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張作霖、死去。
跡を継いだは、長男・学良。
実は列車爆破事件の直後に城で息をひきとってた、という説もあるんですが。
いずれにせよ私が帰国した頃にはもう亡くなっていて、北京にいた学良がおそらく変装して避難民の群れかなんかに紛れて奉天へひっそり帰り着いたところで、ようやく正式発表した、という展開です。
田中首相、さあどうします。
おちこんでる場合じゃないですよ。
仮にも一国の首班なんですから。プロの政治家なんでしょ。一瞬で気持ちを切り替えて、6000万国民のために今すぐなすべきことへ勇猛果敢に取り組んでいただかねば困りますよマジで。
ここで「我々は今後、学良くんをサポートします」とか宣言しちゃったりなんかしたら、ワカツキ以下の風見鶏クソ首相ですけどね。
そんな思いつきはおいといて。
6月4日。満洲ボージューダイ事件発生。
6月9日。蒋介石、北京入城。
北伐はひとまず停止しました。
支那統一のため、残るは東三省ですが、ここには日本の精鋭、関東軍が控えているため手を出してきません。
ちゃんとわかってますよ。
6月20日。国民政府の首都は南京のままとし、北京を北平と改称。格下げですね。
6月21日。張学良、父の死と、跡を継いで東三省督弁の位に就くことを公式に発表。
イマココ。
6.4爆破事件の犯人はまだ不明です。
日本の新聞では、既に河本の名を出してるところがあります。
今月中に呼び出されて内地で査問委員会やるみたい。
河本の犯行だなんて調べがついても、そのまんま発表なんて、できやしないでしょうけど。
今後の政治をどうするか。
ちなみに私は東宮が下手人なの知ってるんで、少なくとも、国民党や共産党や北洋軍閥の誰かの仕業説は、斬り捨ててます。
うがった所では、学良の父親殺し説なんてものまで読みましたが、その発想はなかった。
ミステリとしては面白いと思います。けど却下。
さて私なりに今後の支那情勢を予想してみましょう。
ありえそうなものだけ並べます。
その1。北伐は北京までで完成とする。東三省は、ひとまず放置。
これから、学良および日本との交渉に入る。
私なら、学良と日本とをうまく焚きつけて、仲違いさせます。
日本が奉天軍と戦えば勝つのは明らかなので、そのまま日本に満洲全土を制圧させたままにしておく。
日本にとってもホクホクウハウハでしょう。
そのあと「満洲は全部くれてやるから山東や漢口や上海や天津やらの関内租界は全部返してよ」っていう交渉はどうですかね。
支那国民に対してもシメシつくし、日本のメンツも立たせてあげますよ。
ワタシ的には、これがベスト。
その2。
あくまで東三省も占領しなければ支那統一とはならない。よって北伐はまだ終わってねーよ、なケース。
この場合は、学良との徹底的な政治交渉をすべきだと思います。
学良に、国民党への帰順をうながすのです。
降伏勧告でもいいんですけどね。そこは、平和的に従わせましょう。
東三省市民へも納得していただけるよう「これからは国民政府のために働いてもらいたい」と、くれぐれも手厚く。
この場合、日本の権益が、ノドに刺さった小骨のごとく、災いの種となります。
満鉄とその付属地。今までは作霖との交渉で、付属地外との境界線だとか、お客を奪い合う並行線への抗議とかの諸問題を調整してきましたが、今後これが南京との交渉になっていくとなると、満鉄の経営力は更に更に低下するでしょう。
そして、ここからもシナリオは分岐していきます。
2-1。
赤字鉄道をギリギリまで支えて、いよいよ倒産寸前になってから支那へ売却。だと、大した金額にはなりませんね。
思い出一杯詰まった会社を手放せない、創業者が陥りがちなパターンです。
2-2。
これ以上の時間をかけるべきではない。そう見切りをつけて今のうちに満鉄を売却。
これもアリです。今なら相当に高く買ってもらえるでしょう。国民政府が払うのに何十年もかかる金額で。
しかしこれは、日本国内での承認が難しそう。
2-3。
最後は……これは、SFであってほしいところですが。
ヤケになった日本が、国民政府との談合なしで自分から戦端をひらいて、満洲を獲っちゃうケース。
SFなら、そんなの読みたいですよ。
理由はいくらでもデッチ上げられます。日本人居留民が支那兵から暴行を受けたとか。先方は真逆を主張するでしょうが、済南でも同じことが起きました。
奉天城に学良いるんでしょ?
そこを包囲して、詰め寄って、屈辱的な絶対無条件降伏を強いて調印させれば、半日でカタがつきます。
日本は満洲を乗っ取れます。
ヤバいことに、これ、関東軍がやろうと思えば、できちゃうんですよ。
むしろ、河本だったら、ナゼやらない。
東宮たちに、今すぐ、やらせないんだ?
そんな悪い考えが頭をもたげてしまうんですが。査問の準備で忙しいのかな。
あーあ、今が絶好のチャンスなんだけどなー。
いま北京にいる、蒋介石とそのブレーンたちだって、このくらいのことは考えてると思いますよ。日本の出方をピリピリしながら監視してるはずです。
8月には、さて、どうなっていることやら。