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今年はもう、冬ごもりします。
お外へは出ません。
自分で出たいときはコッソリ抜け出しますけど、お気楽にどっかへ行かされるのは、まっぴらです。
ええ石原少佐閣下ですよ。ほかに誰がいますか。
社長には事前に私から入れ知恵しといたんで。ガツンと言ってやってくださいと。
朝鮮旅行のレポートも、先に社長へ見せておいて。
閣下がお出でなすった際に今回は私も、同席させていただきました。
ニコニコ、時折、感想を交えながら、読み終えるまで、お茶を飲んで静かに構える私たち。
読み終え、ベタ褒めし、さあ、と閣下が身を乗り出すまでが想定済み。
社長、有無を言わせぬカウンター。
「少佐殿。
週五日までという約束は守っていただきたい。コダマ君は日特の仕事もしておるのです。勝手に予定を延ばしたり縮めたりされては、私どもの作業進捗に差し障りが出ます。
今回の朝鮮旅行、なりゆきで私が立て替えましたけれども。決して、少佐殿に差し上げたわけでは参りませんぞ。
これが請求書です。
古いつきあいですから、利息までとろうとは申しませんが。
私だって会社を背負って立っておる身です。
軍の機密費と同じであるかのようなおつもりで当てにされては困るのです。
まずはこれの返済をしていただきたい。
コダマ君に次の旅行をさせるのは、それからにしていただけませんか。来て話されるくらいは、いつでも結構ですが、今もまだ、コダマ君の家はここですし、後見人は私です」
えらい。つっかえないでよく言えました、社長。
私は神妙に聞いておりました。内心、ニヤけながら。
閣下は、しゅんとしておられましたなあ。
日特を、ほんとに打出の小槌だと思ってたのかよ。フザケンナヨ。
もうちょっと偉くなって、宇垣大臣みたいに仕事や人を回してこれるくらいのタマになってからワガママ言いなさいよ。言わんでいいけど。
そんなこんなで、私はひとまず年内は出張無いです。
せっかく身分証つくってもらったんだし、もうちょっと足を伸ばして満洲くらいまでなら面白そうかな?って思わなくもないけどね。
あせらないあせらない。
それより、戦車ですよ。
タイムリミットが決まってるんだ。来々春までなんてアッという間だぞ。
私は正社員じゃないからお気楽に意見を言う程度のことしかしないんですけどね。雑務全般。
でもね、戦車は乙女のロマンですよ。その黎明期に関われてることは、それだけでワクワクしますからね。
今年はいい一年でした。
まだ早いか。
来年も、いい年になりますように。