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閣下、ご帰国。
社長と、出迎えに行きました。
さすがに神戸まで行く余裕もないので、東京駅でご容赦を。
奥様は神戸まで行かれたようですね。初めてお目にかかりました。
うちの宮本がペコペコ挨拶してる隣で、会釈してた小僧が私です。
他にも、日蓮宗の檀家さんみたいな方が大勢来ておられましたね。軍関係よりずっと多かった。
昔は海外といったらもっと大勢でお出迎えとか壮行式やったものなんですかねえ。
出立の前には、神戸で何日もパーティしてから船出したんでしたっけ。
いちいち手紙書いてよこしてたなあ。まだ出航してないのかよって呆れた記憶が。
石原閣下という人は、日記代わりに手紙を書く人なんですよ。だらだら長いの。
うちだけじゃなく、奥さんとかにはもっと長いの送ってんだろうと察しますが。
私には理解できない感覚です。
私は人に見せる手紙とかレポートとか、大嫌いなんで。
こっそりと書いてればいいじゃないですか日記なんて。書いてたりして?日記も。知らんけど。
奥様はともかく、軍の方々とは今後のこととか、お話も尽きないようで。
私ら、友人代表とその隠し子みたいな連れは、来ましたからねって体裁だけ繕ったら長居はご無用とばかり、早々に立ち去りました。
「大きくなったなあ」とお決まりの台詞もいただきました。
まあ、2年半前よりは大きくなりました。ひょろっとね。ご満足いただけましたでしょうか。
今日はお日柄もよく、秋風がここちよかったです。
社長の横顔は、憂鬱そうでした。
わかります。私も、ポーカーフェイスで、疝気の虫と戦ってましたから。