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満洲へ、行ってきます。
今回は、ひとり旅。
2週間と、しっかり期日も決められてます。
関東軍へご厄介になります。四六時中、監視がつきます。
石原閣下プロデュースによる短期留学です。
普通は、無理だと思います。指揮系統も違いますし。
そもそも私、民間人で、子供ですし。
ところが、民間と軍隊との接点が、意外なところにありました。
キーワードは、トクム。
閣下、一年漢口へ赴任してましたが、そのうち3ヶ月は、三菱の社員を装って、スパイやってたそうです。
軍服を着ていては出来ない調査を、いち民間企業の営業マンとして潜り込んで、行う。
三菱さんとは話がついていて、現地の社員寮も使わせてもらうし、名刺も本物そっくりに作ってもらう。
本人確認されても間違いなく社員だと請け合ってくれるし、どこから問合せがあったかも記録し報告してもらえる。
アリバイはばっちり。
でも、トラブルが発生しない限り、お互いの領域には踏み込まない。
そんな裏街道業務担当部署へのコネを、お持ちなんですよ。
ちょっと見直しました。さすがは頼れる閣下です。
特務機関が絡んでると、軍隊内でも滅多に、余計な詮索はされないそうです。
もちろん限度はあります。私は見習い扱いなので監視がつきますが、監視役に怪しまれる振る舞いはアウト。関東軍司令部に2週間缶詰状態になりますが、その間、疑われるような行動は一切しないこと。ひたすら、黙々、勉強だけ。
日特地下室での生活と大して変わりませんよね。仕込んだのは閣下ですよ。
私の目的は、司令部にある機密対象でない資料、それから支那の新聞と雑誌を、できるだけたくさん読んでくること。
何を調べてるかまでは言えないけど、このあとこの子は、子供しか潜入できない某敵地へ派遣される。
その訓練のため、関東軍へ2週間だけお世話になります。それ以上のご迷惑はおかけしません。
こんな設定です。
おひけえなすって。手前、生国は大日本、福島にございます。上京し、今は陸軍さんの協力企業である、日本特殊工業さんへ間借りさせていただいております。社長の宮本というのがあっしの実の父親なんですが、そこはそれ、庶子ということで、ひとつ御勘弁を。縁あって、大日本帝国陸軍教育総監部少佐、石原莞爾閣下にお見知りおきいただきまして、勉強させていただいております。この度、支那でのお勤めを仰せつかりまして、その準備のために特別にお計らいいただきまして、関東軍さんの元へとご厄介になりに参りました。ふつつか者ではありますが、また短い間ではございますが、なにとぞ、なにとぞ、宜しく、御お願い申し奉り候。
みたいな感じでお邪魔してきます。
今回は、いたって普通の民間人以上のものは何も身につけません。
どうせ手荷物も隅々までチェックされるので。余計なことは一切しない。
純粋なる、短期留学です。