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山下大将、そろそろ、マニラへ着いてるかしら。
お別れ、言えませんでしたね。
来世で……て、山下さんの場合、三度目の人生になるのか。
あるのか?
いや、考えたくないから、やめておこう。
何度も何度も転生させられる。それは永遠の罰か。
神か悪魔か火の鳥か。あるいは、輪廻の蛇のしわざか。
なったらなったで考えよう。でも、望まないよ。
人生なんて、そんな、何度もなぞるもんじゃない。
第一方面軍司令官山下大将に、突如、南方行きの辞令が。
新京の溥儀皇帝に挨拶するのがやっとで、すぐ東京へ。それから、ルソンへ。
道中、あわてて書いたと思われるお手紙が一通、私のもとへ届きました。
とはいえ、そんな状況ですから、私たちの秘密に触れる内容を書けるはずもなく。
「戻ってくる」と。ただ、それだけ。
そうですね。あなたとは、今世のうちに、また、会いたい。
でも、よりにもよって、フィリピンですか。
土地勘のない司令官をいきなり派遣して、どうなるもんでもあるまいに。
大本営に、策も手駒も無いのはわかってますが、少しでも知恵があれば。
今日にでも降伏することで、アメリカの鼻をあかしてやることができるんですよ?
くやしがらせてやれますよ。
それでどうなるもんでも無いけど。
いいね!のひとつくらいは、付くんじゃないでしょうか。
まだ足掻くのか。みっともない。
ディスライクしか付けられない。
フィリピンを、太平洋の連合軍全艦隊が包囲しつつあるんですが。
その先の、台湾沖でですね。
日本が大戦果を上げたそうです。
この海域にいた空母15から20艦を、航空隊が全滅させ、洋上から敵の姿を消し去ったと。
どう考えてもありえないし、仮に20艦を撃沈させてても、第3・5・7艦隊を合わせてすでに500艦以上が投入されているので、勝って兜の緒を締めよ、以外の祝電打てません。
なのに、日本中がこのニュースに沸き返り、天皇からも勅語を賜るとか言っちゃってて、ますます後には退けない流れになっちゃってる。
舞い上がっちゃってますね。嘘つきさんたち。
嘘つきしかいない村に、数人の正直者が隠れているかもしれない。助けるべきか否か?
正直者が賢いとは限りません。賢ければ自力で脱出してるでしょう。
嘘つきに擬態して身を潜めてる正直者なんて、ただの愚か者です。
助ける義理も、そもそも区別する意味すら、ありません。
沖縄、それから台湾へも、空襲がありました。
そろそろ、本格的に都市が狙われ始めてます。無差別爆撃、ということです。
もともと、正確に爆弾を落とすというのは難しいんですよ。夜間で無灯火なら尚更です。
やられる側も、ここが軍事拠点ですよなんて公表してるわけがないから、爆撃という戦術が存在し、それ自体が禁止されない以上、無差別であることに制限を設けるのは不可能です。
だからって対空防御されてなさそうな住宅地を敢えて狙って蹂躙することへは、議論の余地もありましょうし、人によっては良心の呵責だって覚えましょう。
もっとも、これとて、日本には抗弁する資格が無い。さんざんやってきてるんだから。
この戦争が終わったら、あらためて、国際法の整備を求めていきたいところです。
爆撃とは、どうあるべきか。どこまでOKで、どこからがNGか。
その線引きを、最新の技術レベルを踏まえて議論し、ルールを決めていただきたい。
それまでは、無差別爆撃でも、容認するしかないですね。
むしろ民間人の皆さんへ伝えたい。
国民を、ただ見殺しにする、あなたがた自身の政府を、とっとと倒すべきですよ。
現政府と運命を共にする限り、あなた方も、同類なんです。
良心の呵責?
日本人に対してそんなもの、抱きません。
あたりまえでしょ。