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7月29日未明。
満洲へ、B29が初襲来。
大連郊外・鞍山の製鉄所が標的でした。
規模は、おそらく、6月の福岡空襲と同じくらい。
前回より精度が向上してます。
本命となる9基の溶鉱炉は無事でしたが、コークス炉のいくつかが破壊され、なお炎上中。
ラジオでは被害軽微と必死に叫んでいますが、死者100人は出てますね。
もちろん、関東軍も方面軍も、大騒ぎ。
6月の時点で
「ああうちじゃなくてよかった」と感謝しながら
同じ目に遭う想定で対策してなきゃダメなんだがな。
新京の関東軍司令部って、防空態勢皆無で。
庭にタコツボが2~3個つくられてる程度なんですよね、今も。
これから、満洲全土で本格的な防空壕づくりが始まるでしょう。
17号基地はもとより地図に載ってないし、軍飛行場が併設されてるので、狙われるのはまだ先と思いますけど、そっちでも大騒ぎしてるでしょうね。
17号相手に、最後にひと稼ぎ、しておくかな。うーん、切り上げ時が難しいな。
交渉次第ですが、私にまで今後軍票で支払うと抜かしやがったら、在庫一掃するまでのおつきあいです。
グッド・バイ。
平井さんへの交渉も、考えています。
ゾルゲ氏だけでなく、巣鴨拘置所の囚人を大勢、脱獄させるプランを立てました。
ニンジャを一人、潜入させます。
私がやります。夜中にこっそり。
厨房の位置を正確に把握しておいて、そこへ放火する。
敵襲でないとわかれば、ひとまず、囚人たちの避難が開始されるでしょう。
庭にでも、整列させるかしら。
ゾルゲ氏は、暗闇でも身長が高いから、すぐわかる。
事前に、ゾルゲ氏に伝えておく必要は、ありません。
私は彼の存在を確認したら、塀の外のチームへ、合図を送る。
外壁の、何ヶ所かへ、前もって、爆薬をセットしておきます。
これを、時間差で、起爆させる。
大混乱が起きますが、看守には暴動を止め切れません。
囚人たちは散り散りに、手近な穴から、逃げ出すでしょう。
私はゾルゲ氏へ駆け寄り、一緒に脱出します。
ひとまずは、平井邸へ匿ってもらい、時期をみて、国外へ逃亡する。
どうですかね。これで平井氏を納得させられるといいんだが。
サイパンに続いて、グアムやテニアンへも上陸が始まっています。
まだ抵抗が続いてますが、来月中にはすべて玉砕で幕を閉じるでしょう。
マリアナ諸島が安泰となれば、ただちに本土空襲の準備が始められるはず。
その前に硫黄島の日本軍飛行場も潰しておかねばなりませんが。
制空権をとり次第、やつらは、来る。
日本の都市を残らず灰にしてやるぜと、うずうずしてましょう。
私の知ってる、最大の東京空襲は、来年3月のはず。
ですが、そんなに待ちません。
一日でも早く。今年中には、日本を去ります。
さらば我が故郷。愚かな、穢れに満ちた国よ。
生まれかわれたら、今度こそ、まっとうに生きていくんだぞ。
グッド・バイ。