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死者が出ました。
済南で。日支双方に。
今回、まずいことに、日本軍も、支那側の民間人を殺傷しています。
たぶん私たちが南京で見てきたあれが再び、もっと大規模に、起きてるのでしょう。今度は、加害者です。
日本の新聞は、日本人居留区が一方的に襲撃され、掠奪され、陵辱されていることを報じてます。
それはもう、煽ることが楽しくて楽しくてしょうがないみたいで。扇情的に書きまくってケシカランユルセナイと、大合唱してるわけなんですけれども。どれもこれも。
主要紙の記事を注意して読むだけでも、相手側を国民軍とも北洋軍とも特定できてなさそうなことと、日本軍が既に徹底的な過剰反撃に打って出ていることが見てとれます。
なお悪いことに、その世論に応えて田中内閣が山東省への増派を、即決定。
内地の師団はいま、てんやわんやの大騒ぎ中。
日本のマスコミの記事だけを読んだところでまともな推論なんて出来ないことわかっちゃいるけど、その弁解をした上で、私のイヤーな予測を述べます。
そもそも内乱中、一体どこの陣営が、日本軍の目の前で戦闘を始めようなどと思うものか。
仮に敵対している相手方と行軍中に出くわしても、そこに日本軍がいたら発砲なんて絶対しないでしょ。
日本軍は内乱の一方に加担する目的で行ってるんじゃない。あくまで日本租界を守るためです。
なら境界線の内側に歩哨を立てて、日本人住民は不要不急以外では無闇に出入りするなと命令。境界外で何が起ころうと、介入しない。
これが基本ですよね。
私が国民軍の最下層兵士で、日本軍を挑発したかったら。
北洋軍の制服か腕章でも手に入れて、石投げて隠れるとか、しますね。
暴動を起こせば、日本は悪役を一手に引き受けてくれますから。その混乱に乗じて、掠奪ができる。
日本の出方は、予想できます。
田中内閣が前回とまったく手を変えず出兵することも計算通りだったら、更に民衆の憎悪を掻き立てるシナリオが組める。
そのくらいのこと、支那の空気を知ってたら誰でも思いつけます。
日本人は、とにかく支那をナメまくってるんですが。
あいつらには政治も経済も軍事さえも何一つわかっちゃいないとタカをくくってその基本イメージを何一つアップデートしようともせず、結論ありきで満足しちゃってるんですが。
そもそも自分たちがいったい今どちらの陣営と交戦しているのか。どこの政府と交渉すべきなのか。そんなことすら確認せず記事を書けちゃってる現実だけを見ても、程度が知れます。ありえません。
そして、戦闘が始まっている。田中義一首相兼外相にその事態収拾が可能なのかという次のステップになると、正直、絶望的な気分になります。
蒋介石は来日して、謝罪して、何らかの交渉をした。
同じことが田中義一にできるか。
想像できません。
今回の北伐がどう結着するにせよ、蒋介石とも、張作霖とも、今までよりずっと悪い条件での外交を強いられます。
それだけは確実なのに、その展開を予測するための情報が、足らなさすぎる。
支那側民間人の犠牲者はどれほどなのか。おそらく、既に、南京で殺された日本人被害者の数を超えてましょう。
そしてこれも恐らく、調査する段階で、実際に日本軍が殺した人数より多い死体が出てくるでしょう。
日本を相手に戦おうとすれば、この程度のことは考えます。私ですら。
もっと効果的な方法だってあるかもしれない。日本人を怒らせ、踊らせる、もっとずっと効果的な煽り方が。