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メリークリスマス・アンド・ハッピーニューイヤー。コダマです。
ボーゲンビル島西岸トロキナに、米軍が飛行場を完成させました。
ラバウルまでは片道400km弱。連日の爆撃が可能になります。さっそく、やってます。
それでもなお、ラバウルには概算300以上の日本軍機が残存しており、予断許すまじ。
慎重さを崩さない、総司令官ニミッツ提督。
まだまだ、時間は、かかりそうですね。
ビルマ戦線が、思った以上に深刻です。
日本軍は、本命の大攻勢を春頃予定で準備中。
そんな情報もダダ漏れなのはいつものことなんですけど。
すでに戦端が開かれている地域があります。
魔境、フーコン。
私も誤解してました。日本語で渓谷なんていうから、只見か千曲川みたいな絶景さえ想像してたんですが。
そもそも規模が違う。
南北150kmに及ぶ大密林。谷底は幅100m前後の低地が続く。盆地と言った方が正解かも。
ヒマラヤ山脈からの冷たい風が吹きすさび、夏の雨季には腰まで水浸しになるそうです。
現地で特に恐れられているのは、桑の木によく似た、一見何の変哲もない広葉樹。
触れるだけで火傷のように爛れるそうです。
古参兵のほとんどは、これで尻を拭いてエライ目に遭ったと。
ほか、吸血性の山蛭も多く、死体に群がり丸々と太っていく。
マラリア以外にもアメーバ赤痢とチブスが流行している模様。
後方の野戦病院で軍医さんは一日平均200名を診察してますが、ビタカン注射したらすぐ前線へ戻すそうです。
ガダルカナルからの転送組も、こっちの方がキツいとこぼす。そんなフーコン。おそるべし。
11月より、フーコン盆地の北端から連合軍が侵入。
陣地を構え、そこより先へ連日、空爆を行っているようです。
ここでまた一つ、見過ごせない報告を読みました。
「ペスト流行ニ付、通行禁止。防疫給水」
こんな看板が立っていて、ロープが張ってある。
前線の日本兵は迂回して進みます。
何日かして、防疫給水部の課員が初めてそこを訪れた。
「誰がこんな看板を?」
やっと偽物だとわかる。
連合軍が、その奥で、悠々と陣地を拵えていた。
中国戦線でも、南方でも、ガダルカナルのジャングルにさえ
連合軍が日本語で書かれたビラを撒くのは結構前から常態化してるんですが
もったいないことに現物が、なかなか手に入りません。
21世紀の機械翻訳でもここまで流暢じゃないと思わせる完璧な日本語。
その師団の出身地の風物詩まで織り交ぜた美しい文章で、兵たちに投降を呼びかける。
そんなビラが、あちこちの戦線で、せっせと作られてるんです。
当然これは捕虜となった裏切者が鬼畜米英に脅され書かされたものに違いない。と、兵は拾っても読むことすら許可されず、ますます連合軍の非人道的心理戦術を呪って突撃していくという、負の連鎖も生んじゃってるみたいなんですけどね。
同じ事をやり返そうにも、日本人はもはや、アルファベットの文字数すら忘れちゃってるでしょう。
小林くん。ありがとう。
今日もいっぱい、いろんな報告書をこっそり読ませてくれて。有意義だったよ。
でも、君は、平気なのかい?
同朋が、こんなにも、バカやってるのって。
君だって、わかってるだろう?
僕は割り切ってるからいいけど。
同じ日本陸軍人としての君の率直な心境は、どうなんだい?
なんて、聞けるわけもないのでした。おやすみ。