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ばれた。
気取られた。
一瞬、身がすくんだ。
「アメリカが生みだした、史上最低の大統領。だったかな?」
山下さん。あなたは……
「21世紀はじめ頃だと思ったが。知っていたら、教えてくれまいか」
その通りです。2020年頃のはずです。
山下さんは、いつの時代から来られたんですか?
「まあまあ、急くな。こちらこそ、21世紀の話を聞きたい。わしはよく知らんのでな」
そう言われたって……私も前世ではとくに政治にも歴史にも興味なかったですよ。
一度目の人生って、そんなものでしょ?
それより山下さんが生まれた時代を知りたい。
「西暦でいえば23世紀かな。U.C.0203の生まれだ。コロニーで生まれ、死んだ。その記憶を有したまま、58年前、高知に生まれた」
スケールでかすぎる。宇宙人かよ。
……ん?
もしかして、私よりも、第二次大戦や冷戦については、ご存知ない?
「知らんのだ。今まで会った中では、君が一番、古い時代から来ている。この戦争は、どうなるんだ?」
……まてまてまてまて。
おちついて考えよう。相手は陸軍大将だぞ、現役の。
あと2年で日本は無条件降伏しますなんて、言っちゃっていいものか?
冷静になれ。
危険は避けろ。
……私の知っている歴史とは、すでに大きく、違う道へ進んでしまってるんです。
私にも、この戦争がどうなっていくかは、わかりません。
ちなみに私のいた世界では、日本は敗北しました。まだ、2年ほど、続きますけど。
「そうか……なら、今度こそ、勝てるといいな。この調子で押し切って、英米が講和を申し出てくれれば、いけそうだがな」
おやおやおや?
山下大将も、浮かれてる側の人ですか。
意外と、甘いようで。
「辻から聞いて、もしやと思った。ここで二番目に背の低い男だと教えられたのだが、君より小さい子もいっぱいいるな」
奴のいた頃は、少年隊、いませんでしたからね。
一番でなければいいです。小林に抜かれることはないから。
辻め、いつか殺す。
それにしても、自分以外に転生者を見たの、山下さんが初めてです。
他にも、いたんですね?何人くらい、いらっしゃるんですか?
「2・26で皆、処刑されてしもうたから、もう、わし一人だ。日本を滅亡から救える同志にまた巡りあえて、わしが今、どんなに嬉しく思っているか、わかってもらえるかな」
日本……滅亡?
確認させてください。
山下さんのいた前世では、日本は、滅亡してるんですか?
いつ、どんな風に?
「宇宙世紀が始まる百年ほど前の戦争で、何発も核爆弾を落とされ、国家としては消滅した。その後は国際連合の管理地域となり、加盟国の共同核実験場となったという。わしには日本人の血が十何分の一か混じっていたので多少の知識はあるが、それでこの程度だ。スペースノイドにとって地球の中世紀史は、大して興味も無いものなのでな」
私の前世とも、相当違っているようですね。
ますます、わからなくなってきたぞ。
山下さん、まもなくタイムリミットです。またじっくりお話したい。場を改めましょう。
「牡丹江の司令部へ来てもらえればありがたい。連絡をもらえれば、都合をつけよう」
今日はありがとうございました。これからも、よろしくお願いします。