File_1943-03-001D_hmos.
もはや、枢軸国に、勝利の可能性は、ありません。
1943年春の段階で、です。
私は、言い切っちゃいます。
ここから、王手をかけるまでが、長いんだよなあ。
という、ウンザリするような、現実のプロセスを、呪います。
あと二年。
今からは、連合軍参戦国同士の、戦後における利益分配が主要テーマとなります。
新たなるステージへの、突入です。
イタリアは既にレームダック。
国内ではムッソリーニ首相への不満が隠されなくなってきてる模様。こいつが全部悪いんですと。
今にも降伏しそうな勢いですが、駐留しているドイツ軍がまだまだ睨みをきかせていて、手強い。
北アフリカ戦線は、11月に英米軍の大上陸作戦が実行され、ロンメル元帥は夥しい地雷を敷設してから軍団を逃げ延びさせました。
しかしこの独断撤退にヒトラーが激怒。
ロンメル解任に及びます。
おいおい。じゃあ誰なら勝てるというのか。
ドイツが北アフリカへ戻る機会は、永遠に失われました。
対ソ戦でも、ドイツはこの冬、決定的な敗北を刻みます。
スターリングラード攻防戦。
大都市を占領したドイツ軍ですが、その街をまるごと包囲される。降伏勧告を受けた軍団長は、投降。
これにもヒトラー大激怒。
しかし、怒ってどうなる。
私がその軍団長なら、二度とドイツへは戻れないと、この瞬間に腹をくくります。
だからソ連に全面協力を誓う。
ヒトラーと、二度と会わずにすむために知恵を絞ることにします。イノチガケで。
怒る前に、そのくらいの算盤は、はじきましょうよ。
とはいえ、撤退や降伏を決断できるほど冷静な幹部はむしろ例外でしょう。
ナチスもまた、カルト宗教です。ヒトラー総統が生きている限り、兵たちは、迷うことも悩むこともなく、生命活動が停止する瞬間まで、敵を殺すことに邁進するよう教えこまれているはずです。
連合軍は、そんな抵抗を排除しながら、ベルリンまで到達しなくてはならない。
それが、ゲームを終わらせる唯一の条件なのだとしたら。
さて日本。もとよりこっちがカルト国家としては先輩です。
ねじれ曲がってきた歴史が長いだけに、どうすれば終わらせられるのか、勝利条件は複雑。
エンペラーに降伏宣言させれば済む話なのか?
ドイツと異なるのは、「狂った絶対権力者が忠実な働きアリたちに号令を出して戦争を始めさせた」というシナリオがつくれないことです。
現実問題、おそらく天皇は、何も知らされてない。
無学ではないと思います。
しかし、情報が与えられなさすぎていて、判断も、決済も、指導もできず、何をすべきかを示せない。
ただのアイドル。ただのオカザリ。
そんな中枢を、今次大戦の元凶だと、はたして言ってよいものか。
とはいえ、日本陸海軍指揮系統の頂点は名実ともに天皇大権であり、昭和時代すなわち今日までの16年間、日本が起こした対外戦闘行為は総てヒロヒト天皇が承認した上で行われたことです。
満洲事変だけは半年経ってからの事後承認ですが、それまで含めて、すべてです。
この責任は、重すぎます。
知らなかったですまされては、たまりません。