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8月20日。福岡・八幡への空襲、リベンジ。
9月8日。大連・鞍山へも空襲、リベンジ。
八幡は確証がとれてませんが、鞍山では100機以上が飛来し、前回よりも甚大な被害が出ています。
間隔が狭まってきていることも要注目。これでも、序の口です。
まだまだ、威力偵察といってよい。
新聞はいつまで強がりを言っていられるかな。
すでに従業員の大半である中国人が大勢、家を捨てて逃げ出しており、溶鉱炉が無事でも操業が回らない状態。
南方への補給どころではありません。防空壕の方が先。
対空防御?高射砲のひとつもあれば、爆撃機の大編隊なんてよこしませんよ。無いから、来てるんです。
空戦隊を朝鮮などへおびき出した上でね。
そんな戦術教義もみるみるレベルアップしてます。
かれらは一戦ごとに成長を積み重ねてるんですよ。
まるで、進化だ。
さよなら、人類。
いらっしゃい、ニュータイプ。
そんな情報を集めているうちに。
9月15日。ペリリュー島への上陸が始まったらしいとの、第一報。
とうとう、やっちゃうのか。
陽動であれば
さすがだなと思いますが
三日ほど前から猛烈に砲撃を加えたうえでの上陸なので
おそらく
本格的な作戦でしょう。
長引くんですよね。ペリリュー。
そして、そこから800kmも西へ向かえば、もう、フィリピンです。
マッカーサーが戻りたがっている、フィリピン。
首都マニラ、および、日本軍が奪ったクラーク飛行場を目指すならば、島々を縦断して進むことになり、フィリピン全土は血みどろの戦場となります。
実際、これからいくつもの島で、日本軍は粘り強い抵抗を見せ、その悲惨さはガダルカナルやサイパンに負けず劣らず、語り継がれることとなります。あくまで、私の知っていた世界では、ですが。
地図を見れば、フィリピンへ寄り道する必要は、ないんです。
まっすぐ北上すればいい。マニラの日本機は向かって来るだけの航続距離を持ってない。
なのに、なぜ、こだわるのか。
マッカーサーが戻りたがっているから。ただそれだけです。
こっちへ来ないでくれ、疫病神。
あなたはフィリピンを愛していたのじゃなかったのか。
だったら来るな。今なら間に合う。思いとどまってくれ。
どれだけの血と、資源と、美しい風景が、無駄に消えるか。
考えたら、とても耐えられない。でも、やっちゃうのか。
大統領選までの時間稼ぎなら、他所でもできるでしょ。
日本の土地で、やればいいじゃないの。
ねえ、お願いだから。
最後に、平井探偵からの、報告です。
江先生の本名は、浅原さんでした。ああ、そうだっけ。
浅原氏……言い慣れないので、江先生で通します。江先生は、代々木の陸軍刑務所へ拘留中。
永田さん殺害犯・相澤にダラダラ弁論させていた、あの青山の第一師団法廷にて、東條暗殺未遂事件の審理に、時々呼び出されているそうです。
とりあえず、まだ、殺されてはいない模様。
それ以上の報告はいいので、防空壕掘りに戻ってくださいと言いました。ありがとう。ぺこり。
江先生まで助け出す余裕はないので、ごめんなさいね。
やっぱり来世でお会いしましょう。覚えてたら、一発くらい殴られてあげます。
どうか、それで、ごかんべんを。