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No.4426の一覧
[0] たんぽぽFC(廃部にしようよ!)[あ](2010/06/05 13:50)
[1] ポスター貼ろうよ![あ](2010/06/05 14:32)
[2] すっきりしようよ![あ](2010/06/05 18:52)
[3] ちょっとは考えようよ![あ](2012/05/05 22:49)
[4] お礼をしようよ![あ](2009/09/26 20:40)
[5] ライバルは一人称で行こうよ![あ](2012/05/05 23:18)
[6] 入部しようよ![あ](2012/05/06 13:39)
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[4426] たんぽぽFC(廃部にしようよ!)
Name: あ◆2cc3b8c7 ID:95e0420a 次を表示する
Date: 2010/06/05 13:50



地球とよく似た星にある、日本と呼ばれる国のある高校にとっても弱いサッカー部がありました。

そこには専門の監督など当然おらず、名ばかりの歴代幽霊顧問のもと、
それなりに汗を流し、暗くなったら帰るという単調な作業が繰り返される。
去年から一応サッカー経験者の新米教師が顧問を務めることになったのだが、
長年培ってきたゆる~い伝統が変わる事は無かった。


そんなユルユルのサッカー部には部員が集まることも当然なく、
この弱小チームは試合に勝つどころか、試合にすら出たこともない有様であった。


そんな情けないサッカー部であったが、新任顧問がチームを率いることになって丁度二年目を迎える四月、
二人の新入生が部室の門をたたくことになり、
自然淘汰される筈のサッカー部の運命は、全く予想外の方向へと進んでいく事になる・・・




【予想外の入部】

入学式から数日、始まりの季節の中で期待と不安で表情が硬い新入生が多く見受けられる校内の廊下を
欠伸しながら、だらだらとやる気無く歩く若い教師は、自分が顧問を務めるサッカー部の部室を嫌々目指していた。
彼の前任の顧問が定年して学校を去ったため、一年前に後任をやむなく引受けたのだが、
部活動に対する積極性はゼロで、部員が全員卒業して一人も居なくなったのを良いことに、
部員ゼロのサッカー部を廃部若しくは休部に持ち込もうしていた。
彼は面倒で無償の奉仕を求められる部活動を続ける情熱を欠片も持ちあわせていなかった。


もっとも、世の中は不条理に満ちており、彼の目論見が易々と通るようなオイシイ展開は用意されていなかった。



■■


う~ん、俺の目の前にいるクソガキ二人はなにかな?
『俺、サッカー部に入ります』『私、マネージャーやります!』とかのたまう気か?


またまた、ご冗談を・・・・
ようやく『部員ゼロなら廃部にしていいよ』ってメガネ教頭に許可を貰ったっていうのに、

そうか俺の成功をこいつ等は、少年法とか色々な特権を振りかざして奪う気だな?
こいつらは俺から自由な時間を奪い・・・労働という名を借りた苦役を強いる資本主義が生み出した悪魔に違いない!


そんな奴らに屈する訳にはいくまい。戦おう!我等プロレタリアの熱き想いを糧に、
断固、ホワイトカラーナンチャラに抗議し続けよう!!


「先生、それってホワイトカラーエグゼンプションじゃないですか?」

おお、えっと「佐藤ユキです」うん、佐藤はちゃんと新聞を読んでて偉いな。
先生、感動した!だからもう帰っていいぞ。


「いや、意味わかんないし。私ここのジャーマネになるために来たんですよー?」


いや、先生も意味がわからないから安心しろ!
・・・と、そもそも、我がサッカー部は所属する部員が見ての通りゼロなんで廃部か休部がほぼ決定済み。
ようやく、去年の不良債権ではなく、三年達が卒業してくれたおかけで、
目出度く部活再生法が適用され、清算されることになったという訳だ。悪いが諦めてくれ!



「えっと、タケの主張としてはもう廃部だからジャーマネはいらない
 あきらめて帰って、サッカー部のことは忘れてくれってことでいいの?」


おいおい佐藤、いきなり先生を呼び捨てとはなかなかいい根性してるなぁ・・・
まぁ、いいや、一先ずはその問題は後に置いておこう。
そうそう、質問の方だが、答えはイエスだ。サッカー部はもう終わりで、話も終わり!

お前等は家に帰るし、俺も家に帰って寝るOK?


■■



『あきらめちゃ駄目だ!!部員がいないなら集めればいいじゃないですか
 大丈夫です!ボールだけが友達と呼ばれた僕がいれば全国だって狙えます!』


『うわぁー、本物だ・・』

うん、佐藤、俺も多分お前とおんなじこと考えてるわ。
ボールだけがってそりゃないよな。確かにここまで暑苦しいと友達いなそうだが、
さすがに自分で『ボールだけが・・・』なんて人としての何かが欠落してないと言えないよな?


『先生、僕・・浅野ソウタが必ず全国へ連れて行って見せます。一緒に頑張りましょう!』

うわっ、コイツ、俺らの絶対零度の冷たい視線を強引に勢いで突き抜けやがった・・
とりあえず、コイツとだけは一緒に頑張りたくねぇーよ。


『あ、わたし帰りにスーパーで買物してかないといけないんで
 今日はもう帰りますね。とりあえず話は明日でいいですよね』

「そうだな。もう5時過ぎだから早く帰らないといけないな。気をつけて帰れよー」


『先生、佐藤さん何言ってるんですか!このサッカー部の危機に
 そんな悠長なことなんて言っててどうするんですか!まずは具体策を・・』


『じゃ、タケちゃんまた明日ねー』
「うぃー、別に来なくてもいいからなー」

『ちょっ、ちょっとぉー!!待ってくださいよ!先生!佐藤さん!?』





大声を上げながら部室をいそいそと出て行く顧問とマネージャー候補を呼び止める熱い少年だったが、
そんな面倒な人間に付き合う気の無い二人の去り足を速めるだけで、引き止めることは出来ない。
だが、それでも浅野ソウタは挫けない。困難な事態に直面して歩みを止めるほど彼のサッカーに対する情熱はちっぽけなものでは無い。

立ち塞がる壁が高ければ高いほど、彼のサッカーに対する情熱は熱く燃え上がるのだ!
周りの人達がいい加減にしてくれと、ウンザリしてしまうほどに・・・




■先生崩壊■


学生の本分たる勉学に励む生徒達に、情熱的な指導を行う活気に溢れた授業。
そんな光景と最も掛け離れた光景をサッカー部のやる気の無い顧問でもある若い教師は生み出していた。

彼の指導は『自分のことは自分で、勉強も自分でよろしく!』という自主自立の精神をモットーにしており、
教師の熱意や指導力と言った者になんら価値を見出さないスタイルで、非常にシンプルな授業を生徒達に行っている。

生徒達も、この方針に対して敢えて文句を言うようなことも無かった。
勉学に励みたい者は参考書などを持参して、自分勝手に知識を増やす努力を怠らなかったし、
そうでもない生徒達は、疲れるその他の授業の合間に訪れる一時の休息として考え、
騒がしくならない程度に近くの席にすわる友人とぼそぼそと会話をするか、
睡魔に誘われるまま眠りの世界の住人になるなど、各々好き勝手なスタイルで授業を流していた。


そんないい加減な授業では教師に質問するような生徒など居ないように思えるのだが、
意外な事に、やる気が感じられない教師が行う授業にも関らず、手を挙げて質問する生徒は少なくなかった。



■■


「えー、であるからして・・」『センセー』

どう見ても聖職者とは思えないやる気の無い声で、教科書を丸写ししただけの板書を読み上げる教師だったが、
一人の女子生徒に呼びかけられたので、一旦、単調な読上げ作業を中断し、
質問に答えるために、黒板から生徒達が座る方向に振り返る。


そこには、見覚えのある少女が手を真直ぐに伸ばしながら満面の笑顔で最前列に座っていた。


「何だ、佐藤じゃないか?俺のクラスだったのか。全然気付かなかったよ
 まぁ、いいや。なんか質問でもあるのか?基本的に教科書棒読みだから
 先生に聞くより、教科書もう一回自分で読んだほうがよく分かると思うぞ」

質問する前に、する意欲を全部奪ってしまいそうな担任教師のとんでもない発言に
挙げた手を緩やかに下げ、額に押し当てながら眉間にちっちゃな皺を寄せて困惑した顔をする佐藤ユキは、
何とか気力を振り絞って、当初行おうと思っていた質問を目の前のふざけた男に投げかける。


『うーん、ちょっと別の質問がした方がいいような気もしてきたけど・・・
 とりあえず、最初の質問しようかな?センセーさっきから8回も
『であるからして』って使ってて、なんかおっさん臭いけど年幾つ?』

「おっさん臭いだと!センセイはなぁ、今年24歳のバリバリヤングマンなんだぞ!」

授業とは全く関係ない少女の質問であったが、最近、学生時代と比べて体力が低下してきた気が少している担任教師は、
その思いを打ち消さんと、自分は若いと力一杯主張し、『おっさん認定』に反論したのだが、


『タケー、24何て俺らから見てもうおっさんだって』『えー以外に若いって24なら』
『なになに、夕菜って意外とおっさん趣味なんだー』『それ以前にヤングマンはないだろ』
『ここは俺に任せろバリバリ~』『やめてぇ~!』

そこはかとなくオッサン臭さが漂う反論であったため、他の生徒からもおっさん扱いされ、
そんな事はないと言う擁護発言をする生徒が出ると、また別の生徒がその擁護した生徒に対し、
担任教師に気でもあるのか?と、からかう発言を好き勝手にし始めて教室は一気に騒がしくなる。


『じゃ、あたしも質問!タケちゃんって彼女いるんですかー?』
「ふっ、俺は一人の女に縛られることなど・・『やっぱいないんだー、あははっは』」

『タケ、ダッセーぞ!』
『タケちゃんがんばー、テストに出す問題教えてくれたら一回だけデートしてもいいよー』

「うるさいぞ、太田おまえ明日までに自習用のプリント作ってみんなに渡せよ
 それと市川、週末は暇だからいつだっていいからな!なんなら帰りにでも・・」





こうして、佐藤から始まった1-A生徒による質問タイムは授業中にも関わらず、
担任教師の恋愛事情も肴にしながら、無秩序な盛り上がりを見せて全く鎮まる様子を見せない。

もっとも、最初のHRで適当な自己紹介すら面倒くさがって、
やらなかった担任の方にも大きな責任があったと言えよう。
好奇心旺盛な生徒達は、自分たちに近い感覚を持つ身近な大人の担任教師の生態について興味津々で、
質問攻めにする機会を虎視眈々と狙っていたのだ。


しかし、物には限度と言うものがある。Aの次にはBが来るように
1-Aの隣には1-Bがあり、そこでは、ちゃーんと真面目な授業が行われているのだ。


つまり、騒音・振動規制法が許容する限界などとうに飛び越えてしまった傍迷惑な隣人に対して、
清く真面目でかわいらしい顔をした1-B担任の怒りゲージは、MAX値まで一気に上がってしまったのだ。



■マドンナ先生はマジギレ先生!?■


『うるさいです!!なにやってるんですか平音先生、あなたは仮にも1-Aの
 担任なんでしょう。自分のクラスさえ押さえられないでどうするんですか!』

勢い良く1-Aの教室の扉を開け放ち、何とかシゲルのように乱入しながら罵声を上げる1-Bの担任の迫力に打って変ってシンと静まる生徒達・・・
なんて事にはならず、いつも一生懸命でやさしくかわいいマドンナ先生の登場に生徒達は無邪気な歓声を送ることになる。


『あ、彩ちゃんだー』『タケちゃんアヤちゃんに怒られたー』
『貴方達もちゃんと反省しなさい!いまは授業中です
 お喋りタイムじぁないんだから、静かにしなさい!』


「まぁまぁ、宮川先生そんなに興奮しないで下さい。そんなに怒ると
 美しい顔に皺が出来てしまいますよ?先生ももう24で若くなッゴァガ・」

一向に反省した様子を見せない悪童達に怒りの天元突破を果たした宮川彩に対して、
他人事のように窘める1-A担任の平音だったが、その報いを直ぐに正しく受け取る事になる。
乙女の逆鱗を遠慮なく撫でた迂闊な男は、その罪に相応しい罰を受けることになったのだ。


『私はまだ、23です!!それに元はと言えば原因の貴方がしっかりしないから
 隣のクラスの私が苦労するのよ!生徒に自習用のプリントを作らせるなんて
 なに考えているんですか?『あのーアヤちゃん』なにっ?いま私は忙しいのよ!』

『タケちゃんの首ちょっと絞まりすぎというか、変な方に折れちゃってるんですけど・・・』






興奮して頬を赤くした宮川彩、24・・ではなく23歳によって絞め落とされた哀れなサッカー部顧問は、
オフサイドラインではなく生死の境目に引っ掛かっていたが、
なんとか持ち直して、最近学校に設置されたAEDの世話になる事無く生還する。


そして、こんな目にあった後では、当然やる気のない部活に顔を出すわけも無く、
弱小サッカー部は始動2日目にして、顧問の負傷退場により臨時休部となってしまい、
これを見越して、部室に寄らずにささっと家路についていたユキとは違い
目下、心の拠り所がボールのみと言うソウタは深夜0時のナンたら2号が発車した後も、
部室で二人が来る事を健気にも信じて一人待ち続け、警備の守衛に不審者として拘束されることになる。


部員数1名、顧問1名(負傷中)、マネージャー1名、
全部あわせてもたったの三名で再スタートを果たした『たんぽぽ高校』弱小サッカー部は
高校蹴球界に旋風を巻き起こす事になる・・・かな?





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