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東條英機さんは、独裁者です。
日米開戦時、大日本帝国で首相をやってました。
その内閣では
陸軍大臣と内務大臣も兼任し
閣僚を入れ替える際一時的に、外務大臣・文部大臣・商工大臣も兼任したことがあります。
半年前、戦時体制強化のため省庁を再編。
生産拠点を統轄する軍需省がつくられ、その大臣も務めます。
和暦2604年4月現在、総理大臣・陸軍大臣・軍需大臣の3ポストを兼任しているんです。
すでに独裁者として充分な貫禄ですけど、2月からは更に陸軍参謀総長まで兼任。
日本陸軍の最高幹部に位置する、陸軍大臣・参謀総長・教育総監。
この三長官のうち二つを、東條さんが独占しているわけです。
東條さんには多数派がすぐわかるため、決定は迅速です。
教育総監の山田さんが求めなければ、会議を開く時間すら節約することも可能。
一瞬の迷いが生死を分かつ大戦争の真っ最中ですから、この人事はきわめて合理的といえます。
独裁のためには、国民会議というシステムも弊害。
皇国民の代表が相談をするのはよいが、内閣の遂行を邪魔してはならぬ。
勝利のために行動していることは自明であり、議員諸君は追認するだけでよい。
願わくばそれを正しく国民へ広めるべく努力し、非国民をつくらないために善処すべし。
世界中に例はありますし、満州国協和会の方が先輩ですが、日本でも、既存政党を統合した一国一党公事結社が、2600年に作られました。大政翼賛会といいます。
ただし。
これをつくったのは、東條さんではありません。
そろそろ本題に入りましょう。
犯人は、あなたです。近衛フミマロさん。
2597年の初組閣直後、七・七事変が起きました。真相は今なお謎ですが、その究明に手をつけることもなく、コノママ支那ヲ獲ッチャイマショウという口車に、あなたは、乗った。
その後は最前列で踊り続け、擦り寄ってくる陸軍人と新聞屋にいくらでも地位と予算と免状を与え続け、中国から奪えるだけ奪い尽くすまで、途中一年半のブランクを除いて、その地位を守り続けた。
大政翼賛会も
国家総動員法も
大東亜新秩序建設も
日独伊三国同盟も
日ソ中立条約も
仏印進駐して、アメリカに制裁をされ続けても、止めなかったのも。
ぜーんぶ、あなたの作品ですよ。
中国から獲れるものもなくなり、米国から最後通牒を突きつけられ、そろそろ潮時とみるや、東條陸相に責任を押しつけて、首相を放棄。
彼に引き継がせた内閣が開戦へと踏み切り、旗色が悪くなってきた今また
「戦争責任者は軍国主義の権化・東條英機である」と
満面の笑みを湛えながら、政治工作をし始めましたね。
惚れ惚れするほど、美しい。
あなたの華麗な立ち回りには、敬意を表します。
まさに稀代の怪盗だ。ルパンも、ファントマも、二十面相だって、あなたには到底かなわない。
近衛氏はしたたかにどこまでも逃げおおせるでしょうから、ひとまず放っておきましょう。
さて、東條さん。
うまくハメられましたね。
そして今まさに、絶体絶命の崖っぷちに立たされている。
あなたにも、非が無いわけではない。必要以上に権力を持ちすぎたし、子飼いの憲兵隊にも仕事をさせすぎた。
でも、他人のぶんまで背負い込む筋合いは、ないと思います。
そろそろ、好きになさっては、いかがでしょう。
降伏すべきです。
今のうちに。
すべてを詳らかにして、何が起きていたのか、何が間違っていたのかを、第三者に審判してもらいましょう。
選択の余地があるうちに。
そう。今のうちに。