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日射しが、強いですなあ!
宮本です。
今日は、うちの戦車班も若干名引き連れて、静岡は富士裾野演習場までやって参りました。
来年くらいからね、うちも、社員全員での慰安旅行なんかもね、してみたいと思うとりますが。ま、今日はその予行演習というか、こういう団体旅行も、泊まりがけでなんて、なかなか機会もございませんでしたので、ねえ。今までは。
あれ?私が、一番、舞い上がって、おりますかね。
ええ社長らしいこともこうして、やっておりますですよ。はい。
さて本日は、新聞社の方々なども取材に見えられててですね。ちょっとした、日本戦車隊の晴れ舞台といいますか。半公式の、お披露目演習といった様相です。
私らはあとで極秘に試製戦車の走行試験ですとか、技術的ないろいろ打ち合わせもあるんですけど。
第一部はルノーを中心とした、戦車戦とはいかなるものぞ。という実態を広く国民の皆様方にですね。ご理解いただこうと、こういう催し事です。
なかなか好評で。
私らも快哉を叫んでおりましたが、新聞社の記者さんというのは、意地悪なものでしてね。
こんなの旧来の武士道から外れておってケシカランという方もおれば。
こんなので欧州と戦えるのか、まだまだ貧弱であると、したり顔の方もおられたりとか。
ちょっと痛快だったのは、えーと、文壇色の濃い新聞社の記者さんをですね。30分、ルノーに同乗させて。走ってみましょうと。ぜひ戦車兵たちの働きぶりを、同じ目線で体験していただきましょうと。
私も何度か乗ってますけど、この炎天下で30分は確実に死ねますね。
まして走ったら酔うし。撃ったら耳もやられますから。いいとこ5分で白旗上げますな。
でも記者さん、がんばりましたよ。車長さんも一切容赦せんで、どんだけ泣きわめいてもきかんかったゆうてましたけど。
お国のために、皆さんがどれだけ苦しい訓練に耐えておられるかというね。記事になったらとくと拝見させていただきましょう。
そうはいうても、本当は、戦車兵の皆さんのために、戦車内をもっと快適にするための、送風機なり、暖房設備とかも、つけたいところではあるんです。
できなくはないんです。
でも現状では、まだまだ我々の国産戦車は総重量20トン近くあり、更なる軽量化を求められておるところです。
重いと馬力が出せませんからね。装甲はこれ以上削れません。容積も増やせません。
積めるなら弾薬を増やすのが優先です。となりますとなあ、どうしても乗員の皆さんに大いなる負担がかかってしまう。というわけなのです。
なので今日の演習を見て、記者さんの死にそうな顔と最初は同じはずだった戦車兵の皆さんが、厳しい訓練を重ねた果てに、こんなにも逞しくなられて、という対比としましても、ほれぼれするほど感慨深いものを、得ることができました。
かくなるうえは。
戦車は戦車でもちろん全力を尽くしますけれども。戦車兵の方々の負担を、非戦闘時にでも、もっと和らげることはできますまいか。
整備、補充、燃料、修理などの部分についても改良の余地を追求し、また兵士の方々が安心、安全に出動までの時間を過ごされるような、そういった方面からのお手伝いもできないだろうか。
そんなことも考えておる次第であります。
これはちょっと帰りの汽車の中ででも、みんなに話してみようかねえ。
まだまだ、できること、いっぱい、ありそうだねえ。