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仕事なら、ほどほどに。
コダマさんの、座右の銘のひとつだそうです。
僕の名はサノ。昨年転職しました。現在、銃器の照準系の設計をやっています。
前職では電気関係の仕事をしてたんですが、お役所なので、書類ばかり書かされていて。
それはそれで僕にはありがたい環境だったのですが、このまま一生というのもどうなんだろう、という気もなくはなかったんですね。
家では本ばかり読んでました。
冒険小説、探偵小説が好きです。僕も子供たちに夢を与えられるような、世界をまたにかけた大長編物語を、いつか書いてみたいなあ、なんて思ったりもしますよ。
でも、難しいですね。書いてるうちにだんだん自分でもわけがわからなくなっていって、辻褄が合わなくなっていって。で、やめちゃう。
そんなことを数年おきに繰り返したりしてました。
コダマさんは、私の教師です。人生の大先輩として、尊敬しています。
なんたって未来人ですから。でも、くれぐれも、秘密ですよ。
コダマさんからは、一度にひとつの話しかするな、と教えられました。
話してるうちに、ついつい、流れが変わっていってしまうことはよくあること。
気がついたら、あれ、ここはどこだっけ?と途方に暮れてしまうことは、人間誰しも、ありますよね。
僕の小説も、いつもそんな風になって尻切れトンボになっちゃうのでした。
はっと気づいたら、何をしてたんだっけと思い出して、思い出したら、すぐ戻る。
そして最初に考えていた結論を言ったら、その章はそこで、すぱっと、やめる。
これ、確かに、話が早いし、気持ちもいいんですよね。
コダマさんはこの切り方がものすごく手際いいんです。
話すときも、せいぜい1分か2分で、言いたいことを言っちゃったら、それでおしまいなんです。
すぐ早口になるので、何を言っているのかわからないんですけど、同じ事を何度でも説明するのは苦ではないそうです。むしろ、つきあいを深めれば何度でも何度でも同じ話題は出てくるものだと。結局同じことを何度でも言っちゃうのだと。それでいいんだと。
だから一回で全部を理解しようとするな、ともよく言われます。
その時ちんぷんかんぷんでも、別なときに同じ言葉を聞いたら、思い出してハッとつながることもある。
そこで知識は立体化するのだと。
とつぜん、蒙は啓けるものだと。
それでいいんだと。
奥深いお言葉です。噛みしめます。
さて、今日は、いまやってる照準系について、僕自身モヤモヤしていることをここで整理してみようと思っていたんですが、なんだかもうすでに疲れてきたので、今日はここでやめておきましょう。
コダマさんの話は尽きません。
僕はコダマさんのことをもっともっと皆さんに伝えたい。
コダマさんが大好きです。
でも、この秘密は誰にも言ってはいけないと、固く固く命じられています。
ああ、もどかしい。こんな苦行がありましょうか。
そのモヤモヤを、仕事と、仕事じゃないもうひとつの研究に、ぶつけています。
そんな話を、次回、します。ごきげんよう。