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夜が明けました。
今日は、2587年3月25日、金曜日。
ねぐらを替えました。
やはり襲撃されまくって、もうこれ以上獲られるものないだろう、って民家でそこそこ見晴らしのいい天井裏を一軒確保。
日中はぐっすり眠りましょう。交替で。
どこも、食料がまっさきに狙われますね。
私たちだって、食料尽きたら、まだ人が立てこもってそうな家から力尽くで奪うしかなさそう。
ま、サノと私は文明人だし。今のところ日本から持ってきてた缶詰でしのいでますが。
水だけが困りものです。
荒らされた住居で井戸水が出てくる蛇口をいくつか使いましたが、ほんとは煮沸したい。
しかし火は使えない。
それでも道中、一番綺麗そうな井戸の水を、水筒に詰めました。
おそるおそる、飲んでます。
さあて、今日はどうするかな。
下関までどうにかして辿りつければ。日本の船がいれば。海軍でも商船でも民間でも。
そこへ逃げ込めれば、なんとか助けてもらえるかもしれない。
しかし襲撃初日すぐ反対方向へ走ってきてしまったから、今いる場所からなら、とりあえず日本領事館の方が近い。
ごろつき兵士の中には、ここを通るならいくら出せ、みたいなことをやってるのもいるようで。
それでなくても、日本人だとわかると、あいつら、金額ふっかけますから。
商売の基本としては、大正解だとは思いますよ。
だから支那人か朝鮮人に見られるよう、化けて旅してるんです。
閣下のアドバイス、適確でした。さすが経験者。
血まみれの服は、いいカモフラージュになってるかな。
似つかわしくないリュックは、どこかで盗んできたんだろうと思われればいいんですが。
それをよこせ、って言われるのがわかりきってるので、腕っ節強そうな連中に見つかったら戦闘は避けられない。
無謀は大敵。
ぎりぎりまで、徹底して、ステルスします。
春なので、埃っぽく、まだ時折つめたい風が吹きます。
とりあえず、日中は路上観察を続けようかねえ。
もう一日。