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ミッドウェイを境に、日本の新聞がめっきり、つまらなくなりました。
え。以前は面白かったですよ。
図に乗り放題で勝ち誇ってたから。
あけすけだったから。
犯罪者の自覚無き自慢話って最高ですよ。心から楽しんでました。
急に口が重くなっちまいやがって。
ああ、つまんない。
とはいうものの、無理もないです。
今後の作戦がぜんぶ成立しなくなり、一から練り直さなくてはいけなくなった。
もう、戦えないんです。だから、ネタもない。
なければ作りゃいいんですけど、過去との整合性を考えなくちゃいけない。
今までもデタラメだったんだから、整合性なんて気にしなくても。
ダメなの?
そう。変なとこにこだわるんだね。
それにつけても、戦域、ムチャクチャです。
中国大陸方面。
重慶手前の長沙周辺で日本陸軍、湯水のごとく戦費をふりしぼってます。
つぎこめばつぎこむだけ、いくらでも大地に吸い取られる。
しかし。援蒋ルートはつぶしたはずなのだ。
もうひと息だからと、なけなしの金をはたいてはたいて尚、あきらめません。
ビルマ戦線。
ラシオ及びミッチーナは日本軍の手に陥ちました。
アッサムから昆明に至る輸送路は使えなくなり、重慶政府の抵抗力はガタ落ち。
困ったぞ。そこで
「やむをえない。ヒマラヤ山脈越えで輸送機を飛ばそう」
と連合軍は考える。
松本清張先生もびっくりだ。
しかも
行きは物資を満載し、帰りは重慶から動員兵を連れてきて英軍の拠点で教育を施し、両側から日本軍を叩くんだって。
重慶は、ヒマラヤ越えを志願する若者であふれかえってる。
ビルマ人が味方してくれなくなれば、日本軍は絶望的に孤立しますが、ちゃんと地元の支持を得る努力をしていれば、そんな心配もないかもね。
南方戦線。
マレー・シンガポール・マリアナ諸島・東インド諸島は今のところ安泰。
戦火もおさまり、日本は現地からの貢ぎものをホクホク顔で、せしめています。
ここで毅然と気持だけを受け取り、真の解放者として現地民のための事業に着手すれば、また今後の展開も違ってくると思うんですけどね。
心根が賤しいのを隠そうともしない態度もむしろ、あっぱれです。
なるようになるでしょう。
驚いたのは、太平洋の北の果て。
日本からだとカムチャツカ半島を越えた先のアリューシャン列島。
ここのアッツ島・キスカ島にも日本軍は上陸して、陣地をつくってしまったそうです。
領土としてはアメリカ合衆国アラスカ州に属するので、日本、ついにアメリカ本土の一部を占領したことになります。ハワイには、上陸してないですからね。今回が史上初。
カモる側さえうろたえさせる、このイケイケゴーゴーぶり。
それにしても、外周を拡げすぎです。
本土を護る気、ナッシングかよ。
抗議したから、内地への空襲は二度とされないと思いこんでるのか?
並のカルトじゃないですね。
視線を、南方最前線へ戻します。
オーストラリアまで攻めこむには、ニューブリテン島ラバウルからだと、ちと遠い。
そこでニューギニア島のポートモレスビーを攻略しようとして一度失敗しています。
しかし、一度や二度の失敗で懲りる日本軍ではない。
陸軍内で、大号令がかかってるんです。
岬の反対側から上陸して、山を越えてモレスビーに攻めこむ?
そんな大作戦を計画してるみたいですね。
ニューギニア島内には数々の高山がひしめいてますが、モレスビーを反対側から攻めるとなると、スタンレー山脈越えかしら。
私の地図では、最低標高2000m級の山道を、200km以上。
クネクネ曲がってることを考慮して、正味400kmは歩くことになるでしょう。
カルタゴ軍のアルプス山脈越えに比べたら楽な遠足ですけど、それでも一ヶ月は見ておくべきかな。
私だったら、やらせません。
来るとしたらここ、て丸わかりですもの。
二千年前、もっと大規模に同じことをして、ローマ帝国を16年間も震え上がらせた名将ハンニバル。
西洋の兵法書で、この戦いに言及してないものは存在しない。
それくらい戦術論の定石とされるエポックです。さんざん研究され尽くしてます。
地図を見た瞬間に、教科書通りだ!と連想しない欧米軍人なんて、いないと思いますから。
敵さんが揃って注視する舞台へ、まんまと飛びこむ愚は、冒せません。
それでもやるなら、早いうちに登山用具を人員ぶん、発注してきてよさそうなものですけどね。
発注きてる?きてないよね。ありがとう。
まさかね。着のみ着のままで雪山越えなんてね。
まさかね、そんな。
でも、日本軍だからなあ。
並のカルトじゃないからなあ。