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注文の多い料理店。
え、ミヤザワケンジ?
しかも初版だ。なんで閣下がこんな本を?
閣下ね、あいかわらず、来るときは本を大量に持ってきてくれるんですけど。今日はこれが入ってました。
最近はあんまり機密資料とか、歴史書とか、入ってないんですよ。
レポートも書けって特に言われてないので。まあ暇なときに読んでみたり読まなかったり。
というか閣下、さいきんスピリチュアルじみてて何言ってるかよくわかんない。
関心が他へ移ってきてるみたいですね。油断はなりませんけどね。
それにしても宮澤賢治ですよ。
自費出版みたいです。194頁で1円60銭。挿絵付き。
サノにも読ませてみました。
「面白いですね。毒のある童話です。でも確かに、何冊もある中でこれは異質ですね」
自分自身が注文の多い男だってそろそろ気づいたのかな、閣下も。
「宮澤賢治さん、というのは有名人なんですね?」
これが二冊目みたいなんでまだまだこれからだと思うんだけど。銀河鉄道の夜とか、風の又三郎とかが代表作になるのかな。売れっ子になるはずだよ。
「童話以外も書くようになるんですか?」
うーん。じゃあ、ネタバレしていいなら言うよ。
はるか、遙か未来の地球。
人類の体はどんどん機械化されていき、生まれたままの肉体を持つ下層人民は、機械人である貴族たちから遊び半分で狩りの対象にされる。そんな悲惨な世界だった。
生身のまま、母親とふたりで生きてきた少年テツロウは、その母を、目の前で殺される。
仕留めた遺体を持ち帰り、剥製にして屋敷に飾り自慢していた機械伯爵を、ぶっ殺す。
復讐の一部始終を見ていた謎の美女メーテルが、銀河鉄道に乗って宇宙の果てにあるアンドロメダ惑星まで行ける旅券を、テツロウに差し出した。
私のボディガードとなって、ここまで一緒に行ってくれるなら、アンドロメダであなたは、ただで機械の体をもらえる。そして永遠の命を生きることができるのよ。
その誘惑に、テツロウは未練などない地球を棄てる。メーテルのお伴をして、宇宙翔る蒸気機関車で長い長い旅に、出発するんだ。
どお?
「ピンとこないですけど、壮大ですね」
えすえふだよ、えすえふ。うろ覚えだけど。
実はアニメと漫画でしか知らないんで、原作は読んだことありません。
これも、私の記憶してる通りの作品となってこの世界に登場するかどうかは、厳密には確かめようもないことかもしれないんだけれどもさ。
永遠の命なら、私が欲しいくらいだよ。
21世紀まで生きられたとして、そのときには、耄碌してるに決まってるからさ。ちぇ。