File_1942-10-001D_hmos.
米軍視点による、ガダルカナル島の現況。
東西85マイル、南北28マイル。面積2500平方マイル。
珊瑚礁と熱帯雨林の島。
毎日、盛大なスコール。
北辺中央よりやや西に、ルンガ河が注ぐ。そのほとりに、平地あり。
日本軍が約3000名の要員を送りこみ、飛行場を建設中だった。
ここに海兵隊一万名余で上陸を敢行。施設ごと奪取。
滑走路より2~3マイルほど、全周囲に幾重もの鉄条網を張り巡らせ、昼夜厳戒態勢で堅守。
日本兵はジャングルの奥深くに潜み、なお島の西側より幾度となく増援部隊を上陸させ、基地奪還を目論む。
連合国の兵は大部が戦闘に疲れ、マラリア蚊に悩まされているが、警戒を一秒たりと緩めることは許されない。
弾薬と、生活物資の、更なる補給を求む。
日本側視点では。
第二師団、長谷川軍医少尉の報告より。
ガダルカナルの密森は、生命を寄せつけない。
巨木同士が太陽の光を奪い合い、空を覆い隠すため、真昼でも常夜の闇である。
足下はどこもかしこも、腐木と落葉の堆積で、底知れぬ湿地と化している。
工兵隊が道を作るため樹を伐ろうとすれば、腐った幹からたちまち地響きを立てて倒れ、兵の頭上へ覆い被さる。
川は湿地の底を流れており、水の補給もままならない。
海岸付近には椰子の実、バナナ、パパイヤが豊富で、牛や馬もいたが、森へ分け入れば分け入るほど、昆虫すら見られぬ闇の世界が、果てしなく続いてゆく。
二酸化炭素の濃度が高いのであろう。悪気流の充満が生命の活力を根こそぎ奪っていく。
蚊と蝿は、いる。
ガ島蝿は、チクチクと刺してくる。
マラリアに罹った者を寝かせておくと、吐息に吸い寄せられ、顔中に群がり、ありとあらゆる粘膜に卵を産みつける。
薬は、ない。
あっても、どのみち、栄養失調で回復は見込めまい。
野戦病院とは、名ばかり。ここは……
しらふでは、読めませんね。飲んだら、余計に読めませんが。
原文は、もっと抑制されています。
仮にも軍の上層部への、嘆願を圧し殺した、報告書ですから。
心のままにクソドアホウと書くわけにもいかんでしょう。
ケサゴさんなら、書くかもだけど。
第二師団は、基地攻撃を正面から行うのは不可能とみて
アウステン山をぐるっと迂回し
飛行場の背後から突くため、ジャングルの中へ中へと、踏み入ってるのだそう。
この作戦を考えたのは、またしても、辻らしい。
その基地は、ジャングルから見て反対側まで、ぐるっと鉄条網で囲われてるってよ。
なんて情報、持ってないか。
君たちはなぜ、歯を食いしばり、ただ命令に従い、歩き続けるのか。そんなにしてまで。