File_1926-01-001E_hmos.
森矗昶さんを御存知ありませんか。
鈴木三郎助さんも?
そうですか。
逓信省時代、局の中ではよく話題にのぼる人でした。電力王です。
もしかしたら、21世紀までも語り継がれるほどの人物になっているかも、と思っただけです。
今だって、世間一般の人は知らないでしょうから。
「ごめんなあ。経済界や政治とか、興味なかったんでさっぱり。年号も一切覚えてない。歴オタなんて恥ずかしくて名乗れないわ。って生後一年目で返上したけどな」
それは無理もないと思います。関東大震災は、御存知だったんですよね?
「ああ、大正時代だったっけ、くらいは。いろいろ、すまん。せめて日付を知っていれば、もう少し対策とかなんとか、しておけたと思うんだが」
でも社員の皆さんから、今も語り草ですよ。あの日のコダマさんは、英雄だったって。
「アインシュタイン博士は知ってたよ。私の見慣れてる顔よりだいぶ若かったけど、でも間違いなくアインシュタイン博士だった。そのくらいかな」
その人の未来を知ってたら、むしろ接しにくくなるでしょう。コダマさんが、歴史を変えてしまうことを非常に警戒されていることも、よくわかります。
「タイム・パラドックスについては、それはもう、悩んだ。禿げるほど悩んだ。禿げてないけど。いや、歴史を変えたくないわけじゃないんだけども。戦争が起きるのは回避したいとは思うんだけど。どこをどうしたらどう変わるのかがさっぱりわかんないし。バタフライ・エフェクトの話ってしたよね?」
蝶の羽ばたきが一瞬ぶれるだけで、分子の動きの影響が連鎖して、地球の反対側では大津波が起きたりする、ですよね?
「うん。だから変えるとか変えないとかよりは、知識と経験が人の倍あることだけを利用して、この時代をうまく生き延びていければいいや、くらいに考えることにした。警戒するとしたら、他に転生者が見つかったらどうしよう、てところだけど、まだお目にかかってないし。たぶん、いても、みんなステルスしてると思うよ」
タイム・アフター・タイムのお話は、今も興奮します。
「あの映画は傑作だよ。あと50年くらいしたら作られるはず。それまで生き延びたいね」
ところで、森ノブテルさんですが。
では、説明します。