File_1943-05-001D_hmos.
万国の労働者、団結せよ。
今となってはなつかしい。
世界各地の共産主義者に結束を呼びかけ、労働者の労働者による労働者のための社会をつくるべしと、共産党宣言とともに始まったスローガンです。
1943年5月。
ソヴィエト社会主義共和国連邦は
国外の共産主義運動を指導・連帯させる機関だった第三インターナショナル
通称、コミンテルンを
一斉解散すると発表しました。
枢軸国との戦いで連合国の一員となったソ連には、もはや共産主義も資本主義もないのだ。
ルーズヴェルトは自らの主張が完全に受け入れられ、スターリンが迅速な決断を下したことに、満面の笑み。
チャーチルは、かれらがそんな従順であるわけがないと、警戒を緩めません。むしろ猜疑心を強めている印象を隠さない。
さて、真実に近いのはどちらか。
私のいた21世紀には、コミンテルンは、ありませんでした。
どこかで消えるか、改組されるんだろうなと思ってましたが、このタイミングは意外でしたよ。
もしかすると私の知る歴史とは違うのか。
スパイ映画でお馴染みのカーゲーベーも今はまだ無いようですが、NKVDがその前身ということになるのかしら。
ともあれ、コミンテルンは、無くなります。
レンドリースが更に加速します。
米ソの友好関係は当分、安泰。
でもソ連は依然、情報統制の厳しいお国柄なので、アメリカがその内実に気付く頃には、核の時代が到来していることになります。
ルーズヴェルトも亡くなってますが、知らずにすんだことは幸せだったかも。
遺された子らは、たまりませんが。
ところで。私の住んでいるハルビンは、共産主義革命後に国を追われたロシア人貴族たちによって、栄えた街です。
なので従来、反共精神が根強く、そのため満州国成立後も、日本が極端には同化政策を押しつけなかった。
現地にまかせておけと放任されていました。
他の土地よりは比較的、ですけど。
今でも、ハルビン市民は反共だという固定観念に沿って書かれてる文書は、多いです。
でも正直、ハルビンで生まれ育った若者は、コミュニズムへの憧れが半端なく強いですよ。
親の世代への拒絶反応。
それから自分たちが身をもって体験している、日本人からの差別虐待。
これらが
見たこともない祖国ロシアへの憧れや
枢軸国家に立ち向かっている、仲間たちへの共鳴を
掻き立てずにはおかないのです。
もちろん、おくびにも出せません。だから表面しか見ない人にはわからない。
ハルビンには、中共、藍衣社、英米独の諜報屋、その他どこに属してるんだかわからないゴロツキ連中、数知れず。
有象無象の闇団体が掃いて捨てるほど隠れてますが、コミンテルンはその最大手でした。
表向き解散しますが、山ほどの機密を抱えている連中をスターリンが自由にさせるはずもない。
看板だけ替えさせるか。もっと地下に潜らせるか。
そんな動向も、注目していきたいと思っています。
スターリン、やり手ですからね。
ルーズヴェルトを手玉にとるくらい、造作もない。
見ててこっちがヒヤヒヤします。
そして、更に外側から様子を窺い、一心に爪を研いでいるのが、中国共産党。
いずれ、蒋介石を大陸から追い払う。先行きを知っているから、ドキドキしますよ。
コミンテルンが消える。
大転換点。何が始まるのか。
ハルビンは今日も、静かです。