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3月26日、土曜日。晴天。
街のざわめきが、本来の姿に戻りつつあります。
めぼしいところは、荒らされ尽くした頃合いですか。
一昨日来の盗賊集団とほぼ同じ服装ですが、それをパリッと着こなした軍団が、大通りを、うやうやしく行進中。
ここからは治安維持するぞっぽいような状態に、変わりつつあります。
一般市民、とくに子供たちが表に出てきて、声を出してる。
てことは、大丈夫そうだなと見計らって。
我々も、外へ出ました。
おそるおそる、日本領事館へ。
隣接する、英国の官庁舎の入口には、イギリス兵が立ってましたが。
日本領事館には、
警備員もおらず……
無人かと思いきや。支那人家族が何組か、住みついてました。
机も椅子も書類棚も、
何もかもが奪い尽くされた、
ガラスの破片と泥まみれのロビーや部屋を
ひととおり見て回りました。
数日前まで拠点にしていた建物を、廃墟ツアーしてるこの感覚は、すごく不思議。
領事館職員の官舎が、敷地内の反対側にあるんですが。
ここが特に、むごかったですね。
小さな部屋が多かったんで、悪いことするのに都合良かったんでしょう。
具体的に言っちゃいますと
何人もの男に強姦されまくった挙句に殺され
そのまま放り棄てられた状態での
ご遺体が
いくつもいくつも。
犯して殺すだけでも飽き足らないのか、口や尻やらに竹の棒突き刺したり、鼻や目玉に針金突き立ててたりとか。
ハンニバル・レクター博士でもここまでしないぞ。
憎しみに満ち満ちた陵辱ぶりってのを、リアルに見ました。
これが排日の怨嗟か。
サノは、泣きながら吐いてました。
グロ動画は見慣れてないみたい。
そうか。そうだろうね。悪かった。
サノの前で言葉にするのは控えましたが。
私は、このとき、この世界へ転生してから初めて感じる、あるデジャヴに囚われてました。
シリアルキラーによる、遺体アート?
もしかして、これをやったの、転生者?
タイム・アフター・タイム。
観たことある人なら、タイトルだけで瞬時にわかってもらえるかな。この感覚。
この世界に、ヤバい奴が、紛れこんでる?
私は、そいつを、捕まえねばならない?
妙な使命感に、ちょっとの間、とらわれてました。
でも不用意に動くのは怖い。
武器ももっと欲しいし、今回の旅でまだまだ必要なものがあることを思い知りました。
これ以上の深追いは、やめよう。
何よりサノがもう限界突破だ。ごめんな。本当にごめんな。もういいよ。もう帰ろう。
血まみれの黒い支那服脱ぎ捨てて。
グレーのまだまだ綺麗な支那服に着替えて。
下関方面へ向かって、とぼとぼ。とぼとぼ。
日本海軍の、小さな汽船で、上海まで送ってもらえることになりました。今その手続きをしています。
領事館には昨日まで、生存者が約20名、隠れていたそうです。
海軍によって保護されて、すでに帰国の途についてると。
私たちは行方不明者扱いだったけど、もし一昨夜時点で領事館にいたら、一緒に殺されていたかもしれない。
よくぞ無事だった。よかった。と言われました。
あとは、日本政府が?
とんでもない声明を出したとか?
それはさすがに信じられないので、帰国して、真偽を確かめてから、判断します。