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今回は、大将に乞われて、私の元いた20世紀について、語ってきました。
第二次世界大戦は、1945年に終結します。
日本は、滅びませんが、無条件降伏を受け入れました。
それより早く、ドイツも敗北。ヒトラーは、地下壕で自決します。
アメリカでは、ルーズヴェルト大統領が突然死。
トルーマン副大統領が代理となって国を導いていきますが、ソ連との対立が激しく深まります。
世界は資本主義国家群と共産主義国家群に大きく二分されるに至り、世界各地でその代理戦争が繰り広げられる時代へと突入。
ドイツや朝鮮は国内に国境線が敷かれ、まったく異なるイデオロギーで生まれ育つ世代がそれぞれに誕生し、成長していきます。
いずれも、再統一までの道は、おそろしく困難でした。
日本は、ほぼ全土がアメリカの占領地となり、その傘の下で、すばやい復興を遂げます。
イデオロギー的には完全な隷属といってよい。
天皇制は存続し、元号も続いていきますが、皇帝としての権威はまったく無くなります。
国民の生活は、表面的には豊かになり、一時は経済大国と呼ばれる地位にまで、のし上がります。
けれども、政治力はおそろしく貧弱なまま。
今だって、大して違いませんけどね。
「軍隊は、一時完全になくなる。しかし自衛隊という名で復活し、日本人みずから祖国を守るという大義は保たれる。東亜の秩序を保障し主導するのが米国であったとしても、日本はかれらと敵対しておらず、むしろ良好な関係を保ち続けている。その上、国民は経済的に豊かで、贅沢を許されているのであろう?
……これは、わしには、願ってもないほど、非常に理想的な戦後のように、思える。
おぬしが何を不満と考えるのか、いまいち、わからんのだが?」
自衛隊は、軍隊なのか、ニセ軍隊なのか。
国そのものも、独立国家なのか、米国の傀儡なのか。
何もかもがウヤムヤなまま、既成事実だけを積み上げていくウソツキ体質。
それが、日本の伝統的精神とまで言われるほど定着してしまうことに、ですかね。
もっとも私だって、まだ、判然とは説明できないです。
前世では、いま山下さんが仰ったように、日本はいい国なんだよねと思って生きてましたよ。
でも、この時代に30年以上生きてきた今は、そんな過去の自分にも、軽蔑しか抱けないんです。
未来は、この先まだまだ、変えられます。
山下さんや私の知る未来よりも良い解答があるならば、良い方へ導きたい。
そのために、私の知識は、ひとつの叩き台になるはずです。
でも、難しいですね。
「ひとまず、あと二年か。そこまでは踏ん張らねば、だな。
わしは絶対にこの戦争、勝ちたいのだ。勝ってみせる。
今はそれだけを考えよう。悔いは残さぬようにだ。君もな」
複雑な気分でした。
この世界は、すでに何度か、上書きされているのだ。
私は、何者かの意思によって、なんらかの使命を帯びて、転生させられたのか?
その何者かは、まだまだ納得せず、プレイヤーにループをさせ続けているのか?
私は何かを為すべきなのか?
どう生きるべきなのか?
いろんなことを、モヤモヤ、モヤモヤ。
まるで思春期の悩みです。
……そうだ。
私には、転生したばかりの頃、ひとつの夢がありました。
「戦後まで生きのびれたら、ゲームをつくって引きこもりたい」
それでも、いいかな。
真剣に遊べる、真剣に学べるゲームを。
すべての子供たちと、老人たちに、与えてやりたい。
全身全霊を懸けて正々堂々と戦う必要をまっすぐ思い知ることのできるゲームを。
私になら、つくれるかもしれない。
つくって、引きこもりたい。
それまで、生きのびようか。