File_1927-03-004D_hmos.
サノくん、最初は君が攻めで、僕が受けでいいかな?
「攻めの反対は、守りですよ。コダマさん」
南京は、城塞都市です。
市のまわりをぐるーっと城壁が囲っていて、南北10km、東西9km、おおよそ。
形は凸凹あってかなりイビツですが。
歴代領主の宮殿は城内南東、英米日等の官公庁街は西側に固まってます。
城壁には、大小14ほどの門があり、城外東側に紫金山。小高い丘です。その西隣に玄武湖。
城外北西側には揚子江が流れていて、下関という港があります。シャーカン、と発音します。
この城を攻めるとしたら、何千人くらいの兵力が必要かねえ、なんてサノと話してました。
地図を見ながら、どうしてもクォータービューに脳内変換してしまうのだけど、これもサノには言いません。どう説明せえっちゅうんじゃ。
こいつバリバリ理系だからわかってくれるとは思うけど、今ここで地図を斜め上方向からの鳥瞰図に置き換える必然性がそもそもありませんでしょ。だから言わない。
南京といえば、大虐殺。
言葉だけは、知っている。
21世紀まで、根深く日中問題になってることまでは、知っている。
それ以上のことは、知ろうとも思わなかったし、今だって、知りたくないし、見たくもないし、起こらなくてすむものなら永遠に起こってほしくないんですが。
ここが戦場になる。という想像だけは、覚悟だけは、しておくべきかなと、思って。
さて、想定戦というか、サノと攻め・守りでシミュレーションしてみるつもりでしたが、前提条件が決まらないのでゲームにならない。で、二人で一緒に、どう攻めるか、から考え始めました。
「陸側から攻めると、河から逃げられますね」
そうだね。まず河沿いに部隊を配備、が第一だね。儀鳳門か興中門から逃げ出してくる敵は、撃つ。
河側から攻めるとどうだろう?
「上陸作戦となると、一度に大量の兵員は送り込めませんから、主力はやはり、陸からにならざるを得ないかと」
あとは、湖と、山っていうか丘だね。これは、攻めるにしろ守るにしろ、利用できる地形だろうか?
「南側にも、城壁に沿って川が流れてますけど、下関港も含めて、水路は攻めるには向きませんね。脱出を阻む要衝として考えるべきで、中山門が正面ですけど門のすぐ傍に本丸があるということは、守りが相当堅そうですね」
やっぱそう思うよねえ。大きな門より小さな門の方が侵入しやすいのかしら。ここから先は実地検分だね。
我々ド素人が一目見て考えることは、匪賊だって思いつくことだろうから、じゃあそれに対してこの城がどんな防御を想定しているかを、見て回ろう。
南門へ向かいます。
うわあ、でっけえ。
お台場のガンダムよりタッパあるぞ。20m以上ありますね。
そびえ立ってます。上にヤグラあり。壁のところどころに銃眼も覗いてます。
ここらへんは日本の城塞と同じですけど、とにかくデカいし、左右に長い。
ここを攻めるのに、歩兵と騎兵だとどのくらいの物量で向かわなくてはいけないのか。どの程度の損耗を覚悟しなくちゃいけないのか。素人にはすでに眩暈がしてきます。
夕暮れ時近くなって、下関へ着きました。
ツッコミはご無用。時間ないんです。
下関条約を、次回はここで結んでみたい。ええい、うるさいぞ俺の邪念。さて。
んー。港も広い。上海バンドとどっちが広い?
国ごとにナワバリがある感じですね。
揚子江の河幅は1km以上あり、流れも速くて濁ってます。
泳いで渡るのは無理そう。逃げるには船が必要。
てことは、門から波止場までを押さえとけば脱出は阻止できるかな。
対岸の港は浦口といって、現在、英米の砲艦がものものしく、砲塔をこっち側へ向けて待機しています。
ちなみに下関側の城内入ってすぐに砲台あるんです。
守る側からしても、洋上への攻撃は想定済み。
でも万一の開戦時には、この付近にはなるべく、いたくないなあ。
というか既にいま、一触即発の状態ですか?
そんな感じで、ぐるっと城外を時計回りに半周したのが昨日です。
陽が落ちたら、市内は危険度が増すので。さっさと旅館まで戻って、疲れてたんですぐ寝ました。
早寝早起き。健全です。深夜娯楽なんてない時代です。私はもう16年生きてるんで慣れましたが。
今日の午後、南京を発つつもりなので。午前中に昨日の続き、城の東側を見て回りましょう。
籠城戦になるとなれば、秀吉が三木城や鳥取城でやったような兵糧攻めは有効だろうか。あるいは水攻め。
しかし広さが段違いの南京では、城内に耕作地いくらでもあるので、外の兵の方が先に干上がることだってありえるかも。
帰ったら、スピリチュアル兵学教官先生にご指導賜ろうか。
みたいなことを、とりとめもなく考えていたら、突然、すぐ近くで銃声が。
悲鳴。
大勢が逃げている。
なんだ?ゴジラかグエムルでも現れたか?
いやまて。変だぞ。何か起きてる。
サノ、領事館へ戻るぞ!