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19時半。もうそろそろ、いいかね。
外は真っ暗です。いつも以上に。
どの家も、照明をつけようとしません。
町のあちこちに、かがり火と、兵士たちの姿が見えます。
多いところでは、10人くらい。
くっちゃべったり笑いあったり、収奪品の自慢しあってたり、何か旨そうに食ってたり。
銃声も、まだまだ断続的に聞こえてますねえ。
夕方から、下関対岸の軍艦からも砲撃が始まりました。
市内に直接向けて撃ってるわけではなさそうですが。
革命軍への威嚇行為だとわかっちゃいるんですけど心臓に悪いから控えてほしいっつうか。
それより人を派遣してほしい。
英米仏独日どこでもいいから。
治安を守ってくれる、適切なる、陸戦隊なり警備隊を。
襲撃者の犯人はおおむね決まりです。中華民国国民政府の革命軍です。
コソコソ、見とがめられないよう、細心の注意を払いながら、闇の中を進む私たち。
元の人民服はグレー系で、ちょっと闇夜に目立つかもなので、途中で道端の死体から失敬しました。黒っぽいものを。
万一、歩哨に見つかったら、死んだふりですね。死体の中にまぎれる。
銃剣でひとつひとつ突いて回られたらアウトですけど。
そうなったら不意をついて、逃げる。
絶対確実な対処法なんて、わかりません。
サノにも言ってます。
別々に逃げろ。かまうな。一人になった時点でとにかく日本へ戻ることだけを考えろ。
縁があったら。
来世で会おうぜベイビー。
そんなこんなで、日本領事館方面へ。
この辺は、目抜き通りというか。国内外の官公庁や大きな商店とか、お金持ちの民家とかが集まってるとこなんで。
近寄れない。
警備の兵が、あちこちにうじゃうじゃ立ってます。
国民政府の青天白日旗は今、市内あちこちに掲げられています。
その旗の下で夜警やってる、軍服着て銃を担いでる兵隊が、昼間の獲物自慢をやってるんですね。支那語はわからないので、多分そうだろうレベルですけど。
革命軍は礼儀正しい、と言われてましたが、それは支那兵の平均水準と比較しての話なのか。
そう考えたら、納得もします。
革命軍よりも悪辣非道と言われていた北洋軍の方が、ここ数日の南京で見た限りにおいては、ずっと統制とれていたけど。
まあいい。
革命軍を市民の味方だなどと思うな。ってことだよね。
オールゾンビか。上等だ。