないかな？
いつも通りにオドけて見せているけど、どこか辛そうだ
それに突然黙りこんで、なにかを考え込んでいる
さっきの模擬戦の反省でもしているかとは思うけど心配になる
思いっきり背中からぶつかっていたし、東君の魔力は元々そんなにない
もしかしたら無理をして魔法を使っていたのかもしれない
病み上がりに模擬戦っていうのもどうかと思うけど……
「東君、立てる？」
「………」
東君はなにも答えずに私の手をとる
ちょっと重かったけどなんとか引き起こす事が出来て良かった
でも、立ち上がった東君はやっぱりなにかを考え込んでいる
その真剣な表情はとてもカッコよくて……そのちょっと見惚れてしまった
私の知り合いの中で、男の人はクロノ君、ユーノ君ぐらいなので少しドキドキする
六課にも男性局員は居るのだけれど……それは同僚であって知り合いとは違う気がする
「なぁ、高町」
「ん？どうしたの？」
突然話しかけられて驚いたけど、どうにか表情に出さずに済んだ
でも 東君の次の言葉には、たとえ万全の状態でも反応してしまったと思う
「『東なのは』にならないか？」
「にゃ！？じょ、冗談でそんな事いっちゃダメだよ！」
「む？『なのは・シュテルン』のが良かったか？」
「そういう事じゃなくて！」
ドキドキが止まらない
いつもこういう冗談を言っては、私やシグナムさんを困らせているのだが
さっきまでの表情を見ていたせいで動揺してしまった
（冗談なの！いつもの冗談なの！落ち着くのよ、なのは！！）
自分の意思とは関係無くドキドキする心臓に向かって言い聞かせる
落ち着かない目線を東君に向けると、ニコニコしながら
「ははははは、あんまり怒るとおばさんになっちまうぞ？」
「もう！失礼だよ！」
「悪い悪い、冗談だってば」
まだ19歳の女の子を捕まえて「おばさん」は酷いよ？
でも、そんな東君の一言で さっきまでのドキドキは何処かへ飛んで行った
よかった。あのままだったら、苦しくてどうにかなっちゃいそうだったから…
ふと視線を戻すと彼は涙を流していた
え！？どうしたの？どこか痛いの！？
「にゃ！？どうしたの東君！？」
「いや、何でもない。何でもないよ高町」
私の手を離し、フラフラしながら歩き出そうとする東君
あまりの弱弱しさに、私は慌てて肩を貸した
ドコかすまなそうに微笑んだ彼は、また空を向いて歩き出す
私もそれに合わせて歩き出す
フェイトちゃんや他のみんなとは違う、ガッシリとした男の人の体に触れて
またドキドキしてきた
か、顔も近いし……
でも彼の方は、そんな事なんて気にもせず難しい顔をしていた
やっぱりドコか痛めたのかもしれない
「大丈夫？あんまりにもツライなら、シャマルさんに来てもらおうか？」
「いや、ソコまでしなくても…
それに向こうに行ったら見てもらうんだし、いいよ別に」
お母さんが言っていた
男の子は女の子前だとガマンしちゃう事があるんだって
難しい顔が、だんだんと辛さを我慢しているように見えて心配になってくる
「ホント？本当に大丈夫？
あっ！私が飛行魔法で連れて行ってあげようか？」
「だ・か・ら」
無理させちゃってるのかな？
私の閃いた『飛行魔法で運べば無理させずにすむ作戦』もあっさり拒否される
大丈夫かな？さっきからあまり話しかけてこないし、いつものような冗談も最初以外していない
（どうしよう……はやてちゃんに連絡してシャマルさんに来てもらおうかな？
でも、それはイイって言われちゃったし…
私も多少は治療魔法はできるけど、そんなに効果ないし…）
私が一人でアレコレ悩んでいると
突然、肩の重さが消える
驚いて東君を見ると、なにか決心をした様な顔で私を見ている
「高町、一人でも大丈夫だから先に行っといてくれ」
「え？でも……」
「大丈夫だって
心配掛けて悪いな」
「あ…」
ドキン
優しい笑顔だった
お母さんと居る時のお父さん、忍さんと居る時のお兄ちゃんの様な優しい笑顔
その笑顔がとても綺麗で、私の胸はまたドキドキ鳴り始めた
（はぅ ドキドキするの……とっても優しい目で見られて胸がドキドキしちゃうの）
あまりの動揺に、言葉使いが昔に戻ってしまう
（ハッ！？落ち着けなのは！東君は心配させない様に笑いかけてくれただけなの！！）
顔が赤くなっていくのが分かる
どうしてだか分からないけど、私は下を向いて必死に自分を落ちつけようとした
「高町？」
「～～～～～っ！」
俯いた自分を覗き込んでくる東君の顔を見て、ドキドキが急上昇
これ以上は耐えられなくなり、慌てて後ろを向いた
（おおおお 落ち着くのよ！心配しようとして心配されちゃダメなの！！）
静かに深呼吸をし、熱くなってきたココロを鎮める
（このままじゃ迷惑を掛けちゃう……冷静に、冷静に…）
そう言い聞かせ、いざ振り返ろうと思っていると
「一人で歩いて行くから、お前は先に戻っとけ」
「だ、だけど……」
私が変な事しちゃったから怒ってしまったのかもしれない…と思う『高町なのは』と
でも、無理しているなら止めないといけない……と思う『高町教導官』の二つの思いに迷っていると
「高町隊長！！」
「は、はい！」
そこには真剣な表情の『レイナード空曹長』が居た
大きな声だったので、今は別な意味でドキドキしている
ちょっと驚いて振り返ったため、涙が出ている
私の顔を見て少し驚いたが、また真剣な表情に戻り
「レイナード空曹長は、只今より本部に帰還し
シャマル主任医務官による治療を受けて参ります！
では失礼致します！！」
「あっ！」
引き止める間もなく、東君は走り去って行った
突然の事に、ビルの陰に消えて行く背中をつい見送ってしまった
（私が変だったから心配かけちゃったのかな？
無理して走り去っていったのは、私に気を使って？）
魔力で作りだされた街の中に一人立ちつくし
未だに鳴り止まない胸のドキドキがなんなのか分からない
ドキドキし過ぎて痛む胸は、しかし決して不快ではなかった
私は彼の消えて行った方向を不思議な気持ちで見つめていた………
おまけ
「レイハさーーん」
≪どうしました？≫
「ひとつ聞きたいんだけどさ」
≪禁則事項に触れない事であれば、なんなりと≫
「ウチのファルゲンもさ、レイハさんの様にお淑やかになって欲しいんだけどさ
どうしたらいい？」
≪彼女はアナタに随分と尽くしている様ですが？≫
「う～ん、それはそうかもしれないんだけど……って待って！アイツって女なの！？」
≪えぇ、初めての紹介で本人から聞き及びました≫
「し、知らんかった」 orz
≪それもどうかと思いますが…≫
「ん？って事はレイハさんも女性？」
≪禁則事項です≫
「え！？ソコが禁則！？」
後書き
はい、なんだこのラブコメ！（作者が一番混乱しています）
当初の予定では、接点の少ないフェイト嬢にこの役が予定されていたのですが
接点無いのにコレはないだろ？ってか前 興味はあるけど口説きはしないって
独白してたし…
という事を思い出し、急遽なのは嬢が抜擢された次第です
書いてる内にドンドン暴走しだし、筆者の手を離れて好き勝手しやがりました
こうやって読み返すと………こっぱずかしい！！なんだこのギャルゲ！
作風がコロコロ変わると印象が良くないのは分かっているのですが、
ウチの子達は言う事聞かない子が多くて困ります（ｵｲ
今回だけのラブコメだとは思いますが、またこんな回があるかもしれまん
自分では苦手な分野に入るので微妙ですが
みなさんのご意見、ご感想を頂きたく思います
こんな作品ですが、今後ともよろしくお願いします
ではまた次回 （＞ｗ＜）ノシ
※誤字があったので、修正しました
ご報告、ありがとうございます