File_1943-10-001D_hmos.
東京の大本営が、英断を下しました。
ラバウル、見捨てるってさ。
正確には、戦略的任務解除。
そう書いてありますね。
放棄、なら二字ですむのに。
紙もインクも、もったいないでしょ。
ぜいたくは、敵なんでしょう?
「従軍看護婦ほか非戦闘員は、今のうちに帰還を許してもらえないか」と現地司令官より内地へ打診されているらしいです。許されてないってことですね。
17号基地でも、現地へ派遣されている防疫給水部員は還してもらえるのかどうかと、気を揉んでいます。
「本土への侵攻を一日でも遅らせるためにラバウルを切り捨てる」判断なら、非戦闘員でも肉の盾にできるでしょうから、還させないかな。
再利用可能な負傷兵を最大限活用するためにも、野戦病院は必要ですし。
血も涙も通ってない日本製の計算機は、瞬時に答えを、弾くでしょう。
ガダルカナルからボーゲンビルへ救出された連隊の大部分が、フーコンへ転送されてるんですよ。
内地へ戻せば「大東亜の共栄を掲げた聖戦」の真実が露呈するから、帰国などさせない。
「日本軍がジャングルでの抵抗戦に世界一強いということを、その経験を巧みに生かして、再び証明してくれ」
そんな天の配剤が為されました。
大本営の計算機は素晴らしいですね。私のエニグマより優秀かもしれない。
ところで連合国太平洋方面軍。
ハルゼー提督のソロモン攻略チームと
マッカーサー将軍のニューギニア部隊のほかに
新手がもう一陣、現れました。
スプルアンス提督率いる、中部太平洋艦隊。
最新鋭空母エセックスを中心に、真珠湾より満を持しての出撃です。
大海原を西へ進み、9月中にギルバート諸島へ到着。
東京からの直線距離は約5000km。
開戦直後、小規模のイギリス陣地を攻撃した日本軍は、ここに守備隊を置いていました。
方角的には、ここからソロモン諸島へ合流する形になるのかな。
中部艦隊はミッドウェイ以降、本格的な戦闘から遠ざかっていたため、偵察など後方支援から徐々に慣らして参加させていくようです。
どこまでも慎重すぎるアメリカ軍。
いいことではありますけど。
北のアリューシャン列島からは、すでに日本軍を完全に追い払ってしまったそうです。
そっちまでは、二度と攻めては来ますまい。
平井氏の報告を読みました。
ゾルゲ氏は皇国の神威を揺るがした大スパイ網の首魁であるから、極刑に処せざるを得ない。
ゆえに死刑を宣告されるのは必然であった。
しかし、執行はされない。
できない。
日ソ中立条約はまだ有効であるとはいえ、ソ連は日本にとって、今も最大の仮想敵国のひとつである。
そして同盟国ドイツがソ連を倒せる見込みは、現状、限りなく薄くなった。
よって日本はいずれ、ソ連とも、戦わねばならぬ。
このとき、ゾルゲ氏の持つ情報がどれだけ日本軍の作戦立案に有益であるかは明白である。
だから、それまでは生かさざるを得ない。
なるほど。言われてみれば、もっともですね。
リュシコフ氏の場合は自発的な亡命でしたが、彼もまだ、生かされてるみたいですしね。
平井氏が監視する上でも、ゾルゲ氏が巣鴨に居続けるままの方が、都合がいいそうです。
チャンスがあれば安全に脱獄させたい。という私の意図は、汲み取っていだだけてます。
でも終戦までには、何があろうと絶対に、連れ出しますけどね。