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東條英機総理大臣が訪満中。
あちこち視察し、溥儀皇帝とも会見。
新聞に写真が載ってますが、夥しい数の章飾を、隙間も無いほど、胸にぶら下げ。
枢軸諸国から授与された勲章が多いみたいです。
さぞや重くて歩きづらいだろうと思いますが。
御苦労様です。
2月に大将へ昇進した山下司令官も、一緒について回っているみたいなので。
今日はゆっくり17号で、小林とくっちゃべっていられます。
とはいえ、ここの管理職の何人かが、私が来るたび山下大将へ通報しているという噂も聞きます。
やだねえ。そんなわかりやすいスパイ使ってる人とは、ますます話が合わなさそう。
ガダルカナル島から、約1万人の生存者が救出されたとのこと。
巡洋艦や駆逐艦が遠方で敵艦隊を引きつけている間に、島の西端から三日かけてピストン輸送したらしい。
それだけ聞くと、ダンケルクみたいな感動譚になりそうなもんじゃないですか。
しかし、ガ島へは総勢4万人近くを送りこんでおいて、地上戦闘はほんの数回。
航空隊や艦艇の被害も甚大で、それでも結局、飛行場を奪還できなかった。
そもそも大本営として、国民へ向け発表できるニュースではないんです。
なおかつ、内地へ帰してもらえるのは、救出された中でも、ほんの一握り。
ラバウルやボーゲンビル島などの野戦病院で療養したら、また戦わされるらしい。
島を出られても、結局、死期がほんのちょっと延ばされるだけという、やりきれなさを倍増させるお話でした。
ラバウルも、決して住みやすい基地ではないようですね。
海軍が軍事拠点とするために拡張した町で、マニラのような繁華街は無いみたいです。
そして今や、ラバウルでもマラリアが大流行。
東京と満洲で、防疫給水部がその研究と対策にせっつかれまくってます。
マラリアの流行地といえばもう一つ。
最近17号でクローズアップされているのが、ビルマ北方フーコン渓谷。
援蒋ルートを空輸に切り替えた連合軍が、その機動力をフル活用し始めました。
北部ビルマの日本軍は包囲されつつあり、日本側もこれに対抗してビルマ方面軍を新編。
決戦の準備中です。
新陣地をつくるにあたり、フーコンが選ばれました。
ビルマを統治したイギリスが、この地域だけは測地すら断念したほどの、秘境。
野獣の棲息する未開のジャングル。それが、フーコン。
ここに派遣された日本軍調査隊の報告では、ガダルカナルの密林とよく似てます。
違いをいえば、カチン族という、先住民の部落があること。
外国人を極度に警戒し、森の至るところから現れて、小刀を手に襲いかかってくるのだという。
なんとか、はぐれ者の老人を味方につけて案内してもらい、岩山に陣地をつくったものの、マラリア患者が続出して、軍隊としての機能を保てない。
このことを「陸軍式に」報告すると、上層部はマコトニケッコウヨキニハカラエと大満足。
緑豊かな未開地なら食糧もいっぱいあるだろうからと、早々に補給も打ち切ったそうです。
偽薬すら送らなくていいなら、楽じゃん?
と思ってたら、医学者の発想は違った。
その土地固有の病気なら、自生する動植物、とりわけ住民の体内には抗体ができているはずで、その成分を特定すれば、薬がつくれるのだと。
だからまずはサンプルを集めたい。
持ってこれるものはなんでもいいから、いじらないで17号へ送り届けてほしいというわけですな。
それを陸軍式伝言ゲームで要請するのは、これまた骨が折れそうですね。